ラブ&ピース列伝 ― 『リズム天国ゴールド』と任天堂

ラブテスター

リズム天国ゴールド
(2008年/ニンテンドーDS対応/任天堂)

『リズム天国ゴールド』を批評する準備をしていてふとおもった。
このゲームをこまかく分析することに意味があるのか、と。
たとえば魅力を箇条書きにすることはできる。

・「リズムにのる」ことに主眼をおいた簡潔さ
・つんくの参加による楽曲のよさ
・竹内高による超ポップなデザイン
・とぼけたテクストがかもしだす、ほのぼのした世界観
・タッチペン入力のアナログ的な手ざわり

でもなにかちがうんだよな。
なぜ、莫大な制作費を投じて高性能なマシンのためにつくったゲームより、
この素朴な小品がかがやいてみえるのか説明できていない。
だから客観的な記述ではなく、
この作品に関連する人物を列伝の形式でかたってみよう。
任天堂という不思議な会社の実体の一部がみえてくるはず。



大澤
(うつむいている右の人です)
大澤和義
企画開発本部開発部

企画、ディレクション、プログラムを担当。
大澤がどんな人物で、本作にどのようにかかわっているのかしるには
ココを読めば十分すぎるほど。
ただし、社長の岩田聡は部下の才能を過度に自慢する癖があるので要注意。
リンク先でも大澤のことを「求道者」とよび、その個性をめでている。
おもしろいのは、

ただ、いまのゲームづくりの現状でいうと、
なかなかこれぐらいの規模で、
つまり、中心メンバーが5人という規模では、
ゲームってつくれなくなってるので、
このチームの存在自体がすごく独特で、
非常に興味深いですね。


という部分。
ゲーム制作が重工業と化した時代のなかで、
家内制手工業の規模をまもっていることがひとつの奇跡。
それは岩田という理解者があってこそにちがいない。
ハリウッド超大作というより、人形アニメやドキュメンタリーのような。
オーケストラというより、ロックバンドのような。



アシュリー
竹内高
企画開発本部開発部

大澤の相棒。
ポップでキュートでファニーで、それでいて洗練された絵柄の持ちぬし。
この人がかいた絵本がほしい。
絶対うれるのに!
この人の信条は「優しいキモチ」。

作品作りに一番大切なのは「優しいキモチ」だと思います。
チームで一つのものを創り上げると言う事は、とても大変な事です。
自分の事をしっかり主張する事も大切ですが、
やはり仲間を気遣ったりするやさしいキモチも絶えず持って欲しいと思います。

Gpara.com クリエイターズ・ファイル

ロックバンドでいうならベーシストだろうか。
持ち前の気くばりで大澤をささえる。



ワリオ
松岡洋史
クリーチャーズ所属
(元・任天堂開発本部開発第一部)

大澤の元上司で、「おおきな影響をうけた人」。
『メイド イン ワリオ』(2003年)のチーフディレクター。
五秒間の破天荒なプチゲームを軽快につないだ『ワリオ』はあまりに革新的で、
『リズム天国』も『ワリオ』なくしてはかんがえられない。
岡本太郎を愛する藝術家肌の開発者だ。
また「クリエイターズ・ファイル」からの引用。

ゲームは芸術です。
ゲームに限ったことではありませんが、名作と言われるものは人に感動を与え、
時には人生を良くも悪くも左右させてしまう力があります。
ですから我々作り手側としては、作品のメッセージに責任を持ち、
子供からお年寄りまですべてのユーザーに対して納得してもらえるような
作品作りを心がけるべきだと思っています。

Gpara.com クリエイターズ・ファイル

すくなくともオレは「ゲームは藝術だ」とおもっているが、
それを堂々といいきっている人はあまりみたことがない。
ロックな男だ。
新作の話は全然きかないが、どうしているのだろう。



よしお
坂本賀勇
企画開発本部企画開発部課長

大澤のいまの上司。
『ワリオ』『リズム天国』シリーズにもふかくかかわっている。
『メトロイド』など、かずかずの任天堂の名作の生みの親としてしられるが、
オレにとってはなんといっても熱愛する『ファミコン探偵倶楽部』の原作者。
ほかに『カエルの為に鐘は鳴る』『カードヒーロー』などのシナリオが賞賛される、
任天堂ではめずらしい個性をもった開発者だ。
坂本がひきいる企画開発本部は携帯機むけの作品の開発がおおく、
どちらかといえば任天堂において日陰の部署だったといえるが、
ニンテンドーDSの大あたりによって存在感が急激にましている。



軍平さん
横井軍平

1996年まで任天堂に在籍。
翌年に交通事故で死去。
現在の企画開発本部は、横井がいた「開発一部」のながれをくんでいる。
すでにながくなってしまったこのエントリの末尾で、
軍平さんの業績をかたりつくすことは不可能だ。
もちろん、字数をついやしたところでかたれる自信はないけれど。
軍平さんに不案内なかたは自分でしらべてくださいね。
「枯れた技術の水平思考」という思想の持ちぬしで、
機械の演算能力とリアルなグラフィックの競争にあけくれて
アイデアが枯渇したゲーム業界に警鐘をならしていた。
最先端技術による重工業がいかにむなしいものか。
横井をうしなったあとは、宮本茂を中心とする任天堂でさえ、
それに気づくのに十年ちかくをついやした。
横井軍平はかぞえきれないほどのヒット商品をうみだしたが、
時代はふたたびかれをさらにふかく理解しつつある。
冒頭にかかがげた写真は、軍平さんが開発した『ラブテスター』。
カップルが手をつないで愛情度をはかるという玩具で、
1969年に発売された人気商品だ。
そう、「ラブ&ピース」の思想がゲームの世界にかえってきたのだ。
宮本茂ではなく、横井軍平の弟子たちの手によって。


リズム天国ゴールドリズム天国ゴールド
(2008/07/31)
Nintendo DS

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苑田 謙

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