限定フィギュアがつくったヨーロッパ ― ル・ゴフ「中世とは何か」

ゴスロリ

中世とは何か
A LA RECHERCHE DU MOYEN AGE
ジャック・ル・ゴフ 著/福田健二・菅沼潤 訳/2005年/藤原書店

「中世っていったいなんだろう?」という問いが、ここ数週間のおれのなかでうずまいていた
くさくさした日常生活のあれこれに倦怠ぎみなのだ
そしてアーサー王伝説やワーグナーみたいにロマンティックな世界にひかれる
まあオペラなどみにいったことはありませんが
ハリーなんちゃらとかロードなんちゃらとかいう作品のあとも、ファンタジーの物語が大量生産されているのは、現代の世界からにげだしたいという需要が世界中に存在するってことだろう
日本でもDQやFFとか、退屈なRPGがあいかわらず支持されてるしね
政治・文化的にカトリック教会の支配が圧倒的な時代ではあるが、マクドナルドとコカコーラの文明に毒された目からみれば、そんな暗い側面も魅力的だったりする

本書では、ヨーロッパ中世史の第一人者であるル・ゴフがインタビュー形式でこの時代を概括する
よい本だった記憶があったので再読したが、ある意味がっかりした
この地上に理想郷など存在しないのだ

ル・ゴフは歴史を連続したながれととらえ、中世における近代的なものを積極的にひろいあつめる
とくに商人・銀行家の役割に注目する
聖書では利子をとって金をかすこと(=時間をうる行為)を禁じている
「時間」は神にのみ属しているからだ
しかし商人たちの地位が上昇するにつれ、かれらの商行為も有用な「労働」としてみとめられる
また、「学問」も神に属するものとみなされていたため、教師という職業もみとめられなかった
これも都市が発達するにつれ、文法・公証学・法律などをおしえる独自の学校がうまれ、司祭ではないひとびとがその役をつとめた
しかしこれでは中世文明と、われわれのディズニー/スターウォーズ文明はなにもかわらない
どうやら中世の秘密は死者の肉体にあるらしい

中世の都市は、聖遺物崇敬を拠点として形成される
聖遺物とは、聖人・聖女の肉体のなごりのこと
イエスがはりつけになったときに手足にうちつけられた(といわれる)釘とか、えらい聖人の指の骨とかそうたぐいのもの
そして一般の死者も守護聖人にちかいところに葬られなければならないため、教会のそばに墓地がつくられ、そのまわりに村ができていく
教会の内部、都市の内部に死者をとりこみながら、中世文明は都市化していった
しかし14世紀以降、ヨーロッパ人の感性は怪奇趣味をよろこぶようになり、死後の世界、地獄にたいする恐怖心がしだいにうすれていく
なにごとも行きすぎはいけませんね
もちろん聖遺物には偽物もおおかったわけだが、それによせる民衆のおもいは本物だ
レアな限定版フィギュアにとりつかれた宗教オタクのネットワークが「ヨーロッパ」をつくりあげた
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テーマ : 歴史
ジャンル : 学問・文化・芸術

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苑田 謙

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