アコギな稼業 ― 『パティ・スミス:ドリーム・オブ・ライフ』

 

パティ・スミス:ドリーム・オブ・ライフ

Patti Smith: Dream of Life

 

出演:パティ・スミス レニー・ケイ オリヴァー・レイ

監督:スティーヴン・セブリング

制作:アメリカ 二〇〇八年

[シアターN渋谷で鑑賞]

 

 

 

一九四六年にうまれた、アメリカのミュージシャンで詩人、

パティ・スミスを、十一年の長きにわたり追つた記録映画。

日常生活、ツアー、つぶやき。

ただそれだけの百九分なのに、目がはなせない。

くつろいだ姿勢で、カメラのまえでもらす言葉のひとつひとつは、

たくまざる即興詩として、かすかに韻をふむだけでなく、

石碑にきざむかの様にゆるぎない。

櫛がとおるか心配になる長い髪、くたびれた黒い服。

ボクもパティも、女に化粧をしいる社会にいるのに、

そんなつまらぬしきたりの存在を、映画が終るまで忘れていた。

なのだけど。

その服は、プラダやコム・デ・ギャルソンだつたりする。

詩人はズルいよね。

 

 

 

作中で、画布にむかい木箆をはしらせながら、

ジャクソン・ポロックの逸話を披露する。

ピカソの画集をみて、ポロックがさけんだ。

ピカソは、すべてやつてしまつた!

もうオレが描くべきものなどなにもない!

失意のポロックは、『ゲルニカ』中央の馬に目をとめる。

大口をあけ、だらしなくヨダレをたらしている。

そう、あの馬のヨダレこそがポロックに、

「ドリッピング」技法の霊感をあたえたのよ。

すごくアメリカ的な藝術よね。

美術史をつらぬく奇想天外な話に感心したボクは、

帰宅して『ゲルニカ』の画像をしらべてみたが、

ヨダレはみつからなかつた。

これだから、詩人は。

 

 

 

顔も手足も長いパティだが、指はもつと長い。

特に第二関節とつけ根のあいだが。

ボクは女の手がすきなので、半分ねていても、

うつくしい手だけは見のがさない。

そのあとは背もたれにうづまり、またボンヤリ。

どうにも注意が散漫で、情緒にかける、

トコトン散文的な人間なのです。

対して詩人は、ことばを珠玉にかえるだけでなく、

自身の人生までをも、一篇の詩にしてしまう。

パティ・スミスは性にあわない人だつたが、

この映画は、一番すきな作品になりそう。


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テーマ : 洋楽ロック
ジャンル : 音楽

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苑田 謙

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