痙攣するガール・ネクスト・ドア ― 篠田麻里子写真集"Pendulum"

篠田麻里子写真集 Pendulum
(楽満直城 撮影/2008年/ワニブックス)

1986年うまれの篠田麻里子は福岡県前原市の出身
秋葉原を拠点とする女性アイドルグループ、AKB48のチームAメンバーをつとめている
これまでこれっぽっちも関心がなかったのだが、アマゾンの「出版社のいちおしタイトル」としてかざられていた表紙のちいさな画像にひきつけられた

ミニ

115ピクセルでもかくしようのないすらりとのびた手足、やわらかそうな髪につつまれたちいさな顔
ふらふらとリンクにさそわれてもっとおおきい画像をみた
ひもをぎゅっとひきしめたような腰まわりにおどろく
横隔膜は悲鳴をあげているのではないか
猿のようにながい腕にぶらさがった手が異様におおきい
おれは指のきれいな女がすきだ
ぴたっと手のひらをあわせて指のながさをくらべてみたい
よくみると顔だちも端正だ
そしておれは通販屋に2940円をしはらった

AKB48は「エーケービー フォーティエイト」とよむのだそうだ
秋本康がプロデューサーとなり、モーニング娘などを手がけた夏まゆみが振りつけを担当している
メンバーは48名、高校生の制服を意識した衣装を身にまとい、劇場公演主体の活動をおこなっている
握手会などのエサをちらつかせたチケットやCDの売り方は悪評たかく、その露骨さから「AKB商法」などと揶揄されているらしい
しかしそのような批判は、熱心なファンをまきこんで成功したという証拠でもある
秋本康…おれの人生とはまったく縁のない男だとおもっていたが…
由緒ただしいインチキ業界人
大ベテランの一発屋
秋本といえばおニャン子クラブ、「セーラー服を脱がさないで」だ
しかし世の男たちはなぜそんなにセーラー服がすきなのだろうか?
学生時代の深刻なトラウマをひきずっているのか
おれのしるかぎり、女の子は私服でいるときがいちばん魅力的にみえるはずだが
服のセンスがわるくたって、それもかの女の個性の一部なのだから尊重すべきだ
制服なんて着るのも見るのもすきじゃない
まあ、ビキニの破壊力に陥落したおれがなにをいっても説得力がないかな

2940円のアイドル写真集に値段分の価値があるといいきれるだろうか
よくこれで商売がなりたつとおもう
「グラビアアイドル」などというおかしな文化が定着している国は日本だけなのではないか?
1991年に篠山紀信の撮影による宮沢りえの"Santa Fe"などがきっかけとなり、「ヘアヌード写真集」がブームとなる
九十年代後半からはかとうれいこや雛形あきこなどイエローキャブ所属タレントたちに人気があつまり、陰毛よりはいくらか健康的な「巨乳ブーム」が一世を風靡した
うら若い娘が素肌をさらしたところで、もはや目くじらをたてる人間などいない
じつにおおらかなものだ
セーラー服をぬがされたアイドルたちは娼婦の地位に転落する寸前でふみとどまり、ところがどっこい水着姿でいきのびてゆくのであった
バカにしているように聞こえたかもしれないが、もしこの国からアイドル、もしくはアイドル的な存在がいなくなったらおれはかなしくなるとおもう
男たちの願望をうけとめるアイドルたちは、現代社会における若々しい活気の量をはかる指標でもあるはずだ

本書の篠田麻里子嬢はじつに素敵だ
写真集だと磁器のような肌のきめのこまかさまでつたわり、とてもではないが平静ではいられない
胸は小ぶりだが、それよりも五体の均衡のうつくしさが大事だろう
両目ははなれ気味で、すこし垂れ目だ
ああ、わたしはなんて幸運なのだろう
もしかの女が釣り目だったら、全財産を麻里子嬢についやして人生を破滅させていたにちがいない
自分が垂れ目のせいか、猫や狐のような顔の女にひかれてしまう
なんにせよ、こんな女の子をつれて街をあるいたら鼻高々だろうなとおもわせる作品だ
しかし服をきた写真もおおいのだが、168cmの肢体を存分に鑑賞できるビキニの方が断然よい
着衣の麻里子嬢はまるでスーパーモデル、もといスーパーのチラシにでているモデルのよう
浜崎あゆみのPV顔負けの滑稽さだ
そしてこの写真集には、まりりんとおなじ身長の蛯原友里の亡霊が見え隠れしている
エビちゃんの人気の後押しがなかったら、男みたいな背丈で、体は骨と皮ばかりの娘がアイドルにはなれなかったはずだ
「おれはこんな女とつきあいたい、抱きたい」という曲線と、「わたしはこんな女の子になりたい」という曲線が交差するあやうい一点にしがみつきながら、アイドルはいきてゆく

麻里子嬢の日課はすくなくとも三十回以上の腹筋運動で、腹の筋肉がつってしまったことも何回かあるらしい
戦闘的なフェミニストはカメラの前で水着になるだけの職業をさげすんでいるだろうが、親からもらった生身だけでたたかえるほどこの稼業もあまくないことはしっておくべきだ

篠田麻里子

「エビちゃんみたいなお腹になりたい」とおもっていたかどうかはともかく、上の写真はひとりの女の子の日々の努力の結晶であり、その代価としてわたしたちは三千円をささげている
そしてバカみたいにおおきな黒眼鏡も、浜崎PV風の衣装もゆるしてあげたくなる
ちょっと背のびをしながらぼくたちの恋人を演じるアイドルは、わたしたちの共同体の最前線をになう先兵なのだ
ときに不自然な格好をしたり、痙攣した筋肉のせいで七転八倒することもあるけれど、だからこそかの女たちは尊いとおもわずにいられない


篠田麻里子写真集『Pendulum(ヘ゜ンテ゛ュラム)』篠田麻里子写真集『Pendulum(ヘ゜ンテ゛ュラム)』
(2008/07/15)
楽満 直城

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