文明の象徴 ― カハナー『AK-47 世界を変えた銃』

 

AK-47 世界を変えた銃

AK–47 : The Weapon that Changed the Face of War

 

著者:ラリー・カハナー (Larry Kahaner)

訳者:小林宏明

発行:学習研究社 二〇〇九年

原著発行:アメリカ 二〇〇七年

 

 

 

二〇〇五年公開の映画『ロード・オブ・ウォー』の撮影で、

三千挺のAKライフルが必要になつた。

監督のアンドリュー・ニコルは、

複製品を調達するつもりだつたが、費用をしらべて仰天。

「ホンモノ」のほうが安い。

早速実銃を購入し、撮影後に売りはらう。

映画監督が、電話一本で武器商人になれる時代。

 

 

 

AK-47の設計者であるミハイル・カラシニコフは、

戦車の車長として、第二次世界大戦に参加した。

ドイツ軍の「電撃戦」の威力を、そこで目撃する。

爆撃機が拠点を破壊したあと、戦車と自動車化歩兵が敵陣ふかくに侵入。

カラシニコフ軍曹は重傷をおつた。

独軍歩兵のサブマシンガンに薙ぎたおされた同胞のため、

祖国からドイツ人を追いはらうための武器を開発することを、

機械工は病院のベッドで誓つた。

その名のとおり一九四七年に採用されたAKライフルには、

独創的な機構はつかわれていない。

どんな悪条件でも作動する信頼性と、

時間とコストをかけずに生産できる単純性を追求した結果だ。

外観も無骨そのもの。

バナナのようにまがつた弾倉など、ブサイクともいえる。

設計者は、デザインにこだわるのは反ソヴィエト的と考えていた。

この銃には、ソヴィエト連邦の精神がフル装弾されている。

 

 

 

制式採用されたとき、憎き仇のナチス・ドイツは地上になかつたが、

さらなる難敵であるアメリカ軍を撃つため、AKはかりだされた。

ベトナム戦争のことだ。

米軍歩兵に支給されたM14は、第二次大戦で活躍したM1の改良型で、

フルオートマチックでの射撃にむいていない。

相対するAKは、あつかいが容易で、弾づまりなどと無縁。

密林での出会い頭で、さきに必殺の銃弾をバラまいた。

のちにM16なる制式名をあたえられる、AR-15はすでに存在していたが、

利権をまもりたい軍官僚による、インチキ試験で排除されていた。

さすがに誰の目にも、ライフルの性能差が明白になつた一九六六年夏、

国防長官マクナマラは大慌てで、十万挺以上のM16を戦場におこりこむ。

しかし、この措置も失敗におわつた。

故障した新兵器をかかえて死んでいる米兵が、多数発見される。

軍が弾薬を変更したことが原因らしい。

官僚主義の権化とみなされているソヴィエトのほうが、

歩兵武器の技術革新をはたしたことが、実に興味ぶかい。

AKはいまだに米軍に対し優勢で、けふもイラクで、

ハンヴィーの装甲を七・六二ミリ弾がつらぬいている。

 

 

 

勿論アメリカは、やられつぱなしではない。

アフガニスタンでソヴィエト軍とたたかうイスラム戦士を、

一九八〇年代のCIAが熱心に支援した。

戦場にある兵士が一番よろこぶもの、つまりAKライフルを、

胡散くさい流通経路を通じてあたえた。

このころからAKは、国境をこえた「文明の象徴」として、

単なる武器をこえた威信をほこるようになる。

ウサーマ・ビン=ラーディンは、AKを撃つところをビデオにとらせ、

みづからを反体制の戦士として演出。

サッダーム・フセインも、このライフルの愛好家として有名で、

銃身をかたどつた悪趣味なモスクをたてた。

もうすこしマシな例をあげると、モザンビークの国旗には、

鍬と本とAKライフルがあしらわれている。

 

 

国防、労働、教育にはげむことを意味する。

内戦が収束にむかうころ、AKはおとなりの南アフリカ共和国にながれ、

人種隔離政策にくるしむ黒人の若者に手にわたつた。

AKライフルは、現代の世界でもつとも有効で、

唯一といつてよい異議申したての手段だ。

AKをもつてはじめて、男は一人前とみとめられる。

PCや携帯電話より安価で、使い勝手がよく、故障がすくない、

日常生活になくてはならない必需品。

いわば、おのれの生命を担保としたクレジットカードだ。




AK‐47世界を変えた銃AK‐47世界を変えた銃
(2009/04)
ラリー カハナー

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