理央『彼女の腕は掴めない』

 

 

彼女の腕は掴めない

 

作者:理央

掲載サイト:『ゼロサムオンライン』(一迅社)2016年-

単行本:ゼロサムコミックス

 

 

 

主人公はセーラー服の女子高生。

生まれつき両腕がない。

「四肢欠損」とゆう厄介なテーマをあつかう作品だ。

 

 

 

 

通りすがりの人々は、彼女に好奇や憐憫の眼差しをそそぐが、

異常と思われても彼女はちっとも気にしない。

だって、これが自分の正常だから。

 

主人公のドライな世界観が、冒頭の4ページで端的に提示される。

 

 

 

 

小洒落た身なりの男が定期券をひろい、紐をむすんで主人公の首にかける。

だが、この男こそ異常者だった。

話しかけるきっかけを得るため、すれ違いざまカミソリで紐を切った。

 

 

 

 

男は主人公を自宅へ誘拐し、監禁する。

自力では通報すらできない弱者に対する、あまりに卑劣なふるまい。

 

主人公は抵抗らしい抵抗をしない。

男がイケメンで態度が紳士的で、しかも金持ちらしいので、ある意味容認する。

抵抗しても無意味とはいえ、主人公が冷静すぎると僕は感じた。

 

 

 

 

誘拐犯と被害者が結束する、いわゆるストックホルム症候群が発生。

引用画像は主人公がみた夢。

ある朝目覚めたら両腕が生えていたので、

それを男に見せると興味をうしなわれ、あっさり捨てられる。

主人公は誘拐されたのに、フラれるのを恐れている。

 

こんがらがった心理や人間関係がみどころ。

 

 

 

 

主人公は本棚に古代ギリシア美術の本をみつける。

男は『ミロのヴィーナス』の様な四肢欠損に、性的興奮をおぼえるタチらしい。

それらは壊れているがゆえに、美的感覚をするどく刺激する。

 

反社会的人格は、インテリでないといけない。

たとえば『羊たちの沈黙』のレクター博士みたく、

サイコパスに衒学趣味のスパイスをかけると、不思議とマイルドな味わいに。

 

 

 

 

尖った作品ではある。

実際に四肢を欠損した女性が読めば、不愉快になるのでは。

でも日常性をおもいきり逸脱したテーマを、

サブカルのフォーマットへうまく落としこんでるのに感心する。

こんな漫画があってもいい。





テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

内々けやき『グレートヤンキーみちるくん』

 

 

グレートヤンキーみちるくん

 

作者:内々けやき

掲載サイト:『チャンピオンクロス』(秋田書店)2016年-

単行本:少年チャンピオン・コミックス エクストラ

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男子高校を舞台とするショタものである。

読者は子猫みたいな美少年、「大河みちる」を愛でることになる。

 

 

 

 

私立京北高校は、地元でも有名なヤンキー校。

みちるは転校初日から不良に絡まれる。

 

 

 

 

ショタは乙女っぽい言動で、不良の巣食うジャングルを生き抜く。

本格的なティーセットを用意し、スコーンにはクロテッドクリームを塗り、

屋上にむさくるしい男どもをあつめてお茶会をひらく。

 

 

 

 

本作は『しょたせん』と世界観を共有している。

「ショタ×ヤンキー」のミスマッチ感が、かわいさを増幅。

 

 

 

 

ケンカの場面も、パンチの重さなどをリアルにえがく。

版元である秋田書店のヤンキー漫画に引けをとらない。

 

 

 

 

内々けやきは、評論家っぽく論じるのがむつかしい。

「意味」を読み取ったり、「解釈」されるのを嫌いそうな作風だ。

ただヌイて笑って泣いてくれればそれでいいと。

今後の研究課題である。





テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 男の娘 

内海瀬戸『君に贈るロードショー』

 

 

君に贈るロードショー

 

作者:内海瀬戸

発行:集英社 2017年

レーベル:ヤングジャンプコミックス

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大学生の「涼太」が、古い一眼レフのデジカメをひさしぶりに触ると、

モニターに幼なじみの「ひまり」が、小学生のころの外見で映った。

 

 

 

 

表示されてるのは自分の部屋だが、実際はだれもいない。

ひまりとモニターごしに会話もできる。

 

 

 

 

それはありえないことだった。

なぜならひまりは、小学校卒業の翌日に交通事故で世を去ったから。

女優を夢見ていた彼女の魂がカメラにのりうつったのだろうか。

 

 

 

 

そして涼太は、ひまりと生き写しの少女に出会う。

彼女は二歳年下の妹「すみれ」で、姉の遺志を継いで役者をめざしている。

涼太とすみれは、ひまりの夢をかなえるため映画をつくりはじめる。

 

 

 

 

