海賊より貪欲な ― 『パイレーツ・ロック』

 

 

パイレーツ・ロック

The Boat That Rocked

 

出演:フィリップ・シーモア・ホフマン トム・スターリッジ ビル・ナイ

監督:リチャード・カーティス

制作:イギリス・ドイツ 二〇〇九年

[新宿武蔵野館で鑑賞]

 

 

 

一九六〇年代のイギリスが、音楽の革命の中心地だつたことは、

のちの世代でもしらぬ者はいないが、

そのラジオ放送が悲惨なほど保守的だつたとは意外だ。

ラジオ局自体、公共放送のBBCしか存在せず、

ポップミュージックをながす番組はほとんどない。

当然、若者は不満をつのらせる。

そこで目をつけたのが海の上。

海岸より三マイルはなれれば国内法が適用されないから、

船上から二十四時間すきな音楽をながし放題!

この文字どおりの「海賊放送」で跋扈する、八人のDJの物語が本作だ。

いまさらロックを、反体制の象徴とまつりあげても鼻白むが、

海賊放送をつぶそうとするロック嫌いの大臣をからませる、

『ラブ・アクチュアリー』のカーティス監督の作劇は、けれんがない。

 

 

 

あいかわらず女優をかわいく、そして小憎らしく撮るひとだ。

 

 

男ばかりの船にやつてきた、タルラ・ライリー(Talulah Riley)。

この監督は黒髪の女がすきなのだろう。

はなれぎみの垂れ目が子犬をおもわせ、庇護心をかきたてる。

そして「タルラ」つて名前が、なによりかわいらしい。

気弱な主人公のトム・スターリッジとよい雰囲気になるが、

コンドームがどうとかいう、男同士の内緒話を耳ざとく聞きつけ、

「わたしがすぐ寝る女とおもつたの!?」と激昂する。

その怒りはもつともなのだが、

 

 

スターリッジがちよいと目をはなした数分後に、

まえからファンだつたという、おデブなDJとこんなことに。

純情な主人公は、レナード・コーエンをききながら、

ほろにがい失恋の味をかみしめる。

 

 

別の腰ぬけDJのもとに嫁いできた、ジャニュアリー・ジョーンズ。

 

 

はじめて夜のあと、朝の紅茶ものまずに、船にのりこんだ目的をつげる。

この結婚は十七時間でおわつた。

英国政府を嘲弄する海賊も、美女には手玉にとられるばかり。

 

 

 

 

 

アメリカ人DJとして、フィリップ・シーモア・ホフマンが出演。

オシャレ度も愛嬌も皆無だが、逆にその鈍重な個性が、

うわつきがちな音楽映画を、碇の様につなぎとめる。

正直ボクは、大物きどりの自惚れで太鼓腹をふくらませた、

このブタマン、もといホフマン氏が好きではないが、

船上での五週間の共同生活ではぐくんだ団結心のせいか、

彼にはめづらしい、団体行動としての芝居をみれてよかつた。

 

 

名をあらそうDJとの、マストのぼり対決での一コマ。

豚もおだてりや木にのぼるというわけで、

カーティス監督の、役者をその気にさせる演出術は健在だ。


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苑田 謙

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