缶乃『あの娘にキスと白百合を』2巻 恋する惑星

 

 

あの娘にキスと白百合を

 

作者:缶乃

掲載誌:『コミックアライブ』(メディアファクトリー/KADOKAWA)2014年-

単行本:MFコミックス アライブシリーズ

ためし読み/1巻の記事]

 

 

 

もし宇宙に「百合の魔法」が存在するなら、その第一の使い手は缶乃だろう。

卒業する先輩へのプレゼントは、自作プラネタリウム。

 

 

 

 

 

物理法則をねじまげ、乙女らは距離をちぢめる。

星空よりまぶしくきらめく。

 

 

 

 

「倉庫にとじこめられる」は、現実にありえないが学園モノの定番。

空間処理に特色ある缶乃も当然もちいる。

恋心に火をつけるのは、時間でなく空間だから。

 

 

 

 

新人作家なのに、大胆にも群像劇にいどむ本作の第2巻では、

ギャルっぽい中等部の「伊澄」が、年上ごのみの「デコ先輩」にちょっかいだす。

 

 

 

 

ふりかえるときの表情で、間柄の変化がわかる。

見返り美人の防御がゆるんでいる。

カップリングを特別視するイマドキの「関係性」の萌えに、作者ならではの「空間性」を加味。

 

 

 

 

ブーツのヒールをたからかに鳴らし突進。

オノマトペがふたりの距離感を演出する。

 

 

 

 

そして見開きのカタルシス。

自由自在なカメラワークから急にひろがるパースペクティヴ。

風景のなかに配置された感情が、次元をこえ炸裂。

 

てがける題材はともかく、缶乃は中山敦支や我孫子祐にちかい作家だ。

ペン先から火花とびちらせ、世界を描きかえるタイプだ。

 

 

 

 

題材的には、「女の子がだいすき」ってことにつきる。

百合漫画なのを割り引いても、とにかく本作は男の影がない。

匂わせすらしない。

社会の構成要素として、たとえば電信柱ほどの存在感すらない。

 

番外篇では「黒沢さん」の妹が登場、いきなり指をつきつけ、「白峰さん」に猫耳がはえる。

意味もなくドラマティックで、ただひたすらカワイイ。




あの娘にキスと白百合を 2 (コミックアライブ)あの娘にキスと白百合を 2 (コミックアライブ)
(2015/01/22)
缶乃

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缶乃『あの娘にキスと白百合を』

 

 

あの娘にキスと白百合を

 

作者:缶乃

掲載誌:『コミックアライブ』(メディアファクトリー/KADOKAWA)2014年-

単行本:MFコミックス アライブシリーズ

 

 

 

ふとく力がこもり、かつなめらかな描線。

面倒くさそうな髪のグラデーション、バラ園と人物の構図の妙。

缶乃の初単行本は、ひと目でなみなみならぬ才気をつたえる。

 

 

 

 

よだれでノートを濡らすのが「黒沢ゆりね」。

 

 

 

 

先生に指されると、なんでもこたえる。

一度読んだだけで、英語のテキストを全文暗記する天才。

 

 

 

 

スポーツはなにをやらせても全国レヴェル。

 

スポ根マンガみたく、リズミカルでダイナミックなコマ割り。

上の英語の授業もそうだが、「漫画的誇張」の達者な新人だ。

 

 

 

 

ゆりねと対をなすのが黒髪の「白峰あやか」。

自他ともにみとめる優等生で、努力せず学年1位のライヴァルに嫉妬。

 

「天才×秀才」の百合カプは、あらた伊里『総合タワーリシチ』とゆう先例があるし、

群像劇としてはきぎたつみ『共鳴するエコー』に似てると、アマゾンレヴューで指摘されている。

ボクは絵柄に宮原るりの影響を感じた。

要するにイマドキの絵であり話であり、本質を知るにはさらに深部をさぐらねば。

 

 

 

 

百合のおたのしみといえば、息をのむ心理戦。

「へぇ98点、がんばったんだね」

その讃辞に人格を否定する響きがあることに、ゆりねは気づかない。

 

 

 

 

理解できないからこそ、知りたくなる。

そして好きになる。

下駄箱のむこうから物音するなか、だしぬけの狼藉。

子供じみた好奇心にもとづくキス。

 

 

 

 

こちらは2年生で、陸上部エースの「瑞希」とマネージャーの「萌」。

かるくケンカしながら萌がわたす飴は、ちょうど瑞希のなめたかったミント味。

エスパー級に以心伝心なのに、すれちがうふたり。

 

 

 

 

萌が陸上部にスカウトしたゆりねの存在が、瑞希を憂鬱にする。

なにもかも奪われそうな気がして。

彼女の想像世界にあらわれるゆりねは銃をもつ。

 

 

 

 

ときにナイフよりするどく人を傷つけ、ときに宝石よりうつくしい。

そんな不可視なる「心」をドラマティックに描写。

作者が天才か秀才かボクはわからないが、凡才でないのはたしか。




あの娘にキスと白百合を 1 (MFコミックス アライブシリーズ)あの娘にキスと白百合を 1 (MFコミックス アライブシリーズ)
(2014/05/23)
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