三つ子の魂 ― 『3時10分、決断のとき』

 

3時10分、決断のとき

3:10 to Yuma

 

出演:ラッセル・クロウ クリスチャン・ベイル ピーター・フォンダ

監督:ジェームズ・マンゴールド

制作:アメリカ 二〇〇七年

[新宿ピカデリーで鑑賞]

 

 

 

あきらかに客層が異常だ。

ヨレヨレのシャツをきた白髪頭の群れ。

西部劇の夢想から覚めない、もと若者たち。

彼らの口癖は、「最近の映画はつまらないね」。

いや、話さなくてもわかるさ。

イマドキのシネコンの仕組みににまごつく、

おぼつかない物腰を見ただけで十分。

オレもいづれミジメに老いぼれてゆくだろうが、

あんな風に歳はとりたくない。

いつだつて、現実をうけいれたい。

まあ、無理だろうが。

 

 

 

ギャングの頭目「ベン・ウェイド」を演じる、

ラッセル・クロウの悪党ぶりは一見の価値がある。

衝動的に人を手にかける、野蛮な殺人者でありながら、

なにかと『箴言』を引いて教訓をかたる、宗教的人物。

そんなねじくれた内面を、牛のような胃袋で咀嚼する。

 

聖書に目を通すなんて、

ウェイドにとっては決して楽しいものじゃない。

でも、実はそこに慈悲深い神なんて信じていない、

という彼の姿勢が出ていると思ったんだよ。

ウェイドは旧約聖書の中で行き詰まって、

そこから抜け出せなくなっているんだ。

 

プログラム「プロダクション・ノート」

 

あいかわらず、雲をつかむようなことを呟いているが、

牛には胃袋が四つあると聞くし、彼の腹藝を、

やすやすと言語化できると思うほど、こちらもウブではない。

 

 

 

夕食の一幕が、もつとも印象ぶかい。

満座で祈りをささげるなか、音をたて肉にくらいつく。

批難がましい視線には、聖書の引用で応酬。

しばらくして、味つけが気にいらないのか、

女主人の目をぬすみ、塩かなにかをふる。

まがりなりに、作り手に義理だてて。

横暴だが、不作法ではない。

 

 

お約束の早撃ち。

鈍重な体で、果断な銃さばき。

『クイック&デッド』(一九九五年)でもやつていた。

案外、ガンマンが好きなのだろう。

いくつになつても、男はこれだ。


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苑田 謙

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