掲示板はじめました
名づけて、
まあ、仮称なんですけどね。
「いまどきケイジバンなんて」とも思いますし、
億劫がりな自分はキャラ的に管理人むきじゃないですけど、
岩渕選手のことを沢山ブログに書いてきて、
需要はあるんじゃないかな、と感じているのです。
ていうか、自分が利用したい。
というわけで皆様、よろしくお願いいたします!<(_ _)>
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相馬直樹とインド人 ― JFL 前期第7節 町田ゼルビア-松本山雅
JFL 前期第7節 FC町田ゼルビア-松本山雅FC
結果:6-1 (4-0 2-1)
得点者
【町田】
10分 川邊裕紀 14分 勝又慶典 21分 星大輔
40分 木島良輔 52分 深津康太 64分 木島良輔
【松本】
78分 木村勝太
会場:町田市立陸上競技場
[現地観戦]
マツモトヤマガ、と読む。
人名ではないので、注意されたし。
昨年は四部リーグに所属していたが、天皇杯二回戦でなんと、
J1の強豪・浦和レッドダイヤモンズをたおし、列島を歓喜の渦にまきこんだ。
地元には、二万人を収容する球技専用スタジアム「アルウィン」を擁し、
JFLに昇格した今年も、平均で五千人ちかく動員するなど、
サポーターの熱烈な応援ぶりもよく知られている。
闘鶏ならぬ、カワセミと雷鳥のたたかいを見ようと、
ボクは鶴川駅前のシャトルバス乗り場にむかつた。
だが試合開始にまだ一時間あるのに、ビルを囲むほどの行列が!
おかげでサッカーよりも楽しみにしていた、
屋台村の「三大カレーフェア」を素通りするハメに。
松本山雅の、正確に連打される太鼓が空き腹にひびく。
中田ヤスタカがプロデュースしたのか?
むかえうつ町田ゼルビアは、出端をくじかれた。
「勝つているチームはいじらない」は、サッカーの唯一といえる原則だが、
相馬監督は、五連勝をなしとげた布陣にあえて手をくわえた。
信州の高嶺からおりた雷鳥が、多摩の森で隙をさらしたカワセミをねらう。
しかし、前半10分。
星大輔の右足がふりぬかれ、フリーキックは流星の軌道をえがいた。
川邊裕紀が頭をあわせ、青い水鳥が先制。
14分の追加点はコーナーキックから。
特別天然記念物が、一羽ずつ撃ち落とされる。
前半だけで4-0。
ハーフタイムにひきあげる星と相馬監督が、なにやら密談していた。
ゼルビアの右の翼は、指揮官からのあつい信頼を博し、
攻撃の作戦遂行を一手にまかされているらしい。
たべかけの見苦しい画像で恐縮ですが、四点目と五点目を見損じてまで、
行列にならび調達したインドカレーとナンです(600円)。
具は雷鳥ではなくチキンで、美味でした。
タイカレーと日本カレーは御飯がなくなり、残念ながら売り切れ。
アクセス最悪の野津田まで行つたかいがない。
ナンは屋台の窯で焼けるので、くやしがるタイと日本を尻目に、
あやしいインド人たちは荒稼ぎした。
点差がひらくと試合はゆるみ、スパイスが必要になる。
サイドラインぎわで抗議する相馬監督が、
第四の審判から幾度も注意を受けていたが、
選手に用心をうながす意図があつたのだろう。
もし相馬が理性をうしなう様に見えたら、それは絶対に演技だ。
その證拠に彼は、斉藤広野・雑賀・北井といつた手駒を、
実地での試運転をさせるため、つぎつぎ投じている。
フィールド上の戦術はリーダーにまかせ、自分はヌケヌケと芝居をうちながら、
ベンチのまえで一年の戦略を、ナンの生地みたいに練りあげる。
これでゼルビアは六連勝。
インド人と相馬直樹の智恵にはかなわない、とおもつた日曜日だ。
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『武士道シックスティーン』
武士道シックスティーン
出演:成海璃子 北乃きい 高木古都
監督:古厩智之
制作:日本 平成二十二年
[シネマ・ロサで鑑賞]
高校のとき武道が必修科目だつたが、つめたい畳に落とされる柔道は嫌だし、
未経験ゆえの興味もあつたので剣道をえらんだ。
三年間、後悔しつづけた。
夏場に防具がはなつ、悪臭のすさまじさよ!
面のなかの鼻をつまむこともできず、ヘボ剣士はたたかうが、
全力で振りおろされた竹刀があたれば、当然痛い。
それは近代社会に残存する、あまりに野蛮な習俗だ。
昨年に世にでた、写真集『KEY of DREAMS』(玄光社)は、
北乃きいが武道の申し子であることを證明した。
(撮影:清水隆行)
空手が剣道にかわつても、事情はかわらないと思つていた。
劇場に足をはこぶまでは。
ギャアアアアアアア!!!!!
きいちゃんの顔が見えない!!!!!!!!!!
剣道をとりあげた名作は、市川雷蔵の『剣』(一九六四年)などがあるが、
三隅研次監督は面をどう扱つていたつけな。
なんにせよ女子の容色を隠していたら、映画はなりたたない。
ダンベルを上下しながら、宮本武蔵の『五輪書』をよむ成海璃子。
ただでさえ大きな目を、さらにギョロリと見ひらき、
般若の面構えであたりを睥睨する。
はじめて見る人なので楽しみにしていたが、緩慢な芝居だとおもつた。
台本に書かれた人物像を、無理やり喉の奥にながしこむ役づくり。
━━香織のキャラクターには共感できましたか?
役に共感することはないです。
磯山香織は自分自身だと思っているので。
これは他の役を演じる時も同じです。
プログラム「成海璃子インタビュー」
気負つてるなあ。
でも大人びているけれど、この人まだ十七歳だつたんだね!
