江戸川をこえて ― 第六節 FC東京 対 ジェフ千葉

『J's GOAL』

 

J1 第6節 FC東京 対 ジェフユナイテッド千葉

 

結果:1-2 (1-0 0-2)

得点者

【東京】前半18分 石川直宏

【千葉】後半41分 巻誠一郎 後半44分 深井正樹

会場:国立競技場

[現地観戦]

 

 

 

ところはコクリツ。

ソウルオリンピック金メダル獲得者の鈴木大地が、炎をともす。

スタジアムにとぐろをまく白煙。

五輪誘致の宣伝だ。

オレの都民税が燃えている。

むかいのスタンドには、「TOKYO 2016」とかかれた巨大な横断幕が。

試合前にオリンピックの心配をするとは、随分と余裕がある。

リヴァプールFCで有名な、「You'll Never Walk Alone」がひびく。

敵将のアレックス・ミラーが9シーズン、

かのクラブで指導していたことは知つているだろう。

内心はづかしかつたりして。

「愛してる東京 ララララララ」の歌も苦手。

よく人前で、愛してるとか歌えるなあ。

東京都民になつて大分たつけれど、魂はまだ隣国にのこつているようだ。

 

 

 

千葉は第5節をおえて、3分2敗の勝ち点3。

東京は、2勝3敗の勝ち点6。

現在の力関係をなぞるように、試合がながれる。

東京は、長友と徳永の両サイドバックがつよい。

相対するのは、右の米倉と、左の深井。

率直にいつて、見劣りする。

外側の空間に、まるで侵入できない。

のこされた選択肢は、巻誠一郎にむかつて放りこむことだが、

屈強な佐原秀樹に幾度となく撃墜される。

陸空ともに、FC東京が制圧。

わが千葉の側面をまもるのは、右に坂本、左に青木。

これまた風下にたつ、といわざるをえない。

前半18分、石川直宏が糸をひくようなドリブルで坂本をかわし、

内側にしぼりながら、サイドネットをゆする。

そのまま前半終了。

 

 

 

ビールでふくらんだ膀胱の中身を排泄していると、

となりで男の子が予言をはじめた。

父親に下着をおろしてもらつていたから、幼稚園児かな。

とはいえ利発そうな子で、早口ではなす。

昨季最終節の、おなじ顔あわせによる、

あの逆転劇の再現をねがつていた。

いわゆる、「フクアリの奇跡」。

「後半に谷澤と新居がでれば、4点とれるよね!」

やさしげな父親は、相槌をうつ。

しかし皮肉な独身者のオレは、こころのなかで忠告した。

ぼうや。

けふは、キミが人生の厳しさをしる日になりそうだね。

あたらしいビールを手に、席にもどる。

昼間は半袖がふさわしい暑さだつたが、

八時ともなると、厚手のブルゾンの前をあわせても寒い。

体内の水分を排出したからか。

ビールのつめたさにガタガタふるえつつ、

オフサイドと判定された徳永のシュートに、肝までひやす。

 

 

 

ジェフ千葉より、自分の体調のほうが不安になるが、

アルコールがまわつたのか、しばらくして体があたたまる。

後半18分に、谷澤達也を投入。

選手交代が直接効果をあらわしたようには見えないが、

千葉のシュートが急にふえだす。

クロスバーではねる、巻のヘディングシュート。

もはや暑いとか寒いとか、いつてられる形勢ではない。

現金なものだ。

だが、のこりは5分。

クソ、やはり人生は厳しいのか。

41分、左のアレックスからコロコロとクロスがころがる。

ペナルティマークあたりで一人ぼつちの巻をみて、目をうたがう。

同点。

あとで動画をみても、なぜ佐原が目を離したのかわからない。

忍耐力の差か。

空中戦で86分間優勢でも、佐原には負荷が蓄積していた。

巻誠一郎は、よろこぶ素振りすらみせず、

ボールをかかえてセンターサークルに全力疾走。

追加時間に、深井が裏にぬけて勝ちこしゴール。

 

 

 

「オレたちの誇り ジェフユナイテッド」と、

まわりのFC東京サポーターにきこえないように歌いながら、

都営大江戸線で帰宅の途につく。

トイレで隣りにいた少年は、この試合からどんな教訓をえただろう。

きつとその脳裏には、試合終了後にゴール裏でほえる巻の姿が、

焼きついているにちがいない。


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苑田 謙

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