はまじあき『ぼっち・ざ・ろっく!』2巻
ぼっち・ざ・ろっく!
作者:はまじあき
掲載誌:『まんがタイムきららMAX』(芳文社)2018年-
単行本:まんがタイムKRコミックス
われらが結束バンドが、2巻では文化祭に挑む。
メンバーは別の学校に通ってるので、個人枠で参加。
出演が決定し、ぼっちちゃんはプレッシャーで死にかける。
ライブハウスで演奏した経験もあるバンドだが、
なんだかんだで文化祭は人が集まるし、練習に熱も入る。
辛辣なバンドあるあるネタも冴え渡る。
クラスの出し物は、定番のメイド喫茶。
ぼっちちゃんも強制的にメイド服を着せられる。
『けいおん!』というレジェンドに真摯なオマージュを捧げる本作は、
それと同時に、ヴィジュアルの強度において限界突破してゆく。
ライブ本番にアクシデント発生。
1弦が切れて2弦のペグも故障する、二重のトラブルで窮地に陥るが、
飲んだくれのお姉さんの酒瓶を使ったボトルネック奏法で乗り切る。
きらら系の、極端にキャラの魅力に依存しがちなフォーマットから、
最大限のドラマ性を引き出すステージングに、思わず歓声をあげた。
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はまじあき『ぼっち・ざ・ろっく!』
ぼっち・ざ・ろっく!
作者:はまじあき
掲載誌:『まんがタイムきららMAX』(芳文社)2018年-
単行本:まんがタイムKRコミックス
[ためし読みはこちら]
彼女たちは「結束バンド」。
拷問でも始まりそうな不穏なバンド名である。
本作は『きららMAX』連載の、JKバンドものの4コマ漫画。
第1巻は昨年3月に発売され、すでにかなりの人気を博してるらしい。
同ジャンルの『けいおん!』と比較しつつ、きららの現在と未来を占う。
4人組で印象的なキャラは、ベースの「山田リョウ」。
家が裕福なので小遣いは多いが、楽器を買いまくって常に金欠、
雑草を食べて空腹をしのごうとしたら死にかけた。
ぶっちゃけベースなんてのは、あってもなくてもいい楽器で、
逆に言うとベーシストをどう描くかが作品の個性だ。
凛として女らしい秋山澪との対比が鮮やか。
部室でダベる放課後ティータイムとちがい、彼女らの溜まり場はライブハウス。
テーブルの描写なんかもいちいち凝っている。
作者の妹・日笠希望も漫画家で、背景を手伝っているとか。
単行本おまけのカット。
主人公の「後藤ひとり」、通称「ぼっちちゃん」は重度のコミュ障で、
バイトをする羽目になったがどうしても行きたくなくて、
わざと風邪をひこうと氷風呂に入って凍死寸前となる。
それを母親は陰から見守る。
芳文社なのに竹書房的な不条理ギャグに接近している。
なおメンバーの名字はアジカンから取っている。
P-MODELから頂いた『けいおん!』へのオマージュだろう。
正直僕は、音楽を題材にした漫画が苦手だ。
いくら紙の上で名演奏を披露されても、脳内で音声が再生されないから。
しかし本作の狂気や暴力性が、ステージで爆発する瞬間を目撃したとき、
音楽漫画のあたらしい扉が開かれたのを認めざるを得なかった。
『けいおん!』に代表されるきらら諸作への直接的言及もある。
いわく「不自然なくらい女の子しか出てこない」
「特に何の事件もなく話が進む」
「社会に疲れた大人が見るアニメ」など。
自己言及のパラドックスに陥っている。
そしてアー写を撮るときは「きららジャンプ」をこころみる。
例のアレである。
マンネリズムのマンネリズムみたいなきらら諸作は、
それがマンネリだと受け手に意識させない論理で構築されており、
社会に疲れた僕たちを現実逃避させるのに一役買ってきた。
『ぼっち・ざ・ろっく!』はその方向性でさらに加速しつつ、
素粒子同士が衝突し、スリリングな高エネルギー反応が生まれている。
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橙夏りり『コスプレ地味子とカメコ課長』
コスプレ地味子とカメコ課長
作者:橙夏りり
掲載誌:『まんがタイムスペシャル』(芳文社)2018年-
単行本:まんがタイムコミックス
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「紫ノ井小鈴」は、地味ないわゆる事務職のOLだが、
週末になるとガチのコスプレイヤーとして活躍している。
ところがある日、イベント会場で「織部課長」と出くわし、
絶対に秘密にしておきたい趣味を、よりによって上司に知られてしまう。