黄金世代なのかもしれない。
彼女もいつかきつと、造作なく消化できる役に出会えるだろう。
そのときまた、腰まである長い髪をじつくりながめたい。
女子高生には、くさくない防具がある。
十九歳の北乃きいは、若干サバをよみつつ、完璧な着こなしをみせた。
大詰めで、ふたりが制服で決闘をおこなう。
北川悦吏子に小林武史と、新人監督を小手先であしらつた北乃きいだが、
二十年ちかい職歴をほこる古厩監督のもと、手強い成海璃子を向こうにまわし、
いつもより分別ありげに、お姉さんらしく同級生を演じた。
要するにこの映画は、女優好きにはこたえられない佳作だつた。
池袋の映画館を出たあと、タワーレコードに寄つたのだが、
紺のブレザーをきた黒髪ショートボブの女子高生がいた。
スカートをたくしあげ、もともと長い足をさらに長く見せている。
目当てのMinuanoの新譜がおいてなかつたので、
紺ブレJKを観察しようとおもつたら、彼女はすでに隣りの棚のCDをさがしていた。
ボクの存在など、一瞥もくれることなく。
根拠はないけどウチら最強!
無敵の装備で怖いものなしのあの子は、近づけばよい匂いがしたのだろう。
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戦慄のブルー ― しょこたん・トミー・まるえつの三年戦争
PVは削除されて、いまのところユーチューブに見当たりません。
(埋め込み無効だが、より高画質のものはコチラ)
中川翔子『空色デイズ』
作詞:meg rock
作曲:齋藤真也
発行:平成十九年 ソニー・レコーズ
[アニメ『天元突破グレンラガン』オープニング曲]
中川翔子の夢は、聖子ちゃんみたいなアイドル歌手になることだが、
ロボットアニメの主題歌だつたこの曲は、強烈なハードロック。
なのにフライングVが、小山田圭吾に負けないくらい似あう。
もしも世界が
意味を持つのなら
こんな気持ちも
無駄ではない?
憧れに押しつぶされて
あきらめてたんだ
果てしない空の色も
知らないで
張りのある声が、聞くものの胸を激しくゆすぶる。
しょこたんは、九歳のときに父を白血病でうしなつている。
ボクは当時をしらないが、中川勝彦は人気のロック歌手で、
かつてのファンは翔子をみるたび、父ゆづりの美貌にときめくのだとか。
多分彼女は、空のかなたに父の面影をさがしながら、
華奢なからだに秘めた思いを、叫びにかえたのだろう。
the brilliant green『Ash Like Snow』
作詞:川瀬智子
作曲:奥田俊作
発行:平成二十年 デフスターレコーズ
[アニメ『機動戦士ガンダム00』オープニング曲]
翌年発表されたこの曲は、『空色デイズ』へのアンサーソングだとおもう。
ロボットアニメに提供した作品であることや、曲調がちかいことの他に、
またもギブソン・フライングVが登場するのが、決め手だ。
しかし藝のこまかい三人組なので、ただの真似におわらない。
空 赤く染める 黒檀の闇
呑み込まれた 星屑たち
儚く降り積もる 灰の雪
川瀬智子がえがく空は、青色ではない。
それは真紅に燃えあがつたあと、黒、灰、白と目まぐるしく変容する。
想いは 寂寞の夜空に
舞い上がり 砕けた
この世界が 形を変えるたびに
守りたいものを
壊してしまっていたんだ
サビの部分。
「セキバクノヨゾラ」という響きが、耳に心地よい。
そもそも「Ash Like Snow」なる言い回しは、「阿修羅」を連想させる。
都市は戦火にのみこまれた。
ベレー帽を軍人風に着こなすトミー。
無線機をつかみ、「なぜボクはたたかうの?」とつぶやく。
守るべきものを失つた分隊は、瓦礫のちらばる焦土をさまようが、
いつか夜があけることを希望の光として、投降を拒否する。
相対性理論『人工衛星』
作詞:永井聖一 ティカ・α(やくしまるえつこ)
作曲:永井聖一
発行:平成二十二年 みらいレコーズ
[アルバム『シンクロニシティーン』収録曲]
じんこーえーせー、まぎ~おんっ!
やくしまるえつこの鼻声に、いきなり脱力する。
あれから二年、休戦協定がむすばれた様だ。
星に願いを。
少女は、旧チェコスロバキアの人工衛星マギオンに願掛けし、
カレシが夢中のガンプラを、ビーム兵器で破壊してもらおうとする。
しかし、まるえつの声色の奇術で、カードがひるがえつた刹那、
たわいない日常の陰にひそむ争乱が、あらわになる。
3分半の恋の ABCロマン
プラハで見た 流れ星が
散開 今夜 空 朱色混じり
二人はまだ 寄り添ってるの
宇宙戦争はまだ、終結していない。
少女はけふも、朱に染まつた夜空のした、つれない恋人とともに、
世界に平和がおとづれる日を夢みつつ、眠れぬ日々をすごす。
以上が、三年戦争のあらましだ。
虚空に手をのばし、身もだえしながら闘う理由をもとめる、
戦乙女たちの崇高な歌声がやむことは、決してない。
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さわやか守護神 ― なでしこリーグ 第3節 ベレーザ-アルビレックス新潟
なでしこリーグ 第3節 日テレ・ベレーザ-アルビレックス新潟レディース
結果:0-0
会場:稲城中央公園総合グラウンド
[現地観戦]
ボクは二年以上ブログをつづけているが、
サッカー系ブログの管理人さんとの交流がまるでない。
さびしい。
「コゲチャ^^;」さんがいるけれど、あちらのお店も品数豊富だから。
FC2はなぜか、アメブロなどと比べサッカーファンがすくないし、
旗幟を鮮明にしないまま、都内のボロスタジアムをうろつくボクは、
どこへいつても自分が他所者である様に感じる。
しかし、先週のこと。
町田ゼルビアの情報をおつていると、『東京蹴球三原色』というブログの、
「☆今節の東京の動向☆」と題された記事が目についた。
これがおもしろくて。
特に、FC東京・ヴェルディ・ゼルビア・ベレーザそれぞれの、
ゴールキーパーの能力を比較するところが愉快だ。
「さわやか正攻法」なのがベレーザの松林美久で、
「ダークフォース」を悪用するのがヴェルディの土肥洋一。
こういう書きかたもあるのか、と感心した。
男女のサッカーをくらべるときは大抵、
「なでしこジャパンはがんばつてるのに、男子は情けない!」みたいに、
大仰に言いたくなるものだけどなあ!
