『トロン:レガシー』

 

トロン:レガシー

Tron: Legacy

 

出演:ギャレット・ヘドランド ジェフ・ブリッジズ オリヴィア・ワイルド

監督:ジョセフ・コシンスキー

制作:アメリカ 2010年

[新宿バルト9で鑑賞]

 

 

 

 

 

二十年まえ。

謎めいた笑みをのこし、父ケヴィンは消えた。

 

(前作にも出演したブルース・ボックスライトナー)

 

ある日、共同経営者の失踪後も会社にのこつたアランは、

ふるぼけた携帯機器をケヴィンの息子にみせる。

なんとポケベルを二十年間、肌身はなさず持ち歩いていた。

それが唯一の、親友との連絡手段だから。

 

 

発信元のゲームセンターを、息子のサムがおとづれる。

幼いころの、父との遊び場。

 

 

父が開発したゲーム『トロン』も、まだ稼働する。

ボクはいわゆる3D映画つてのを初めてみたが、

三十分ものあいだ、ほとんど何も飛び出さないし、奥行きもない。

メガネの上にメガネをかさね、重みで鼻が痛む。

だから3Dなんてイヤだつたんだ!

 

 

 

 

 

いきなりゲームの世界にとりこまれたサム・フリン。

こ、これが最先端の立体映像か。

目がつかれるし、違和感はぬぐえない。

でも、コンピュータ・プログラムの中にはいつた経験はないから、

これはこういう物と認めた方がよいのかな。

 

 

はやくも父と対面。

と思いきや、この男は「クルー」というプログラムで、

一分の隙もなく世界を統御する独裁者だつた。

 

 

本当の父は、辺境のアジトにひそむ。

 

 

「クオラ」という女と暮しながら。

 

 

プログラムでなく人間である證拠に、歳月が顔に刻まれている。

感動の再会と言いたいが、のつぴきならぬ事情があるにしても、

忽然と消えた父が、若い女とよろしくやつてるのを見れば、心境は複雑。

 

 

 

 

 

このクオラさん、ルイーズ・ブルックス風のおかつぱが、

サイレント時代のハリウッド映画を強烈に想起させつつ、

アシンメトリーなカットで、メビウスの輪を近未来へつなぐ。

 

 

蛍光がまぶしいスーツでの殺陣もステキだし、

ただのプログラムのくせに性格はお茶目で、すつかり惚れこんだ。

 

 

たとえば、私が一番気に入っているシーンも、

ちょっと居心地の悪い家族の夕食のシーンなのよ。

どんな人だって、ちょっと気まずい家族との夕食を経験したことがあるはずでしょ。

耳に入ってくるのは食器の触れあう音だけのね。

この驚異的なビジョンを描いた作品の中にこういうシーンが描かれていることで、

映画全体にしっかりとしたテーマが根付いているのよ。

 

オリヴィア・ワイルドへのインタビュー(映画プログラム)

 

 

クオラさんは、外の世界に興味津々。

本が大好きで、トルストイやドストエフスキーは勿論、

仏教書や『易経』まで読破している。

でも一番の愛読書は、ジュール・ヴェルヌだつたり。

なんて奥ゆかしいプログラムなんだ!

伝説となつた原作の『トロン』から二十八年。

映画界はCG屋に支配され、一方でゲームが映画なみに進化し、

まるでポケベルみたいに、映画藝術は過去の遺物とみなされている。

しかし、あらゆる人間のアナログな情熱をペロリと飲みこむ、

映画という媒体がもつ貪欲さは、やはり特異なもの。

 

 

 

 

 

ところで、気づいた人はいるでせうか?

独裁者クルー、皺のない方のジェフ・ブリッジズを演じたのが、

生身のブリッジズでなく、コンピュータ・プログラムだということを。

いつも映画通ぶつてるワタクシですが、すつかり騙されました!

てつきり役者を撮影した画像を、コンピュータで若返らせたのかと。

とはいえ、五十二箇所にマーキングしたマスクをかぶせ、

ブリッジズ本人の表情のデータをそのまま拾つているわけで、

「CGか、現実か」を何をもつて判定すべきかわからない。

 

 

この画像は、肌の質感が不自然にみえるかな。

「不自然」もなにも、役柄自体がプログラムだけど。

あれほど強く、絶対にかなわないと思つていた父親は、年ごとに衰える。

でも内面にすむ父の像は、何年たつても変ることはなく、

いつか乗り越えるべき相手として、男は心のなかで戦いつづける。

実にするどく、男子の泣きどころを突く作品だ!

 

 

左から、主演のヘドランド、前作の監督リズバーガー、

前作で主役をつとめたブリッジズ、新作の監督コシンスキー。

ジョセフ・コシンスキーは、コロンビア大学で建築をまなんだとかで、

助教授の肩書きをもつており、CMディレクターとして活躍したのち、

初監督ながら『トロン:レガシー』という傑作をつくつた。

しかもこの男前ぶりで、まだ三十六歳の若さ。

嫉妬をおさえるのは不可能なエリート街道をゆく人物だけど、それでもこの写真はよい。

はやすぎた預言書『トロン』は、興行的に失敗したそうだが、

「活動屋」の魂が受け継がれているのがわかり、泣けてくる。

 

 

 

 

 

反転した重力のもとでの戦い。

逆さにすれば普通の絵だけど、3DだCGだ異世界だと圧倒されているので、

こういう単純なトリックが案外おもしろかつたりする。

 

 

編隊をなす「ライト・サイクル」。

 

 

ただひたすら、興奮しますね。

 

 

空戦もたつぷり見せてくれます。

艦隊戦もあれば「陸海空」制覇なのに惜しい。

続篇に期待しよう。

 

 

本作に音楽をつけたのは、フランスのエレクトロアーティストであるダフト・パンク。

元来は顔出しNGの彼らが、なぜかカメオ出演しているのだが、

クラブDJロボット(?)の役なので、まつたく違和感なし!

ていうか、そのままじゃん。

そこかしこで感じられる、遊び心がたまらない。

 

 

三十過ぎて、「ゲームの世界にはいつてバトル」なんて話に熱をあげ、

いつまでもガキだからオレはダメなんだと思わずにいられないが、

まあ男の人生つてのは、そういうものかもしれない。

女性の観客を排除するつもりは、ありませんけどね。


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