米田和佐『だんちがい』8巻
だんちがい
作者:米田和佐
掲載誌:『まんが4コマぱれっと』(一迅社)2011年-
単行本:4コマKINGSぱれっとコミックス
長期連載中の本作に、これまでで最大の変化が生じた。
それは最近の流行りである「ワイド4コマ」形式の導入。
きららに代表される、起承転結やオチのない4コマ、
4コマである必然性のない4コマが一世を風靡するなかで、
だったらコマを大きくし、普通の漫画っぽく見せようとする動きだ。
出版社としては、ネタあたりのページ数を稼げるメリットがあるし、
読者もスマートフォン風のアスペクト比に親しみを感じるかもしれない。
拡張された視野で、三女・羽月が躍動する。
豊かな表情、予測不能な行動。
いざとなったら羽月頼り、みたいなところが本作にはある。
とはいえ次女・弥生も、ワイド4コマの恩恵をうけている。
雨粒が落ちてきたときの反応をアップで描写したり。
好きと言ってほしいのか、ほしくないのか。
いや勿論言ってほしいに決まってるけど、どれくらい強く望んでるのか。
ツンデレはワイドコマが似合う。
ちょっとした移り変わりはあっても、四姉妹はいつだって可愛く、
本作のエバーグリーンな魅力は輝きを増してゆくのだった。
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米田和佐『だんちがい』7巻
だんちがい
作者:米田和佐
掲載誌:『まんが4コマぱれっと』(一迅社)2011年-
単行本:4コマKINGSぱれっとコミックス
総扉を飾るのは、通り雨にあったらしい、びしょ濡れの姉妹たち。
弥生のブラウスが透けている。
セクシー担当の夢月に対抗。
すっきりした描線と、四姉妹のかわいさのバランスが、本作の魅力。
ただし7巻は、咲月が目立っている。
団地の自治会長さんと会話するなど、成長をみせる。
第88話は、アニメ大好きな咲月の妄想ネタ。
小学3年生のダークなエロスがファンタジックだ。
つづく89話で、夜の団地を冒険。
晴輝に甘えるときの表情は、われわれ読者の知らない咲月だ。
ついに咲月まで完全にデレてしまい、ツンデレ担当の弥生が最後の砦に。
90話では晴輝と映画館デート。
あやうい姉妹間バランスをたもつ。
本巻は羽月の活躍がたりない気はするけれど、
ちょっとづつ変化してるのにかわらない、きょうだいの日常は、
やはり一種の奇跡だなあとおもう。
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米田和佐『悪役王子は恋ができない』
悪役王子は恋ができない
作者:米田和佐
掲載誌:『月刊ComicREX』(一迅社)2018年-
単行本:REXコミックス
子役出身の15歳で、校内一の美貌をほこる「若菜」を、
どうにか口説き落とすのを目標とするラブコメ。
主人公はおなじく15歳の「夜城」。
イケメンで成績優秀で家が大金持ちなのでモテる。
ただしはべらせるのはギャルばかりなので、さほど羨ましくない。
父は大企業の経営者で、兄ふたりも超エリート。
その重圧で、夜城は自分がつまらない存在だと感じている。
だから夜城が若菜に執着するのは、純粋な恋心ではなく、
美少女とゆうトロフィーを獲得し、箔をつけたいから。
子役経験のある若菜はそんな葛藤を察し、強がる夜城の内面に興味をもつ。
米田和佐は、女の子の描写をある意味すでに極めており、
先輩にみえない先輩である「茉莉」など、期待どおりに可愛い。
放課後にニンテンドースイッチを、テーブルモードでイヤホンを挿してあそぶなど、
小道具としてのゲームの手慣れたあつかいは、『だんちがい』をおもわせる。
本作は、非4コマとしては初めてのオリジナル連載。
『えこぱん』と『だんちがい』で力をたくわえ、
ついに狭いコマからとびだした美少女たちを堪能できる。
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米田和佐『だんちがい』6巻
だんちがい
作者:米田和佐
掲載誌:『まんが4コマぱれっと』(一迅社)2011年-
単行本:4コマKINGSぱれっとコミックス
先週末に漫画の新刊をチェックしていたら、
米田和佐の新連載『悪役王子は恋ができない』が26日にでると知った。
そして、昨年9月の『だんちがい』6巻を見逃していたことも。
いろんな作品を追ってると、どうしても漏れてしまうのがつらい。
ツイッターで作家をフォローとかもしてないし。
いわゆる日常系に分類される作品だが、7年におよぶ長期連載なので、
たとえ年齢は変わらなくても、登場人物はすこしづつ成長している。
インドア派の四女・咲月は、昆虫採集で大活躍。
本作のシンボルは、おっぱいとゆう飛び道具をもつ長女・夢月だろう。
一方で僕のお気にいりは、次女・弥生と咲月。
でも最重要キャラはだれかと問われたら、三女・羽月と答えるかも。
感情表現がヘタな姉ふたりとちがい、いつだってポジティブ。
6巻では夢月にかわって母親役に挑戦。
萌え4コマのジャンル内で相対的にみると、米田和佐は内面描写が巧いとおもう。
きょうだいは、わがままを言いつつ、おたがいを気にかけている。
ああでもない、こうでもないと、かんがえている。
結果として、いつもの風景になってるだけ。
たしかに「穏やかな日常」を描いてはいるけれど、
「女4男1のきょうだいの団地暮らし」とゆうテーマは新しかったし、
連載中にめきめき上達してゆく作者の画力も見ものだった。
どこがどうすごいのかをズバッと指摘するのはむつかしいが、
いまでもなお『だんちがい』は意義深い作品だとおもう。
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米田和佐『だんちがい』5巻
だんちがい
作者:米田和佐
掲載誌:『まんが4コマぱれっと』(一迅社)2011年-
単行本:4コマKINGSぱれっとコミックス
米田和佐の単行本は現在12冊。
4コマ中心のため数は少なめだが、キャリアは20年ちかい。
位置づけ的には中堅作家か。
作風は、いい意味で保守的。
たとえばスマートフォンを、ある種の「異物」としてあつかう。
利便性にとみ、安価な娯楽を提供するメディアなのは否定しないにせよ、
どちらかと言えば、家族のコミュニケーションや学業の障害物として描かれる。
2016年なのに。
スマホ批判のテーマを、弥生のお風呂スマホにつなげ、
さりげないエロスに昇華する段取りは、『だんちがい』ならではの絶妙な湯加減。
米田和佐は「底が割れてない」作家だとおもう。
巻を重ねるごとに絵が上達し、いまだピークに達してない。
あと、趣味がいい。
表紙から水着回を期待させる本巻で、水着を披露するのは扉絵だけ。
しかも弥生には着せない。
必要以上に肌をさらさない。
『だんちがい』全巻のお約束と言えば、
双子姉妹の世界観を表現する、台詞のないサイレント回。
絵だけで勝負するサイレント回の試行錯誤の成果が、
5巻では作品全体に浸透してきた様に感じられる。
あちこちのコマに詩情がただよう。
兄に服を褒めてもらいたくて、自宅でおしゃれする弥生。
かつてファッションセンスのなさを自嘲していた作者は、弱点を克服したらしい。
僕のお気にいりは、クーラーが壊れて薄着ですごす弥生。
下品じゃないけど、あられもない。
媚びてないけど、しどけない。
今日は昨日よりもかわいく。
明日はきっと、もっとかわいく。
なんの事件もおきないけど惹きこまれる、唯一無二の作品だ。
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