本田圭佑のバンカーショット

 

2010 FIFAワールドカップ 南アフリカ

グループE 第1節 日本-カメルーン

 

結果:1-0 (1-0)

得点:39分 本田圭佑

会場:フリーステイト・スタジアム(ブルームフォンテーン)

[ダイジェストのみ視聴]

 

 

 

昨晩は、いつもより数時間はやく床についた。

眠気などないが、本を読むうち夢の世界にはいれた。

褐色の戦士が、歓喜のダンスに興ずるのを見たくなかつた。

オフサイドの規則さえしらない連中が、

「日本サッカーの弱体化」を嘆くのを聞きたくなかつた。

なにより本田圭佑が、実戦で一度もためしていない部署で孤立し、

敗戦の責をおわされる悲劇の、観客になりたくなかつた。

そして翌朝にみた、YouTubeにアップロードされたダイジェストで、

ブルームフォンテーンで何がおきたのか知つた。

 

 

 

 

 

遠藤保仁が、右側面にパスをはなつ。

弩弓の様な速度。

ヤットは、より近い長谷部誠を経由することもできた。

でもそれでは、鹿児島実業の二年後輩の松井大輔に、

生のメッセージがつたわらない。

おいダイスケ、オマエがなんとかせえ!

 

 

ボールを頭上にはねさせ、勢いを殺す。

サイドラインをせおう松井の向きは、完全に九十度。

フィールドのすべてを視野におさめている。

そこのアフリカ人、このボールを取れるもんなら取つてみな。

 

 

レフトバックのアスエコトは、腰がひけていた。

松井の間合いに入りたくないから。

たやすくキックフェイントにかかり、左足からクロスがあがる。

 

 

大久保嘉人を囮につかい、単身となつた本田。

しかし止めたボールは軸足にぶつかる。

この試合のおそらく最大の好機は、水泡に帰しかけた。

 

 

それでもボールは、絶好の位置に。

つまるところ、すべては運次第。

 

『J's GOAL』

 

左の爪先が後ろをむいている!

骨折したのではない。

それは直接ピンをねらう、精密きわまるバンカーショットだ。

我が子に粥をスプーンで口にはこぶ様に、やさしく。

少女が紙風船でたわむれる様に、無邪気に。

 

 

本田圭佑はゴールエリアで、得点にいたる唯一の経路をみつけた。

彼にあたえられた思考時間は、百分の一秒もない。

時差七時間の距離にいるボクが、見物をためらう重圧の下で、

なぜ得意のドライバーのかわりに、サンドウェッジをえらべたのだろう?

サッカー選手に、キャディはついていないのに。

 

 

 

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