小文字のツンデレーション ― Perfume「Puppy love」

ツンデレーション

(このイラストは拾いものです)

Puppy love
Perfume
作詞・作曲:中田ヤスタカ/4分27秒/アルバム「GAME」収録曲

…か、かんちがいしないでよね!べつにツンデレがすきで記事書いてるんじゃないんだからね!

最先端の音楽生成プログラムであるystk(通称・中田ヤスタカ)は、こういう音楽はきらいなんだとおもっていた
ギター・ベース・ドラム中心のロックバンド的な構成、シンプルなメロディ、いなかの中学生でも共感できそうな歌詞
体育会系のさわやかさなんだよね
服、美容、デザイン、クラブDJ、ネオ渋谷系、フューチャーポップ、インテリアポップ、近未来テクノポップといった、かずかずのインチキくさいおしゃれなキーワードでかたられてきたystk
上っ面だけこぎれいなギョーカイ人くささもふくめて、この音楽ソフトウェアの魅力だったのに

絶対的な信頼と 対照的な行動
絶望的な運命が ある日恋にかわる
一方的な表現の ツンデレーション
キミが すき わかりにくいね


「○○的」なんてかたい単語が四つもサビにでてくるところがおもしろい
しかも「絶」が二回!頭韻をふむにしてもやりすぎ!
「絶望的な運命が ある日恋にかわる」のところがなんともせつない
「うんめいが~」のところで声をはりあげて、のっちボイスがユニゾンの雲のなかから一瞬顔をだす
ロック少女化しつつあるのっちのパンク魂は、前のめりでビートにノってくるのだ
ここ以外はあ~ちゃんばかりが目立つけど…・゚・(つД`)・゚・
Puppy loveってのは幼な恋という意味らしい
マンガやアニメでよくある幼なじみどうしの関係をモチーフにしているのか
プログラムにバグでも生じたのか、ずいぶんベタなテーマをえらんだな~
まあそこがいいんだけど
千葉の高校生だったころ、死ぬほどすきだった女の子にラブレター(笑)をわたしたときをおもいだす
三十男をあまずっぱい気分にさせてどうすんだといいたい
石川県出身の28歳(という設定)のystkさんよ

さらによく聞くと、この曲のかくされた秘密がみえてくる
人前でつめたい態度をとる彼氏について、女の子の視点でうたう曲なんだと最初はおもっていた
でも歌詞をみると、性別を特定できる表現はない
二人称は「キミ」、一人称はなし、ことばづかいは女の子っぽいけれど男でもおかしくない
Perfumeは「ボク」という一人称でうたう曲もおおいしね
Puppy loveは男女どちらの立場からでも感情移入できるユニークな曲だ
ふつうは女子目線できくとおもうけれど、じつはその根拠はない
ystkはいつの間にかバージョンアップして、こんなにミステリアスな歌詞をかけるように
そもそもとなりの家の女の子と恋仲になるとかありえないし!
ていうかおれの実家のとなりは空き地だったし!
ベタなんだけど、どこか抽象的なファンタジーでもあるラブソングが胸をしめつける

タイトルの表記も気になるところ
ystkの英語タイトルの大文字・小文字のつかい方に規則性はない
たぶん字面をみて直感でえらんでるんだろう
とくに小文字の“i”がすきで、capsuleには「REALiTy」なんてリアリティ皆無の曲名もある
「Baby cruising Love」は【大-小-大】
なんてったって「Love」はだいじだからね!
というわけで「Puppy love」が小文字の「love」であることには意味がある
現代社会では「愛」が大安売り
恋愛、家族愛、人類愛、国家愛、企業愛、地域愛、チーム愛、動物愛、飯島愛…
まさに愛のインフレーションですね
もうしわけございませんお客さま、この曲の「love」はそれらとはちがう棚に陳列しております
それは石川県や千葉県の高校生が胸に秘めていたあの「love」
もちろん現在進行形でそんな「love」のまっ只中のひともいるでしょうね
いろいろ大変だろうけど、やっぱりちょっとうらやましいな
ああせつない!

