松井冬子の呪い

往復二時間かけ横浜美術館へゆく。

松井冬子展をみた。

それなりに心うごかされ、三千円の図録をかつた。

 

 

都内にもどり、山手線「渋谷-新宿」間で、棚に置きわすれる。

かなしい。

ゲームで世界征服に夢中だつた。

クイーンズスクエアでかつた服もうしなう。

 

 

JRに二度電話するも、みつからない。

おかしい。

盗られる様なブツではない。

泥棒もあの絵をみれば震える。

 

 

オレは知らずに、図録を捨てたかもしれない。

胸の奥にすむ何者かが、松井の魂を異物とみなして。

内世界を征服されるのを恐れて。



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テーマ : 絵画
ジャンル : 学問・文化・芸術

大和川『Powerプレイ!』

 

 

Powerプレイ!

 

作者:大和川

発行:茜新社 2012年

[TENMA COMICS]

 

 

 

 

 

今尾貞春、三十歳。

ゲーム好きで、同人エロゲーの原画などに関わるが、無職。

口癖は「空から女の子降つてこないかなあ」。

オマエはオレか。

いや、絵をかける分だけマシ。

 

 

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で、降つてきた。

使い魔の「サラ」に、空へ吊り上げられる。

舞台設定については、単行本を紐解き、はじめ二章をあたつてほしい。

特筆すべき新機軸はない。

なお主人公は、「淫魔王シャダール」の転生者。

「イマオサダハル」は、「インマオウシャダール」のもじり。

 

 

 

 

 

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淫魔王シャダールを追う、三勇者。

漫画はかならずしも絵がすべてでないが、

本書の場合、その細部描写に目を凝らさねば惜しい。

まづ中央の姫騎士「マリア」の装備をみよう。

最小限の面積しかもたぬ甲冑と、ふわりたなびく衣。

 

 

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天馬を駆るマリア。

念のはいつたことに、登場のたびごと、ことなる鎧をまとう。

左腕に円盾、右手に長槍。

末端ほど装甲があついのは、お約束。

 

 

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ふたたび三勇者そろいぶみ。

左のニンジャが「エクレア」、右の魔術士が「ミーナ」。

勿論マリアは、またお色直し。

露出はへるも、刺繍が細緻に縫いこまれる。

一巻完結の漫画で、ここまで意匠をほどこす作家はいない。

採算があわない。

 

 

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水使いのニンジャ・エクレアと、マリアがからむ。

ふたりは深い仲で、貞春に犯されたマリアに、つめたい妬心が燃える。

 

 

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作者・大和川のこだわりを紹介するという、

本稿の趣旨にさほど関係ない場面だし、

スキャン枚数も必要以上に増やしたくないが、

この透明で残酷な百合はあでやかで、無視できなかつた。

 

 

 

 

 

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選択をせまられる主人公。

三勇者のだれをえらぶ?

マリアなら、176ページをひらけ。

唐突なゲームブック展開がたのしい。

 

 

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カヴァー裏になぜか、テーブルトークRPGのキャラクターシート。

外見欄の絵がヘタクソでわらえる。

この物語は、『Powerプレイ!』というゲームのシナリオだと、暗示する。

あとがきによると作者は、中学時代からTRPGにハマつたらしい。

朝礼の一時間まえにあつまつたり、百面体ダイスを教師に取り上げられたり。

紙と骰子とフィギュアが織りなすリアリティ。

松野泰己の『クリムゾン シュラウド』と同様に。

 

 

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ここにいるのは、主人公であり、プレイヤーであり、

ゲームマスターであり、ゲームデザイナーであり、漫画家自身でもある。

いづれにせよ、決断のとき。

ゲームなら分岐点でセーヴできるが、漫画は直線的なもの。

 

 

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「ハーレムエンド」は男の夢だし、きつとみんなしあわせ。

でもリアルぢやない。

サラが落ちてきた、ファミレスの一幕へもどる。

 

 

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全世界の美女をほしいままにする魔力をもちながら、

褐色の肌の、ナマイキな使い魔だけもとめる。

 

 

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トゥルーエンド。

あらゆるしがらみや、懸け引きをこえて。

 

 

 

 

 

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おまけの四ページでも新コス。

鎖帷子の輪のひとつひとつを、偏執的にえがく。

見かけは『ソウルキャリバー』、骨組みはTRPGに影響され、本作はなりたつ。

それにしてもサラ、ビキニアーマーの存在意義を問うのは禁句だよ!

 

 

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カヴァー裏のもう一枚。

和気靄々と卓をかこむ、キャラクター/プレイヤー。

窮極のハーレムエンド。

烏丸渡『NOT LIVES』をとりあげたとき書いたが、

ゲームという虚空が、いま天地を侵蝕している。

架空世界の、錯綜する構造と、蠱惑的な影像。

多彩なひとびとの営為がせめぎあう攻防。

そのなかでトゥルーエンドをめざす情炎がすなわちゲームで、

『Powerプレイ!』は、この精神を余さず物語る、あらたな傑作だ。







Powerプレイ! (TENMAコミックス)Powerプレイ! (TENMAコミックス)
(2012/02/24)
大和川

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合 

かれらの日曜日

高田馬場駅前

 

 

 

 

 

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中野ブロードウェイ三階

 

 

 

 

 

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京王線新宿駅






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テーマ : GR DIGITAL
ジャンル : 写真

『コリオレイナス(英雄の証明)』

 

 

英雄の証明

Coriolanus

 

出演:レイフ・ファインズ ジェラード・バトラー ヴァネッサ・レッドグレイヴ ブライアン・コックス

監督:レイフ・ファインズ

制作:イギリス 2011年

 

 

 

 

『コリオレイナス』は、軍事と政事の悲劇だ。

まるごと人間社会をえがく。

共和政ローマの将軍コリオレイナスは、

華々しい戦功をあげ、執政官の候補となる。

それは彼にとつても、ローマにとつても、災厄のはじまり。

 

 

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舞台と映画で主人公を演じ、本作を監督したレイフ・ファインズはのべる。

 

「コリオレイナス」にはメッセージはない。

この物語自体が、ひとつの世界になっているんだ。

 

映画プログラム

 

 

 

 

 

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十六歳で初陣にたつたコリオレイナスは、以来、血を主食にそだてられた。

辯舌はぎこちない。

 

 

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ジェイムズ・ネズビット

 

 

「民衆の擁護者」のフリが巧みな、護民官につけこまれる。

 

 

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政治はきたない。

戦いは純粋で、勝つことが正義、ただそれだけ。

假に勝てなくとも、卑怯でなければ、後ろ指はさされない。

 

 

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祖国を追放されるコリオレイナス。

ローマのため命を懸けた男が、ローマの敵に。

唯一の罪は、言葉がたりないこと。

 

 

『銀河英雄伝説』アニメの特典ポスター

 

 

ボクはこの戯曲に、「ヤン・ウェンリー主義」と似た響きを聞きとる。

呆れるほどかたくなに、政治的権力から距離をおいたヤン。

たとえ我が身が滅びようとも。

 

 

 

 

 

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役者が演出する映画のたのしみは、炸裂する芝居の数々。

カントク自身は勿論のこと。

 

 

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母ヴォラムニア役は、ヴァネッサ・レッドグレイヴ。

 

あの子が私の夫だとしたら、名誉を勝ち得るために家を留守にしているほうが、

ベッドで抱いて愛してくれるよりずっと嬉しい。

 

訳:松岡和子

 

ドキリとさせる台詞をはく。

息子が酒色に溺れるより、勇敢に死ぬ方が、よほどまし。

これがわたしの本音。

ローマ軍人の母とはこういうものかと、納得させる名演だつた。

 

 

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ジェシカ・チャステイン

 

 

妻ヴァージリアは、おろおろ危惧するばかり。

ただ一歩ひいて、お姑さんを立てたとも言える。

そこがよい!

