ザッツ・エンタテイメント! ― JFL 前期第16節 武蔵野FC 対 MIOびわこ

 

JFL 前期第16節 横河武蔵野FC 対 MIOびわこ草津

 

結果:1-3 (0-1 1-2)

得点者

【武蔵野】後半22分 斎藤広野

【びわこ】前半15分 田中大輔 後半37分 木下真吾 後半38分 アラン

会場:武蔵野市立武蔵野陸上競技場

[現地観戦]

 

 

 

最悪!

ヤボ用を午前中に片づけられず、一旦帰宅したのが一時十分。

すでに試合ははじまつている。

前売券が勿体ないので、後半だけでも見にゆくことにする。

夏仕様の髪形になつたのはよいが、

おのれの段取りの悪さに腹がたち、落ちこんだ。

東西線、中央線、関東バスをのりついで、

後半がはじまる前に、どうにか到着。

 

 

三鷹のキッズチアチーム、「Cookies」の晴れ姿をみれました。

一気になごむ。

武蔵野FCではなく、娘を応援しにきたママ軍団は大喜び。

見事な演技をみせた小さなチアリーダーたちは、

客席にもどつても飛びはねつづける。

かわいらしいおサルさんお嬢さんをながめて肴にしつつ、

自宅の冷蔵庫から持つてきた「金麦」をいただきます。

やつぱりJFL最高!

融通のきかない官僚主義がはびこり、

缶の持ちこみを禁ずるJリーグなんて、もう行く気がしない。

 

 

 

フィールドの向こうの、貧相な手動式の掲示板に目をやる。

「0-1」。

負けていたのか。

しかし、クッキーズにあおられた武蔵野が、攻勢にたつ。

みるのは二度目だが、7番の太田康介にまた唸らされた。

要所でボールをうばうし、そこからの展開が的確。

ツボをおさえた働きぶりは、非の打ちようがない。

後半22分。

武蔵野らしい外周りでの連携から、内側に切りこんだ、

左サイドバックの斎藤広野のシュートがきまる。

小ぶりのスタンドがゆれる。

ママもついでに歓喜!

クッキーモンスターはウロウロ!

なんにせよ、「本拠地での逆転勝利」という、

もつともおいしい段取りへの期待がたかまる。

 

 

 

追加点がとおい。

退屈きわまつたクッキーモンスターは、

母親に芝生席に行つてよいかたずねる。

「イイけど、コロコロしたらダメよ!」

よくおわかりで。

主婦業をいとなむものが、洗濯の手間を忘れることはない。

サポーターも、この冷静さをみならうべき。

武蔵野は、のこり二試合に天皇杯出場権がかかつており、

観客の一部は相当ムキになつていた。

押し上げろ! フォローしろ! 逆サイド!

ボクが選手だつたら、邪魔で仕様がないよ。

せつかく側面をくづしたと思つたら、

「クロスあげろ!」と「フォローきてるよ!」の声が同時にとぶ。

混乱させてどうするの。

マイナーなカテゴリーの観客にありがちだが、

贔屓のチームが身近に感じられるのをよいことに、

必要以上に感情移入してしまう。

自分が、選手や監督になる。

風変わりな柄のポロシャツをきた男がいたが、

そいつは90分間ずつと、ブツブツと実況中継をしていた。

クッキーモンスターをおびえさせながら。

 

 

 

のこり10分をきつたところで、2失点。

最後に、琵琶湖の苦い水をのまされた。

それにしても滋賀県にまで、Jリーグ加盟を目指すクラブがあるとは。

そもそも面積の大半を、巨大な湖がしめているはずなのに、

サッカー場に利用できる土地があることに驚く。

とはいえ、琵琶湖のアオコのような色のチームが、

技術面で武蔵野を上まわつているように感じた。

JFLは、近江の湖底より奥がふかい。

ボクももつと勉強しよう。

だが帰宅途中、金麦の缶を席に置いたままだと気づいた。

どうにも段取りが悪い。

もしかしたら、となりの席のやさしそうなママが、

気をきかせて捨ててくれたかも。

ゴミすら捨てられない、ボクがいうのもなんですが、

武蔵野FCは、クッキーモンスターも、そのママも、

気軽に応援できるクラブであつてほしい。


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テーマ : サッカー
ジャンル : スポーツ

変ホ短調で書かれた海戦 ― サルキソフ『もうひとつの日露戦争』

 

 

もうひとつの日露戦争 新発見・バルチック艦隊提督の手紙から

 

著者:コンスタンチン・サルキソフ

訳者:鈴木康雄

発行:朝日新聞出版 平成二十一年

 

 

 

ジノヴィー・ロジェストヴェンスキーは、

日露戦争で日本海海戦をたたかつた、「バルチック艦隊」の司令長官。

おどろくことに五年まえ、同提督が七か月半におよぶ大遠征の途上、

妻におくつた三十通の書簡の存在があきらかになつた。

 

 

青い線が、本隊のとおつた航路。

無事にウラジオストクにたどりつけば、

海戦史上の快挙として永遠にかたりつがれたろう。

周知のとおり、その栄誉は東郷平八郎にうばわれたが。

しかし、ロシア革命後の波乱の時代のなか、

ロジェストヴェンスキーの手紙を保管しつづけた子孫たちは、

歴史におほきな貢献をなした。

史上まれにみる惨敗の責任をおわされ、

愚将と評される提督の名誉を取りもどしたかはともかく、

航海中のかれの心境が、百年のときをこえ共感をよぶ。

 

