山内溥の娘、荒川陽子

任天堂の創業一族である山内家の男にとって、女遊びは当然の趣味だった。

婿養子だった山内溥の父など、女と駆け落ちして消えたくらいだ。

 

1970年に山内は、長女である陽子の二十歳の誕生日を祝うため、

ドレスアップした彼女を祇園へつれてゆく。

父の馴染みらしい白塗りの芸者が座敷に五人もあらわれ、陽子は仰天する。

 

夜が更け、陽子だけタクシーで家まで送られる。

父はその日帰宅しなかった。

めづらしく親らしいことをしたつもりかもしれないが、

結果として山内は、若い娘に一生忘れられない屈辱をあたえた。

 

陽子は、丸紅の社員だった荒川實と結婚する。

MIT卒で洗練され、ユーモアの感覚もあり、父と正反対なところが気に入った。

ふたりはカナダのバンクーバーで充実した生活をおくる。

 

問題が発生した。

人材好きの山内が、實をスカウトしたのだ。

任天堂のアメリカ法人をつくるから、その社長にならへんかと。

ビジネスパーソンにとって拒否できないオファーだ。

 

陽子は恐怖する。

彼女がこの世でもっとも距離をおきたいもの、それが任天堂だった。

経営のストレスで父の精神を痛めつけ、家族を不幸にした元兇とおもっていた。

しかし山内は、實をあっさり口説き落とす。

 

陽子の不安は的中する。

1980年にニューヨークに設立したNintendo of Americaは、いきなり倒産しかける。

「お前の亭主は無能や」と山内が電話でわめく。

實は義父の理不尽さや傲慢さを、妻にむかいなじる。

だから言わんこっちゃないとゆう話だが、陽子はひたすら耐える。

板挟みの状況で、ほかになにができよう。

京都にいる母に相談するが、「辛抱しなさい」としか言われない。

高額な通話料をムダにした。

 

1981年、まったく無名の開発者・宮本茂による『ドンキーコング』が大ヒット。

その後の任天堂のグローバルな成功において、

荒川陽子の「内助の功」は無視できないだろう。





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スイッチオンしたNintendo Switch

 

 

任天堂は東京ビッグサイトで、13日にメディアむけプレゼンテーションをおこない、

つづく14・15日には一般公開の体験会を開催して、

あたらしいハードウェア「Nintendo Switch」の詳細をあきらかにした。

 

Wii Uの販売が振るわなかっため、もしスイッチで連敗すれば、

任天堂は据置型ハード市場からの撤退すら考えねばならないだろう。

背水の陣である。

 

 

 

 

懲りずに任天堂は、ゲームを再定義しつづける。

平たく言えばスイッチは、据置機と携帯機双方の特色を兼ね備えるものだが、

それだけならただ便利になったにすぎず、新味が足りないと彼らはみなす。

なので左右一対の「ジョイコン」をふたりでシェアし、

スタンドで立てた画面を見ながらあそぶ「おすそわけプレイ」をアピール。

 

 

 

 

むしろ画面すら必要なく、目と目を見合わせて対戦させる。

ビデオゲームのパーティ会場への浸透作戦だ。

 

 

 

 

据置と携帯の国境における侵犯行為それ自体が、ゲーム史上の一大事件。

たとえばスプラトゥーンは、あの持ち重りするゲームパッドから解放された。

 

 

 

 

ローカルに本体をもちよってのナワバリバトル。

スプラトゥーンが再定義される。

なお携帯モードに対応したせいか、Proコントローラーでの操作が可能に。

 

 

 

 

僕は体験会で、ボクシングスタイルの格闘ゲーム『ARMS』をあそんだ。

ジョイコンを「いいね持ち」し、スプリング状の腕をのばして殴り合う。

つまり『Wii Sports』のボクシングの豪華版だが、

拳がヒットするまで間があるため、攻撃・防御・移動の駆け引きが強調される。

 

 

 

 

アメコミ調の凝ったデザインは、ポップかつクールな世界観で人目を引いた、

新規IPとしてはWii U唯一のヒットであるスプラトゥーンにあやかっている。

販売戦略的に重要なソフトだ。

それはともかく、ロボっ娘のメカニッカたんはかわいい。

 

 

 

 

モノリスソフトの『ゼノブレイド2』も発表された。

また壮大なフィールドを駆けずり回ることになる。

 

 

 

 

CGアニメ『楽園追放 -Expelled from Paradise-』を手がけた、

齋藤将嗣がキャラクターデザインを担当。

 

 

 

 

これまでのゼノブレイドは、致命的と言えるほどキャラモデルが不細工だが、

モノリスと任天堂は齋藤のCGアニメにおける功績を評価し、汚名返上をはかるのだろう。

女の子がかわいくないと、すくなくとも日本市場での成功は至難。

もしキャラがダサかったら、スプラトゥーンは国内で絶対150万本も売れてない。

 

