10番のかなしみ ―― J1 第31節 湘南ベルマーレ-名古屋グランパス

 

J1 第31節 湘南ベルマーレ-名古屋グランパス

 

結果:0-1 (0-0)

得点:66分 玉田圭司

会場:平塚競技場

[現地観戦]

 

 

 

湘南の大波にのみこまれた。

 

 

いえ、ね。

ビッグフラッグの下にいただけですけど。

湘南ベルマーレは前節に降格が確定。

対する名古屋グランパスは、優勝に手をかけている。

あまりに明暗がわかれすぎ、かえつて趨勢をよめない。

地元側の席についたのだが、雰囲気はあかるい。

三浦半島のむこうまで来ると、潮風まじり、どこか空気がちがう。

男たちは皮ジャンを着こなし、鍔広の帽子にドル札をはさんでいたり。

「湘南の暴れん坊」の異名は伊達ぢやない。

左の岩本輝雄と右の名良橋晃が、各地のフィールドを荒らしまわつたのが懐かしい。

 

 

 

 

 

いまのベルマーレに岩本や名良橋はいないし、

中田英寿が看板に名を出すだけだが、それでも上げ潮のまま前半をおえた。

グランパスの10番、小川佳純がよくなかつた。

おもえば2008年は11得点11アシスト、新人王の栄誉をさづかり、

南アフリカ大会で10番をになえる逸材と期待したものだ。

しかし土曜日の小川は、攻め寄せる隙も与えられていたのに、

やけに臆病にふるまい、海流を緩慢なものにした。

ことし一試合しか見ないで、批評めいたことを口にするのは傲慢だが、

肉離れで欠場している金崎夢生の代役という処遇が、矜持を傷つけたのか。

四つ年少の後輩より下におかれることは、男から牙をうばう。

女子ではあるが、日テレ・ベレーザの10番の背中を一年追いかけたので、

十進法の底数の重みは、それなりに知つているつもり。

 

 

 

 

 

ドラガン・ストイコビッチほど、10番への執着をもつ司令官が他にいるだろうか?

ジーコやマラドーナは監督として成功したと言えないから、なおさら。

だからこの日も忍耐に忍耐をかさね、小川に攻撃の指揮権をまかせたが、

ついに63分、健脚の杉本恵太と交代させた。

180秒後。

日本最高の「左バック」阿部翔平が、フィールドに対角線をひく。

杉本が敵の脇腹を縦に切り裂く。

玉田圭司が頭でねじこむ。

海底で逆巻いていた渦が突如あらわれ、すべての船を転覆させた。

これがサッカーだ。

よろこびの輪のなかで、小川は歯軋りしたろう。

その思いが、つぎの季節の収穫につながることを、オレはのぞむ。


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苑田 謙

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