 

 

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仇敵オーフィディアスに扮する、ジェラード・バトラー。

 

 

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組んず解れつの一騎打ち。

 

 

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だが、国を追われたコリオレイナスが帷幕に参ずると、

過去の確執はその場で水にながし、副将として遇する。

 

全く潔いやつだ、俺の心臓は、新婚の妻が初めて

我が家に足を踏み入れるのを見たときよりも

有頂天になって踊っている。

 

男色を匂わせる比喩だが、不潔ではない。

 

 

 

 

 

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敵軍に身を投じ、ローマに進撃するコリオレイナス。

母が全権大使となる。

 

お前にしてもらいたいのは、

どちらか一方を破滅させることではなく、

双方に潔く慈悲を示すこと、でも説得できなければ、

お前はすぐにも祖国を攻撃し、その足でーーいえ、

そんなことはさせないがーー母の腹を踏みにじる、

お前を産んだこの腹を。

 

 

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歴戦の将軍も、「お前を産んだ腹を踏みにじるのか」と問われたら、くるしい。

祖国とはつまり、母の子宮。

男は、そのために戦い、死ぬ。

 

 

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かのヤン・ウェンリーも、鳴動する歴史のなかで苦悩したが、

シェイクスピアの傑作にくらべると、いささか子どもじみて見える。

たしかにこれは、「ひとつの世界」だ。





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テーマ : 映画
ジャンル : 映画

コザキユースケ、鬼より禍々しく

『NO MORE HEROES』(マーベラスエンターテイメント)

 

 

きのう「ニンテンドーダイレクト」第三回が、インターネット放送された。

脳トレ新作開発中との発表が、最大の話題かな。

 

 

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脳を鍛える新作ソフト(任天堂)

 

 

「鬼トレ」と称し、よりきびしくシゴくらしい。

脳の矯正をあきらめたオレは、関心ない。

 

 

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川島教授の診断によると、現代人は「情報中毒」。

大きなお世話だが、心当りはある。

 

 

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角まではやして鍛えねば、スマホやタブレットで毒された脳はなおらない。

あな、おそろしや。

 

 

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『ファイアーエムブレム 覚醒』(任天堂)

 

 

さて問題は、「萌えを鍛えるFEトレーニング」の方。

気になるキャラクターデザイン担当は、コザキユースケとあかされた。

 

 

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おなじくコザキによる『NO MORE HEROES』ファン仲間である、

なかじマダオ氏と喜びをわかちあおうとツイッターで声をかけた。

 

それがそうでもなくて…あの微妙にあか抜けないキャラクター達も

FEの魅力だと思っていたので少々複雑な思いが。

ゲーム全体が大きく変わってる印象なので

遊べば新生FEとして受け入れると思いますけどね。

 

あらゆるゲームに、こだわりをお持ちの様で……。

 

 

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『NO MORE HEROES』

 

 

たしかにコザキの藝風は垢ぬけている。

線がほそく、今めかしい。

でも、それだけぢやない。

 

 

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ホリー・サマーズ。

全米殺し屋ランキング七位。

おかつぱ頭の文学少女。

 

 

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でも、それだけぢやない。

 

 

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二位のバッドガール。

ロリータファッションで大量殺戮。

 

 

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須田剛一とコザキユースケ、ふたつの特異な魂が交錯し、

痛切なほど深い陰影が刻みこまれた。

 

 

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最後の敵、ジーン。

危険すぎ、うつくしすぎ、附言しようがない。

 

 

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それを口にすればCERO審査にひつかかると、本人もいう。

 

 

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ビーム・カタナで串刺しされても、破壊衝動のおさまらないバッドガール。

『NO MORE HEROES』の女は、散り際があざやか。

血のドレスをまとい、死の舞踏をまう。

 

 

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ホリーの自裁は、生涯わすれられない。

 

 

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FEの主題は、死そのもの。

マダオ師匠にはわるいが、コザキの起用は必然だ。

 

 

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情報の渦に呑まれ、脳が機能停止、魂は官能の虜。

生を軽んじ、死をもてあそぶ。

川島教授がどう抗おうが、この病は癒えない。



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テーマ : ゲーム
ジャンル : ゲーム

タグ: ファイアーエムブレム 

竹内久美子『同性愛の謎』

 

 

同性愛の謎 なぜクラスに一人いるのか

 

著者:竹内久美子

発行:文藝春秋 2012年

[文春新書]

 

 

 

 

1996年、トロント大学のブランチャードとボガートは、

男性同性愛者の家族について、厳密に調査した。

 

結論。

兄の数が多いほど、同性愛者の占める割合がたかい。

なぜか?

 

母が息子を同性愛へみちびくから。

正確にのべると、その子宮が。

 

 

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男しかもたないY染色体を、女は異物とみなす。

H-Y抗原に対する抗体がつくられる。

息子を免疫的に攻撃。

脳の細胞表面を、特に。

 

攻撃の確率は、男児をより多く身籠るほど、たかくなる。

また男がきたぞ、かかれ!

兄のいる男は、それだけ脳の男性化が阻止されやすい。

 

私事ながら、小生は男ふたり兄弟の長男。

ボクを先に産んでくれてありがとう、ママ。

 

 

 

 

 

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savv『rumgammeln』

 

 

フランシス・S・コリンズの『遺伝子医療革命』(NHK出版)に、

男性同性愛は遺伝的要因が強いと書いてあつたが、本書も同様だ。

 

パドヴァ大学のカンペリオ=キアーニらの調査によると、

男性同性愛者の母と、母方のオバは、

異性愛者のそれとくらべ、より多く子をなすとわかつた。

つまり、ホモと血縁ある女は、子沢山。

この研究は、「なぜ男性同性愛が存在するのか」という、難問への回答となる。

 

ゲイのカップルは子作りにむかない。

なのに遺伝子は淘汰されぬまま。

それは家族の女が、不利を相殺するほど、子孫をのこしたから。

 

 

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倉田嘘『百合男子』(一迅社)

 

 

また私事をのべるが、小生、同性愛に実践的関心はない。

あくまで理論上の好奇心と、強調しておきたい。

だがそれ以上に、こんな高尚と言いがたい題材を、

身を粉にして追窮する、世界中の科学者に敬服するのだつた。






同性愛の謎―なぜクラスに一人いるのか (文春新書)同性愛の謎―なぜクラスに一人いるのか (文春新書)
(2012/01)
竹内 久美子

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テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

リスベットのカーゴ

『ドラゴン・タトゥーの女』(アメリカ・スウェーデン映画/2011年)

 

 

フィンチャー版『ドラゴン・タトゥーの女』のリスベットに痺れ、

オリーヴ色のカーゴパンツがほしくなつた。

丁度1000円引きのセール中なのでユニクロに寄る。

 

 

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したら細身の「スタイルアップカーゴ」しか売つてない。

試着もせず踵をかえす。

ちかごろはスーツでもなんでも細づくりだな!

「きれいめ」つて言うのかな、流行は否定しないし、自分も着る。

もともと服に興味ないし、そういう歳でもないし、こだわらない。

 

 

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「レギュラーフィットカーゴ」

 

 

でもカーゴは、ゆつたりしてるからカッコイイんぢやないの?

そこまで人に、足が長いと錯覚させたいのか。

ヘナヘナの生地で、体の輪郭をだしてると、オカマになつた気分。

B系風にダボダボだらしないのは最悪だけど、

オトコノコが、兵隊さんみたいにラフに着こなせば、

オンナノコの胸もときめくのではと、想像する。

 

 

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まあ、映画のヒロインに影響されたオレも、人のことはいえない。

惰弱な日本男児では、束になつてかかろうと、

リスベットにスタンガン一撃でのされ、切り刻まれるだろう。



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烏丸渡『NOT LIVES』

 

 

NOT LIVES -ノットライヴス-

 

作者:烏丸渡

掲載誌:『月刊コミック電撃大王』(アスキー・メディアワークス)2011年8月号~

[単行本は「電撃コミックス」として、第一巻まで刊行]

 

 

 

 

高校生の三神シゲルは、ひよんなことから入手した、

一枚のゲームディスクの内部にとりこまれる。

 

 

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寝ぼけ眼の美少女となつて。

二十年以上、中二病とつきあつてきたから言わせてもらうが、

物語に既視感がありすぎ、まるで故郷にかえつた様な心地がした。

 

 

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この「アバター」をあやつり戦う。

娘がボソボソつぶやく。

アバターにも意思がある。

人工知能でなく、人間らしい。

2009年のアメリカ映画『GAMER』と似た趣向か。

作者・烏丸渡は、あの映画を見たのかも。

でもゲーム好きの漫画家なら、だれもが思いつき、数秒後に捨てそうな話だ。

 

 

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本作『NOT LIVES』の非凡さは、主人公の適応力にある。

