戦慄の哲学者 ― フリクション『DEEPERS』

「新宿154」(urasimaru)

 

DEEPERS

 

フリクション(FRICTION)のEP

制作:TRIPPIN' ELEPHANT RECORDS 平成二十一年

 

 

 

『ゾーン・トリッパー』からかぞえて、十四年ぶりの作品。

よいギタリストが見つからなかったとか。

 

結局オレとか大鷹くんとかはロックの歴史を

そのまま見てきてるからあらゆるタイプを知ってるわけじゃん。

いま弾いてる人って何か足りないんだな。

ノイズっていわれるものが出てきて、

ノイズを意識しなくても身体でそれをわかってる人もいるけど、

そうするとリズムがダメとか。

オレとしては全部が欲しいわけ。

 

『ミュージック・マガジン』四月号

大鷹俊一による、レックのインタビュー記事から引用

 

ノイズとリズム、両方をだせるギタリスト。

いまの東京で、ジミヘンをさがすようなもの。

十数年も沈黙するわけだ。

そんなレックがゆきついたのは、ベースとドラムの二人編成。

なんたるいさぎよさ。

ベース音をエフェクターにとおした「ニセギター」で、ノイズをばらまく。

ライブではベースをサンプリングしてからエフェクターにきりかえ、

その上でニセギターソロを展開と、器用な真似をする。

それは、「ソニック・ユース以降、ロックバンドはどうあるべきか」

という難問に対する、ひとつの明快な解答だ。

現代のギタリストはノイズとたわむれ、混沌たる光景を巧みににえがく。

反面、ギター特有のリズムがうみだす快感がかろんぜられ、

ギターヒーローがうまれなくなつた。

そんならギターいらねえわ、つてことか。

 

 

 

このEPの五曲でもつとも気にいつたのは、

ジミ・ヘンドリックスの「Fire」のカバー。

ベースでヘンドリックス!

レックが側溝にツバでもはくように"Right"とつぶやき、

中村達也のドラムが、つんのめりながら加速。

"Let Jimi take over"のソロも、ベースで。

鼓膜にささるスネアをふみしめて、

ニセギターが中央特快のごとくかけぬける。

カラカラに乾ききつた音は、いまの時代ならでは。

レッチリも「Fire」をカバーしているが、

"Let my man, John Frusciante take over"みたいに、

歌詞をかえて歌つているはず。

レックはそのまま。

ジミ、いないのに。

ギタリストさえいない。

いなせだ。

インタビューでは、いま一番すきなギタリストにフルシアンテをあげる。

「レッチリを見てると、アーティストなのはフルシアンテだけだよね。

あとの人たちはミュージシャンだけど」。

ふかい、ふかすぎる。

ちなみに、フルシアンテについての拙文は、以下のリンクから。

「最後のロックンローラー ― ジョン・フルシアンテ『ザ・エンピリアン』」

 

 

 

以下のライブでの「Zone Tripper」は、本作の収録曲ではないが、

この二人による共闘の破壊力が一目瞭然なので、のせた。

みないと損しますよ。

平成十九年の、フジ・ロック・フェスティバルかな。



速度、重量、密度。

すさまじい。

中村が、飢えた虎のようにあばれる。

レックは軽やかにいなしつつ、ときにその背にのつて吠える。

この堅密な音塊にわりこめるギタリストは、はたして世界に存在するのか。

 

たぶん怖いんだよ。

安心できる場所なんだよライヴ・ハウスが。

そこが平和なんだよ。


昔はライヴ・ハウスで暴れるやつとかいたけど

今いないんだよね(笑)。

いろんな不安が広がっているから

ライヴ・ハウスに行くとホッと出来るんじゃないかな。

 

同記事から引用

 

ふかすぎる。

十四年の沈黙の季節にも、音楽と時代について、

徹底的に思索をつづけたことがわかる。

安穏と居眠りする音楽業界に、

ニセギターという血刀をひきさげてもどつたレックは、

ライブハウスで、露骨な現実をさらけだすつもりらしい。




DEEPERSDEEPERS
(2009/03/25)
FRICTION

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苑田 謙

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