課長はガチのカメコだった。
秘密を守るかわりに、もっとコスプレ写真を撮らせろと要求。
パワハラ案件と言えなくもないが、紫ノ井さんは断れない。
課長のカメラの腕がよくて、キレイに撮ってもらえるから。
そんな揺れる女心をコミカルに表現している。
「逢瀬」を重ねる紫ノ井さんと課長を、同僚は怪しみ始める。
USBメモリをこっそり手渡すのを目撃したときは、
一体どんな「プレイ」をしてるのやらと色めき立つのだった。
仕事終わりに雨が降り出したので傘を使おうと思ったら、
撮影用の番傘だったりとか、コスプレあるあるネタ(?)を、
タイム系4コマらしくお仕事モノに落とし込んでいて面白い。
新人の「泉谷れいあ」は、自己紹介で趣味がコスプレと宣言し、
同じ趣味を必死に隠している紫ノ井さんの度肝を抜く。
コスプレって、いつのまにか世間的にアリになってたのかと。
キャピキャピしすぎないレーベルカラーに合わせる一方で、
女子のかわいさも打ち出す、タイム系4コマの醍醐味をあじわえる。
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はづき『ゆめぐりゆりめぐり』
ゆめぐりゆりめぐり
作者:はづき
掲載誌:『コミック百合姫』(一迅社)2019年-
単行本:百合姫コミックス
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東京から温泉地に引っ越してきた女子高生が、
地元の女の子と湯巡りしながら、親睦を深めるワイド4コマ漫画。
「つばき」と「ひより」の出会いは、駅前の足湯だった。
黒髪の少女が、うっとりした表情でぬくもりを堪能する様子は、
あまりに絵になるので、おもわず見惚れてしまった。
勿論、裸形を披露するシーンもたっぷり。
ころころぷにぷにで、つるつるすべすべな少女たちの、
ウェットアンドメッシーな裸の付き合いが描写される。
とはいえ、見どころはやはり足湯だ。
道端ですっとストッキングを脱いで入浴する展開は健全なのに、
ありふれた日常を吹き飛ばすエロスの爆弾となる。
ストーリーはあってない様なもの、というかほぼない。
でも漫画に可愛さを求めるなら、本作は全篇がクライマックスシリーズ。
いろいろな意味でアツいテーマパークは読者を癒やすだろう。
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タツノコッソ『社畜さんと家出少女』
社畜さんと家出少女
作者:タツノコッソ
掲載誌:『まんがタイムきららMAX』(芳文社)2018年-
単行本:まんがタイムKRコミックス
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「人の世の住みにくさ」がテーマの4コマである。
辛い残業を終えた主人公「ナル」は家路を急ぐが、
満員電車の周囲からはカシュッカシュッと、
ストロング系チューハイの缶を開ける音が聞こえる。
みんな疲れているのだ。
ナルが早く帰りたかったのは、自宅マンションで美少女が待ってるから。
学校制服にエプロン姿の「ユキ」は、
家出してナルのところに身を寄せて2週間になる。
まるで初々しい新婚家庭みたいだ。
ふたりは、今日あった出来事についてとりとめもなく話したり、
一緒にキッチンでおつまみを作ったり、楽しい夜をすごすが、
それでもナルはストロングなチューハイを我慢できなかった。
社畜としての生活は、飲まなきゃやってられない。
以上が第1話の流れで、状況説明の巧みさが伝わったとおもう。
居候の身なので甲斐甲斐しく家事をこなすユキは、しっかり者。
オフではだらしないナルに小言をいうこともしばしば。
でも親とうまくいってない孤独感から、ときどき甘えてくる。
そんな家出少女のツンデレっぷりを愛でる作品でもある。
第4話はデート回。
「好きな相手の見慣れない服装にドキドキ」というお約束の展開は、
同居してる関係では難しいが、ひねりを利かせて印象的なシーンに。
ふたりの出会いや、ユキが抱える悩みについては、具体的に描かれない。
おそらくナルは、大学時代に家庭教師をやっており、
精神的に追い詰められた教え子のユキに同情し、
就職したら彼女のための居場所をつくると約束したらしい。
作風は『ゆゆ式』の影響が強いが、ざくりと心を抉る情緒性は、
それとは別のストロングなエモーションを提供している。
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