前ぶれなく飲まれた異世界の構造を、いささかも動じず分析。

敵の行動パターンをよみ、防御スキルを着地にもちい、形勢をくつがえす。

 

 

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チュートリアル終了。

律動的なコマ割りが、鮮烈に異次元をきりとる。

 

 

 

 

 

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三神君がすぐ馴化したのは、天才ゲーム制作者だから。

大流行のソーシャルゲームも、彼が趣味でつくつた。

「ねーよ」とツッコミつつ、オレは思いを馳せる。

 

 

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中学生のころ想像すらできなかつたスーパーマシンが、街中にころがる。

目をうたがうほど美麗グラフィックのiPhoneアプリが、85円だつたり。

ヘタすれば無料。

ゲームの津波が、全世界に中二病を伝播する。

 

 

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近所にすむ同級生の「いつき」。

オクテな三神のため、恋愛ゲームの参考資料を、身を張つてあたえようとする。

総じて、妹キャラが好きで、幼なじみキャラが嫌いなオレも、いつきちやんはお気にいり。

ただ健気でカワイイのに、主人公の眼中にはいらない。

それは『NEWラブプラス』があれば、異性にかかわるのは億劫きわまる。

愛花、寧々、凛子。

三人のカノジョだけでも持て余してるのに、いまさら生身の女なんて!

 

 

 

 

 

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二戦目の相手は「ショーコ」。

これもアバターだ。

チアガールは定番の萌えコスだが……

 

 

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……振りまわすは、棘のはえたポンポン。

ゲームの「萌え」は、捕食者による擬態を意味する。

 

 

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黒チアガ。

ショーコは「初心者狩り」だつた。

暗転する百面相が、読者の背筋をひやす。

 

 

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テンションは天井しらず。

作者はおそらく中川翔子を意識している。

打算のもと表情筋をうごかし、フェイントをまじえ攻撃。

 

 

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反撃されると泣く。

感情、それは最強の武器。

 

 

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ショーコの背後にもプレイヤーが。

たからかな哄笑は、ショーコのものか、狙井のものか。

わからないし、かんがえるヒマもない。

分析し、適応しなくてはならない。

1フレームでもはやく。

 

 

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適者生存。

 

 

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空間が裂ける。

裏のページがみえる。

スキャンするとき破いたのではない。

ここに描かれたのは、ゲームという虚空。

 

 

 

 

 

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遙けくも来つるものかな。

『ゲームセンターあらし』から四半世紀。

ついにゲームを、ゲームとして実体化する、作家があらわれた。

烏丸渡、この名をおぼえておきたい。

……さて、『善人シボウデス』の続きにとりかかるか。







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(2012/01/27)
烏丸 渡

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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

『TIME』

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オリヴィア・ワイルド

 

 

TIME

In Time

 

出演:ジャスティン・ティンバーレイク アマンダ・サイフリッド キリアン・マーフィー ヴィンセント・カーシーザー

監督:アンドルー・ニコル

制作:アメリカ 2011年

 

 

 

 

 

心はいつも近未来!

今日も、まだ見ぬ明日に胸ときめかせ、劇場に足をのばす。

 

 

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ジャスティン・ティンバーレイク

 

 

ふたりは親子。

上が母、下が息子。

配役のまちがいではない。

遺伝子操作により、人は二十五歳を境に老化しない。

むつみあう姿は恋人のごとし。

家族愛に背徳の匂いがただよう。

『トロン:レガシー』でも熱演、いや冷演した、

オリヴィア・ワイルドの美貌は時代をこえる。

さすが近未来SFの巨匠、アンドルー・ニコル先生だ!

 

 

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サーシャ・ピヴォヴァロヴァ、ベラ・ヒースコート、アマンダ・サイフリッド

 

 

気になるあのコの、自邸でのパーティにお呼ばれ。

左から、お婆ちやん、お母さん、お嬢さん。

目移りする。

疑問が生ずる。

人が歳をとらないなら、世界の人口はどうなるの?

 

 

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社会秩序はゆるぎない。

金持ちのかわりに、貧乏人がのたれ死に。

 

 

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左腕にうかぶ寿命。

この世界にカネはない。

時間が通貨としてもちいられる。

ボクみたいな、その日暮しの人間にとり、他人事ではない。

 

 

 

 

 

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格差反対!

令嬢も銃を手にたたかう。

カエルつぽいアマンダちやんは、それなりに近未来顔だし、

近未来ヘア(またの名は「おかつぱ」)もそれなりに似合う。

 

 

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『ガタカ』(アメリカ映画・1997年)

 

 

窮極の近未来ヒロイン。

宵乃さんが先生の代表作を、「ブログ DE ロードショー」でえらんだのは、

『TIME』の公開にあわせたか、それとも例の恐るべき直感か。

 

 

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『ガタカ』はmiriさんにボロクソに酷評された。

 

これだけは言いたい。

どんなに科学が発達した未来になったって、

 

子供を産んだ女性に、その場ですぐに、

その子の寿命やらなんやらを告げる、という時代は

絶対にやって来ないと思います。いえ、来ないと断言します。

 

miriさんのブログ『映画鑑賞の記録』

 

たしかにそう思えるし、ニコ先生が叩かれてもかまわないが、

えらんだ宵乃さんの立場がない様な気もして、ボクは擁護した。

 

この映画はニコル監督34歳の初監督作で、脚本に若さが感じられます。

親が子を思う気持ちなどは、ほとんど考えてないはずです。

そういうところも、ボクは嫌いじゃないですが。

 

コメント欄への投稿

 

 

 

 

 

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あのさあ、ニコ先生。

あなた全然成長してないぢやない。

二十五歳から老いないとか、親子の若さがおなじとか。

子どもがいて、もうすぐ五十なのに、まだ妄想にかまけてるの?

擁護して損した。

 

 

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『シモーヌ』(アメリカ映画・2002年)

 

 

先生の第二作『シモーヌ』もSF。

主人公は映画監督で、アル・パチーノが演ずる。

落ち目のカントクが、理想の女優「シモーヌ」を発掘し、返り咲く話。

 

 

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シモーヌさんが完璧なのは、CGなどを駆使した、ヴァーチャル女優だから。

これもおもしろい作品だ。

そして「主演女優」レイチェル・ロバーツと、先生は結婚する。

めでたしめでたし。

いや、彼女が実在するなら、だけど。

 

 

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アンドルー・ニコル、永遠の二十五歳。

私生活まで近未来一色。

いくつになろうが、所帯をかまえようが、オトナになれない。

おしなべて男は、そういうものかな。





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テーマ : 映画
ジャンル : 映画

コメントありがとうございます!

ひさしぶりにマヌケな魚が網にかかつたので紹介。

 

もしあなたが赤の他人の写真を無断でネットに掲載しているとするならば、

この電車で寝ていて、隣に親子がいることにも気がついているか定かではない人物を

ネットでさらしているあなたの方が、マナーがなっていないように思えます。

 

名前:しゅばるべ

日時:2/16 22:11

 

なんと三重にまちがつている。

新記録だ。

ひとつづつ見てみよう。

 

 

 

しゅばるべが指摘するのは以下の写真。

 

 

残念ながら、この男どもは起きている。

大声で喚き散していた。

被写体が眠つてるなら、いくらオレでも、自分の足をうつすヘマはしない。

カメラがとらえる一瞬という永遠は、睡眠と覚醒の境界を無にする。

しゅばるべは、その事実をしらなかつた。

 

 

 

で、えつと、「あなたの方がマナーがなつてない」だつけ?

