松阪『大奥より愛をこめて』

 

 

大奥より愛をこめて

 

作者:松阪

掲載誌:『まんがタイムオリジナル』(芳文社)2018年-

単行本:まんがタイムコミックス

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第11代将軍・家斉時代の大奥を舞台とする、歴史もの4コマである。

金髪碧眼の「蒔乃」が新しい女中としてやって来るのが、物語の始まり。

 

 

 

 

さっそく蒔乃は新人イビリの洗礼をうける。

有名な「裸踊り」である。

実在を疑われてはいるが、捨てがたいエピソードだろう。

 

 

 

 

御台所(正妻)の「寧姫」は、引きこもりのコミュ障として描かれる。

家斉とは幼なじみの関係だが、結婚後も実事はなく、

側室が懐妊したという知らせを聞いて気落ちしてしまう。

 

お付きの女中が気を利かせて人生ゲームで遊ぶが、むしろ逆効果に。

 

 

 

 

大奥ならではの華やかさを、ワイド4コマ形式で演出する。

僕のお気にいりは、眉が特徴的な寧姫の部下。

武家の女らしい凛とした言動がいい。

 

 

 

 

漁色家の家斉に仕える以上、身分の低い蒔乃も「お手つき」になりうる。

しかし本人は故郷に想い人がおり、床入りには否定的。

本作は、将軍家の血統維持を目的とする機関において、

いかに純情でありつづけられるかというテーマがある。

 

 

 

 

寛政の改革で知られる松平定信が、大奥を敵視する悪役として登場。

将軍などは、幕政を司るための単なる道具とみなし、

家斉と寧姫の幼なじみの恋を踏みにじる。

やたらと家斉が女に手を出したのは、寧姫を守るためだった。

 

たしかに幕府主導の婚姻政策は、安定した統治に有効だったが、

大奥での浪費が財政を圧迫したのもまた事実。

功罪半ばであり、そこに歴史ものとしてのドラマが生まれる余地がある。





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米田和佐『だんちがい』8巻

 

 

だんちがい

 

作者:米田和佐

掲載誌:『まんが4コマぱれっと』(一迅社)2011年-

単行本:4コマKINGSぱれっとコミックス

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長期連載中の本作に、これまでで最大の変化が生じた。

それは最近の流行りである「ワイド4コマ」形式の導入。

きららに代表される、起承転結やオチのない4コマ、

4コマである必然性のない4コマが一世を風靡するなかで、

だったらコマを大きくし、普通の漫画っぽく見せようとする動きだ。

 

出版社としては、ネタあたりのページ数を稼げるメリットがあるし、

読者もスマートフォン風のアスペクト比に親しみを感じるかもしれない。

 

 

 

 

拡張された視野で、三女・羽月が躍動する。

豊かな表情、予測不能な行動。

いざとなったら羽月頼り、みたいなところが本作にはある。

 

 

 

 

とはいえ次女・弥生も、ワイド4コマの恩恵をうけている。

雨粒が落ちてきたときの反応をアップで描写したり。

 

 

 

 

好きと言ってほしいのか、ほしくないのか。

いや勿論言ってほしいに決まってるけど、どれくらい強く望んでるのか。

ツンデレはワイドコマが似合う。

 

ちょっとした移り変わりはあっても、四姉妹はいつだって可愛く、

本作のエバーグリーンな魅力は輝きを増してゆくのだった。





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まの瀬『顔がこの世に向いてない。』

 

 

顔がこの世に向いてない。

 

作者:まの瀬

配信サイト:『少年ジャンプ+』(集英社)2019年-

単行本:ジャンプコミックス

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人気者の「北見」に告白された、自他ともに認めるブスの「野宮」が、

ネガティブすぎる性格ゆえ、ひたすら迷惑がり逃げまくる4コマ漫画。

 

 

 

 

作者はやたら80年代推しだ。

たとえばこの引用部分だけで4つのネタを見て取れる(『愛は勝つ』は90年)

世代的に僕は解るし、面白がれるが、だからこそ一層謎な作家と思う。

 

 

 

 

グレッグ・イーガンとかSF小説ネタも満載。

なぜかサブカル界隈ってハードSF好きが多い印象。

BLとか現代オタクネタも、独特の間合いで料理する。

 

