ジューイッシュ・グラフィティ ― 「インディ・ジョーンズ4」をみて

ケイト

インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国
Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull
出演:ハリソン・フォード カレン・アレン シャイア・ラブーフ
監督:スティーヴン・スピルバーグ
(2008年/アメリカ/123分)
[新宿プラザ劇場で鑑賞]

パラマウントのロゴをネタにした冒頭のギャグをみて、わるい予感が脳裏をよぎる
ありきたりだし、なにも「インディ・ジョーンズ」でやることじゃない
そしてプレスリーのロックンロールがながれるなか、アメリカ陸軍のトラックと二組のカップルがのったオープンカーが競争をはじめる
お、「激突」じゃん
スピルバーグ先生、じぶんの過去の作品をパロディにするつもりかな?
「アメリカン・グラフィティ」っぽくもあるね
が、軍用車両だけ右折して施設のなかにはいってしまう
じらすのはそこそこに、さっそくハリソン・フォードが登場
さすがにうごきはもっさりしているけど、口もとをゆがめる不敵なわらい方はあいかわらずすてき
最初から敵にかこまれて大ピンチです
銃をつきつけられて宝ものさがしに協力させられる
敵の銃弾からぬいてもらった火薬をばらまき、磁力で粉がひきよせられたところにブツを発見
さすが!知恵がはたらくね!
相手の弾薬をへらすのが本当の目的でしょ?反撃開始ってわけね?
倉庫のなかでのアクションシーンがスタート
われらがインディは普通に銃弾がとびかうなか敵地をぬけだし、そこでなぜか原子爆弾がドカン!
そりゃないよスピルバーグさん
被爆国の観客への配慮はなしですか
ていうかさっきの伏線は…?
いったいどうなってるんだ、このガタガタの展開は

「さいきんのスピルバーグはおとろえた。つまらない」
なんて批判されがちだが、そもそも
「スピルバーグの映画ってそんなにおもしろかったか?」
とききかえしたいところだ
スピルバーグはそのすさまじい早撮りでしられている
リハーサルをほとんどおこなわず演技には即座にOKをだし、「プライベート・ライアン」ですら三か月でとりおわったとか
そして撮影機材に精通しているため、コンピュータをもちいた映像処理の革新にもいちはやく適応し、はでなカットをつるべうちにするスタイルを確立する
しかけたっぷりの映像にハラハラドキドキさせられるけれど、よくみれば役者の顔には危機感がうかんでおらず全体としてうすっぺらい
とはいえ予算どおりスケジュールどおりとってくれるのでスタジオにとってこれほどありがたい監督はいないし、ポップコーン片手の観客たちにもあいされた
いっぽうで映画ファンは役者の演技をじっくりあじわって元をとろうとするので、1カット50テイク(笑)のような撮影進行があたりまえのスタンリー・キューブリックみたいな作家を支持したがるのです
昨今はCG技術がさらに進化し、だれでも「スピルバーグみたいな映画」がつくれるようになったわけで、本家の存在意義がとわれているといえるでしょう
しかしみながうらやむ富と名声をえたスピルバーグですが、それでもかれはゲージュツカぶって役者をいじめたりはしません
たぶんまじめでいいひとなんでしょう、あいかわらずてきぱきとしごとをしているようです
トム・クルーズは「アイズ・ワイド・シャット」の現場でキューブリックにしいたげられて、発狂しそうになったといってたなあ
ゲージュツカはとうとい存在ですが、まわりの人間にとっては迷惑きわまりないのです

本作はジョージ・ルーカスらの初稿を脚本化するのに難航し、M・ナイト・シャマラン、トム・ストッパード、フランク・ダラボンら大物の手をわたりながら何度も書きなおされることに
最終的には売れっ子脚本家のデヴィッド・コープ(「ミッション:インポッシブル」「スパイダーマン」など)の名義がクレジットされている
ハリウッドではよくあることだが、どこからどこまでがコープのうけもちなのかは判然としない
ダラボンにいたっては「むだな一年だった。もうルーカスとは二度としごとをしたくない」とまで悪口をいっている
だれがわるいのかわかってきましたね
ソ連軍の大佐にふんしたケイト・ブランシェットのとんでもない髪型も、ルーカス氏がじぶんの趣味をおしつけたらしい
まったく50年代風にもソビエト風にもみえませんが…
もちろんかの女も抵抗したそうだが、けっきょくこれです
そもそもジョージ・ルーカスさんってなにものなんですか?
なんでこんなに有名なんですか?
監督作品はたったの六本
そのうちの66%が例のスターウォーズです
のこりの二本はふるい低予算映画
プロデューサーとしても「ハワード・ザ・ダック」などいくつかの作品をてがけてはいますが、観客動員も評価もはかばかしくなく、むしろ「インディ・ジョーンズ」が例外なのだといえます

インディアナ・ジョーンズのおもての顔は考古学者の教授ですが、FBIから共産主義者であるといううたがいをかけられてその職をおわれることに
1950年代のマッカーシズムの風潮を批判的に作品にとりこもうとしたようですが、このテーマもどこかにまぎれてきえてしまいます
そもそもソ連軍の部隊とたたかう物語で、赤狩りもへったくれもないですよね
「レイダース」にでていたカレン・アレンを復活させて過去作のファンに目くばりをしていますが、場内は「このおばさんだれ?」みたいな空気でした
お約束のヘビぎらいのネタでさえ、わらいがおきていなかったのが意外です
さきほど「激突」の自己パロディにみえるシーンのはなしをしましたが、ラストはパロディどころか「E.T.」と「未知との遭遇」の陳腐な焼きなおしで、あれはわらうところなのか感動するところなのか…
脚本をいじりすぎたせいか一貫性はまるでありません
これなら「ハムナプトラ」のほうがましなのでは?という疑問がむくむくとうかびあがってきます

もっともいかせていないのは「父と息子」の主題
シャイア・ラブーフがリーゼントのバイク青年の役をえんじます
ひまさえあれば髪をいじりナイフをもてあそぶわけですが、柔和な顔だちのシャイアは不良にはみえませんね
物語では恋人もあてがってもらえず、アクションではハリソンにおくれをとり、お母さんのカレン・アレンにあまえるくらいが関の山
スピルバーグ先生のお気にいりの役者らしいけれど、まだまだ修行不足だなあ
わかい人材が抜擢されたとき、かれがユダヤ人かホモでないかしらべてみるとよい
あんのじょうシャイアの母親はユダヤ系
ちなみにハリソン・フォードもにたような生いたちです
もちろんドリームワークス作品にたてつづけに主演するという幸運をかちとったのはシャイアくんの実力にちがいありませんが、それでもお母さんに最大の感謝をささげるべきですね
この会社の設立者はジェフリー・カッツェンバーグ(ユダヤ人)、スティーヴン・スピルバーグ(ユダヤ人)、デヴィッド・ゲフィン(ユダヤ人でホモ)の三人
べつにユダヤ人にもホモにも偏見はありませんが、この業界におおすぎるという気はします
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