 

 

 

スクウェア・エニックスは、3DSのブレイブリーデフォルトシリーズのスタッフによる、

『Project OCTOPATH TRAVELER』をお披露目した。

携帯機が「据置機」に合流する現象がおきている。

 

PVによるとシンプルで自由度のたかい、TRPGよりのコンセプトらしい。

スタッフは未発表で、絵師も吉田明彦とか政尾翼とか噂されてるが、

いづれにせよキーヴィジュアルはたまらなくいい雰囲気。

 

 

 

 

グラフィックは荒いドット絵と、精細な描画のくみあわせ。

戦闘はサイドビューで、コマンドもスーパーファミコン時代をおもわせる。

最近のRPGの流行を追っている。

 

 

 

 

フィールドは3Dモデルをドット絵風に演出。

手前と奥がぼやけてたり、水面がフォトリアルだったりで、ミニチュアみたい。

RPGでの街の探索や会話がかったるくてスルーする僕でさえ、

じっくり歩きまわりたくなった。

 

 

 

 

カプコンの『ウルトラストリートファイターII ザ・ファイナルチャレンジャーズ』。

「ドット絵のストIIの復活!」が謳い文句。

ジョイコンは、幅10cmで重さ50gしかないのにLRボタンがついており、

SFCとボタン数がおなじであるため立ち上がった企画の様だ。

 

 

 

 

途轍もない人出だった体験会で揉みくちゃにされた僕は、

ゲームを心から愛するひとびとが日本にまだたくさんいるのを実感した。

この文化は守るべきとおもった。

 

Nintendo Switchは、過去を否定し肯定するハードウェアだ。

ひとことで言い表せない。

もう後はないけれど、前途は滔々とひらけている。



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Nintendo Switch 混沌を切り裂く光

 

 

任天堂のあたらしいハードウェアの名称やコンセプトが発表された。

その名は「Nintendo Switch」

携帯機と据置機の両方の性能をそなえており、

これ一台で、自宅のテレビでも外出先でもあそべる。

任天堂は、自身がつくりだした「携帯/据置」のボーダーを、

みづからの手で消去する気だ。

 

 

 

 

「Joy-Con」とゆう着脱可能なコントローラが目を引く特徴となっている。

ボタンやジョイスティックの部分だけスライドし……

 

 

 

 

……「本体」にカチッとはめれば、大型テレビであそんでいたゲームを、

そのまま好きな場所へ持ち出せる。

いかにも現代的なモビリティ。

 

 

 

 

ただ、家でも外でもゲームにのめりこむ様な人間は、

ジョイコンの取り外しすら億劫に感じるだろう。

そんな場合、帰宅したらジョイコンをつけたままの本体をドックにのせ……

 

 

 

 

……別のコントローラでつづきをプレイすれば、手間がひとつ減る。

ゲーマーはストレスを嫌う生き物なのだ。

 

ニンテンドースイッチの中心概念に、決定的なあたらしさはない。

実装されなかったが、PSVitaもHDMI出力機能の搭載を検討していた。

ある意味フツウな、期待どおりのハードと言える。

 

 

 

 

とは言えここから、元玩具メーカーの本領が発揮される。

ジョイコンは単独で、簡易なコントローラとして機能するため、

本体をスタンドで立てると、すぐその場で2人対戦が可能。

ふたつ本体があれば4人対戦!

激アツのマリオカート大会が世界各地でひらかれそう。

 

 

 

 

飛行機などで長時間移動するときは、

切り離したジョイコンだけ握ってプレイすると、目や腕の負担が軽減する。

 

 

 

 

Wiiの「ヌンチャクスタイル」で実證ずみだ。

ケーブルがなくなり、手軽な操作性がさらに進化した。

 

ちまちまっとして親しみやすいオモチャっぽさは、

ウルトラハンドや光線銃シリーズなどの伝統を受け継いでいる。

 

 

 

 

任天堂ハードの象徴である「十字キー」が消えた。

切り離したときボタンが必要なのでしかたない。

 

 

 

 

点対称的なジョイスティックとボタンの配置は、アイコンに採用。

人間工学やデザイン性でなく、「ギミック」として生まれたのが任天堂らしい。

 

 

 

 

単純に配置だけみるとXboxコントローラに似ているが、

あふれる遊び心はむしろワンダースワンにちかい。

縦持ちでもプレイできる独特の対称性。

 

横井軍平がニンテンドースイッチをみたら、きっとよろこぶはず。




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『幻影異聞録♯FE』 うかびあがる元型

 

 

WiiU用RPG『幻影異聞録♯FE』は、アトラスと任天堂が共同開発する、

『真・女神転生』と『ファイアーエムブレム』のコラボタイトル。

 