けふもランチパックを片手に、孤独な観戦がはじまる。
あいかわらず飲み食いにいそがしいため、
ゴールキーパーの技量とか、細かいことはボクにはわからない。
鑑定に多少の自信があるのは、顔がカワイイかどうか。
うごきが優雅であるかどうか。
背番号10が似合うかどうか。
それくらい。
見てくれにしか興味がない、ミーハーな三十男です。
だから、チームは七位ながら昨季のベストイレブンにえらばれた、
新潟の10番、上尾野辺めぐみにはそそられる。
小動物系の風貌と、読みづらい名字(カミオノベ)と、
左足の器用さでしられる、目下売り出し中の二十四歳だ。
前半は、いわゆるトップ下の位置で攻撃を指揮し、
後半は、百六十七センチと大柄な川村優理とならび、
中盤の平衡をたもちながら奮闘する。
プレーの流儀は幅ひろい。
みとめたくないが、すくなくともこの試合では、
緑の10番より、10番らしかつたとおもう。
では、ポルトガル語で「美人」を意味するらしい、
ベレーザの看板娘はだれだろう?
西が丘で近賀ゆかり主将を間近でみたときは、
その凛々しさにときめいたが、ボクより男らしいので却下。
ウォーミングアップ中の永里亜紗乃にもドキドキしたが、
ドイツにいつた姉のことばかりブログに書いている、
末つ子根性丸出しの甘つたれなので、これまた却下。
というわけで、「さわやか正攻法」松林美久選手の出番です。
だれかが、「タレント・モデルの「はな」に似た美人だ」と書いていたが、
冷静に「はな自体が美人ではない」とツッコまれていた。
えゝと、これはサッカー観戦記でしたつけ。
おまえはスタジアムで顔しか見てないのか、と怒られるかもしれないが、
それ以外の時間は岩渕真奈の全身を観察しているので、御安心ください。
(公園の緑地をみおろす)
ちなみにこのブログには、「監督批判をしない」という原則がある。
だがそれにしたがえば、ベレーザについてなにも書けなくなる。
顔以外に、なにも。
「監督やめろ」「あの選手はづせ」と発言するのはたやすいし、
無意味とわかつていても、人はそうせずにいられない。
しづんでゆく船のデッキで、いがみあう乗客の様なものだ。
岸からみれば、さぞかし滑稽にうつるだろう。
去年のジェフ千葉、いまの日本代表もそうだ。
戦術、クラブ経営、観客動員、視聴率、日本サッカーの未来について。
ひたすら大声で、絶望をまぎらわそうとして。
だがフィールドには、そんな空騒ぎと無縁の人間がいる。
ゴールキーパーだ。
キーパーにチーム戦術は必要ない。
侵入者に目をひからせ、すべてのボールをとめる。
それだけでよい。
フォーメーションなんて、手をつかえない連中がすがる絵空事だ。
試合終了の十分まえくらいだつたろうか、
新潟のたしか口木未来が、至近距離からシュートをはなつた。
松林が、右手でボールをかきだす。
もし彼女が瞬きでもしていたら、チームはやぶれ、
泥船の底に修復できない穴があいたはずだ。
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メラニー・ロランをたたえて ― 『オーケストラ!』
オーケストラ!
Le Concert
出演:アレクセイ・グシュコフ メラニー・ロラン ドミトリー・ナザロフ
監督:ラデュ・ミヘイレアニュ
制作:フランス 二〇〇九年
[シネスイッチ銀座で鑑賞]
『のだめカンタービレ』の映画はみたが、語るに値せぬ愚作とおもつた。
野田恵という女が理解できない。
なにが「千秋先輩のチュー頂きまシタ!」だよ。
大学生にもなつて、やたらと人にあまえるな。
また、音楽そつちのけで大きな乳飲み子の世話をし、
いらついて暴力をふるう玉木宏も、立派な音楽家にはみえない。
まあ、それはともかく。
本作は、良くも悪くもフランス映画。
無神経な田舎者のから騒ぎをみせられる心配はない。
おゝ、メラニー・ロラン!
パリうまれの二十七歳。
なぜフランス女優は、世界の支配者みたいな物腰でふるまうのか。
わかく、うつくしく、そしてフランス人なら、それは正義だ。
極東の零細ブログなど、けふにも抹消したい。
この美貌を、日本語という劣等言語でほめれば、かえつて不名誉になる。
サーバーがあふれるほど、ひらがなや漢字をつらねても、
彼女の片方の瞳以上に、雄弁になるはずがないから。
ロシアからきたマエストロと食事をする。
ブラウスのボタンを三つほど外しているが、
男の視線をあつめる意図など、微塵も感じられない。
衣装それ自体が、メラニーの身体を隠すことを遠慮し、
みづから胸襟をひらいたのだろう。
ほのかな女の匂いが、香水といりまじりつつ立ちのぼり、
あたりを音楽の様にみたす。
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ニ長調。
あご当てにのせた頭蓋骨の傾きにあわせ、右目から涙がこぼれる。
たえがたいほど憂鬱な、ロシアの歴史のかなしみ。
その涙痕は、天の川よりうつくしい。
ジミ・ヘンドリックスが唖然とするくらい、
弓がはげしく暴れだし、楽音は天頂にむかい駆けあがる。
呼吸を忘れたまま、すべての音符を解き放ち、
満場の拍手のなか、くづれおちそうになるメラニー。
銀座でボクが発した嘆声は、パリまでとどいただろうか?
