北村典子通信vol.2 ― バンブラDXが不毛の地を開拓する

北村典子
http://touch-ds.jp/mfs/st91/interview.html
北村典子
任天堂・企画開発本部環境制作部

かの女のバンブラDXにいたるまでのしごとについては、下のリンクさきを参照してください
世界最強のOLが京都にいた ― 任天堂・北村典子の伝説

ゲームはひとりより複数であそんだほうがたのしい
これは真理だ
コンピュータは人間のふりをしてあそび相手になってくれるが、けっきょくむなしい
そしてインターネット環境が普及することで、当然のようにゲームの世界は革命的進化をとげることが期待された
わざわざ友人を家によばなくても、同好の士を瞬時に世界中からもとめることができる
ビジネスチャンスは無限だと、證券アナリストたちも本気でかんがえていた
しかしじっさいのところ、インターネットはゲームの進化にまったく貢献しなかった
皆無だ
いまも電話線をつうじておおぜいが、銃をうちあったりなぐりあったりしている
ようするに殺伐とした殺しあいだ
その種のゲームに習熟していない人間が敷居をまたげば、あっという間に抹殺される
プレイヤーどうしが結束する、MMORPGのようなたのしみかたも支持されている
しかしそれらのゲームは、時間や金を投資できない人間ではたのしめないつくりになっている
せっかくゲームにインターネットを導入したのに、いちげんさんおことわりの閉鎖的なコミュニティが形成されるようでは意味はなかったといえるだろう
フェイストゥフェイスのコミュニケーションは偉大であり、コンピュータによるネットワークはそのつたない模倣にすぎないようだ

ゲームがインターネットをつうじて横にひろがった例がないわけではない
Xbox360の「アイドルマスター」は、ファンがゲーム内の画像をじぶんのすきな曲とあわせてムービーをつくり、それをニコニコ動画などの動画共有サイトにアップロードするのが人気だ
しかし「アイマス」だけが飛びぬけてこの分野で支持されているのは、たまたまゲームの発売とニコニコ動画というサイトのサービス開始の時期がかさなったからだろう
発売元のバンダイナムコゲームスは、この展開をまったく予期していなかったにちがいない
そしてここでは「アイドルマスター」というゲームじたいは「素材」にすぎない
ユーザーは勝手に曲をえらび、勝手なソフトをつかい、勝手に素材を切り貼りし、勝手なサイトに動画をアップロードする
この「勝手気まま」というのが問題なのだ
ゲーム会社は、とてもではないがそれをとりしきることなどできない
たとえば一般に人気のある楽曲をサーバにアップロードすれば著作権が発生する
好き勝手に動画をつくられたら著作権料は膨大になってしまうし、かりにそれを販売するにしても、しろうとのつくった作品の品質をどう管理するのかという問題がしょうじる
しかし自由気ままにたのしめるからこそ、あそびの輪がひろがるともいえる
「共有」といえばきこえはいいが、そこにはなやましいジレンマがあるのだ

さてここでわれらがお団子ヘアの屯田兵、北村典子女史が登場する
かの女は前作の「大合奏!バンドブラザーズ」の反響として、掲示板やブログなどで「バンブラ職人」があらわれたことに賭けをおこなう
初期状態のソフトに収録されている曲をおおはばに割愛するかわり、すきな曲を勝手につくって任天堂のサーバにアップロードでき、しかもそれをだれでも無料でダウンロードできるという夢のようなシステムを構築する
なんでも著作権料100曲分までをダウンロード実績に基づいて任天堂が支払うというとりきめのおかげで、ユーザーは100曲までは追加料金なしでデータを手にいれられるとか
そして全国の「職人」たちにたいしては「たくさんの人にきいてもらえる」というインセンティブがはたらくので、楽曲のリストはさらに充実するだろうという目論見だ
JASRACが管理する曲なら、基本的にどれでもアップロードすることができる
法律がそんなにやっかいなら、それを管理してる連中を利用すればいいじゃない!ということで、このコロンブスの卵のように単純なルールが設定された
しかしおれのしるかぎりほかに類のないしくみであり、JASRACとの交渉は困難だったろうと想像する

さて、「バンブラDX」が発売されてすでに二週間とすこしが経過した
すでにユーザー投稿曲のリストには、重複をふくめてなんと600曲がならんでいる
もちろんおれもバンブラ職人の曲で演奏をたのしませてもらっている
2ちゃんねるでは追加曲が登場するたびにおおさわぎになっているようだ
「更新キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!」
「なんだこれ、神アレンジじゃねーか」
「ちょwwwそれ俺の投稿曲wwwwww」
「本人降臨ktkr」
…みたいなかんじ
職人とユーザーが、バーバラの手のひらでたのしくおどっている
もちろんそれはだれでも気軽に参加できる、まさにゲームをひろく「共有」するたのしみだ
ソフトじたいの売上も好調らしい

ここ数年の任天堂による革命の最前線にたってきた北村だが、チームリーダーとしてのぞんだバンブラDXの開発でも新機軸をうちだすことに成功した
インターネットという不毛の地をきりひらきながら
その功績は百万言の賞賛にあたいするといえるだろう
おれがビル・ゲイツだったら、大枚はたいて坂口博信に時代おくれのRPGなんかをつくらせるのではなく、三顧の礼をもってゲーム事業に北村典子をむかえいれるのだが
え、なんですかゲイツさん?
Xboxにはアイドルマスターがあるからだいじょうぶですって?
まったくそんなだからあなたの会社はだめなんですよ

大合奏バンドブラザーズDX大合奏バンドブラザーズDX
(2008/06/26)
Nintendo DS

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