松本剛『ロッタレイン』

 

 

ロッタレイン

 

作者:松本剛

掲載誌:『月刊IKKI』『スピリッツ増刊 ヒバナ』2014年-

単行本:ビッグコミックススペシャル ヒバナ

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作品冒頭で、バス運転士である主人公「玉井」は、

恋人がパワハラ上司とセックスしてるのを目撃する。

 

この暗さに「ああ、松本剛だな」とファンは納得。

30年におよぶキャリアにおいてヒット狙いは皆無だ。

 

 

 

 

事故をおこして仕事を辞めた玉井は、父がいる新潟県長岡市へ一時的に移る。

作者の出身地でもある。

「後妻さん」が土下座し、長年の非礼を詫びる。

盗った盗られたでどうのこうのの、昭和っぽいあれだ。

北陸あたりでは、いまもこんな感じだろうか。

 

 

 

 

父には「初穂」とゆう13歳の娘がいた。

玉井と血はつながってない。

庭で飼っているニワトリを絞め、料理の準備をする。

 

土地がもつ強烈な磁力にあらがう、凛とした立ち姿。

 

 

 

 

初穂は中学で、「二号さん」だのなんだの言われてイジメられている。

着替えに仕込まれた毛虫をそっと手のひらに乗せ、窓から逃がす。

 

 

 

 

初穂は玉井に反撥する。

「本宅」とか「長男」とか、くだらないから。

なんの責任もないのに自分が後ろ指さされる原因ってだけで、許せない。

 

汚された服を洗濯機に投げこみながら当たり散らすくだりは、

芯の強いヒロインをえがく松本らしい名場面。

 

 

 

 

1964年生まれの松本が、いまさら新境地を開くことはないだろう。

初穂の喪服姿のうつくしさに息を呑みはするが、

びっくりするほど絵柄も作風も変わらない。

 

 

 

 

松本剛は重言の作家だ。

「美少女はうつくしい」、ただそれだけを表現しつづけている。

奇跡の様でもあり、呪詛の様でもある。





テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

夕仁/里好『聖へき†桜ヶ丘』

 

 

聖へき†桜ヶ丘

 

作画:夕仁

原作:里好

掲載誌:『電撃PlayStaton』(KADOKAWA)2017年-

単行本:電撃コミックスNEXT

[ためし読みはこちら

 

 

 

国内有数のお嬢さま学校「桜ヶ丘学苑」の入学式。

桜色の制服がステキだ。

はたして、どんなトラブルが待ちうけるのか。

 

 

 

 

主人公の「佐藤菜乃」は、幼いころから特殊能力をもつ。

それは、他人の性癖を読みとる力。

顔にデカデカと「制服フェチ」などと表れるので、だれが変態なのか丸わかり。

教師や警備員さえ信用できないから、つらい。

 

 

 

 

入学初日から能力が発揮される。

学苑のアイドルである生徒会長「上月契(かみつき ちぎり)」の性癖は「人喰い」。

ほんらい趣味に良い悪いもないが、カニバリズムはヤバそうだ。

 

 

 

 

菜乃は神父から、その能力で学苑の風紀を守るよう命じられる。

監視してたら案の定、欲望にかられた契が親友の首筋に喰らいつく。

ところが襲われた副会長は「超ドM」で、おとなしく快感に身をゆだねる。

なんだかんだで、いいコンビだった。

 

名門の子女ほど、きびしく躾けられたせいで性的嗜好は歪みがち。

つまり桜ヶ丘学苑は、狂い咲きする変態たちの花園だった。

 

 

 

 

おなじく生徒会の「植原さん」は、まじめで仕事ができて隙がない。

ただひとつ、背中に靴底の跡がある以外は。

彼女が隠しもつ性癖とは?

 

そんなこんなで、スリリングな女子校ライフがたのしめる作品だ。

 

 

 

 

原作つきである本作は、作画担当者が絵に集中できるとゆう美点がある。

植原さんは主要キャラではないが、吊り目ショートボブでキャラデザがきまってて、

しかも変態さんだなんてたまらない。

 

ちょっとエッチな百合コメディを読みたいなら、本作はベストチョイスだろう。





テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合 

鈴木マサカズ/押川剛『「子供を殺してください」という親たち』

 

 

「子供を殺してください」という親たち

 

作画:鈴木マサカズ

原作:押川剛

掲載誌:『月刊コミック@バンチ』(新潮社)2017年-

単行本:バンチコミックス

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病識のない精神障碍者を、暴力にたよらず説得し、

病院へつれてゆくプロが書いたノンフィクションにもとづく。

 

「子供を殺してください」とゆう訴えは、普通じゃない。

でも20針縫うほどの重傷を負わされたなら、理解できるだろう。

 

 

 

 

暴力的な障碍者との生活は、絵にすると壮絶だ。

この39歳の「則夫」は、アルコール依存症。

脱糞するまで酒を飲むので、家族は椅子の下にブルーシートを敷いている。

 

 

 

 

「説得移送サービス」の提供者である押川に、危害をくわえることも。

全篇がなまなましく理不尽な暴力で満ちており、読むには一定の覚悟が必要。

 

 

 

 