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ガラス棒遊戯 ― 江副浩正『リクルート事件・江副浩正の真実』
リクルート事件・江副浩正の真実
著者:江副浩正
発行:中央公論新社 平成二十一年
あらゆる独裁権力と同様に、皇居の南に腰をすえる彼らも、
度がすぎるほど輿論の動向をおそれる。
だから、路地裏に情報というエサをなげ、報道機関をはしらせる。
昭和六十三年、リクルートの創業者である江副浩正を取り調べるため、
東京地検特捜部の宗像紀夫検事がホテルをおとづれた。
検事がかえり、すぐに客室のテレビをつけると、
はやくもテレビ東京が特捜のうごきを伝えている。
汚職捜査の実況中継に、国民は手に汗をにぎつた。
一方、新聞の最大の武器は、見出しだ。
衆議院で証人喚問されたときは、朝日新聞の夕刊一面の見出しに、
「顔こわばらす江副氏 緊迫、どよめく委員会」とかかれる。
委員会はしづかで、どよめきなどなかつたのに。
各紙で一斉に「疑惑が深まつた」「矛盾だらけ」の題字がおどり、
一夜にして、天下の大悪党がうまれた。
なにが疑惑で矛盾なのか、いちいち記事をたしかめる暇人はいない。
ただ強調したいのは、報道機関はマリオネットみたいに、
特捜部に操られているのではない、ということ。
東京地検特捜部の人員は、全国の地検からえらばれた三十数名にすぎず、
手駒だけで犯罪をあばく戦力はない。
つまりこのゲームの規則は、「捜査官」の役割を記者にまかせ、
特捜はあくまで「取調官」に徹するというもの。
鼻のきくブン屋が嗅ぎつけたネタを、特捜が掘りだす。
そのおこぼれに預かろうと、腹をすかせたメディアがむらがる。
小菅の東京拘置所にはいると、江副は所持品を領置され、
十人ほどの看守のまえで、丸裸で四つん這いになつた。
看守が突然、肛門にガラス棒をつきさし、前後にうごかす。
痔の検査の名目でおこなう、「カンカン踊り」とよばれる儀式だ。
江副は痔もちだが、なんら措置はされない。
被疑者に屈辱感をあたえ、取り調べを優位にはこぶのが目的だから。
尋問は苛酷をきわめる。
椅子をけつて江副をたおしたり、土下座させたり、
壁のまえに立たせ、耳もとで鼓膜がやぶれるほど怒鳴つたり。
そもそもリクルート事件は、無理筋の起訴だつた。
マスコミがさわぐから、とりあえず逮捕したにすぎない。
江副が多額の献金をばらまいたのは事実だが、
リクルートの事業は情報誌出版で、官庁からうける許認可は、
郵政省の「第三種郵便物認可」だけ。
政府からの便宜供与を必要としない企業なのは、明白だ。
これが賄賂なら、政治献金など一円もできない。
拘禁状態は十か月つづく。
夜には首の下をゴキブリが這いまわる独居房から解放されるため、
江副は意にそわない調書に署名し、献金を賄賂とみとめた。
霞が関のゲームマスターが憎悪するのは、なによりも政治家だ。
選挙でえらばれた代議士は、つねに失職のリスクにさらされるので、
みづから掲げた政策に忠実にふるまうという、動機づけがある。
その営為はえてして、霞が関ルールから逸脱する。
だから政治家は、「腐敗」していなければならない。
江副は、危険地帯に踏みこみすぎた様だ。
甲南中学・高校、東大の同期である代議士からカンパをもとめられ、
国会議員の懐具合が、想像以上にさびしいことをしつた。
新聞記者は専用車で国会に来るのに、代議士は電車で移動する。
本書には、安倍晋太郎(晋三の父)の人柄に惚れこむ様子もかかれ、
わかくしてベンチャー企業を成功させた男が、
つぎは政治に貢献したいと発心したのは、嘘ではないとおもつた。
宗像検事とのやりとりが興味ぶかい。
「私は政治家へ頼みごとをしたことはありません」
「大局的見地からあなたに協力をお願いしたいんですよ。
自民党二名、野党一名をあげたい」
「自民党とか野党とか関係があるんですか」
「“特捜は中立的”という世間の印象も大事なんでね。
加藤のほかに自民党一名、野党一名をあげる方針が決まった。
仕方ないと思ってもらいたいんですよ」
ここでの「野党」とは、公明党のこと。
土井たか子の社会党は、事件後の「政治不信ブーム」を利用し、
平成元年の参院選で、自民党の単独支配をうちやぶる。
自民党が過半数をとりもどすのは、なんと十二年後。
「自民党をぶつこわす」で人気を博す、小泉純一郎の登場を待たねばならなかつた。
平成十五年、十三年の長きにわたる裁判に判決がくだされる。
懲役三年、執行猶予五年。
判決文の情状酌量の理由をよめば、事実上無罪に近いといわれるが、
しかし検察側の主張もみとめ、双方が控訴しづらい大岡裁きだつた。
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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済
ボールガール ― なでしこリーグ 第2節 エルフェン狭山-ベレーザ
なでしこリーグ 第2節 ASエルフェン狭山FC-日テレ・ベレーザ
結果:1-3 (0-2 1-1)
得点者
【エルフェン狭山】66分 岩澤和
【ベレーザ】3分 永里亜紗乃 19分 岩清水梓 58分 木龍七瀬