私がペテルブルグを出発する直前、私はお前と一緒だった。

あの数日間のことを私はお前に心から感謝している。

あのような数日をまた過ごせることができるなら、

私はお前に何でも差し出すよ。

それなので、お前が“変ホ短調”的[暗く哀愁を感じさせる]

気分になっているのが、私にはとても残念だ。

 

帝都に革命の第一波がうちよせた一九〇五年。

ロシア的哀愁ともいえる、ひとつの世界が崩壊する音がきこえる。

 

 

 

居眠りしていたからウロ覚えだが、学校の授業では、

バルチック艦隊は「当時の世界最強」とならつたはず。

どうやら、過大評価らしい。

もともとが、旅順艦隊をたすけるために編成された寄せ集めで、

未完成の新造船や、時代錯誤のオンボロ船が混在した。

艦隊とよぶほどの艦隊ではない。

二年まえの日英同盟も効果を発揮し、

イギリスの圧力のせいで、ほとんどの港が使用できない。

同盟国のはずのフランスは風見鶏の本性をあらわにし、

戦局不利とみるや、ロシアへの協力をしぶつた。

たとえば、蒸し風呂のような灼熱のギニア湾で、

身うごき取れないほど石炭をつみこむ作業を、

ロジェストヴェンスキーは「地獄絵」とよぶ。

妻への手紙は愚痴ばかり。

たとえば、部下のエンクヴィスト少将の悪口。

 

この男は、私が想像さえしていなかった、とんでもないのろまだ。

頭が回らず、その上、耳まで悪い。

そのため、彼に命じていないことが聞こえたかのように錯覚し、

行動に移すことさえしばしばあるのだ。

 

艦上での最大のたのしみ、つまり食事にもうるさい。

 

フランス人のコック長はタンジールで下船してしまった。

下船に当たって、

彼は自分の後任にフランス人コックを指名した。

しかし、このコックも、調理の仕事は

自分でやらず、他人まかせだった。

結局、ろくでもないロシア人コックたちが調理を担当した。

ところが、ロシア人コックたちは

フランス人コック長に嫌がらせをし、彼も船を下りた。

今や何もできないコックだけとなり、

われわれはひどい料理を食わされている。

 

妻のオリガが理解できたか分からないが、

戦略についても率直に書いた。

新聞記事で、日本軍によつて旅順艦隊が全滅、

旅順要塞も陥落させられたことをしらされる。

それでも司令官は、時間こそが唯一の味方だと確信していた。

黄海海戦と旅順封鎖戦の際にうけた傷をいやす前に、

東郷提督ひきいる連合艦隊を叩かなくては。

それ以外に、ウラジオストクにつづく道はない。

絶望的な戦局にあつても迷いの形跡はみられず、

すくなくとも、ボクのしる「愚将」の人物像からほど遠い。

 

 

 

さきほど「オリガが理解できたか分からない」と書いたが、

勿論そこに、性差別的な意図はない。

だれよりもサンクトペテルブルクの官僚が、状況を読みちがえた。

増援をまつようバルチック艦隊に命じ、

マダガスカル島沖合で無為な時間をすごさせる。

「スピード」ではなく、「数」で勝て。

結局、対馬東沖での二日間で、艦隊は撃破された。

ロジェストヴェンスキーも重傷をおい、捕虜となる。

一九〇九年に、その傷がもとで死去。

終戦後に敗北の責をとわれ軍法会議にかけられるなど、

その死は失意にみちたものだつたろう。

ただ本書には、たたかう男の心の支えのありかが印されている。

オリガ夫人のことだ。

この人はやたらと嫉妬ぶかく、看護婦として従軍中の知人の娘と、

夫が浮気をしていると信じていた。

「お嬢さん方の一人と結婚することを許すわ」などと手紙に書くくらい。

夫人の名誉のために付言しておくと、

ロジェストヴェンスキーは美男子として知られていたとか。

 

 

それにしても、文字どおりの修羅場のなか、

妻への弁明に汲々とする提督をおもうと、ほほえまずにいられない。

決戦まえの最後の文面は、あまりに悲哀にみちている。

 

お前たちのところでは、私のことを心配しているほかに、

社会に蔓延する気落ちは、全般的な秩序欠乏や、

これまでどうやら倒れずにやってきた巨大なロシアが

立脚してきた土台の崩壊の兆候がもたらす不安のためである。

お前たちのことが気の毒でたまらない。

 

私の大事な人、私を赦してくれ。

 

もしかすると、私は、お前に対する最後の罪を

これから犯そうとしているのかもしれない。

少なくとも、私は生きて帰れるとは思えない。

生還することは、私にとっては

まったく異常な出来事のように思える。

 

予感のおほくは現実となつてしまつたが、

それでもこれらの便りが、時代の波に揉みけされずに残つたことが、

海の戦士が、伴侶から深く愛されたことの証明とおもえる。




もうひとつの日露戦争 新発見・バルチック艦隊提督の手紙から (朝日選書)もうひとつの日露戦争 新発見・バルチック艦隊提督の手紙から (朝日選書)
(2009/02/10)
コンスタンチン・サルキソフ

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