『現代日本の美術 2011』

美術の窓の年鑑 現代日本の美術 2011

 

責任編集:月刊「美術の窓」編集部・高山淳

発行:生活の友社 2011年

 

 

 

昨年開催された公募展・個展・グループ展などでみた六万点の作品から、

五百六十名の新作をあつめた年鑑。

いやでも、美術界の全貌がみえてくる。

 

會田雄亮『練上花器(キャニオン夕映)』〈撮影:渡辺直〉

 

東北芸術工科大学名誉教授、八十歳。

上の花器は、地元山形での個展に出品された。

「練上げ技法」による色彩の偏移が水際だつている。

練りこみ、かさね、ワイヤーでうすく切り、型にはめ……という、

この技法にかかる手数を紹介するサイトがある。

本作は、渓谷の地層をおもわせる連作のひとつ。

花を生けたらどんな風景があらわれるのか?

 

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峯田義郎『塔のある街』

 

白日会常任委員、東北芸術工科大学大学院教授、七十四歳。

着彩した楠の彫刻。

架空の街だろうか。

屹立する塔は教会を連想させ、秩序をもたらす。

だが断崖は要塞の様で、混沌の兆しもある。

塔のある街。

おなじく白い東京スカイツリーも、そろそろ竣工するらしい。

 

 

 

 

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青柳ナツエ『若菊』

 

日本美術家連盟会員、五十八歳。

絵画であれば、やはり女性像をみたい。

茶髪のわかい女が、大振袖をきたまま足をくづす。

背景は、屏風などの作品の一部か、想像のものかはつきりしない。

和服を着なれぬ風情が、乱れ咲く花の印象をつよめ、陶然とする。

ちなみに青柳ナツエは、今回とりあげた作家の最年少。

 

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芝教純『ア デイ イン ザ ライフ』

 

一水会会員、六十二歳。

娘、孫、息子の嫁。

おもわず作者との続柄を忖度するが、わからない。

何歳にもみえる。

くつろいだ部屋着姿だけど、ここ数年の日本のファッションと一目でわかる。

誰でもあつて、誰でもない。

窓の光が、肌色と呼応し、なぞめいた空間を演出する。

 

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原紀久子『ある日』

 

蒼樹会会員、彩玄会同人、六十九歳。

子どもは、子どもらしい。

でも壁のV字が、なにごとかを強く主張する。

構図は坐りがよいが、すこし窮屈だ。

少女も頬をふくらます。

 

 

 

 

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木村保夫『洞窟教会と影 '10』

 

一陽会会員、日本美術家連盟会員、七十七歳。

いまでいうトルコにあるカッパドキアの地下都市。

初期キリスト教徒が隠れ家につかつた。

岩壁をなめるステルス機の影!

米軍のものだろう。

造形はほとんどキュビスムのそれで、

歴史の複雑怪奇さを、なかばヤケクソぎみに焙りだす。

 

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森本邦雄『緑の風景「青田波」』

 

新槐樹社委員、七十歳。

ボクは抽象画が結構好きだが、420×332ピクセルでは解像度不足か。

現物をみて、混濁する色彩の妙をあじわいたい。

その機会はすくないけれど。

毎週サッカーのスタジアムにゆくのは、そこに空と緑があるからでもある。

 

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土屋禮一『水の風景』

 

日本藝術院会員、六十五歳。

これは日本画。

ふるさと岐阜の水路を意識して描いたらしい。

本作に附言することはないなあ。

まあ、青が一番好きなんです。

 

 

 

以上、現在進行形の日本美術を概観した。

おもうのは、年寄りばかりつてこと。

わかい藝術家はどこにいるのか?

数十年描きつづければ、だれでも上達する。

いまの美大生も、卒業して絵の先生にでもなつて、

コツコツ修練をかさねれば、いづれ人から褒められるだろう。

そのころは老人になつているが。

いや、美術界自体が消滅しているかもしれない。

かかる情勢が日本の現在だとおしえる一冊だ。





現代日本の美術〈2011〉―美術の窓の年鑑現代日本の美術〈2011〉―美術の窓の年鑑
(2011/04)
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