小説1 「快楽原則」(改稿)
『フリーダム・シスター』
午前一時。新宿区の大半は寝しづまる。
夜行性の鳥みたく、暁ジュンは活動をはじめた。十五歳の女で、顔は蒼白い。鼻がたかく顎がとがり、鋭角的な横顔。左手首から流れる大量の血が、なめらかな肌を濡らす。
「手当てして」
自室をでて、ふたり暮らしの相棒である兄のジョージに腕をみせた。彼はさほど驚かず、テレビをけし救急箱をとりだす。
「説教はしたくないが」ジョージが素っ気なくゆう。「親からもらった体を傷つけるのはよくない」
「あたしの体の所有者は」ジュンが答える。「最初からあたしだ。親にも親がいる。さかのぼれば全人類がアダムとイヴの持ち物になる。与太話はいいから、はやく治療すませて。傷跡のこしたくない」
消毒液の刺激に反応しつつ妹は言い返す。頭の回転がはやく、朴訥な兄をよせつけない。
「こんなことして」ジョージは依怙地になっている。「だれがなんの得をするんだ」
「ねえアニキ、フロイトって知ってる?」
「まあ名前くらいは」
「精神分析に『快楽原則』と『現実原則』って概念がある。リスカは多分前者だね。スッとして気持ちいいもん。アニキにゃわからないだろうけど」
妹が読書するのを見たことないから、ネットでえた知識だろう。ウィキペディアから生まれた哲学者の第一世代がいるなら、そのひとりが暁ジュンだった。
会話に倦んだ彼女は右手でiPhoneをいじりだす。足でPS4のコントローラをうごかし、録りためたアニメをみる。感想を即ツイッターでつぶやく。LINEの通知をうけとり「彼氏と会ってくる」と立ちあがる。常備してあるクロレッツのボトルから二粒つまむ。「手当てしてくれてありがと」と言い、兄にも分けあたえる。
羽ばたく様に夜の街へきえた。門限がどうとか釘をさしても、耳にとどいたかどうか。
お留守番のジョージは懐紙を口にはさみ、ポンポンと刀に打粉をかけている。蒼龍大学一年生の彼は、最難関の国家試験「剣士考査」の合格者で、つまり世襲でないサムライだ。剣の手入れは毎日缺かさない。
玄関の錠前をあける音がきこえ、ジュンが帰宅。出てから三十分もたってない。
「はやかったな」ジョージが刀をおさめる。
「警察がウヨウヨいて職質された」ジュンは機嫌が悪い。「きょう二・二五事件のだれかが処刑されたんだっけ?」
ことし二月末、陸軍の青年将校がクーデタをおこした。押入れに隠れた安倍晋三首相は難を逃れるも、数名の要人が惨殺された。叛乱部隊は三日後に投降。すみやかに軍法会議がひらかれ、七月に十五名の死刑を執行。翌月、「国家改造2・0」を説く思想家の東一輝らもついでに処刑されたが、政府がおそれるほど市民は動揺していない。
「愚かしい騒乱だった」ジョージが吐き捨てる。「テロにはしった結果、皇道派は陸軍から一掃された。自業自得だよ」
「国を憂いての行動をコケにすんな」
目の前でショートパンツに着替えたジュンが、ソファからテーブルへ長い足を投げだす。中学生のくせ生意気に『シナチョン撲滅ブログ』とゆうサイトを運営し、狂信的な青年将校を讃美していた。
「平成維新は」ジュンが大きな瞳でにらむ。「困窮する庶民の救済が目的なのも知らないのか、バカアニキ」
三十パーセントに上がった消費税、大企業優遇の経済政策などを、たしかに蹶起将校は糾弾していた。だがジョージは興味がない。国民を守るべき軍が、人々が安心して外を歩けない原因となるのはおかしい。
「お前と議論する気はない」ジョージが言う。「さっさと寝るなり、宿題するなりしろ」
「クソバカアニキ、ちっとは社会の現実をみやがれ」
「お前は自分の現実をみろ!」
ジョージがラックから封筒をとりだす。
「きょう中等部から手紙がきた」兄はつづける。「出席日数や成績について書いてある。このままじゃ内部進学は不可能だと。今年度も学校へゆくフリしてたんだな」
「知ったこっちゃねえ!」ジュンは書類を引き裂く。「あたしはだれの指図もうけない」
「カッコつけるな。たかが不登校で」
「ふん、図体はデカいのに、人間はメチャクチャちいさいな」
ジョージは身長百八十六センチある。ジュンはソファから腰をあげ兄を見下ろす。
「カッコつけない人生に」妹は腕をくみ胸をはる。「生きる意味なんてない。あたしはそう信じる。いつかアニキにも理解させてやる」
ソルティドッグ
最近、塩分補給アイテムがたくさんあり、どれを買うべきかまようので、
ドラッグストアにお勤めの都筑十倉さんに質問したら、
わざわざ大充実の記事を書いてくださいました。
こちらです。
さすがプロの商品知識はちがう!