体が弱かったすみれは、明るく元気な姉に劣等感をいだいていた。

嫉妬心からケンカになり、仲直りしないまま生き別れとなった。

このエピソードはせつない。

 

 

 

 

「三人」で完成させた作品は、学生映画祭で上映される。

夢をもつことの大切さをえがく、やさしいストーリーだ。

 

 

 

 

明治大学のサイトに作者へのインタビューが掲載されている。

この春に明大を卒業したらしい。

作風は、たとえば新海誠みたいに青臭いところがあるけれど、

40すぎて純情ぶるのではなく、本当に若いのでいいと思う。





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ジャンル : アニメ・コミック

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カズミヤアキラ『闇女-ヤミ・カノ-』

 

 

闇女-ヤミ・カノ-

 

作者:カズミヤアキラ

掲載誌:『月刊キスカ』(竹書房)2016年-

単行本:バンブーコミックス

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主人公は大学生の「佐々木潤」。

アパートで一人暮らしをしており、隣には超美人な「美咲さん」が住んでるが、

引っ込み思案な性格なので自分からアプローチできない。

 

 

 

 

本作のギミックは「憑依能力」。

原因はわらかないが、潤はいろいろな男にのりうつり、

普段は小奇麗にしている女たちの本性を目の当たりにする。

美咲さんはアラサーの焦りもあって、浮気した同棲相手をめった刺しに。

 

 

 

 

大学とゆう舞台もよく描けている。

日本のサブカル作品は中学や高校が多いので新鮮だ。

清楚で知的な黒髪美女は、准教授の「速水さん」。

 

 

 

 

教授と不倫していると噂される速水さんだが、実際はもっとひどかった。

弱みを握り、SMプレイで奴隷にして弄ぶ。

 

 

 

 

カズミヤアキラは画力が高く、エロティックな描写に見応えがある。

たとえば、潤の古くからの女友達である「由妃」が乱交に耽るシーンも、

汚くなりすぎないギリギリのバランスに仕上げている。

 

 

 

 

サバサバした性格で話しやすい由妃には自傷癖があった。

誰でもいいから男を必要としていて、見つからないときは手首を切る。

列伝形式で女のカルマを丸裸に。

 

 

 

 

ここまでは他に似た作品があるかもしれない。

僕が本作に興味をもった理由は、ヒロイン格である主人公の妹「雛」の存在。

くせっ毛、吊り目、泣きぼくろ……造形がすばらしい。

 

女はみな欲深くて、自堕落な生き物なのは、残念だが事実なのだろう。

でも妹だけは例外であってほしい。

藁にもすがる様な主人公の願望がストーリーをつらぬいていて、

ただペシミスティックなのではない、複雑な読後感をもたらす。





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絵本奈央/岡田麿里『荒ぶる季節の乙女どもよ。』

 

 

荒ぶる季節の乙女どもよ。

 

作画:絵本奈央

原作:岡田麿里

掲載誌:『別冊少年マガジン』(講談社)2017年-

単行本:講談社コミックス マガジン

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高校の文芸部を舞台とする漫画である。

部員は女子が5名。

主たる研究対象は、文学よりセックス。

なにせ思春期だからしょうがない。

 

 

 

 

主人公は「小野寺和紗」。

ムッツリスケベの多い文芸部でもオクテな方。

近所にすむ幼なじみの「泉」はイケメンで人気があるが、

周囲の目を意識して学校では仲よくしない。

家族ぐるみの付き合いがあり、料理をおすそ分けすることも。

 

 

 

 

ある夜、泉の家に上がったとき、エロ動画をみてオナニーするのを目撃。

まったく言い訳できないくらいハッキリと。

 

岡田麿里は『あの花』『ここさけ』『オルフェンズ』などのアニメで知られる、

いま売れっ子の脚本家で、意外性のある設定やストーリーはさすが。

 

 

 

 

でもそれ以上に作画がいい。

泉のナニをみて悩乱した和紗は家を飛び出す。

セックスはしてみたい。

でもあんなの絶対入らない。

電車が駅構内へ入っただけでビクッと反応。

 

シナリオと作画の呼吸が完璧にあっている。

 

 

 

 

日常シーンもムダがない。

性の匂いがまったくしない母が台所にたつ後ろ姿をみて、

「でもお母さんは処女じゃないんだな」と、複雑な感情を抱いたり。

 

 

 

 

文芸部を暴走させた元凶である、部長の「曽根崎」が、

セックスで脳が腐ってるギャルに怒りをぶちまける。

 

男性作家は大抵ギャルに冷淡だが、本作は公平に描写している。

わかりやすく言うと、みんなかわいい。

 

 

 

 

たとえ表面は荒々しく波打っていても、内側はピュアでまっすぐな、

思春期女子の感情をユーモラスかつ、きめ細やかに描く傑作だ。





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