『挿絵画家 アーサー・ラッカムの世界』

 

挿絵画家 アーサー・ラッカムの世界

 

発行:新人物往来社 2011年

 

 

 

たしか『不思議の国のアリス』は、主人公の髪や服について触れてない。

アリスに、水色のワンピースをきたり、金髪碧眼である義務はない。

 

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(七歳のアリス。キャロルが撮影したもの)

 

ルイス・キャロルが偏愛したアリス・リデルちやんが、

そもそも別人といえる容姿の持ち主だから。

慎重な著者は、挿絵をかくジョン・テニエルに対し、

リデル嬢になぞらえないよう注文した。

 

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四十二年後にあらわれた、わがまま少女。

テニエルのアリスは想像の産物だが、

アーサー・ラッカムのアリスは、ドリス・ドーミットというモデルがいる。

酷評された。

やせつぽちで、たよりなげで、

変哲ないイギリスの中流階級の娘そのもの。

ボクはすきだけど。

宵乃さんのブログの拍手ボタンをおすと出てくる、

ショートカットのアリスも、すぐれた解釈のひとつとして挙げておこう。

 

 

 

 

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ラッカムは著者バリの指名で、『ケンジントン公園のピーター・パン』の挿絵をうけもつ。

1906年のことで、シリーズ初の挿絵画家となつた。

大人にならないのがピーターだが、見た目は生後一週間のまま!

永遠の乳児が、大空であばれる。

ディズニーアニメに洗脳されているので衝撃だつた。

 

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『夏の夜の夢』。

シェイクスピアははづせない。

アテネちかくの森。

浮気草の汁の影響で、求愛されたヘレナがとまどう。

沙翁の戯曲は偉大なものばかりだが、

嵐で遭難したとか、薬で心がわりしたとか、無理な筋書きが多い。

浮気も裏切りも当然な、近代人が異常なのかな。

しかしこの一枚はうつくしい。

エリザベス朝演劇と、近代文明を、違和感なくつなぐリングだ。

 

 

 

 

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ラッカムはバイロイト詣でをするほど、ヴァーグナーにいれこんだ。

1910-11年に、二巻本の『ニーベルングの指環』を出版する。

黄金の林檎をつむ、美の女神フレイヤ。

崇高だが、傲慢そうでもある。

 

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ヴァルハラに入城する神々に、黄金をかえせと怒る、ラインの乙女たち。

『指環』の神は相当ワルなのだが、この水したたる美女も、

世界が瓦解するきつかけをつくつたので、同情ばかりしてられない。

 

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序夜があけた第一日、ヴァルキューレの長姉ブリュンヒルデが降臨。

壮大すぎる神話の鍵をもつ。

個人的にヴァルキューレといえばナムコのゲームだが、

富士宏は、ラッカムの絵をもとに造形したのか?

検證可能な資料は手もとになく、無智な自分が歯がゆい。

 

 

 

 

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「パンドラの箱」をあけたパンドラちやん。

子ども向けの本に、こんなあでやかな裸体を載せるなんて。

ラッカムの画業は、リアリズムに裏打ちされたファンダジーの価値をおしえる。

それは、ディズニーやジブリの陳腐な紙芝居に毒されたボクらが、

とつくになくしたファイナルファンタジー。

「希望」をとりもどすため、もつと勉強したい。





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(2011/05)
新人物往来社

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