GAMEGAME
(2008/04/16)
Perfume

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おいた詐欺師の肖像 ― コリン・マッケイブ「ゴダール伝」

ゴダール伝
コリン・マッケイブ 著/堀潤之 訳/みすず書房

1930年うまれのゴダールにとっては、深作欣二やクリント・イーストウッドが同級生にあたる
ゴキブリのようににしぶとそうな連中だ
深作は「あそこがたたなくなる」という理由で抗癌剤の投与をこばみながらしんでしまったけれど
かれらは1945年に15歳という人格形成期を経験している
おおきな戦争が国をきずつけ、旧式の権威が音をたててくずれていくのをながめながら成人した人間ならではの世界観、というものがあるのかもしれない
まあゴダール家のぼっちゃんはりっぱに兵役のがれをしていたりするけれど

わかいころのゴダールは泥棒だった
家族などの金や物をぬすんで何度も警察につかまり、22歳のときチューリヒの刑務所にいれられた
まあ異常人であることはまちがいない
大学にいられなくなったゴダールは映画批評家になり、そしてついに1959年の「勝手にしやがれ」で長編映画デビュー
かれの作品は従来の映画文法にとらわれず、通常の三分の一のコストでつくられた
ゴダールが映画撮影の技術に通暁している証拠でもあるし、かれが予算を着服しているという疑惑をいまだにもたれている原因のひとつでもある
実際に映画予算を私的に流用していたのかどうか、残念ながら本書では断定していない
くわしい方ぜひおしえてください

フランスも革命の季節をむかえ、ゴダールの詐欺も規模がおおきくなる
「十月革命から50年後の今日、アメリカ映画が世界中の映画を支配しており云々」
自分たちフランスの映画作家のかんじている抑圧を、戦火にみまわれるベトナム戦争になぞらえるのがお得意の論法
ベトナム人にしてみれば宣伝につかわれてるだけでなんの利益もなく、まったくいい面の皮だ
そしてゴダールはアルチュセールを介して毛沢東主義者となった
このアルチュセールさんは、自分の妻を絞殺したことで有名な哲学者です
かつての盟友トリュフォーは、そんなゴダールから距離をおいた
「プロレタリアの機動隊と、革命に夢中の金もちの子供のどちらかをえらぶなら、ぼくは警察につく」
トリュフォーのせりふはかっこいいが、そういう常識人だから作家として小物だともいえる
しかし旧友の忠告はやはり正解で、ゴダールも革命映画で何年も食っていけるわけもなかった
そして引退まぢかのサッカー選手のように、アラビア半島がかれをうけいれた
パレスチナ解放のための映画をとるとかなんとか
現地の演説を映画にまとめようとするが、アラビア語がまったくわからないため断念

革命ごっこで若者をだませた時代はおわり、ゴダールはこれまで以上にブルジョワ趣味まるだしで、地味で客のはいらない映画の専門家となった
しかし、ゲームはまだおわらない
かれは過去の映画をメチャクチャにきりはりしたビデオ作品「映画史」で新境地をひらく
これは著作権法にたいする重大な違反行為の大パレードでもあった
もちろん著作権という概念にはおおくの弊害があるし、批評目的の「引用」はみとめられるべきでもあるから、かならずしもゴダールが罪をおかしているとはいえない
それはともかく、ゴダールとテレビ局の責任者とのやりとりがおもしろい
テレビ局側は、映画でつかわれるクリップの権利関係がクリアなのかどうか心配する
水ももらさぬ完璧な契約書を準備し、予算の40%をクリップにつかうことが明記された
このときゴダールの黒ぶち眼鏡がきらりとひかっただろう
かれは自分の所有しているクリップ以外はいっさいつかわないと宣言し、予算の40%をただちに前ばらいするように要求
作品の性格を逆手にとったみごとなペテンで、人様の金の四割をそのままポケットにいれるのだった

ここまで詐欺師としての生き様をまっとうできればぎゃくにいさぎよいとおもえる

関連項目:ねむれよい子よ ― 「彼女について私が知っている二、三の事柄」をみて
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