興味ぶかい発言だ。

一体オレがいつ、だれのマナー違反を指摘したのか。

記事のタイトルに「乗車マナー」と名づけただけなのに。

それをどう解釈するかは、鑑賞者次第。

写真はリアルで、世界をうつす鏡となる。

上の一枚は出来はよくないが、しゅばるべの、

他者の揚げ足をとりたがる性質を焙り出すことに、成功した。

ちなみにオレは個人的に、倫理なぞ屁ともおもつていない。

 

 

 

無断掲載がどうちやらの話は、ここで繰り返すまでもない。

関心ある向きは、以下の記事を参照するとよかろう。

「安心しろ」 「オレは性犯罪者」

あなたがオレとことなる意見をお持ちなら、メールをおくつてほしい。

カルティエ=ブレッソンから森山大道をへて空花師匠にいたる、

写真全史を否定できるなら、伏してでも教えを乞いたい。

 

 

 

何枚撮つてもオレはヘタだし、うまくなる気配すらないが、

それでも撮りつづけるし、無智な半文盲の魚群を、

もつともつと不快にさせられたら嬉しい。




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テーマ : GR DIGITAL
ジャンル : 写真

下劣な本、前川ヤスタカ『八重歯ガール』

 

 

八重歯ガール

 

著者:前川ヤスタカ

写真:藤川望 川しまゆうこ

発行:朝日新聞出版 2011年

 

 

 

 

鈴の音色のごとく可憐な、荻野可鈴の表紙にひかれた一冊。

だが読後、心に隙間風がふく。

品性下劣な本だつた。

八重歯好きの男が、「日本の八重歯文化を守る」とか大法螺をふき、

八重歯女子専門ブログを立ちあげ、八重歯ブームの旗手となる。

まあ、だれが女の歯に執着しようと構わないし、部分的に教えられもした。

 

 

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著者前川は、アメリカ社会を「歯列ファシズム」状態とよぶ。

真つ白で、一糸みだれぬ歯列でないと、人間あつかいされない。

アヴリル・ラヴィーン(カナダ出身)なぞ、吸血鬼よばわりだ。

理由がある。

皆保険が確立していない米国は、おほくの健康保険が歯列矯正に効く。

制度上有利な幼少期に、さつさとすませる。

一方で、国民の二割が無保険の国でもある。

歯並びの悪さは、貧困の象徴。

ゆがんだ価値体系が、ハリウッド映画などを通じ、各国に流布した。

 

 

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あいな(メイドカフェ店員)

 

 

たしかに八重歯は不便だ。

モノがはさまる。

歯科的観点から、矯正をすすめられるのは当然。

でも、審美的観点のみから直すのなら、「勿体ない」と言いたい。

そう前川は力説する。

 

あなたの八重歯をチャームポイントと思う人は

まだまだこの日本にごまんといます。

たまたま八重歯を肯定的に捉えるこの日本に住み、

せっかく八重歯に「なった」のですから、

海外に迎合したような理由で八重歯をなくすのは非常に惜しい。

 

ここにはウソがある。

本当に八重歯愛好者が「ごまんと」いるなら、声高にうつたえる必要はない。

人間、五体満足、すべて整うのがよいにきまつてる。

均整のとれた肉体は、機能的でかつ、うつくしい。

歯の優劣と、顔の美醜は、切り離せない。

歯列は医学的事象で、他者が口出しすべきではない。

八重歯ガールをそそのかす連中は、口腔内の疾病に責任を負えるのか?

要するに、だ。

著者とその取り巻きにとつて女は、単なる鑑賞物でしかない。

 

 

 

 

 

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1985年デビュー、「みつちよん」こと芳本美代子。

小動物的な、八重歯アイドルの代表格だ。

あかるい性格で人気を博し、息のながい藝能活動をつづけている。

1996年には、俳優の金山一彦と結婚。

 

 

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芳本美代子は後に俳優の金山一彦と結婚し、八重歯を卒業してしまいます。

そして彼女が八重歯を矯正した後、夫、金山一彦の不倫が発覚。

その相手が片八重歯の河合美智子〈16〉だったというのは何とも皮肉なことでした。

 

歯列矯正のせいで不幸になつた、といわんばかり。

治療を「卒業」と称し、別れとみなす冷酷さにも、虫唾がはしる。

女そのものより、歯の方が好きらしい。

 

 

 

 

 

他人の顔をウンヌンするのは、紳士の言動ではない。

「うつくしい」という形容詞すら、おほくの場合、非礼にあたる。

耳が痛いけれど。

オレは、女の顔についてよく書く。

書きすぎなほどで、スナップ写真まで撮る。

不躾と自覚している。

だが、この美を自分なりに表現し、共有しないわけにゆかない、

そういう変な使命感に駆られ、おそれおののきつつ、

キーボードをたたき、シャッターをきる。

 

 

『B.L.T.』(東京ニュース通信社)2010年12月号

 

 

オレは岩渕真奈を、その瞳の大きさゆえ、

 

 

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『黄色い星の子供たち』(フランス映画・2010年)

 

 

メラニー・ロランを、その顎の尖り具合ゆえ、

 

 

『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』(アメリカ映画・2004年)

 

 

エミリー・ブラウニングを、その唇の厚さゆえ、愛すのではない。

この衝動は、手のとどかぬ深淵からあふれる。

力量がたりず、うまくあらわせない。

全身全霊で斬り結ぼうが、彼女らの類い稀な個性、崇高たる美に撥ね除けられる。

それでも書く。

なのに八重歯村の村人どもときたら、犬歯がどうとか……。

心底から軽蔑する。

 

 

 

 

 

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佐倉絆(グラビアアイドル)、森実咲(BLESS)、井上ゆりか(大学生)

 

 

え、オマエは八重歯女子が嫌いかつて?

好きですよ。

すごくカワイイとおもいます。

だが男子たるもの、公衆の面前で、慾情を垂れながすのは慎むべし!




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テーマ : 美容と健康
ジャンル : 心と身体

穴熊たんち

『くまたんち』(ディンプル)

 

 

岡田武史と羽生善治の対談書、『勝負哲学』(サンマーク出版)を手にとる。

球蹴り遊びについてはこちらも一家言あるので眉に唾しつつ読むが、

将棋を指すことの峻厳と、その矢面にたつ羽生の頭脳の冴えに、唖然とする。

 

 

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「穴熊」は、玉を隅に囲う戦法。

邪道とされ、きらわれた。

もしつかえば、「田舎にかえれ」といわれた。

だが現代将棋は情報化がすすみ、台頭した若手棋士は、

かつての奇手を、新戦術としてすすんで採りいれる。

いまや穴熊は、きわめて手堅い、定跡の守備陣形とみなされる。

勝率が高まるなら、なんでもあり。

毎年あらわれる、常識をくつがえす戦法に対処するため、

七冠独占達成者ですら、日々研究に明け暮れる。

 

 

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羽生の弱点、意外にもそれは集中力。

対局中あまり深く沈潜しすぎ、狂気の淵に爪先をかけ、

「もう戻れなくなるのではないか」という恐怖におそわれる。

ブラックホールのごとき、底なしの重力から距離をおこうと、

意識的に頭のなかに空白をつくり、過度に没頭するのを避ける。

 

 

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持ち時間が1時間をきると、記録係が紙をだす。

60から1までの数字が記されている。

1分ごと、順に消す。

対局室は、ペンのはしる音しかない。

時間とともに、おのれの命が削られる。

だがタイトル戦の様な大舞台で、精神が追い詰められることにより、

重圧は感覚を研ぎすまし、潜在能力を顕在化させる。

 

 

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玲瓏。

透きとおり、しづかな心境に、達する。

雑念なく、余計な思考なく、自然にふかい読みができる。

確信し、時間をみづから統御し、勝負の場に溶けこむ。

抑圧されてるのに、自我が消え、ふわり軽く感じられる。

羽生でもめつたになれない。

だが語り口がやけに具体的で、ただの願望でなく、

実際にその小宇宙をしつているとわかる。






勝負哲学勝負哲学
(2011/10/05)
岡田武史 羽生善治

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テーマ : 将棋
ジャンル : 趣味・実用

ゲームという現実

桐谷美玲

 

映画『逆転裁判』を見てきた。

怖いもの見たさで。

原作とここがちがう、あれが出ないと、小姑じみた批判はつつしみたい。

でも真宵はダメだなあ。

かなしい過去をふりきる、底抜けの楽天性がなく、

ただウルサイだけの娘だつた。

あとはみちやんが(以下自粛)

 

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柄本明の裁判長はすばらしい。

検察官の言葉をすべて鵜呑みにし、やたら有罪にしたがる、

ゲーム内最大の強敵だが、なぜか憎めない。

あのサイバンチョそのもの。

 

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右がイトノコ刑事役の大東駿介

 

タイホくんは原作以上の活躍。

有罪判決を阻止したからすごい。

 

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左が斎藤工、右が成宮寛貴

 

法廷パートでいつもの曲がながれた瞬間、

異常に昂揚し、不覚にも涙がにじんだ。

どうみてもB級映画、もしくはそれ以下の凡作なのに。

「異議あり!」

国家権力に対しドン・キホーテ的な戦いをいどむ、

成歩堂龍一の孤独な魂がほとばしり、胸を痛切にゆすぶる。

これほどオレは逆裁が好きなのかとおどろいた。

ゲームは、心の奥底に、楔をうちこむ。

その深さは信じがたいほど。

 

 

 

 

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  • 来週木曜に3DS『極限脱出ADV 善人シボウデス』(チュンソフト)が発売される。
  • 脱出ゲームは苦手だけど惹かれる。
  •  

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    脱出ゲーは「やらされてる」気分になる。

    リアリティ皆無。

    「オレはここでなにをしてるのか」とむなしくなる。

    ゲームという存在がもつ、本質的な空虚さが、あからさますぎる。

     

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    大体、ダンジョンを探索するのがたのしいのに、なぜ脱出しなくてはならないのか?

