鈴木マナツ/曽野由大『HELLO WORLD』
HELLO WORLD
作者:鈴木マナツ×曽野由大
原作:映画『HELLO WORLD』
掲載誌:『ウルトラジャンプ』(集英社)2019年-
単行本:ヤングジャンプコミックス・ウルトラ
9/20に公開されたアニメ映画のコミカライズである。
クレジットは曽野由大との共作となっているが、
繊細な絵柄を見るに、鈴木マナツが作画を担当してると思われる。
ストーリーはSF系なので要約が難しい。
量子コンピューティングによって「未来の自分」と出会った主人公が、
現代の京都を舞台に、落雷で死ぬ運命にある同級生の少女を救う話だ。
女の子を描けないと務まらないコミカライズなので、鈴木の起用は納得。
図書委員で本の虫で、クラスメイトと容易に打ち解けない、
無表情なヒロイン「一行瑠璃」から可愛さを引き出している。
鈴木の特色は、描線のうつくしさだ。
ただし、本作の女性キャラは露出が少なめなので、
作者の強みを十二分には発揮できていない。
それでもペットボトルの水を飲む横顔とか、ハッとする瞬間がある。
空間処理も巧みだと思う。
図書館の大きな棚とキャラの配置とか、カメラワークに感心する。
鈴木マナツ作品で僕が好きなのは、『阿部くん』や『WIXOSS』。
思春期女子のピュアなたたずまいを見ると「日常系」が向いてそうだが、
むしろ破壊衝動が暴発する中二病っぽい世界観を得意としている。
ゼロ年代的な資質を持ちつつ、10年代で苦闘する「セカイ系」作家にとって、
本コミカライズは好企画だったのではないだろうか。
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