 

 

 

本作を読んでいると、わたモテやポプテピなど、

最近のサブカル系ギャグ漫画との類似にあれこれ気づく。

でも一番近いと思うのは、阿部共実かな。

思春期の女の子の生き様を、まるごと抉り取ろうとする迫力において。

 

 

 

 

漠然とした不安を感じさせる空虚さ。

でも儚いからこそJKはJKで、ゆえにJKはすべてだ。

そして僕たちは、無限ループする宇宙消失を目撃しつづける。





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楠元とうか『好きこそももの上手なれ!』

 

 

好きこそももの上手なれ!

 

作者:楠元とうか

掲載誌:『まんが4コマぱれっと』(一迅社)2018年-

単行本:4コマKINGSぱれっとコミックス

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桃井さんご、高校1年生。

容姿は可憐で、性格はほがらかで優しい。

エロゲーから飛び出してきた様な、非の打ち所がないヒロインだ。

 

ただし、性別は男。

 

 

 

 

いわゆる男の娘モノは、二つの作風に大別できる。

主人公自身が女装趣味に目覚める「これが……ボク?」系と、

主人公が男の娘に翻弄される「小悪魔」系。

 

本作はどちらでもない。

主人公の家に居候する男の娘は、すこしも小悪魔でなく、むしろ天使だ。

とても慎み深く、他人に迷惑かけないよう心掛けている。

 

 

 

 

つまり本作は鉄壁のプロットを放棄している。

さんごは外見も性格もかわいい。

だったらなんの問題もないじゃん、というわけ。

 

そして葛藤がない本作は、いわゆる日常系に接近している。

ホットケーキを作って女子力をアピールする最中に、

空手で鍛えた握力で泡立て器を捻じ曲げたりとか。

これぞ、男の娘のいる日常。

 

 

 

 

第7話、横柄な口調でさんごに話しかける人物があらわれる。

さんごの反応から察するに、ただならぬ関係らしい。

このキャラは秀逸なので、ぜひ単行本で顛末を確かめてほしい。

 

 

 

 

男の娘モノといえばドタバタコメディと相場が決まってるが、

安直なスチャラカで読者の気を散らすより、かわいさを優先すべきでは?

そんな思想を感じる佳作である。





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ふじのきともこ『絶対に壊れない友だちをください。』

 

 

絶対に壊れない友だちをください。

 

作者:ふじのきともこ

発行:竹書房 2019年

レーベル:バンブーコミックス WIN SELECTION

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あえて言及すると、サンリオキャラみたくシンプルで可愛らしい、

14歳の少女「もめんちゃん」と、その親友とおぼしき「オガクズ」の、

虚無的な日常をえがく4コマ漫画が本作である。

 

 

 

 

ウサギっぽい何かであるオガクズは、コミュ障の相方を支えるが、

そのもめんちゃんがメンヘラすぎて振り回されがち。

「海に行きたい」というつぶやきは、ただのポーズだったり。

 

 

 

 

もめんちゃんはもめんちゃんなりに、家の外でもがんばっている。

友達との会話では「わかる~」と必死に相槌をうったり。

そのたびに心は虚しくなるけれど。

 

 

 

 

もめんちゃんからの虐待に等しい扱いに耐えるオガクズは、

信頼できるパートナーだが、ちょっと天然なのが玉に瑕。

厳重に封鎖したもめんちゃんの部屋に侵入したときは、本気で怒られる。

 

 

 

 

社会風刺ネタが結構仕込まれてるのが、本作の特色。

われわれ日本人が一番苦手なテーマを、スマートに料理している。

たとえば国会前のデモの脱力感は、かなりのもの。

 

 

 

 

もめんちゃんのダメ人間っぷりをさんざん見せつけられたあと、

読者の心にはおそらく、彼女への愛おしさが残るだろう。

たとえば、突然ゲレンデにでかけたこの一篇でもめんちゃんは、

孤独を噛みしめながらスノーボードで疾走する。

 

そして僕たちは感動する。

引きこもりなのにもめんちゃん、めちゃくちゃスノボ上手だなと。




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たまにオリジナル小説。

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