濱元隆輔『サユリリ』
サユリリ
作者:濱元隆輔
掲載誌:『Comic REX』(一迅社)2010年8月号~
[単行本は「REXコミックス」として、第一巻まで刊行]
「魔法」つてのが、あんま好きくない。
物理法則の信奉者なので。
ウィザードリィ系のゲームでパーティをくめば、自分の形代はいつも戦士。
魔法は、ファンタジー世界の必要悪とおもう。
だから魔法使いにも冷淡に接している。
どれほどかわゆかろうと。
そう、どれほどでも。
『サユリリ』は、魔法少女ふたりの物語。
濱元隆輔は『ぷちえう゛ぁ』の作者であるせいか、
ドイツからきたツンデレ魔女つ娘・リリィの造形に、
そこはかとなくアスカの影がさす。
普通の娘が、コンパクトやらなにやらで華麗に変身!
……てのが魔法少女ものの慣例で、本作でも踏襲されている。
あまりに凡人すぎ、ときにイラつく。
さゆりの「使い魔」、ピコリン。
戦闘・索敵・兵站……ありとあらゆる局面で役にたたぬ、完全なるペット。
リリィの使い魔は、大柄なツァッケン。
執事ブーム(?)を反映した風貌だが、すこしこわい。
以上が、『サユリリ』の基本設定。
様式やマーケティングにしたがいつつ、はづしている。
すごくおもしろい。
でもそれだけでは、大のオトナが論ずべき作品にならない。
ワコムの液晶ペンタブレットを宣伝するための動画。
左利きの濱元が、さゆりとリリィをかく手順を、まるごとみれる。
ComicStudioで線をおこし、ベタをぬり、Photoshopで彩色。
ペンが走りはじめてすぐ、つぶらな瞳があらわれ、
レイヤーが幾重にもかさなり、しまいに水晶体が発光する!
三倍速で十五分。
長いのか、短いのか。
白と黒で、空間をねじまげ、時間をうみだす。
夜空にぽかりと英字がうかぶ。
ゲーム的な描写だ。
白地に黒で、「The RUINED BUILDING」。
廃墟の異容を、簡素につたえる。
百合の殿堂、一迅社ならではの場面も。
洗面器でくつろぐピコリン。
摩訶不思議な世界。
『サユリリ』は、「漫画」という謎めいた黒魔術を、
最新版にアップデイトさせる、愛らしい実験作だ。
![]() | サユリリ 1 (IDコミックス REXコミックス) (2011/10/27) 濱元 隆輔 商品詳細を見る |
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