    動機がない。

     

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    いや、あつた。

    発売前でありながら、宵乃画伯にイラストを描かせるほどの燃料が。

     

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    ファイ、このコは一体なんなんだ。

    灰色の短髪に、黒のヘアコサージュ。

    クールかつガーリッシュ。

    つめたく誘惑する。

    ちなみにデザイン担当は西村キヌ。

     

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    キャラクターがゲームのすべてぢやない。

    いや、すべてかもしれない。

     

     

     

     

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    『クリムゾンシュラウド』のプレイ画像がようやく公開された。

    3DS『GUILD01』(レベルファイブ)におさめられる、

    テーブルトークRPG風の珍品で、以前から注目していた。

    なんとキャラクターの足もとに台座が!

    度肝をぬかれた。

    そうそう、フィギュアでTRPGをあそぶと、没入感がちがうよね!

     

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    地図は手書き調。

    これは、『世界樹の迷宮』から『ラビリンスの彼方』にいたる、

    3DダンジョンRPGの流行にむけた、松野泰己の果し状だ。

    ゲームはもつと実験できるのでは、という。

     

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    「1d4+1d6+1d8+1d10+1d12+1d20」。

    ……いかん、色とりどりのダイスをみるとヨダレが。

    下画面の様だ。

    タッチまたはスライドパッドで投擲。

    みなスライドパッドをつかうだろう。

    気合いをいれるとき以外は。

    生死をかけた局面で、ひとはダイスに魂をこめる。

     

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    この世でもつともアナログなもの、それは文章。

    血だまりに横たわる男が気になる。

    でも茂みにいる曲者どもが、こちらを弓でねらう。

    どうすべきか?

    途轍もなくアナクロニスティックで、狂おしいほどアヴァンガルドだ。

     

     

     

     

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    来月発売、3DS『新・光神話 パルテナの鏡』(任天堂)のディレクター桜井政博は、

    『星のカービィ』や『大乱闘スマッシュブラザーズ』でしられる。

    理論家肌で、ゲームを論ずるのを好む。

     

    対戦のおもしろさはなぜ生じるのだろう?

    わたしは、プレイヤーとキャラクターの個性、戦法、価値観などの

    ぶつかり合いが、複雑な感情を生むのだと思っています。

     

    公式サイト「ゲームについて思うこと」

     

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    あたらしいパルテナは、ネット対戦で実験をこころみる。

    ゲームの巧い人は、われらヘボゲーマーが、

    ネットで遊ぶことにどれほど気後れを感じるか、わかるまい。

    顔のみえぬ相手に、なす術なく瞬殺される屈辱。

    人間関係が濃密で、簡単にやめられないMMORPGもこわい。

    かといつて、下手の横好きですこしはゲームをしつてるから、

    無料がウリのソーシャルなんちやらに手をだしたくない。

     

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    桜井は「天使の降臨」なる対戦モードを準備した。

    三対三の集団戦。

    敵を斃すと、相手の「チーム力」がへる。

    ゼロになると、「天使」としてプレイヤーキャラクターが再登場。

    それを斃せば勝ち。

    巧いプレイヤーは、ヘタクソな仲間の面倒をみなくてはならず、

    また情況によつては、自分が敵から逃げまわるハメに陥るかもしれず、

    逆に隙があれば、積極的にトドメをさしにゆく方が賢明かもしれない。

     

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    「イイトコ取り」は、えてして失敗する。

    でも『星のカービィ』は、フワフワ浮いてすすむだけで、

    両手をつかえる人間ならだれでもクリア可能な、類い稀なアクションゲームだつた。

    考えに考えぬいたであろうルールがどんなものか、ためしに瞬殺されたい。

    要するに、対戦より肝腎なゲームの因子はない。

    人がいるから、おもしろい。

    「空腹は最高の調味料」みたいな、陳腐な結論だけど。

     

     

     

     

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    街をあるくときも、映画館のなかでも、頭はゲームのことばかり。

    ゲームは空虚だ。

    でもこんなにリアルに、何年も何年も心に巣食いつづける。




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    『ドラゴン・タトゥーの女』

     

     

    ドラゴン・タトゥーの女

    The Girl with the Dragon Tattoo

     

    出演:ダニエル・クレイグ ルーニー・マーラ クリストファー・プラマー ステラン・スカルスガルド

    監督:デイヴィッド・フィンチャー

    制作:アメリカ・スウェーデン 2011年

     

     

     

     

     

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    北欧の陽光はよわい。

    うすぐらい。

     

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    舞台となる孤島、ボスニア湾のヘーデビー。

    撮影監督ジェフ・クローネンウェスは、デジタルカメラの「レッドワン」や「エピック」をまわす。

    ちかごろの映画は、やたら暗澹としている。

    かすかな光線をとらえる最新式カメラの、あわい絵づくりがたのしいのか。

     

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    ダニエル・クレイグが、ある失踪事件、または殺人事件の調査にやとわれた。

     

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    雇用者は、スウェーデン最大の財閥ヴァンゲル家。

    家族の、そしてヨーロッパ史の、恥部を暴かせる。

     

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    原作をよみ、スウェーデン版の映画を劇場で鑑賞し、本作も初日にみた。

    どうやらこの北欧神話を、オレは相当好きらしい。

     

     

     

     

     

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    リスベット・サランデル。

    二十四歳、腕ききの調査員。

    クレイグの助手をつとめる。

    本作一番の見どころは、彼女の髪形。

     

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    前髪はパッツン。

    後ろは切り落し、下は剃る。

    だが前側に、長めにのこしてある。

    だからモヒカンも、結うのも、ピンどめも、おろすこともできる。

    リスベットという、天使的で悪魔的な個性を、完璧にあらわす。

     

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    ソニーの映画だが、原典のマッキントッシュ崇拝は規制をまぬがれ一安心。

    リスベットがバイオをいじつたら、それは喜劇だ。

     

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    女同士のまじわりはさらりと。

    デイヴィッド・フィンチャー先生は、関心ないらしい。

     

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    くわしくは原作を読んでもらうしかないが、天才ハッカーのリスベットは、

    国から精神障害者の烙印をおされ、弁護士の後見をうけている。

    途轍もなく強い女だが、弱みをつけこまれ、強姦される。

     

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    一度目は口唇性愛の強要。

    二度目は両手両足の自由をうばつての暴行。

    犯行の手口を、つぶさにえがく。

     

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    正直さくらいしか取り柄のないブログなので、あえて書くが、

    三つめの作品でも、この場面に興奮させられた。

    四十六か国で六千五百万部も本が売れたのは、オレに似た読者が世界におほいから。

    そしてそんな自分に嫌悪をおぼえる。

     

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    本作のリスベットは、いつもフードつきの服をきる。

    オリーヴ色のカーゴパンツを買おうと、劇場でおもつた。

    原作者スティーグ・ラーソンは十五歳のとき、少女が集団に強姦されるのをみて、

    それを止められなかつたことを悔み、五十歳で死ぬまで、

    ジャーナリストとして作家として、性差別とたたかつた。

    リスベットなる架空の人格は、その情熱の結晶だ。

    しかし意地悪くいえば、原著は、強姦がウリの通俗小説でもある。

     

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    ルーニー・マーラは役にのめりこんでいる。

    オーディションは二か月半つづいた。

    綺羅星のごとき女優たちがむらがる。

    ナタリー・ポートマン、スカーレット・ヨハンソン、クリステン・スチュワートらの名があがる。

    ルーニーはひたすら、キャスティングディレクターにむけての音読や、

    クレイグやフィンチャーらをまじえたスクリーンテストをくりかえす。

     