作品世界でチキは、ボーカロイド的な存在として人気を博す(歌はこちら

かわいくて、健気にがんばる「ひととなり」は、初音ミクにも負けない。

 

 

 

 

ゲームの骨格はメガテン/ペルソナが基盤で、現代日本を舞台とする。

渋谷駅前の交叉点などもつくりこんだ。

ストーリーがすすむにつれ、看板や大型ビジョンなどが変化。

 

 

 

 

ゲームパッドでは、会話の過去ログがリアルタイムで更新される。

街を歩きながらスマホでLINEアプリをみてクスクス笑う、われわれの日常を再現。

凝ったインターフェイスがアトラスらしい。

 

 

 

 

「106」前のステージで、「黒野霧亜(きりあ)」のライブがはじまった。

エイベックス・グループがたづさわる音楽は、口ずさみたくなるクオリティ。

霧亜を演じるのは南條愛乃。

 

アイドルをめざす少年少女が、異世界からの侵入者と戦う物語なので、

ほかにも水瀬いのりなど、歌の得意な声優をそろえた。

 

 

 

 

ライブ終了後、渋谷に異変がおきる。

106内部はダンジョンと化す。

 

 

 

 

戦闘はキャラが前面に出た、ボイス満載のにぎやかなもの。

なんだか任天堂らしくないが、「剣・槍・斧」の三すくみで弱点をつき、

一気に畳みかけるシステムは、FEとアトラスRPGがさりげなく融合。

 

 

 

 

ボス戦では、強力なスキルで対抗。

たとえば「つばさ」と「エレオノーラ」がユニットとしてデビューしていれば、

コンビ技が発動、二人組として華麗に歌い踊る。

 

 

 

 

息はぴったり、大ダメージ!

水瀬いのりと佐倉綾音なんて、ごちうさファン的に夢の姉妹ユニットだ。

 

 

おっぱいへのこだわりはデビサバスタッフだからか

 

 

だいぶ「手強いシミュレーション」から遠ざかったのは否めないが、

戦闘後のレベルアップ画面ではおなじみのファンファーレが鳴り、

「ピンピンピン!」と成長の喜び(もしくはガッカリ)を噛みしめる。

 

 

 

 

これまで公開された情報で印象ぶかいのは、ガッツポーズがにあう、

シーダを髣髴させる「織部つばさ」の、ヒロインらしいたたずまい。

まっすぐな瞳(とゆたかな胸)に心うばわれる。

これぞFE、そしてアトラス系RPG。



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スプラトゥーンからデビルズサードへ 板垣伴信の哲学

 

 

板垣伴信は、WiiU『デビルズサード』が8月4日に発売されると告げる動画で、

本作が「マージ(合体)」でなく「アッパーコンパチブル(上位互換)」だと強調した。

 

 

 

 

彼がこれまで作ってきた『NINJA GAIDEN』などの「メレーコンバット」と、

オンライン多人数対戦の「シューター」の単なる抱き合わせでなく、

両ジャンルでやれたことを何ひとつ切り捨てない「全部乗せ」と言いたいらしい。

 

おなじくWiiUで成功をおさめた『スプラトゥーン』が、

「ストラテジー」と「シューター」の骨格だけ抜き取りドッキング、

まったくあたらしいジャンルを創出したのと好対照といえる。

 

 

 

 

自己の世界観をさらに開陳。

『孫子』を意識し、「戦わずして勝つのが兵法の基本」とのべる。

マルチプレイでは「クラン」に所属し戦うが、

そこでは軍事同盟などの外交が大きな役割をはたす。

 

「ゲームにはある程度のリアリティが必要」とゆう板垣は、

メカニズムがもとめるならプレイヤーキャラクターをイカにする任天堂とは、

かなりことなる哲学の持ち主の様だ。

 

 

 

 

スパイ行為までゲーム構造にとりこんだ。

どこかのクランへ潜入し、盗んだ情報を売ったりできる。

逆に「裏切り者がいるぞ!」と書いたビラをばら撒き、敵を撹乱したりも。

 

本作のマルチプレイで、できないことはなさそう。

例外はセックスくらい。

 

 

 

 

クランは報酬をえることで陣地の強化が可能。

トーチカ・補給所・監視カメラ・コンテナ・兵舎・天守閣など……。

 

 

 

 

せっかくつくった要塞が、敵の航空支援で爆破された。

これは腹が立つ。

 

板垣いわく、「人間の慾望は創造と破壊」。

破壊に対しては、さらなる破壊でこたえたい。

 

 

 

 

フルーツで玉入れ競争とか、お遊び要素も用意。

WiiUが1台あれば、2015年におけるゲームの一番おいしいところを味わえる。






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苑田 謙

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