勝者は王

 

 

 

毛沢東は「七割がよく、三割が悪い」ことになつている。

1980年代前半に、共産党がくだした評価が定着した。

遺体は、天安門広場にある廟で見られる。

2001年には、紙幣の肖像もひとりだけに。

 

 

毛の残忍さは、支那の日常会話まで害をなす。

あらゆる社会的活動は「キャンペーン」、競争は「闘争」と称される。

論争に勝てば、「敵を撲滅した」と評価される。

勝者は王で、敗者はみな悪党。

支那の伝統のうち最悪のものが、増幅され社会に根をおろした。

(リチャード・マグレガー『中国共産党』(草思社)による)

 

 

毛はマルクス主義者では全然なかつた。

マルクスを読んだことすらない。

教養ゆたかで、偉大な詩人でもあるが、外国文化に疎かつた。

1927年に暴動をおこすも、たちまち国民党軍に敗れ、

敗残兵千人をつれて井崗山に立て籠もる。

山間僻地の根拠地で軍事力を養つてから、勢力範囲をジワジワひろげようとした。

『水滸伝』の梁山泊にそつくり。

都市の労働者を組織すれば、資本家を打倒できるとマルクスは夢みたが、

それとは趣きがことなる、いやむしろ正反対か。

 

二十世紀というのは、世界の多くの地域で近代的な社会の仕組みがだんだんにでき、

自由だとか人権だとか民主主義だとかいう考えかたが、無意識のうちにも、

また多少なりとも、人々の頭に浸透してくる時代なのであるが、

中国という所だけはそんな歴史の進展からポッカリと取り残されて、

とんでもない暴れ者が現れたらずいぶん思いのままに引っかきまわせる、

五百年前、千年前と変りのない社会なのだった、

だからこそ毛沢東が暴れられたのだ、ということである。

 

高島俊男『中国の大盗賊・完全版』(講談社現代新書)

 

毛沢東の死から半世紀以上すぎた。

西側諸国は没落し、支那が台頭した。

共産党の弾圧は、より巧妙に、狡猾になつた。

支那の経済発展は急激すぎて、世界を不安定にしている。

しかし、その成長がとまつても、混乱をまねくだろう。

赤いブラックホールが、二十一世紀を飲みこみつつある。





中国の大盗賊・完全版 (講談社現代新書)中国の大盗賊・完全版 (講談社現代新書)
(2004/10/19)
高島 俊男

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『やがて来たる者へ』

 

やがて来たる者へ

L'uomo che verrà

 

出演:グレタ・ズッケリ・モンタナーリ マヤ・サンサ クラウディオ・カザディーオ

監督:ジョルジョ・ディリッティ

制作:イタリア 2009年

 

 

 

モンテ・ソーレ、太陽の山。

ボローニャにちかい山間部の農村でおきた、1944年の出来事をえがく。

 

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ロベルト・チマッティによる撮影がすばらしく、

地理と歴史に不案内なボクを、さりげなく舞台にいざなう。

主人公は、八歳のマルティーナ。

聴唖者なので苛められている。

 

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顔を足蹴にされたり。

 

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アルバ・ロルヴァケルとラウラ・ピィツィラーニ

 

これは姉さんらの、愛情表現だけど。

精確にいうと叔母。

タラちやんが、ワカメちやんに遊ばれている都合だ。

アルバ・ロルヴァケルはお気にいりに。

山村に我慢ならず街へ奉公にでるが、そこにも居つかずフラフラ。

けだるく無頓着な佇まいにひかれた。

むかしの家族は、いろいろ複雑だつた。

 

 

 

 

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『EQUIPE DE CINEMA』No.184

 

当時イタリアは分裂していた。

北からファシスト軍とドイツ軍が。

南から連合国軍と、それに呼応したパルチザンが蜂起する。

不幸にもマルティーナの村は、争地となつた。

全プレイヤーが涎をたらす。

 

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SSも悪魔ではない。

 

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口がきけないマルティーナは、善悪の判断をくださない。

ただつぶらな瞳でみつめる。

 

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パルチザンが、ヒトラーの親衛隊を殺す。

英雄的ではない。

 

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かすかにかなしげ。

兵士は悪魔ではない。

ただそれに似た生き物、つまり人間だというだけ。

 

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わかい叔母のマリアは、村に恋人がいた。

頑迷な母の目を盗み、逢瀬をかさねる。

 

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牧歌的な愛の風景も、1944年から歴史となつた。

大戦は、津波のごとく世界をかえた。

その勢いの激しさを、言葉にできるものか?

 

 

 

 

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九月二十九日の「マルザボットの虐殺」の犠牲者は、七百七十一人にのぼる。

劇中で、少女の家族はほとんど死ぬ。

已むを得ない面もある。

そこは戦略的にゆづれない土地で、パルチザンの攻勢は活発だ。

あくまで匿うなら、全村民を始末したくもなる。

また味方の連合国軍が、非正規軍であるパルチザンを支援しなかつた。

SSは幼児も殺した。

だが生かした方が、もつと残酷なのも事実。

要するにわれわれは、そういう時代に生きている。

 

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うまれたばかりの弟を守るマルティーナ。

 

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人間の邪悪さを煎じつめた物語のなか、

彼女だけひとり、聖母マリアのごとく無垢で、英雄的だつた。

世界は醜い、でもだからなんだと言うの?

八歳の少女にまで母性をもとめるなんて、イタリア男つてのは……。



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