秋アニメOPを語る 『となりの吸血鬼さん』と『アニマエール!』

 

 

『となりの吸血鬼さん』は、400歳の美少女吸血鬼と、

おせっかいな女子高生の同居生活をえがくコメディだ。

 

「ソフィー」は吸血鬼だが温厚な性格で、けっして人間を襲わない。

血液はアマゾンで購入している。

 

 

 

 

本作はゴシック要素が薄い。

かわいい女の子がいっぱいで、絵面もぱっと華やか。

 

 

 

 

僕は基本的に吸血鬼ものが苦手だ。

血を吸うという行為が、どうも不衛生に感じられる。

そして露骨に性的すぎるとおもう。

 

しかし本作は、「少女同士のちょっと過剰なスキンシップ」がモチーフで、

吸血行為がむしろそこに埋没するのがおもしろい。

 

 

 

 

OPアニメーションは、コンセプトデザインの杉村苑美が担当。

本作のビジュアル面をリードしている様だ。

ちらちらと健康的なエロスをアピールする。

 

 

 

 

園田健太郎による楽曲はにぎやかで、いわゆる電波ソングに分類できそう。

感心するのは、ソフィー役をつとめる富田美憂の歌唱力。

電波ソングはある意味、声優が強引な譜割りをたどたどしく追う、

「歌わされてる感」が魅力だが、この人はさらっと歌いこなす。

役柄もぴったり。

堕天使や吸血鬼をやらせたら、右に出るものはない。

 

相方をつとめる篠原侑は、アイムエンタープライズ所属の若手声優。

本渡楓や千本木彩花のひとつ下で、嶺内ともみの同期。

若いふたりの掛け合いが中心なのに、安定した芝居に感じられるのは、

音響監督・明田川仁の力量が大きいとおもわれる。

 

Studio五組制作ということで、『きんいろモザイク』をなぞる雰囲気を出しつつ、

「日常/非日常」「明/暗」「友情エピソード/ギャグ」「若手声優/中堅声優」などの、

絶妙なバランスをたのしめる秀作となりそう。



 

 

 

 

『アニマエール!』はチアリーディングを題材とするアニメ。

制作はきらら系を得意とする動画工房で、ハズレはないだろうと期待させる。

 

OP曲はチアを模しており、掛け声が飛び交って元気いっぱい。

おもわず体がうごくアクティヴな曲だ。

 

 

 

 

主人公ではないが、チア経験者の「有馬ひづめ」が鍵となるキャラ。

優等生で、ふだんは無表情。

 

 

 

 

しかし演技がはじまった途端、人がかわった様なキラキラの笑顔をみせる。

チアにかける情熱がつたわり、グッとくる。

 

 

 

 

僕が好きなのはサビのはじめの部分。

カメラが奥に、つづいて横にうごくなかでとらえた、勢いよく跳ねるポニーテール。

熱い青春の一コマを象徴している。



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『スロウスタート』第7話

 

 

スロウスタート

 

監督:橋本裕之

7話絵コンテ:舛成孝二

7話演出:篠原正寛

原作:篤見唯子

シリーズ構成・7話脚本:井上美緒

脚本:井上美緒、山下憲一

キャラクターデザイン:安野将人

音楽:藤澤慶昌

アニメーション制作:A-1 Pictures

放送期間:2018年1月‐

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7話は、栄依子が誕生日をむかえる。

トレードマークのヘアピンをみんなから贈られ、頭がにぎやかに。

榎並先生がくれたのは、手持ちのゼムクリップ。

したたかな栄依子は即興でハートマークに変える。

 

 

 

 

Bパートは推理もの風にはじまる。

ある朝先生が自宅で目覚めると、異変がおきていた。

 

 

 

 

教え子である栄依子が、かわいい服を着て床で眠っている。

両手を縛られたまま。

いったいなにがあったのか。

 

 

 

 

栄依子の證言により、真相が判明する。

先生は友人と飲んだ帰りに栄依子と出くわし、マンションまで送ってもらった。

泥酔してたとは言え、教え子に介抱されたとはみっともない。

 

 

 

 

栄依子はブアイソな先生に興味津々で、やたらちょっかいを出し、からかう。

冠もそうだが、「自分」をもっていて、芯の強いタイプが好きらしい。

人当たりがよくて、つい他者の期待に応えすぎ、

流されがちな彼女にとって、うらやましい性格だから。

 

 

 

 

先生は栄依子を嫌いではないが、可愛げがないとおもっている。

高1にしては言動が大人びすぎ、あつかいづらい。

でもそこは亀の甲より年の功、帰りぎわの栄依子に「接触」し、意表をつく。

 

衣擦れの音のエロティシズムは、百合アニメの醍醐味。

 

 

 

 