会場:埼玉スタジアム2002第2グラウンド
[現地観戦]
むかし飼つていた柴犬は、ビニール袋のガサガサという音をきくたび、
ちぎれんばかりに尾をふり、涎をたらしながら飛びついてきた。
だが袋に食べ物がないとわかると、猛烈に不機嫌になる。
勝手に勘ちがいしたくせにバカだなあ、と小突いたものだ。
さて本日は、おそらく気温二十度をこえる快晴。
ボクは、埼玉県を代表する女子サッカークラブである、
エルフェン狭山の本拠地をめざし、地下鉄南北線にのつた。
駅名にドキリと反応し、心拍数が倍加した。
真紅の羽をひろげて駆ける、岩渕真奈の姿が脳裏にうかぶ。
おいおい兄さん、アンタの方がよほど単純ぢやないのと、
あの世でヤツもわらつてるにちがいない。
広末涼子に熱を上げてたころ、「末広町」の三文字に興奮したのを思いだす。
死ぬまでにいつか、北区岩淵町に転居したい。
所在なげにボールガールをつとめる、下部組織「エルフェンMARI」の選手。
おそらく中学生、おさげ髪がかわいらしい。
無礼を承知でいうと、昨季二部リーグ優勝のエルフェン狭山は、
ボクの人生で見たなかで、最弱のサッカーチームだつた。
心技体のすべてに事欠いている。
サポーターのブログを参考にすると、主力数名が理由もつげず退団したことや、
新監督が導入した戦術が、秩序を崩壊させたらしい。
大石裕弘監督は、大宮アルディージャのジュニアユースを指導した人。
お家藝である「4-4-2」の陣形を模倣させたはよいが、
Jリーグでも大した戦果をあげていないその兵法は難解すぎて、
入間川の妖精たちは頭をかかえた。
そして、ノンキなOLと女子大生のサッカー同好会が、なでしこジャパンに挑戦する。
しかし残念ながらそれは、真剣勝負とよべる物ではなかつた。
サポーター氏は、クラブ代表と監督を問い詰めると息巻いているが、
はてさて、どうなつたことやら。
「めづらしく天使がどうとか、寝言をいわないな」とお思いの読者のみなさま、
別に管理人は改悛したわけではありません。
だつてぶっちー、ちよつとしか出てないんだもの。
冗談ぢやないよ!
人間国宝にボールガールをさせるなよ!
なんのために地の果てまで遠征したとおもつてんだ!
小崎部長と星川監督を問い詰めたいのは、こつちだよ!
まあ今回だけは、愛犬の思い出に免じて堪忍してやるけれど。
前節で決勝点をあげても外されるなら、あたしはどうしたらよいワケ?
いまごろ彼女が歯軋りしていると思うと、泣けてくる。
いつもなら赤い連中がおしくら饅頭をする広場も、閑散としていた。
目障りなやつらだが、いないとさびしい。
おもえば去年、赤のクラブにかかわるとロクなことがなかつた。
もう、思いだしたくもない。
ことしは連中を避けながらスタジアムめぐりをしたい。
浦和美園駅にむかう途上、あることに気づいた。
赤羽岩淵!
畜生、あそこで赤に手を染めてたのか!
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孤島 ― 『シャッター アイランド』
シャッター アイランド
Shutter Island
出演:レオナルド・ディカプリオ マーク・ラファロ ベン・キングスレー
監督:マーティン・スコセッシ
制作:アメリカ 二〇一〇年
[新宿ピカデリーで鑑賞]
本邦でも評判の探偵小説のシリーズ『ミレニアム』は、第一部に熱狂したが、
続編はありきたりの三文小説だつたので、三部作を読破するのはあきらめた。
初作でえがかれる、孤島ヘーデビーでおきた失踪事件の背景で、
スウェーデンとヨーロッパの暗澹たる歴史が、
ゆらゆらと浮かびあがる瞬間が、すべてだつたとおもう。
どうもボクは、孤島がすきらしい。
この映画『シャッター アイランド』も、離れ小島で女が雲隠れするお話。
好事家が垂涎せずにいられないのは、消えたのがわが子を手にかけた殺人者で、
その場所が、精神病患者を収容する刑務所であること。
特異な土地の、特異な施設の、特異な人間を捜索するため、
ふたりの連邦保安官が島をおとづれる。
「DEPUTY MARSHAL」、つまり保安官補のバッジを誇示する。
かれらは米国でもつとも古い法執行機関であり、
ディカプリオは、アメリカの正義を船で運んできたといえる。
しかし看守のジョン・キャロル・リンチは、何とか法の何条がどうのと主張し、
ふたりの保安官補に火器の引き渡しをもとめる。
抵抗は無益だ。
そしてようやく、「シャッターアイランドへようこそ」。
銃をもつ権利がみとめられない辺地。
そこはアメリカであつて、アメリカでない。
そこは刑務所であつて病院でもあり、「囚人」は「患者」とよばれる。
ドイツ系の医師に扮した、ベルイマン組の俳優、
マックス・フォン・シドーの深重な演技がすばらしい。
流暢な英語をはなすが、ディカプリオにドイツ風のアクセントを察知される。
舞台は一九五四年。
ユダヤ人に残酷な人体実験をおこなつたドイツの科学者が、
アメリカ政府にやとわれ、経歴をかくしたまま研究をつづけているらしい。
共産主義とたたかう、ロボットの様に従順な兵士をつくるために。
「アメリカの正義」なんてどこにも存在しないよ、と嫌味をいう、
イタリア系のスコセッシ監督の毒気が、複雑な味をうむ。
小難しい話になりましたかね?