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    ルーニーは前作『ソーシャル・ネットワーク』に出ているので、

    「地味だけど、あのコならできるだろう」と先生は確信してたはず。

    でもいじめた(詳細はプログラムに書いてある)

    オーディションとは、ある意味、レイプだ。

     

     

     

     

     

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    三十六年前の「被害者」、ハリエット・ヴァンゲル。

    演ずるのはモア・ガーペンダルだが、ルーニーのリスベットと見紛う。

     

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    フィンチャー版の主題があきらかに。

    すなわちそれは、「歴史はくりかえす」。

     

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    ジョエリー・リチャードソン扮する「アニタ」の、すべてうけいれた美しさは感動的。

     

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    白黒のオープニングシークウェンス。

    アップルのコネクタにしばられた世界。

    オレは千葉で『セブン』をみて驚嘆し、当時入れ替えはないからつづけて居座り、

    それが映画への目覚めかもしれないクチで、先生に思い入れがある。

    フィンチャー版『ドラゴン・タトゥーの女』は、『セブン』の続篇、つまり『エイト』だ。

     

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    藝術家、あるいは運動選手以外の人間の絶頂期は、四十代におとづれる。

    フィンチャー先生は四十九歳。

    あせつている。

    神になろうとしている。

    そしてある程度、それに成功している。




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    ドアは蹴破られるべきか?

    『バイオハザード4』(カプコン)

     

     

    2010年7月。

    大阪市西区のワンルームマンションで、三歳の女児と一歳九か月の男児が、

    一部白骨化した死体となつてみつかつた。

    二十三歳の母・下村早苗が逮捕され、殺人罪で起訴となる。

    母は遊びあるいていた。

    女児は部屋のゴミをあさり生きようとした。

    男児には便をたべた形跡があつた。

    隣人は、市民の義務をはたしている。

    児童相談所に三回通報があり、職員が五回訪問した。

    だが呼び鈴をならしても、応答がなければ、手も足もでない。

    オートロック式の共同住宅だと、玄関すらたどりつけない。

    マンションの管理会社も、えてして非協力的だ。

    (この事件で、職員はすり抜けてオートロックを突破したが、

    残念ながら異音を確認できず、二児をすくえなかつた。)

     

     

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    2011年、居住不明の子どもの数は、前年比3.6倍となつた。

    これまでの調査がいかに杜撰かわかる。

    政府は、子どもの居場所を把握しているつもりだつた。

    厚生労働省は2010年にあわてて、

    全国の児童相談所への虐待通告をたしかめた。

    三か月間で13469件。

    うち238件は、安全確認どころか、住所特定もできていない。

    子どもが泣き叫んでいる。

    でもどこにいるか、わからない。

     

     

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    行政になにも期待してはいけない。

    ない袖はふれない。

    下村は結婚後、四日市、菰野、桑名、名古屋、大阪と移り住んだ。

    転居届は、出したり出さなかつたり。

    日本国の認識において、二児は桑名市民だつた。

    行政機関は連携しない。

    たとえば東京都で、児童相談所を管轄するのは「都」、

    住民登録を管理するのは「区市町村」。

    だれが、どこにいるのか。

    ウィークリーマンションか、カプセルホテルか、ネットカフェか。

    児童相談所の人員をふやせば?

    ……勿論、つけ焼き刃の対応でふやしている。

    観光課や下水課にいた職員を異動させたり。

    ただ児童福祉はうかつに扱えない仕事で、一人前になるのに五年かかる。

     

     

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    権限を強化すれば?

    ……すでに2007年、児童虐待防止法を改正してある。

    「臨検」、つまり鍵をこわしてでも突入する調査をみとめた。

    だが実施数は、08年度2件、09年度1件、10年度2件の合計5件のみ。

    なぜか?

    イヤだからだ。

    怖いからだ。

    徒手空拳でドアを蹴破る身になつてみろ、つてこと。

    そもそも児童福祉司は、虐待の専門家ではない。

    非行、発達相談、貧困、障碍、不登校、引きこもり、家庭内暴力、よろづあつかう。

    裁判所に令状請求するには時間がかかる。

    親をおだて、なだめすかして、ドアを開けさせた方がはやい。

     

     

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    人はだれでも、家族のことで感情が剥き出しになる。

    一番、ヨソモノにふれられたくない。

    面接中に激昂し、殴りかかつてくる親もいる。

    家庭訪問で、児童福祉司に灯油をかけ、火をつけようとした者も。

    子を虐げる人間が暴力的なのは、当然かもしれないが。

    それでも福祉の領分は、福祉。

    たとえ相手が犯罪者だろうと、差別せず支援するのが役目。

    警察にはできない、複雑で繊細な仕事だ。

     

     

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    下村は、ブログをやつていたらしい。

    孫引きで恐縮だが、引用しよう。

     

    S子(著者注・長女、原文では実名表記)が

    無事産まれてとなりにいて、そしておなかの中には赤ちゃん。

    ふたりめってこともあるのかな?

    気持ち的にはだいぶゆとりがあってつわりが軽いから今、

    妊婦生活がとても楽しい。

    というか幸せに思う。

    これってわたしも母親として少しは成長できたんだろうか。

     

    成長は十分でなく、二年後、わが子を置き去りにする。

     

    自分の家族を、できれば友人も、幸福にできればよいのではないか?

    それすら困難な時代だから。

    どこかの家で、汚物にまみれ、だれがどうなろうと、しつたことか。

    これがわれらの愛する、うつくしい国日本の、現在だ。







    以上の記事は、石川結貴『ルポ 子どもの無縁社会』(中公新書ラクレ)を参考に書きました。



    ルポ - 子どもの無縁社会 (中公新書ラクレ)ルポ - 子どもの無縁社会 (中公新書ラクレ)
    (2011/12/09)
    石川 結貴

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    テーマ : 政治・時事問題
    ジャンル : 政治・経済

    ガンテツ/田中芳樹『タイタニア』

     

     

    タイタニア

     

    作画:ガンテツ

    原作:田中芳樹

    発行:講談社 2008-11年

    [シリウスKC]

     

     

     

     

    いまさらガンダムや銀英伝をありがたがるなんて、アナクロニズムだ。

    自戒をこめていうが。

    たとえば、このスペイスオペラの『タイタニア』はどうか。

     

     

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    貫禄うすいバンダナ男が、ファン・ヒューリック。

    強大なタイタニア軍をやぶつたのに、自分を司令官に任じた市長におこられる。

    形だけの衝突を演じ、敵に勝たせるという密約が台無しだから。

    タイタニアの逆鱗にふれたヒューリックは、エウレヤ市から追放の憂き目に。

    かのヤン・ウェンリーも卑怯な政治家に足をひつぱられたが、

    さすがに命からがらの戦勝のあと、「なぜ勝つた!?」と責められはしなかつた。

    政治の優位。

    それが『タイタニア』だ。

     

     

     

     

     

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    ヒューリックの軍師、ドクター・リー。

    博士号をもつだけあり、含蓄あるセリフをはく。

     

    天才によってもたらされた変革も

    その永続は無数の多数派にかかっている

    この多数派を社会において形成できねば

    歴史が変わるなど一瞬の夢想にすぎない

     

    軍事は、よくもわるくも純粋すぎる。

    政治という濁水でうすめねば、だれの口にもあわない。

     

     

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    タイタニアは、帝国ではない。

    領地すらもたない。

    私的な軍事力を背景に、星間航路における通行税をあつめ、

    その莫大な富で、つねに圧倒的規模の艦隊を持する。

    事実上、宇宙の全権を掌握。

    聡明なジュスランが、反タイタニアの謀叛の芽を、

    未遂のまま刈りとる策を、藩王アジュマーンにさづける。

     

     

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    プランA、プランB、プランC。

    とわれて即答できぬ頭脳では、タイタニア公爵はつとまらない。

    田中芳樹の小説はセリフ回しが格調たかく、

    まるで戯曲の様で、映像ばえする。

     

     

     

     

     

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    タイタニアだけで二万隻を動員した、本作最大の戦役。

    あまりに戦力差がありすぎ、艦隊戦がおこなわれず、

    「いんちき戦争(ボニー・ウォー)」なる、しまらぬ名がつく。

     

     

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    敵国を制しても、仇のヒューリックは、死体の姿でさえ、あらわれない。

