おやすみキム・ゴードン ― Melody Gardot "Worrisome Heart"

キム

Melody Gardot
Worrisome Heart
(2008年/アメリカ/33分12秒)

上の画像の左がソニックユースのキム・ゴードン
右が夫でバンドの中心人物のサーストン・ムーア(身長2メートル)
本エントリのメロディ・ガルドー嬢と関係はまったくありません
この"Worrisome Heart"というアルバムをきいていたら、キムが雑誌のインタビューでかたっていたことをおもいだした
女性のシンガーソングライターを揶揄する内容だったと記憶している
なんで女のひとってシンガーソングライターになりたがるのかなあ?
ギターやピアノのひきがたりは音楽として保守的すぎるし、せいぜい歌詞で自己表現するだけでつまらないとおもうわ
女性アーティストももっと大胆な表現に挑戦するべきよ
うろおぼえだがこんなかんじ
キムはおれのあこがれの女性でもあるので、これをよんだときは得心したのだが、でもおもうのだ
だれもがキム・ゴードンになれるわけじゃない
ニューヨークを拠点に実験的な音楽をうみだし、世界中に地下のネットワークをひろげて、ステージで耳ざわりなノイズをまきちらす
ロックのあたらしい潮流をつくりだし、オルタナティブな音楽のゴッドマザーとして崇拝される
あなたが特別すぎるんです

夜ふけには女性の歌声がききたくなる
べつにおれがさびしいひとりぐらしだからってだけではないとおもう
寝床にはいって本でもよみながら、スピーカーにつないだiPodにある曲をシャッフルで再生するのだが、そのプレイリストに女性のシンガーソングライターがけっこうはいっている
ファイストとかキャットパワーとかシゼル・アンドレセンなんかがおきにいりだ
騒音だらけの昼間にきくとさっぱりだけど、草木もねむる時刻になると本来のひびきをとりもどす音楽がある
ミズ・ゴードンみたいに、男たちにまじって白日夢のノイズにたちむかえる女性は例外なのだ
そして90分や120分のスリープを設定して、しばらくしてからねむりにつく
なんというか、人間のこころのどこかに子もり歌をもとめる願望があるのかもしれない
もちろん深夜にソニックユースをきくのもたのしいんですけどね

余談がながくなったが、メロディ・ガルドーはフィラデルフィア出身で1985年うまれのシンガーソングライター
"Gardot"は英語よみなら「ガードット」だとおもうが、インタビュー映像で本人が「ガルドー」といっていたのでそれにあわせることにする
なんだかミステリアスな名前だ
19歳のときに交通事故にあい、記憶障害と、光と音にたいしての過敏症をわずらった
いつもサングラスをかけているのはそのためらしい
「事故にあったときの痛みは、10段階でいうなら40くらい」というほどの災難だったようだ
後遺症にくるしむメロディにたいし、医師はきずついた脳の神経回路をいやすために音楽をはじめることをすすめる
だからかの女にとって音楽活動とはリハビリの一環なのだ
その歌声には「人気ものになりたい」「ひとを感動させたい」といった欲があまりかんじられず、自分と外の世界のあいだの溝を音楽をつうじて手さぐりするような感触がある
レビューとしては、音そのものに関係ない部分にこだわりすぎているかもしれない
レコード会社は商品に神秘的な装飾をほどこして宣伝するものだし、はなし半分というつもりできかなければならない
でも、そういういかがわしさもふくめてポップミュージックの魅力だとおもっていたりもする

全9曲(10曲目はみじかいアウトロ)は、3曲ごとに雰囲気がことなっている
最初の3曲はジャズ的なムードが支配している
トランペットにみちびかれて歌がはじまる表題曲は、やはりよい曲だ
円熟のジャズシンガーをきどってはおらず素朴なうたいぶりで、"All That I Need Is Love"のスキャットでは「のっぺらぼ~」と空耳がきこえる
中盤はカントリー/フォークのようなシンプルな曲調
ちょっと器用なアメリカ娘なら鼻歌でつくれそうなメロディだ
でも個人的には"Sweet Memory""Quiet Fire"あたりが、アルバムのなかでもいちばんすきかもしれない
シンプルにはちがいないのだが、意外と曲ごとの目鼻がたっている
音楽としての目あたらしさはまったくないけれど

7曲目の"One Day"からは夜のしじまにしずみこんでゆく
つぎの"Love Me Like A River Does"では、
Love me like a river does
Endlessly
Love me like a river does
Baby don't rush you're no waterfall

と、川のようにやさしく安定した愛情をもとめていて、ちょっとせつない
美空ひばりの「川の流れのように」(秋元康作詞)はじぶんの人生をやたらとおおげさにふりかえる曲だったが、お国によって川の歌もずいぶんかわるものだ
最後の"Goodnite"も軽快なリズムをもつ佳曲だとおもう

わかいミュージシャンなのでこれからどんなキャリアをかさねるのかさっぱりわからないが、サングラスごしの色あせた風景をひかえめにゆびでなぞるような音楽をつくりつづけるのだろう
そんな歌声が海をこえてひとのこころをいやせるのだから、音楽ってのはふしぎだ
キム・ゴードンになれなくたって、夜になればそこにはしずかな歌声のための空間がある

Worrisome HeartWorrisome Heart
(2008/02/26)
Melody Gardot

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