まあ、しかたないのです。
孤島の物語の針路は、つねに内面にむかうから。
ディカ氏の眉間のシワも深まるばかり。
大詰めで、レオさんが看守からライフルをうばう。
アメリカンヒーローの復活だ。
『ワールド・オブ・ライズ』でも感じたが、このひとは銃の扱いがうまい。
はげしく動いても、体捌きが安定している。
童顔と『タイタニック』のせいで、優男の印象が先行する役者人生だが、
内心では戦争映画に出たかつたんぢやないかなあ。
そしてアメリカ対アメリカの戦争は、痛み分けにおわる。
『ミレニアム』第一部「ドラゴン・タトゥーの女」もそうだつたが、
多くのかたが批評される通り、あまりにトリックがたわいないんだもの!
孤島のミステリは、ミステリのまま店晒しにされた。
それは世界の存在理由を解明するのと、おなじことだから。
地球には陸と海と空しかないわけで、
アメリカをふくむ世界中のあらゆる国が、孤島なのだ。
妻役の、ミシェル・ウイリアムズ。
ホモが苦手で『ブローバック・マウンテン』を未見のため、
よくしらない人だが、男好きのする実によい顔だ。
the brilliant greenのボーカリスト、ボクのあこがれの女でもある、
京都出身の川瀬智子にすこし似ている。
世界は孤島だが、美人だけはやすやすと国境をこえる。
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鼎談 ― 『Famidas ライト ファミコンキャラ&メカ編』
Famidas ライト ファミコンキャラ&メカ編
編者:ファミダス編集局
発行:マイクロマガジン社 平成二十二年
イッツミー、マ~リオ!
今日はファミコンキャラの同窓会があると聞いて、
京都からやってきたよ!
オッス、あいかわらずテンション高いな。
そういや新作が売れてるんだって?
忙しいだろうに、よくきたな。
オ~、ボンバーマン!
会えてうれしいよ、そしてありがとう!
おかげさまで新作の売り上げは350万本を突破したよ。
はぁ~、350万ねぇ~。
夢みたいな数字だな。
オレも昔はミリオンのひとつやふたつ…。
オーキードーキー。
ほかの出席者はまだなのかい?
…どうせライト層が、ジャニタレのCMに騙されて買ったんだろ…。
え、ほかの出席者? たしかナムコさんから一人くるらしい。
カイとかワルキューレとか、奇麗どころだといいよな。
……。
なんだ、パックマンか。
ていうか、オマエしゃべれるんだっけ?
……。
議題その1:「誕生の秘話をかたろう」
ヒアウィゴー!
ボクの生みの親であるミスター・ミヤモトは、
当時のかぎられた描画性能でキャラクターを印象づけようと…。
…ヒゲをはやしたり、オーバーオールを着せたんだろ?
オマエくらい有名だと、いまさら「秘話」なんてないよな。
パックマンは、食べかけのピザの形を見たのがきっかけ。
……。
オ~、ピッツァ・ナポレターナ!
ゲーム史を代表する二大キャラクターが、
イタリアに関係しているのが面白いね!
どうせ地下迷宮にいるオレは、イタリア関係ねーよ。
あと株式市場では、買収をしかけられた企業が買収しかえすことを、
「パックマン・ディフェンス」と呼ぶらしい。
ウォールストリートでも顔がきくんだね!
誇らしいよ!
ボンバーマン、キミの話も聞きたいな。
オレか? 大したエピソードはないぞ。
オレはもともとPC用の『爆弾男』というゲームに出てたんだが、
ファミコンに移植される頃にある事件が起きてね。
アーハー、何があったんだい?
皇居の半蔵門に、過激派がロケット弾を撃ち込んだんだ。
あまりに不謹慎なんで、慌ててタイトル変更になったのさ。
…マンマミーア。
議題その2:「ファミコンギャルをかたろう」
………………。
うわっ、急に勢いよくパクつき出したぞ。
「ギャル」という単語に反応したのか。
つーか、オマエに性別ってあんの?
ピーチ姫(『スーパーマリオブラザーズ』/任天堂/昭和六十年)
……。
あれ、もとに戻った。
全然興味がないらしい。
まあ、マリオのカノジョだもんな。
オーノー。
プリンセス・ピーチはトモダチだよ。
マリオカートやスマブラでは、ライバルだしね。
たしかに、オレらとは身分が違うからな。
でもそう考えると夢がないな。
友人が爆弾だけ、というよりマシだが…。
ワルキューレ(『ワルキューレの冒険 時の鍵伝説』/ナムコ/昭和六十一年)
この子はパックマンの妹分だよな。
なあ、今度紹介してくれよ。
………………。
なんか怒ってるみたいだよ。
なになに…金髪でもなく、羽つき兜もかぶってない、
偽物のワルキューレなんて絶対認めないって?
このドット絵も結構かわいいのにな。
まあ、冨士宏氏のデザインの魅力には負けるか。
当時はゲームが完成してから、キャラを造形したらしいな。
アテナ(『アテナ』/SNK/昭和六十二年)
昔なつかしいビキニアーマーだな。
なんら防具の役割を果たしてないという。
おいパックマン、萌えキャラの元祖なら納得だろ?
………………。
マンマミーア、これでも不満なのかい?
…はあ、初期状態のビキニアーマーは最高だけど、
パワーアップすると鎧や兜をつけるのが気に入らないと。
オマエいい加減にしろよ!
それにしても、カッコいいヒーローやメカ、ゆるキャラに萌えキャラ、
ファミコンキャラは思ってた以上に多士済々だな。
でもボクには、アテナみたいなのはトゥーセクシーだね。
ヒーローが、さらわれたプリンセスを救出する物語が好きなんだ!
