守月史貴『捻じ曲げファクター』/箸井地図『ホーンテッド・キャンパス』
守月史貴『捻じ曲げファクター』(ヤングアニマルコミックス)3巻。
ふわふわとろけそうな「鴨川紗知」のカラダは、あいかわらずおいしそう。
紗知にちょっかいを出す、謎のツインテ少女「灰子(はいね)」にも見せ場あり。
言うまでもなく守月史貴は豊満な体型を得意とする作家だが、
濡れたブラウスごしに透ける小ぶりな胸の乳首でも、読者をしびれさせる。
百合ビッチな「九重百花」は表紙を奪取するだけでなく、
「九重P」を名乗り陰謀をくわだて、紗知を幼なじみの男から引き離そうとする。
こんな具合で3巻は脇役に食われ、ヒロインの影がうすい。
シンプルなラブコメに分類しづらくなったのは、よろしくない傾向だ。
まあそれはともかく、九重Pはかわいい。
箸井地図/櫛木理宇『ホーンテッド・キャンパス』(Nemuki+コミックス)3巻。
かなしいが箸井版の「灘こよみ」はこれで見納め。
当ブログでは、「清楚」や「透明感」みたいな常套句をできるだけ避けてるが、
箸井版灘こよみに関しては禁を破りたくなる。
飾り気ないが洗練された服装、マジメな性格がにじみでる表情。
理想の女子大生とよぶべき隙のないうつくしさ。
最終11話。
自殺が頻発すると噂される沼での怪現象をえがく。
ビアズリーの絵みたいな幻想性にとむ扉絵だ。
アップでは勿論のこと、背景の一部としても絵になる箸井版こよみだが、
その恋模様はもどかしいほど進展ないままだった。
ヒロインの寿命は永遠ではない。
息のあるうち、もっともっとはげしく燃え上がってほしい。
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箸井地図/櫛木理宇『ホーンテッド・キャンパス』2巻 スピリチュアル灘こよみ
ホーンテッド・キャンパス
作画:箸井地図
原作:櫛木理宇(角川ホラー文庫刊)
掲載誌:『Nemuki+』(朝日新聞出版)2014年-
単行本:Nemuki+コミックス
第4話は浴衣回。
藍さんが飲んでるのはアサヒスーパードライ。
作画担当者は、女の子の趣味では傑出しているが、
ビールにはさほどウルサくないらしい。
原作が銘柄に言及してるかもしれないけど。
われらが灘こよみの浴衣はスルー。
かわりに、こよみ秋冬コレクションがたのしめる。
冬になると、セーターを着た女と面したとき、目のやり場に困る。
たとえ胸が小さくても、細さを確認せずにいられない。
そこで視線をさりげなく首から上へ誘導する柄がエレガント。
5話では、中2の引きこもり少女「巴絵」を助ける。
なにかに取り憑かれているらしい。
仲谷鳰『やがて君になる』は、女らしい体の線を隠しつつ強調する、
ボレロのシルエットの機微を捉えた作品だった。
本作はピンチの場面でこよみが身をひねらせ、絶妙な角度を見出す。
闘牛士よりセクシー。
ネタバレなのでくわしく触れないが、こよみが可愛い女子の象徴として、
存在論的に再定義される神秘に、読者は戦慄するだろう。
ちなみに扉絵でのみ浴衣姿を披露。
引き立て役の八神をしたがえながら、デジタル迷彩で夏の闇へ溶けこむ。
灘こよみは、重層的にフェイクな霊的存在となった。
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箸井地図/櫛木理宇『ホーンテッド・キャンパス』 おそるべし灘こよみ
ホーンテッド・キャンパス
作画:箸井地図
原作:櫛木理宇(角川ホラー文庫刊)
掲載誌:『Nemuki+』(朝日新聞出版)2014年-
単行本:Nemuki+コミックス
人気ホラー小説シリーズの漫画化。
大学のオカルト研究会の面々が、壁にあらわれた人面などの怪事件にいどむ。
若者たちのリア充ライフと並行し、心霊現象の怖さと、暴力のおぞましさを描く。
当世風の「ライトホラー」とでもよぶべき物語。
だが読み進めるほどに、箸井地図ならではの缺点があらわに。
女の子がかわいすぎ、オシャレすぎ、印象的すぎ、筋が頭にはいらない。
作者は副部長の「三田村藍」を、ポニーテールで巨乳にかえた。
そして描きづらそうなデザインの服をきせる。
ファッションに命をかける女子大生のはなやかさを演出。
かぐわしい花の香りすら感じられる。
キャラデザをいじったのは、ヒロイン「灘こよみ」とのコントラストのためか。
黒髪ショートボブで痩身、いつもしかめ面で、ちょっと近寄りがたいタイプ。
憂い顔がサスペンスをもりあげる。
守ってあげたくならなきゃ、ホラーのヒロイン失格。
こよみちゃんが眉間に皺をよせるのは、ド近眼で偏頭痛もちだから。
徐々に表情はやわらぎ、花をせおって登場する機会もふえる。
大学のそばの古い喫茶店でおしゃべり。
蕾みたいにほころんだ口元に感動。
こんな娘とキャンパスライフをおくれるなら、幽霊が束になり襲いかかっても怖くない。
むしろうらやましいほどで、ホラーとして失敗作かも。
背筋がのびたマジメそうな佇まいに、ワンピースがよく似合う。
本がたくさん入りそうな、しっかりした作りのトートバッグも勉強家っぽい。
ここにいるのは理想の女子大生、ひと目で読者の心に憑依する。
![]() | ホーンテッド・キャンパス 1 (Nemuki+コミックス) (2015/02/25) 箸井地図、櫛木理宇 |
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箸井地図/坂本光陽『ハイリコ』2巻完結
ハイリコ
作画:箸井地図
原作:坂本光陽
発行:集英社 2012-13年
レーベル:ヤングジャンプ・コミックスGJ
[1巻の記事はこちら]
彼女は探偵「能見マナ子」。
推理はしない。
視力と記憶力と分析力で、犯人をおいつめる。
2巻は誘拐犯「西牟田」が相手。
公園などで母親が目をはなしたすきに赤ん坊をつれさり、
15分以内にATMから「ベビーシッター代」10万円おろさせる。
ブキミな目玉模様の女はアシスタント。
西牟田は、藝能界で活躍する天才メイクアップアーティスト。
その変装技術は、「眼力探偵」にとり天敵。
いわゆる倒叙型であり、ネタバレではないので御安心を
なにせ正体が男とだれもきづかない。
おどろくことに、主人公「堂本」の行方不明だった父でもある。
美人探偵が接触したのは、西牟田の情報をえるためだった。
1巻では空気ぽかった主人公に、父と息子の相克とゆう見せ場があたえられる。
マナ子たんの華奢な手足をめでるだけの漫画じゃない。
ハイリコ能力(hyper recognizer)発動!