    すたこら逃げたから。

    呆然とするアリアバート。

    タイタニアの将は、外交のテイブルでたたかうことを強いられる。

    机上でもつよいが。

     

     

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    陰気で、心が昂揚しない。

    戦闘というより治安維持活動。

    怜悧な人格者アリアバートも愚痴ばかり。

    銀英伝のラインハルトは、内政や外交に無関心でないが、

    軍事上の目的達成のための道具とみなしがちだつた。

    ヤンは政軍分離にこだわり、結果、寿命をちぢめた。

    ガンダムは本質的に子ども向けアニメで、

    ザビ家の権力闘争なぞ、巷の兄弟ゲンカよりたわいない。

    まつりごとは陰鬱で、コドモにはわからない。

     

     

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    またもヒューリックの罠が炸裂。

    しづかな政治の大海に、姦計で波乱をおこす。

    宇宙の無敵艦隊を、海底にしづめる。

    ひろがる波紋。

    くりかえされる歴史。

     

     

     

     

     

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    タイタイニア五当主のひとり、猛将ザーリッシュ。

    ところで架空戦記ものは、ある種の滑稽さをともなう。

    天才戦略家が、ただの「後出しジャンケン」にみえるという。

    ……グーを出しかけるヤン、それを読みパーにするラインハルト、

    しかしそれは見せかけで、ヤンが出したのはチョキだつた!

    くだらない。

     

     

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    ゆえに、男の生き様をどう描くかという点で、作家の力がとわれる。

    ザーリッシュは乗艦に、愛人を群れごと引きつれる。

    遠慮なく銀河を横行し、鼠賊を蹴ちらしては、勝利の興奮のまま美姫をだく。

    「男と生まれたからには、あのようにありたい」と、

    部下は主君の、おのが衝動に忠実なふるまいに心酔する。

     

     

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    相続あらそいで支援をもとめ、ジュスランにちかづくテオドーラ。

    一番すきな場面。

    面とむかい、こうあけすけに告白されたら、ボクなら動揺する。

     

     

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    冷静沈着。

    テオドーラの思惑などお見とおし。

    イドリスに体を売らなくとも、政敵にその醜聞を売ればよい。

    ひよつとするとジュスランが妬心をおこし、

    さらなる高値で自分を買うかもしれない。

    オークション参加者は、多ければ多いほどよい。

    「俗性の最たる集団」では、ひとが後ろ暗い本能をもつのは当然で、

    他者の欲望をみづからの欲望の燃料にかえ、生存をはかる。

     

     

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    落札者はイドリス卿。

    ベッドの上の艦隊戦をおえ、シャワーをあびたテオドーラ。

    「まだ髪が濡れていますわ」の、こまつた様な、

    小馬鹿にする様な面持ちがたまらない。

     

     

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    肉体という固定資本を元手に、着々と生産活動を拡大するテオドーラ。

    寝室から、宇宙を掻きまわす。

    「敵をつくらない」が、古今東西の政治の鉄則だが、

    つつしみぶかいジュスラン卿はまちがいを犯したかもしれない。

     

     

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    ジュスランは侍女フランシアと情を通じる。

    タイタニアの血をひく女だが、身分はひくく、真剣な交際といえない。

    たがいに慈しみあうが、たがいに利用しあつてもいる。

    どこか冷めている。

    戦場同様、閨房でのふるまいも、個性がでる。

    背中のファスナーをあげる手つきに、上品なみだらさが。

    漫画家ガンテツは、三年半の連載で腕をあげた。

     

     

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    小国エルビング王国の王女リディア、十歳。

    国が財政破綻し、借金のカタとして「天の城(ウラニボルグ)」におくられた。

    欲望と陰謀と横暴ですさんだ『タイタニア』世界で、清涼剤の役をはたす。

     

     

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    さつそくお菓子で懐柔されるが。

    タイタニアからみて吹けば飛ぶ様な辺境の王族が、

    ことさら高飛車にふるまうのは、

    自分の言動が祖国の浮沈に影響するとしつているから。

    宇宙の支配者に礼をもとめ、国家安寧をたしかにする。

    体を売らないだけで、テオドーラとかわらない。

    十歳の少女すら、斯様に計算だかい。

    それが未完の傑作『タイタニア』だ。






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    テーマ : 漫画
    ジャンル : アニメ・コミック

    タグ: 田中芳樹 

    阪口夢穂、夢をつないで

    2010年アジア大会

     

     

    カメラマンでもある早草紀子の『紡 -TSUMUGI- なでしこジャパンを織りなす21の物語』

    (武田ランダムハウスジャパン)をよんだ。

    ワールドカップ・ドイツ大会にでた二十一人全員のインタヴューをあつめたものだが、

    ひとつの名がくりかえし、他者の口から発せられるのに気づいた。

    阪口夢穂(みずほ)、二十四歳。

    まるで車輪のハブが、車軸とスポークをむすぶかのごとく。

     

     

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    ドイツ大会決勝、延長後半。右の6番が阪口

     

     

    ちかごろ聖人に列せられた澤穂希はこういう。

     

    あとはミズホ(阪口夢穂)の存在も大きかったかな。

    彼女の能力はスゴイ!

    一度ミズホと組むと、その魅力のとりこですよ(笑)。

    (略)

    ミズホがいなければ私のMVPもなかったのではないでしょうか。

     

    最大級の讃辞とは、まさにこのこと。

     

     

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    INAC神戸の田中明日菜は、阪口を「師匠」とよんで慕う。

    歳はひとつした。

    試合で「こんなうまい子が女の子でもおるんや」と衝撃をうけ、

    小学時代はサウスフリーウインドFC、

    中学時代はラガッツァFC高槻スペランツァと、みーちやんを追つかける。

    高校卒業後はTASAKIペルーレ、そして代表。

     

    小さい頃からの友達だけど、いつも、いつも私の前を走っていて、

    私はどんなときでもミズホちゃんの後を追い続けていれば良かったんです(笑)。

     

     

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    AFC U-19女子選手権

     

     

    阪口自身の話もおもしろいが、関西人ゆえ、どこまで本音か量りづらくもある。

    ただ、2009年の負傷についての語り口はしのびない。

    左膝前十字靭帯断裂。

    引退を覚悟しただけでなく、とにかく痛みがひどく、それが延々つづいた。

    試練の一年間で、堺の女は、サッカーへの愛を再認識した。

    ありふれた美談だ。

    地獄から這いでた少数者だけが話すことのできる。

     

     

     

     

     

     

    阪口の兄・憂也は、chaqqというバンドのドラマー。

    まつたくしらなかつたが、この『RUNNER』、よい曲だ。

     

    不安さえ 熱にかえるよ

     

    さあ くじけそうになつたつて

    転びそうになつたつて

    いいさ 進むんだ

    そう 答えなんかなくたつても ほら

    歩けるから 先めざして

     

    (引用者の聞きとりによる)

     

    一流の運動選手の兄弟がミュージシャンだなんて、めづらしくないか。

    いわゆる体育会系とことなる血が、おそらく彼女にながれる。

     

     

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    『報道ステーション』

     

     

    W杯優勝後、化学メイカーにフルタイムで勤務する阪口の姿が、

    これまた美談として報道された。

    「アホくさ」とおもつたろう。

    口では「全然大変とおもわない」「アルビレックス新潟で優勝したい」と言いつつ、

    先月、日テレ・ベレーザとプロ契約をむすんだ。

    勿論それは、わるくない。

    澤なぞ、手下三人ひきつれ亡命し、古巣を崩壊させかけた。

    それが運動選手の当然の営為と信じるなら、それでよい。

    裏切られたこちらは一生、許さないというだけ。

    夢をおう人間は、世界を敵にまわしても、なすべき決断がある。

     

     

     

     

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    みーちやんに直接関係ないが、ぶつちーのことも一言。

    『紡』という本は看板に偽りがあり、ひとりだけインタヴューを拒否された。

    最年少の岩渕真奈。

    あいかわらずの独立独行。

    今季、どんなパスとドリブルが、日英の青芝を切り裂くのだろう。





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    テーマ : サッカー
    ジャンル : スポーツ

    『ペントハウス』

     

     

    ペントハウス

    Tower Heist

     

    出演:ベン・スティラー エディ・マーフィ アラン・アルダ ティア・レオーニ

    監督:ブレット・ラトナー

    制作:アメリカ 2011年

     