さっそく「塩分チャージタブレット・グレープフルーツ味」を買ってみたけど、
おいしくて食べすぎるのが難点……。
話かわって、「Googleリーダー」廃止以降、ボクはRSS難民になりかけており、
当ブログも読者の便をはかるため、更新通知専用のツイッターアカウントをつくりました。
お役に立てれば幸いです。
ちなみにアイコンは宵乃さんにつくってもらったものです。
ついに決着!「きのこの山 vs たけのこの里」論争
団欒の場において、不適切な話題がある。
政治、宗教、民族、収入、女性の年齢や体重、ブログのアクセス数など。
最たる例は、「きのこの山とたけのこの里、どつちがすき?」だ。
松本ひで吉『さばげぶっ!』19話(講談社コミックスなかよし)で、不毛な論争をおう。
主人公「園川モモカ」が火つけ役。
爆弾発言にこおりつく部員たち。
政治学者サミュエル・ハンチントンいうところの、「文明の衝突」。
現代は、政治思想でなくお菓子が、対立軸となる。
本稿は中立的観点から書くつもりなので、
公平を期すためのべておくと、筆者はきのこ派。
いまさら、この国民食の魅力をかたり、屋上屋を架すまねはしない。
唯一の缺点を指摘しておく。
クラッカー部分がおれやすく、箱をあけてかなしくなること。
だがこれは「もちやすさ」という美質で、十分すぎるほど相殺。
単なるお菓子の範疇をこえ、神の意志を体現した、畏怖すべき奇跡だ。
腹黒いモモカは空気をよみ、主張をひつこめるが、「鳳部長」がニトログリセリンをそそぐ。
身の程しらない下衆どもめ!
みるだけで目が穢れ、嘔吐をもよおす。
駄菓子とよぶのもおこがましい、ゴミ的な物質。
クッキー部分のモサモサ感など、缺点をあげだすとキリがなく、
サーバの容量制限をこえてしまうため、ひとつだけ。
「里」つてなんだよ。
たけのこ派同士で、わざわざ村落を形成すんのか。
都会人が賞味することを前提としない、過疎地域むけの商品だ。
宗教戦争勃発!!
クラウゼヴィッツいうところの、「殲滅戦理論」。
明治一社に、チョコスナックふたつは多すぎ。
敵を撲滅し、後顧の憂いをたたねば、いきのこれない。
「たけのこ討つべし…」
やる気ゼロの幽霊部員「豪徳寺かよ」たんが、はじめてサバゲに参加。
人を幸福にするはずのお菓子が、はてなき憎悪と流血をもたらす。
なんとそこへ、ロッテが電撃的に参戦!
ビスケットのサクサク感と、チョコのまろやかさのマリアージュ。
なにより愛くるしい外見と、たのしいヴァリアシオン。
うん……ああ……やつぱコアラかな……。
ここに、四半世紀におよぶ激戦が終結。
ミクロの決死圏
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(日本映画・2012年)
1月6日に穴をあけたので、当ブログのことしの目標は364日更新だが、
どうも時間的に無理があり(←気づくのがおそい)、また発熱した。
一か月しかもたないらしい。
細菌がはいり膿がたまつたか、彫刻みたいな鼻(笑)の中ほどが腫れ、さわると痛い。
「発熱は魂の咆哮」と大言壮語した身だし、熱は「冷えピタ&氷枕」でむしろ歓迎だが、
それでも免疫力低下はまぬがれず、顔の形までかわるとさすがにキツイ。
ものもらいとかなら眼帯にあこがれるが、造形的に鼻はねえ。
世界は、オレの息の根をとめようとたくらむ、敵性生物でウジャウジャみちる。
本当は、戦場をドイツにうつした岩渕真奈をおうため、ドイツ語の勉強もしたいのに。
……はぁ。
ちなみに最近漫画の記事ばかりなのは、本のハズレがつづいてるのと、
いまよんでる南北戦争の本が、熱のせいではかどらないから。
この戦争自体は、最高におもしろいけど。
特に北軍のグラント将軍なんて、飲酒癖がひどくて共感しまくり。
「さっさと殺られろ、グァキシンジィーッ!!!!!」
コメント欄をとじ、アクセス解析も見ないので、だれにどう読まれてるかわからない。
こんな自己満足のくだらないブログ、読者ゼロでもしかたない。
井戸に石をなげこむみたいに、むなしい。
だがすくなくとも、2013年のこり328日、オレは美少女や男の娘の画像を貼りつづける。
そして戦争や、暴力を、夢想しつづける。
愛と死のテーマパークが完成するまで、休息はゆるされない。
アスカ時代
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(日本映画・2012年)
グーテンターク!
みんな七草粥食べたァ?
……え、食べてない、ああそう。
ハロウィーンやクリスマスは祝うくせにそれだから、日本人って本当バカよね!
でも、このブログ書いてる犬塚ケンとかいうヤツは、お粥食べたらしいよ。
固形物が喉をとおらなくて(笑)。
きのうは十二時間昏睡してたらしいし(爆)。
元日に「ことしは本気だす」って宣言して、一週間もたず疲労による発熱でぶっ倒れるとか、
バカをとおりこして哀れというか、とにかく笑えるわ!
んじゃ、改2号機の整備にたちあうから、またね。
チュース!
同僚がアスカというのは、つらいものがある。
はじめてガキシンジに共感した。
十二時間の半分を、ネタの仕込みと調理にあてれば、店をひらけたのだが。
なのに新年早々休業、翌日の献立もままならない。
虚弱体質の人間が、いくら気合いをいれてもむなしい。
冷えピタと氷枕で急冷をほどこしつつ、このままオレはなにも成し遂げられず、
みじめに死んでゆくのだろうと、さむざむしい現実をあじわつた。
でも解熱剤をつかわなかつたので、一夜で快復。
右のカレンダーの穴も、ひとつですんだ。
発熱、それは魂の咆哮。
紅蓮の炎で、内なる敵を灼き尽くせ。
そしてアイスクライマーからアイコン変更。
狂犬みたく暴れてやる。
ファイナルインパクトがおとづれるまで。
タグ: エヴァンゲリオン