膝裏の肉割れ線から犯人を識別する。
「見当たり捜査」とゆう題材に目をつけたおもしろい作品だが、
作画に関しては、読者の注意を散漫にさせる失敗作かも。
マナ子たんの服がかわいすぎて。
箸井地図は、アニメ『BLOOD+』『ルー=ガルー』のキャラクター原案など、
どちらかといえばイラスト仕事がおおいひとで、デザインはお手のもの。
ノースリーヴとミニスカートがすきで、
153センチと小柄だけど、いつも高めのヒールでキレイな脚線をみせて。
各話がファッションショー状態、筋書きが頭にはいらない。
「なんか燃えてるな」って感じ。
焼け跡よりマフラーの柄に目がゆく。
無論、憂いの表情にも。
規格外の「ヴィジュアル系探偵」が異様に突出する、フシギな漫画だった。
そのヒロインは、うつくしすぎるとゆう罪をおかしていた。
箸井先生、今度はラブコメ寄りの作品はどうでしょう?
![]() | ハイリコ 2 (ヤングジャンプコミックス) (2014/01/17) 箸井地図 |
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箸井地図『ハイリコ』/相川有『無関心探偵AGATHA』
箸井地図・作画、坂本光陽・原作『ハイリコ』(ヤングジャンプ・コミックスGJ)。
往来でたつたり、すわつたり。
ハデめのワンピがにあう「能見マナ子」は、こうみえ探偵。
警察に協力し、3280万円横領した銀行員をさがす。
マナ子たんは「ハイパーリコグナイザ」。
網膜の錐体細胞がひとつおおく、1億色以上識別できる。
さらに映像をカンペキに記憶し分析する、特異な頭脳のもちぬし。
おおきな駅へにげこんだコンビニ強盗犯をおう。
監視カメラがあれば、そこは能見マナ子の庭同然。
ついでに関係ないスリまでみつけたり。
それにしても、描きづらそうな柄の服だこと。
作者の画像処理能力も尋常でない。
漫画にふさわしく、「絵」で推理する探偵。
「袖口のボタンがとれ糸が二本でていた」とゆう記憶をたよりに、人混みでうずくまる犯人を発見。
敵にまわしたくない女だが、自分にむけられた恋心に鈍感なのはカワイイ。
![]() | ハイリコ 1 (ヤングジャンプコミックス) (2013/09/19) 箸井地図 |
「私立イスカリオテ学園」の朝。
水飲み場で、まぶたに傷をもつ少女がしづむ。
相川有『無関心探偵AGATHA』(バーズコミックス)から、もうひとり探偵ヒロインを紹介。
その名は「阿嵩小杖(あがさ こづえ)」。
だれよりはやく事件の痕跡にきづき、パンツまるだしで捜査をおこなつた。
こつた構造のスカート、ツインテ、ウサ耳ぽいリボン!
液体をたれながし、白目むいて居眠り。
「無関心探偵」の異名どおり、ステキな造形は台無し。
たしかにコトはおきていた。
学園一の美少年「都成詩紋(となり しもん)」が、顔の肉をそがれ惨殺。
風変りな名づけは、イエス・キリストの十二使徒を下敷きとする。
本格派ゴシックミステリーの幕あけ。
無関心探偵は、イケメン教師「鞠吾(まりあ)」が犯人と断定。
推理モノの見せ場をビシッときめる……
……とおもいきや、数分後に逆の意見をのべたり。
発言に齟齬はないが、きまぐれで説明不足のアガサたんに翻弄される。
探偵ヒロインは矛盾をはらむ。
美少女にロジックはにあわない。
上から目線の推理は可愛げないが、可愛くなければヒロインぢやない。
ジャンルそのものが、解決不能な完全犯罪。
![]() | 無関心探偵AGATHA (1) (バーズコミックス) (2013/09/24) 相川有 |
『ハイリコ』
そもそもオンナノコ自体が、世界最大のミステリー。
ミニスカートに、華奢な手足に、やさしい笑顔にまどわされ、犯人さがしどころでなくなる。
紅茶のかおりをたのしみながら、名探偵ぶる余裕をもちたいけれど。
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