そんなだから、任天堂さんは「萌えが弱い」と言われるんだぞ。
ま、爆弾男と桃鉄しかない会社よりマシだが…。
システムD.P.(ミリア)(『ガーディック外伝』/アイレム/昭和六十三年)
ゼルダ風のARPGと、高速シューティングがたのしめる、
コンパイル開発の傑作だな。
ミリアの変形シーンは一見の価値ありだぜ。
ヤッフー! 女の子が戦闘機になった!
ファミコンでここまでの表現ができるんだね!
おなじハードとは思えない、開発力の進化に感動したよ。
あと、「萌え擬人化」は今の流行なんだが、
オレに言わせりゃ、四半世紀遅れてるね。
それこそパックマンの様に、ファミコンはすべてを飲みこんでる。
議題その3:「ゲームの未来をかたろう」
……。
手のひらを返す様に、興味を失ってるな。
なんかクッキーばっか食ってるし。
あ~、「未来」といえばアレだ、アレアレ。
ホワット?
しらばくれるなよ、「ニンテンドー3DS」だよ。
アレどうなってんの?
どうせオマエも出るんだろ?
オーキードーキー。
その可能性はあるね。
でもくわしくは、ミスター・ミヤモトに聞かないと。
おたくら、ガード固すぎなんだよ。
とにかく、徹夜で『マリオ&ボンバーマン3DS』の企画書を書いたんで、
宮本さんか岩田さんに話つけてくんない?
企画開発本部の電話番号をおしえるよ。
でも正直、この話題にはナーバスになってるんだ。
ボクも3Dなんて、はじめての経験だからね。
バーチャルボーイにはマリオ本編出てないからな。
これまでは3Dグラフィックが精細化しても、それは二次元の映像だから、
ファミコン時代のドット絵と、ゲームの根本は変わらないよな。
ザッツライト。
ゲーム作りの常識がまったく通用しないかもしれないから、
さすがのボクもちょっと不安なのさ。
ゲームの歴史も曲がり角に来てるのかもな。
それでだ、『カービィ&ボンバーマン AT ロンドンオリンピック』
という企画もあって…ってマリオ、ちゃんと聞いてる?
……。
だからオマエはクッキー食いすぎ!
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十進法の天使 ― なでしこリーグ 第1節 ベレーザ-伊賀FC
なでしこリーグ 第1節 日テレ・ベレーザ-伊賀フットボールクラブくノ一
結果:3-0 (1-0 2-0)
得点者:6分 岩渕真奈 81分 永里亜紗乃 90+1分 宇津木瑠美
会場:西が丘サッカー場
[現地観戦]
ぶっちー、ようやく髪切つたんだ。
『サッカーダイジェスト』四月十三日号の特集では、
ボサボサの髪に熱狂的ファンですら落胆した。
春休みの宿題をなげうつて、美容院に駆けこんだ様だ。
それにしても身づくろいを、雑誌の取材ではなく、
リーグ戦開幕にあわせるところが彼女らしいというか。
見当ちがいの方向にむけられた、「女子力」。
そしてけふは、地元でついに背番号10をお披露目した。
あまりの違和感のなさに、違和感をおぼえた。
十進法という記数法は、彼女のために編みだされたのか?
ベレーザの星川敬監督はかつて、自分の力量不足を棚にあげ、
ぶっちーに「代表の青いユニフォームの方がよいのか」と言つたらしい。
「あたしがサッカーで手を抜くわけねーだろ!このメタボ野郎!」と、
つぶらな瞳に怒りの炎が燃えたことは、容易に想像できる。
緑色を象徴とするクラブは、さすがにチームカラーは変えられず、
かわりにエースナンバーを新高校三年生にささげた。
伊賀国から忍びこんだくノ一が、西が丘でゲリラ戦を展開する。
昨季は二部リーグ所属だが、それはかりそめの姿であり、
変幻自在の妖術で、緑の軍勢をもてあそんだ。
ズタズタ、ボロボロ。
24分にベレーザが、中盤のふたりを同時に入れかえる。
この非常事態宣言は、さらなる混乱をまねいた。
カントク、わけわかんない!
点取り屋のぶっちーは、左側面に放置されたまま。
たまに彼女がボールをもつと、くノ一は「タテ!タテ!」と符帳をさけぶ。
縦をきつて突破を封じろという意味らしい。
イライラ、ウズウズ。
コーナーキック後のドサクサにまぎれ、ドリブル自慢の木龍七瀬と持ち場をかわる。
天使の右足がうなり、クロスバーはたからかに鐘音をひびかせた。
しかし、「忍ぶ者」と書いてニンジャとよむわけで、敵はすこしも狼狽しない。
あくびとため息がスタジアムをみたす。
ボクは雨がふろうが槍がふろうが、岩渕真奈を追う気はある。
でも槍がふれば避難すればよいが、退屈からは逃げられない。
おそらく、忍者でさえ。
これからの一年をおもうと憂鬱になる。
え、試合はどうなつたかつて?
勝ちましたよ、勿論。
ジェットガールがうばつた先制点を、なんとか維持しながらね。
背番号10がかける魔法は、忍術よりずつと強力だから!
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マッドリブ「スリムズ・リターン」
スリムズ・リターン
Slim's Return
マッドリブ(Madlib)のアルバム
『Shades of Blue: Madlib Invades Blue Note』収録曲
制作:アメリカ 二〇〇三年
「マッドリブ」ことオーティス・ジャクソン・ジュニアが、
ブルーノート・レーベルにまねかれ、六七十年代の素材を料理した作品。
動画が断トツにクールなので、まづはクリックしていただこう。
レコードバッグをかかえて、マッドリブ氏が街にくりだす。
犬の散歩をする美女とすれちがう。
当然ふりかえる。
実は彼女も、痩せつぽちの男を気にしていた。
都会のあらゆる出会いとおなじく、この二人もすれちがつたまま終る。
巷に運命など存在せず、ただ偶然だけが充満している。
レコード屋にお目当てのネタがあるかさえ、わからないのだから。
すれちがいを補正する様に、DJはレコードを逆回転させるが、
ノイズをまきちらすだけで、事態はなにもかわらない。
そして、ビートはつづく。
地下鉄にのるビート・コンダクタ。
風景になじみすぎだ。
これほどミュージックビデオ映えしないアーティストもめづらしい。
宝のありかに到着。
「BLUE NOTE」のコーナーをあさる。
ちなみにこの曲は、ピアニストのジーン・ハリスが、
六八年にブルーノートにふきこんだ録音を元ネタにする。
意気揚々と、戦利品をレジにさしだす。
こいつは大漁だぜ!
