超大作ミートボールスパ ― 『ハンコック』をみて

ミートボールスパ

ハンコック
Hancock

出演者:ウィル・スミス シャーリーズ・セロン ジェイソン・ベイトマン
監督:ピーター・バーグ
(2007年/アメリカ/92分)
[新宿ジョイシネマ3で鑑賞]

※注意!本エントリもさりげなくネタバレしています!


いきなりで申しわけありませんが、インタビューからの引用です。

君の言う通り、本当に毎日ものすごい量の映画の脚本が送られてくるんだ。
その中から、「これ!」という一本を選ぶのは大変なんだけど、
いつも探しているのはビッグなアイデアだね。
セリフを一つ言えば、どんな人でも観たくなる……そんな映画だよ。
例えば『ハンコック』なら、“アル中のスーパーヒーロー!”(笑)。
この一言を聞いただけで、人はこの映画を観てみたくなる。
わかるだろ?
『アイ・アム・レジェンド』は、“地球最後の男”。
すぐにでも人の興味を引き付ける。
だから作品を選ぶときは、必ずコンセプトを大切にしてるんだ。

『ハンコック』ウィル・スミス 単独インタビュー

2007年のハリウッドの稼ぎ頭であるウィル・スミス(「フォーブス」調べ)。
世界中の俳優の嫉妬を一身にあつめる境遇にあるわけだが、
脚本の山にうずもれて生活するのも楽ではないかもしれない。
どの話がオレの個性にあってるかな?
ヒットする可能性がたかい脚本はどれかな?
おもしろい作品になりそうなシナリオは?
わかるわけがない。
東京の低収入者であるわたくしも結構ながく映画をみてますが、
何度も予告編をみて、ヤフーのユーザーレビューを熟読しても、
劇場にゆくまで作品の出来なんてわかりません。
ましてや、ただの紙っぺらでその判断をつけるなんて!
「コンセプト」重視で脚本をえらぶスミス氏ですが、
すこしかんがえすぎなような気がします。
かれの友人であるトム・クルーズ氏が、
サイエントロジーとかいう新興宗教にはまっているのは有名ですが、
親しいスミス氏までとばっちりをうけて信仰をうたがわれたりしました。
いろいろとハタ迷惑な性格のクルーズ氏ではありますが、
この人の出演作をえらぶ感覚のするどさは神がかりです。
「トム・クルーズが殺し屋? え~、大丈夫かな」と半信半疑で出かけたあと、
そのあまりのカッコよさに酔いしれながら映画館を後にしたり。
多分直感でえらんでいるのでしょうね。


本作のウィルは「アル中のスーパーヒーロー」に扮しているが、
残念だが到底ハマリ役にはみえなかった。
たしかに興味ぶかい「コンセプト」ではある。
超人的な能力の持ちぬしが、せせこましい人間社会に適応できるだろうか。
おそらくもの珍しさゆえに疎外され、結局いじけた性格になってしまうはず。
それでも広報の専門家をやとってメディア対策をおこなえば、
まっとうなスーパーヒーローに更正できるかも。
うーむ、すでにこの四行で理念だおれの気配が…。
それに自分がお酒がすきだからわかるのだけど、
四六時中ダラダラと酒をのんでくらしていたら、
ウィルみたいな引きしまった肉体は維持できません。
周囲から白眼視されるあまり性格が卑屈になったという設定も無理がある。
なぜって、この役者は愛嬌がありすぎて嫌われ者にみえないんだもの。
そういう意味では『ハンコック』の台本は、
ジェイミー・フォックスの手もとにとどいた方がよかったかな。


シャーリーズ・セロンの役は、さえないPRマンの奥さん。
アメリカ合衆国に足をふみいれたことはないが、町内に身長177cmで、
モデル体形の金髪美女の主婦がゴロゴロころがっていないことは断言できる。
シャーリーズ奥さまは、夕飯になんとかスパゲッティとかいう、
ミートボールがたっぷりはいったトマトソースのスパゲッティをふるまうのだが、
ママの自慢料理に旦那と子どもは大満足。
だけど、これがまたマズそうなんだ!
なんでもミートボールスパはかの国の定番メニューだそうで。
ボク、日本のお母さんに産んでもらってよかったよ。
とはいえ、南アフリカがうんだ名花シャーリーズと、
アメリカの大味な家庭料理という取りあわせはなかなかの珍味。
そして、かの女も超人だと判明したあとのドタバタが一番おもしろかった。
本当は怪力のくせに、「ジャムの瓶があけられないわ」とかいって
非力アピールする女心がかわいらしい。
本作は『Mr.&Mrs. スミス』を意識してたてられた企画だとおもうが、
紋切り型のアクション場面をほどほどにおさえてオシャレなコメディにしあげた、
ダグ・ライマン監督の職人藝までは見ならわなかったようだ。
どこかでみたようなCGと、いい加減な殺陣に上映時間をくわれて、
役者同士の掛けあいによる芝居のうま味が犠牲になった。
コンセプトや配役はわるくないのだが、
素材がミートボールのように皿の上にころがっている感じ。
まあ、これが平均的なアメリカ料理の味なのかもしれないけれど。
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苑田 謙

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