『銀座からまる百貨店お客様相談室』の作者である鈴木マサカズは、

おなじくドキュメント風の本作でも、冴えた手腕を発揮している。

 

たとえば、初対面の人間になれなれしく煙草をもとめる態度は、

依存症患者に典型的とか、人間観察のおもしろさがある。

 

 

 

 

本作のテーマは「暴力の連鎖」。

精神疾患で家庭が崩壊するのは親の責任と、原作者はかんがえるらしい。

則夫の父は、妻や息子に殴る蹴るの暴力をふるっていた。

 

 

 

 

息子は父の真似をしてるだけ。

しかし社会的地位の高い父は、息子が自分に似ているのを認めないので、

原因を理解して問題を解決する可能性を、みづから潰していた。

 

この「暴力の連鎖」説は、多様な精神疾患に普遍的にあてはまらないだろうが、

すくなくとも本作において重厚なドラマをつくりあげている。





テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

『NEW GAME! アンソロジーコミック』2巻

くろば・U

 

 

NEW GAME! アンソロジーコミック

 

作者:得能正太郎 御北きぬ 森沢晴行 紅緒 くろば・U るい・たまち 他

発行:芳文社 2017年

レーベル:まんがタイムKRコミックス

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アンソロ2巻でも、ねねっちは絶好調だ。

青葉の自宅を訪問するシーンは、本篇になかった気がする。

呼び出しかたが昭和の子供っぽい。

 

 

ぼや野

 

 

ねねっちが自作ゲームを、本職のうみこさんにプレイさせる一篇では、

ヌルい本篇やアニメではありえない毒に、ファンはおどろくだろう。

 

 

蟹丹

 

 

イーグルジャンプの面々が、めづらしく非電源のクトゥルフ系TRPGをあそぶ。

勿論ねねっちもノリノリで参加。

キャラの自己紹介で、ロケットランチャーが特技のお嬢さまを熱演する。

 

いつもとちがう、いつもどおり天真爛漫なねねっち。

 

 

るい・たまち

 

 

イーグルジャンプのマスコットである、もずくを相手にかくれんぼ。

2巻の白眉とおもう。

『NEW GAME!』の影の主役と言える、「空間」を活かしている。

 

 

とこみち

 

 

駅前で偶然うみこさんに出会った休日をえがく一篇。

青葉との待ち合わせに遅れそうなのに、道端で犬とたわむれたり。

 

犬も猫も似合う。

水陸両用のズゴッグに匹敵する最強キャラだ。

 

 

ちさこ

 

 

ガチ百合担当、りんにも見せ場が。

今回は酒乱モードでなく、ひとり相撲のさびしさに涙をこぼす。

 

 

 

 

晴瀬ひろきによる巻頭イラスト。

『魔法少女のカレイなる余生』の作者なだけあり、

ピンクなど暖色系のイメージがあるねねっちに、黒い水着を着せる。

ハイビスカスの花をアクセントにした、赤と黒のXの構図があざやか。

 

あどけない笑顔で、あらゆる色彩を輝かせ、あでやかな空間をつくりあげる。





テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: きらら系コミック  萌え4コマ 

もちオーレ『出会い系サイトで妹と出会う話』

 

 

出会い系サイトで妹と出会う話

 

作者:もちオーレ

発行:KADOKAWA 2017年

単行本:電撃コミックスNEXT

[ためし読みはこちら

 

 

 

いわゆるウェブ漫画に疎い僕はよく知らなかったが、

ツイッターで人気のある百合系作家らしい。

 

表題作は、同性の恋人をもとめて出会い系サイトを利用したら、

実の姉妹がひさしぶりに再会したとゆう、意外性にとむ連作。

気の毒なほど狼狽する、妹の「小夜」がかわいい。

 

 

 

 

親が知ったら卒倒確実な「出会い」だが、姉は平然としている。

でも内心はドキドキしてるらしい。

相手は家族なのに、エンカウントのシステムがちがうだけで色めきたつ。

 

作者は、セリフ回しでキャラの個性を増幅させ、

ありえない関係性にイキイキしたリアリティを付与する。

 

 

 

 

ふたりは8年前から百合だった。

当時中1の小夜は、彼氏とのファーストキスを失敗したくないから、

キスの予行演習につきあってと、5歳年上の姉にもちかける。

 

彼氏がいるなんて嘘だけど。

 

 

 

 

長女らしくしっかり者の姉は、あんがい感情に流されやすい。

あっさりキスの快楽に溺れ、「練習」を名目にし、

親の目を盗みつつ、みづから妹の唇をもとめた。

 

 

 

 

思春期女子が複数いる家庭は、ハリネズミの巣だ。

些細なきっかけで、楽園が戦場と化す。

姉の受験勉強ですれちがいが生じ、妹は恨みをいだく。

 

この苦味は7年後、誤解がとけた姉妹の甘味をきわだたすスパイスになるが。

 

 

 

 

こちらはバスケ部を舞台とする別シリーズの『ダメな先輩×デキる後輩』。

ミニマルな作風だが、動きの描写も的確だ。

 

どれほどの隔たりも一息で踏破する、百合とゆう特別な心のありかた、

そのうつくしい奇跡をつめこんだ短篇集である。





テーマ : 百合漫画
ジャンル : アニメ・コミック

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