栄依子役の嶺内ともみはド新人だが、達者な演技に舌を巻く。

沼倉愛美との心理戦は、見ごたえ聞きごたえたっぷり。

ぬーさんは、『ハナヤマタ』で豊口めぐみとぶつかり合った様に、

今度は新人に胸を貸している。

アニメっていいなとおもわされる。

 

 

 

 

情動はさらに昂まってゆく。

栄依子は、先生がつけているネックレスに目をとめる。

 

 

 

 

それは、アクセサリー制作が趣味の栄依子がつくったもの。

母が経営する雑貨店で、たまたま先生は買ったらしい。

 

 

 

 

こんな偶然って、あるんだな。

とにかく、めちゃくちゃうれしい。

 

 

 

 

栄依子の感情がどっと心に流れこみ、花名はおもわず泣き出す。

全然大事件じゃないし、自分は直接関係ないのに。

だからこそ、この涙はうつくしい。

 

 

 

 

自信家ぽくて、話が上手で、だれとでも仲良くなれる栄依子だが、

本当に自分が好きなものを人に知られるのは恥づかしかった。

隠してたつもりはないが、言えなかった。

でも、花名には言えた。

正反対とおもわれたふたりは、実は似たもの同士だった。

 

 

 

 

こちらは若手声優の、瑞々しいアンサンブルをたのしめる。

名作『ハナヤマタ』に匹敵する、心洗われるエピソードだ。





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『三ツ星カラーズ』 リーダー大勝利!

 

 

三ツ星カラーズ

 

監督:河村智之

原作:カツヲ

シリーズ構成:ヤスカワショウゴ

キャラクターデザイン:横田拓己

音楽:未知瑠

アニメーション制作:SILVER LINK.

放送期間:2018年1月‐

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カラーズの三人はOPで、それぞれ13着の衣装を着る。

結衣は赤で、リボンやフリルがついた可愛い系。

さっちゃんは黄で、キュロットなどのボーイッシュ系。

琴葉は青で、帽子やワンピを好むクール系。

 

39着のデザインをおこす作業を想像すると、気が遠くなる。

 

 

 

 

第6話でカラーズは、人類が滅びたあとでも生き残れるよう、

食べられる雑草をもとめ上野公園をさがしまわる。

細密に描かれた背景が見どころだ。

 

 

 

 

本作の主人公は結衣となっているが、パワーバランスは押されぎみ。

天衣無縫で傍若無人なさっちゃんと、

3DSを手にしながら毒舌と暴力をくりだす琴葉が相手では、

どうしても結衣の優等生キャラは見劣りする。

 

 

 

 

6話のハイライトは「弱点探し会議」。

メンバーがおたがいの弱点を指摘しあうことを通じて、

暇つぶし……じゃなかった、成長の糧とする。

 

琴葉の弱点の番になった。

らしくもなく、さっちゃんが遠慮しており、不穏な空気に。

言ってはいけない弱点があるらしい。

 

 

 

 

それは、実は琴葉はゲームが下手なこと。

いつもゲームばっかりやってるのに。

しかも下手である自覚がない。

 

 

 

 

天使の笑顔で、まるで悪意なく、友人のプライドを粉砕する。

結衣は、1クールの折り返し地点となる6話で、

本作がだれの物語なのかをはっきりさせた。

 

 

 

 

6話の演出は、ベテランの川畑えるきん

『この美術部には問題がある!』『ガヴリールドロップアウト』など、

電撃コミックスが原作のアニメは質が高い印象がある。

なぜかは見当もつかない。

むしろおしえてほしい。

 

僕にできるのは、「アニメ化」とゆう過小評価されがちな、

ひとつのクリエイティビティを、ひたすらたのしむことだけ。





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2018年冬アニメ(OPを中心に)

 

 

『citrus』はサブロウタの百合漫画が原作で、アニメ自体がひとつの事件だ。

義理の姉妹の、複雑ではげしい恋愛感情をえがく。

闊達な竹達彩奈と、なぜか百合姫作品に縁がある津田美波の、

緊迫感と親和性を両立させたやりとりが水際立っている。

 

 

 

 

親の再婚がどうとか、ストーリーは荒唐無稽だが、

アニメ版はいまのところ忠実に原作をなぞっている。

カメラワークや声優の演技により、『citrus』の時空が現出するのに感動した。

 

 

 

 

EDでは、サブロウタのイラストをつかっている。

原作のタッチを活かすとゆう宣言だろう。

キャラデザなどでアニメに最適化した変更をほどこすのはよくあるし、

決して間違いではないが、本作はその道をえらばない。

芽衣の憂いをふくんだうつくしさは、見ていてため息がでるほど。

 

 

 

 

OPテーマはnano.RIPEが担当。

ナイフの様にするどく、それでいてエモーショナルな楽曲を提供している。

尖っていて取り扱いは要注意だけど、時代の先端にふれられるアニメだ。

 

 

 

 