はやくウチにかえつて皿をまわしたいなあ。
レコ屋をでた途端、異変にきづいたマッドリブ。
なんだなんだ、LAがおかしいぞ。
街並が、ブルーノートのジャケットになつた。
でも音楽が好きなら、だれでも日常的に、
街できこえないはずの曲が耳にひびいている。
まあ、わるくない。
これはこれでクールだよな。
帰宅してすぐ、ターンテーブルにむかう。
名盤、珍盤、駄盤。
すりきれたヴァイナルが、数十年ぶりにビートを奏ではじめる。
そして、この街の鼓動も止むことはないだろう。
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小説・翻訳・映画 ― 『スモーク』
スモーク
Smoke
出演:ハーヴィー・カイテル ウィリアム・ハート ハロルド・ペリノー・Jr
監督:ウェイン・ワン ポール・オースター
制作:アメリカ・日本・ドイツ 一九九五年
[DVDで鑑賞]
難解な小説をかくポール・オースターが、ニューヨーク・タイムズによせた短編が、
心あたたまる「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」。
それをよんだ映画監督のウェイン・ワンが作家に連絡したところ、
瓢箪から駒がでる様に、『スモーク』という映画がうまれた。
明示はされないが、実質的にワンとオースターの共同監督作品らしい。
映画ができる経緯が、もうひとつのクリスマス・ストーリーだ。
しかしボクは、よくわからない。
小説家という職種は、紙のうえで神のごとく振る舞えるのに、
なぜわざわざ、小説の映画化なんて骨折りをするのだろう?
オースターと同世代の作家である村上春樹は、
神が下界におりて労働に汗をながす理由を、よく問われる。
というのは、これまでずいぶん多くの人に
「村上さんは本職が小説家なのに、そしてけっこうお忙しいでしょうに、
どうしてそんなに熱心に翻訳をするのですか」というような質問を受けてきたし、
僕自身、自分がどうしてこんなに一生懸命、
寸暇を惜しんで翻訳に励まなくてはならないのか、
ときどき不思議に思っていたからだ。
村上春樹 柴田元幸『翻訳夜話』(文春新書)
素朴な疑問をはぐらかす口ぶりが、いかにもハルキ調だ。
神が秘密をかくすなら、自分でさぐるしかない。
映画をつくることは、小説の翻訳に似る。
原作では、チンピラのロバート・グッドウィンが葉巻店で、
「クズみたいなペーパーバック(trashy paperbacks)」を万引きする。
だが映画で盗まれるのは、エロ雑誌だ。
映像言語に訳出すると、単行本をぬすむ男はインテリにみえるから。
上でひいた『翻訳夜話』には、村上春樹と柴田元幸がそれぞれ物した、
「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」のふたつの訳文が掲載されている。
柴田がえらんだ訳語は「アホなペーパーバック」。
ハルキの直訳調よりずつと、やるせない。
友人とつておきのクリスマス・ストーリーをきいた、
作家ポールに扮するウィリアム・ハートが、感慨ぶかげに感想をもらす。
It was a good deed, Auggie.
オーギー・レン役のハーヴィー・カイテル。
善行をほめられ、照れているのか。
友人の反応がまつたく予想外で、おどろいたのか。
それとも、自分の法螺話の出来に満足しているのか。
複雑で、含みのある芝居だ。
日本語への翻訳をくらべよう。
村上春樹は、「それは善き行ないだよ、オーギー」。
あえて硬質な訳語をえらび、原文の宗教的な含意をのこしている。
形だけでも敬虔でないクリスマスに、意味があるだろうか?
対する柴田元幸は、「いいことをしたじゃないか、オーギー」。
歯のそろわぬ幼子でも飲みこめるほど、噛みくだいている。
しかし、それは読者を甘やかすためではなく、計算づくの演出だ。
村上 柴田さん、ポールに思い入れが強いんじゃないですか。
柴田 いや、ここについては、ここでポールがすごく乗せられていて、
その後、オーギーの目を見たら、アレッと思うという、
そのコントラストを出したかったんだと思う。
同書から引用
アレッ、わたしは乗せられてたのか?
俳優は紫煙をくゆらせ、コンマ数秒の間合いで空気をかえた。
すぐれた翻訳家も、ただその一語に心血をそそぎ、演出をほどこす。
村上の「忠実な訳文」より、短編の劇的な本質がさらけだされる。
映画も翻訳小説も、完成品はむなしい虚構にすぎないが、
つくりだす作業そのものは、地道な実務だ。
まつさらな白紙に世界をくみたてる、どこか詐欺めいた小説の創作より、
労多くても、やりがいのある仕事なのだろう。
映画をつくりたかつた村上春樹は、早稲田大学の演劇科にすすみ、
ジャズ喫茶経営をへて、なにかのまちがいで人気作家となる。
そして飽きもせず、生計の手段である創作のかたわら、
いまもヘタクソな訳業をつづけるのは、学生時代の夢をかなえるためだ。
翻訳とは、一種の映画制作だから。
今回の記事は、「ブログ DE ロードショー」第八回にあわせたものです。
選定担当のユウ太さん、味わいぶかい作品をありがとうございました!
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