     

     

    分類すれば「犯罪コメディ」になるかな。

    ウィキペディア英語版にもCrime comediesなるジャンルが)

    エディ・マーフィとベン・スティラー、二大喜劇王の競演をたのしみたい。

     

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    ムショを出たばかりのマーフィが、早速しやべくり倒す。

    「アーッ、オマエは痙攣君か!」

     

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    「小学校でよく痙攣おこしてたな!教室のど真ん中で椅子ごとブッ倒れて」

    「いや」

    「でもつて、こんな風に口からブクブク泡ふいてさ。みんなビックリだぜ」

    「いやいや」

    「まつたく、授業中でもおかまいなしだもんな。超キモかつたぞ!」

    「いや、だから」

    「しかもよ……」

     

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    「だから!喘息だつたけど、痙攣はしてない!」

    ボクは口数がすくないタチなので、

    あの舌の高速回転は、おなじ人間とおもえない。

     

     

     

     

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    標的は、マンハッタンの高級マンション最上階にすむ大富豪。

    屋上には温水プールが。

     

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    人あたりよく、下々の者にやさしい。

     

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    実は融資詐欺師で、スティラーらのなけなしの金をむしりとつた。

    アラン・アルダが人格の裏表をたくみに演じる。

     

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    レゴで練る犯罪計画。

    NASDAQ会長だつたバーナード・L・メイドフによる詐欺事件や、

    「ウォール街を占拠せよ」運動などを、脚本は反映する。

     

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    FBIも見のがした、壁に埋めこまれた金庫。

    だがその中身は……。

    ところでデモ参加者たちは、「われわれは99%だ」と合唱する。

    のこりの1%が、合衆国総資産の35%を独り占め。

    ボクもそれは残念におもうが、結局のところ、この映画の本質とかかわりない。

    だつて、入れるものなら、だれでも「1%」に入りたいよね!

     

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    ガボレイ・シディベ

     

    つまり映画は、欲望を肯定する。

     

     

     

     

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    マンハッタンを疾走するスティラーに、うつくしいラリアットがきまる。

     

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    FBI捜査官役のティア・レオーニ。

    東海岸の空にはえる。

     

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    バーですこしだけよい雰囲気に。

     

    ベンとは2回目の共演(96年の『アメリカの災難』以来)で、

    彼と一緒に演技をすると、必ず役になりきれるから不思議ね。

    前の共演ではキスシーンもあったから、私たちは親密な関係なの。

    ちなみに私が映画で経験した最高のキスの相手は、ウディ・アレンだったわ(笑)。

     

    映画プログラム

    取材・文:斎藤博昭

     

    ウディ・アレンとのキスが、最高の思い出。

    生粋のニューヨーカーなのだろうな。

     

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    監督をふくめ、スティラー、マーフィ、アルダ、レオーニ、ブロデリック、シディベと、

    これでもかとNY出身者でかためたNY映画。

    むせかえるほど、あの街の匂いがたちこめるが、でもヨソモノを排除しない。

    居心地がよい。

    ことさらにNY愛を訴えないけど、まるで隠せてない。



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    テーマ : 映画
    ジャンル : 映画

    月曜のゴヤ

    フランシスコ・デ・ゴヤ『着衣のマハ』(1800-07年)

     

     

    「マハたん」などと、ネットスラングで呼びたくなる。

    端正で、愛嬌があり、しかも頽廃の気配まで。

    よくしらない画家だが、国立西洋美術館の『ゴヤ 光と影』展で、

    形と色彩がおりなす世界にひきずりこまれた。

    『着衣のマハ』は、『裸のマハ』のレプリカとして、いそぎ制作されたとか。

    筆づかいは粗雑。

    ヴィーナスとかジプシー女とか、さまざまに解釈されてきた。

    いまは匿名性こそに意味があるとみなされる。

    西洋美術を、自分の言葉でかたるのはむつかしい。

    おさない頃からしたしむ、漫画やゲームならわけない。

    それすら、2ちゃんねる用語など、手垢まみれの語彙にたよる者が多いけど。

     

     

     

     

     

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    『ロス・カプリーチョス』40番「何の病気で死ぬのだろうか」(1797-98年制作/1799年初版)

     

     

    くみしやすげな版画から手をつけよう。

    ロバの医師が診察する。

    右手(前足?)には大きな宝石。

    スペインの民衆に根づよい、尊大な医者たちへの不信がつたわる諷刺画だ。

    啓蒙主義者ゴヤは、近代医学が浸透しない、母国の後進性をからかう。

    う~ん、どうも話が講義風、もしくはNHK教育風に。

     

     

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    『戦争の惨禍』7番「なんと勇敢な!」(1801-14年制作・1863年初版)

     

     

    スペイン独立戦争に材をえた連作。

    フランス軍の攻撃にたおれた男らにかわり、

    大砲をうちサラゴーサの城門をまもつた、アグスティーナなる女の逸話にもとづく。

    英雄的だが、尻がこちら向き。

    味方の死骸をふみつける。

    かわき、さめた空間。

     

     

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    同37番「これはもつとひどい」

     

     

    マドリード郊外で虐殺された村人のひとり。

    枯木が、股間から首元までつらぬく。

    ただし造形は、青年期のゴヤがイタリアで素描した、

    『ヴェルヴェデーレのトルソ』の引用。

    死体損壊は、人の罪のなかで、十指にはいるほど重い。

    でも藝術家は、醜悪さに美をみる。

     

     

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    『闘牛技』20番「マドリード闘牛場でファニート・アピニャーニがみせた敏捷さと大胆さ」

    (1814-16年制作/1816年初版)

     

     

    闘牛はスペインの恥だ。

    当時すでに進歩派から軽侮されたし、当然ゴヤも否定的だつた。

    だがそれはタテマエで、画家はこの競技を心底で愛したろう。

    闘牛は藝術だ。

    影すらうつくしい。

     

     

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    同21番「マドリード闘牛場の無蓋席でおこつた悲劇と、トレホーン市長の死」

     

     

    狂える猛牛の角が、市長の胴を串刺しに。

    なんと野蛮な文化か。

    そしてなんと均整のとれた構図か!

    観客は悲劇をのぞむ。

    眼前の恐怖と渾沌も、演目の一部にすぎない。

     

     

     

     

     

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    『アルバ女公爵と「ラ・ベアタ」』(1795年)

     

     

    くせのある黒髪の女公爵が、サンゴの魔除けで、召使いをいじめる。

    「ラ・ベアタ」は、いわば信心ババアで、十字架をにぎり震えあがる。

    新旧の宗教観が衝突。

    アルバ女公爵の寵愛をうけた画家は、左の陣営に属す。

    しかし視座は中立にみえる。

    斜め上にむけた尻は、悪徳をほのめかす。

    ゴヤの精神には、矛盾があつた。

    いや、そんな常套句をのべてもしかたない。

    内面に複雑性のない藝術家なぞ存在するか?

    『日曜美術館』の退屈さを笑えない。

     

     

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    『ガスパール・メルチョール・デ・ホベリャーノスの肖像』(1798年)

     

     

    ホベリャーノスは有力な政治家で、博識の啓蒙主義者だつた。

    ゴヤのあたらしさを理解し、庇護者となつた。

    典型的な肖像画とちがい、勲章のたぐいを一切つけず、くつろぐ。

    智恵の女神ミネルウァの彫像が、雄弁に主題をうたう。

    すなわちそれは、藝術と学問と政治の夜明け。

    ゴヤは古典であり、前衛でもある。

    ……ダメダメ、この程度なら姜尚中でもいえる。

     

     

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    『レオカディア・ソーリャ(?)』(1812-14年頃)

     

     

    画家は妻ホセファの死後、家政婦レオカディアと内縁関係をもつ。

    四十も年下だつた。

    しみじみと情趣にとむ一枚。

    わかく秀麗な女をわがものとするウキウキ感はない。

    娘もできたのに、ふたりの生活は幸福でなかつた、という證言も。

    ゴヤの絵には、宙吊りの不安がある。

    月曜日の憂鬱に似ている。

    浮き沈みはげしい週末の衝動が、ありきたりの平日に収斂してゆく。

    「月曜美術館」、それがゴヤの画業だ。

     

     

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    月曜休館だから、入場もできない。





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    苑田 謙

    苑田 謙
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