『三ツ星カラーズ』は、カツヲが『コミック電撃大王』に連載する漫画のアニメ化。

女子小学生3人からなるグループが、わちゃわちゃ大騒ぎしながら、

地元である上野の街におこる事件を解決する。

 

 

 

 

本記事でとりあげる4作品のOPでは、楽曲の質が一番高いかもしれない。

サビの部分のコーラスなどヘッドホンで聞いていると、

畑亜貴による歌詞もあいまって、かるくトリップできる。

 

 

 

 

僕の好みから言うと、話のテンポがやや物足りない(シリーズ構成:ヤスカワショウゴ)

でも、丹念にロケハンしたであろう上野の風景などはアニメむきの題材で、

見ていてたのしい作品にはちがいない。

 

 

 

 

『スロウスタート』は篤見唯子原作

『まんがタイムきらら』連載の4コマ漫画だ。

 

 

 

 

OPテーマの作詞はベテランの岩里祐穂。

「ポップコーンみたいにね めざめてく細胞」なんて、

キラーフレーズがとびだす冒頭からゴキゲン。

 

 

 

 

主要キャストは、近藤玲奈・伊藤彩沙・嶺内ともみ・長縄まりあと若手をそろえる。

近藤は18歳だし、嶺内は新人にちかい。

しかしこれがまあ、ぴったしの配役なのだ!

原作を読むとき脳内再生されていた音声が、テレビから流れてきて仰天。

音響監督は明田川仁だが、いったいどうゆう秘術を駆使してるのか。

 

 

 

 

きらら系アニメはOPがすべて、みたいなところがある。

パワーポップ的なイントロに、流麗なストリングが重なり、画面に桜吹雪が舞い、

そしてサビの「ne!ne!ne!」でキャスティングの妙を存分にしめす。

本篇もよいが、このOPはまさしく「きららポップ」の完成形だ。

 

 

 

 

『刀使ノ巫女』は、Studio五組制作のオリジナルアニメ。

刀をふるって戦う少女たちの物語だ。

 

 

 

 

Studio五組はゴンゾから独立した会社で、

かつて『ストライクウィッチーズ』に関わっていたそうだ。

ストパンファンの心をくすぐるOPになってるし、

チャンバラの動きのよさは『織田信奈の野望』を髣髴させる。

 

 

 

 

女の子の横並びとか、「日本刀×JK」とかの絵に、僕はよわい。

先鋭的だったり誘惑的だったり、革新的だったり迎合的だったりする、

深夜アニメのもののふたちが、あらたな時代へ斬りこんでゆく。



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『きみの声をとどけたい』

 

 

きみの声をとどけたい

 

出演:片平美那 田中有紀 岩淵桃音 飯野美紗子 神戸光歩 鈴木陽斗実 三森すずこ

監督:伊藤尚往

脚本:石川学

キャラクターデザイン:青木俊直

アニメーションキャラクターデザイン:高野綾

音楽:松田彬人

アニメーション制作:マッドハウス

製作国:日本

公開:2017年8月25日

 

 

湘南を舞台に、女子高生がミニFMでラジオ番組をはじめる、

さわやかな長篇アニメーション映画である。

 

 

 

 

スタジオは、かつて喫茶店だった廃屋にある。

主人公の「なぎさ」が雨宿りしたとき偶然、機材をみつけた。

 

 

 

 

12年前の交通事故により、店主は帰らぬ人となった。

ラジオのDJをつとめていた娘も、いまだ昏睡状態のまま。

 

 

 

 

そのまた娘である「紫音」は、眠りつづける母を見舞いに湘南へ来ていた。

鍵が開いてたとは言え、無断で喫茶店に侵入し、

なんとなしにDJごっこをしたなぎさに最初は怒るが、

お母さんに思いをつたえるためラジオを再開しようと持ちかけられ、承諾する。

 

 

 

 

主人公が「言霊」を目視できるのが、本作のギミックとなっている。

予告篇はやや地味だが、ファンタジー色が結構つよい。

 

 

 

 

本作の魅力はキャラクターだ。

幼なじみグループに、ラジオオタクで仕切りたがりの「あやめ」や、

音楽学校へかよう不思議ちゃんの「乙葉」などがくわわり、

高2女子だらけになるが、みな個性的でみな愛おしい。

 

キャラクターデザインは、手びろく活動する青木俊直。

ぜひ、物語のなかで動く彼女たちを見てほしい。

シンプルな造形と、繊細な感情表現の両立に感嘆するはず。

 

 

 

 

ラクロス部のエースとしてたがいをライバル視する、

「かえで」と「夕」のアンビバレントな関係が、大きな見どころ。

ドラマチックな感情の波がおしよせる、思春期女子の友情物語だ。

勿論、百合に分類してもいい。

 

 

 

 

主要キャストが現役高校生の新人である本作は、

絢爛豪華なところがなく、多くの注目をあびてると言えないが、

2017年夏の忘れがたい記憶として、静かに語り継がれるであろう傑作だ。




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