土室圭『徒然日和』

 

 

徒然日和

 

作者:土室圭

掲載誌:『コミック百合姫』(一迅社)2017年‐

単行本:百合姫コミックス

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単行本冒頭のカラーページだが、グラデーションをほとんどつかわない、

べたっとしたいわゆるアニメ塗りで、おっこれは何かちがうぞと思わせる。

 

 

 

 

初連載らしい本作は、田舎の女子高生4人の日常もの。

そのうち「七揶」と「実里」はルームシェアしている。

 

 

 

 

炊事や洗濯など、家事を分担して生活する。

アパートの内と外を自在に飛び回るカメラワークがあざやか。

ある意味本作は、背景が主役だ。

 

 

 

 

第6話は、雨降りの退屈な一日をえがく。

庇からこぼれる雨水を、なんとなく傘の先でうける「真冬」の虚ろな顔つき。

 

以上の三ページでは、右下から左上への視線誘導がつかわれている。

 

 

 

 

雨があがる。

ドラマのない日常のなかのドラマを、鮮明な絵として浮かび上がらせる。

 

 

 

 

とはいえ土室圭は、一枚絵が自慢のイラストレータータイプではなく、

動きのある表現もソツなくこなしている。

百合ジャンルにおける大型新人なのは間違いない。





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みもと『コイゴコロクリップ』

 

 

コイゴコロクリップ

 

作者:みもと

発行:一迅社 2018年

レーベル:百合姫コミックス

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百合のオムニバスである。

読後感は『あの娘にキスと白百合を』にちかい。

 

巻頭の「1クリップ」が白眉だろう。

入学初日、黒髪でマジメそうな「蒼海」がクラスの注目をあつめる。

そのとびぬけた美貌ゆえ。

 

 

 

 

しかし、自己紹介で化けの皮が剥がれる。

蒼海はとんでもないポンコツ少女だった。

 

一般に百合漫画の絵柄は、流麗なのや可憐なのが多いが、

本作はちょっとクセがあり、そこがおもしろい。

 

 

 

 

ギャルっぽい容姿の「紅」は世話焼きな性格で、蒼海の面倒をみる。

中庭に弁当を落としたと言うので、一緒にさがしてあげたり。

 

 

 

 

あたえる愛は、もとめる愛でもある。

庇護している様で、依存している。

オセロみたくあざやかに盤面が急転。

心理戦とゆう百合漫画の醍醐味を、本作はたのしめる。

 

 

 

 

こちらはドロドロ病んでいる「クリップ3」。

収録作のストーリーは、ほとんどギミックにたよらない。

少女たちは感情をぶつけあい、原始的な本能をさらけだしてゆく。





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tMnR『たとえとどかぬ糸だとしても』

 

 

たとえとどかぬ糸だとしても

 

作者:tMnR

掲載誌:『コミック百合姫』(一迅社)2017年-

単行本:百合姫コミックス

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女子高生「鳴瀬ウタ」を主人公とするストーリーは、兄の結婚式からはじまる。

新婦の「薫瑠(かおる)」は、ウタの幼なじみでもある近所のお姉さん。

その幸せそうな表情を最前列で見て、ウタはあることに気づいた。

自分が彼女に恋していて、はげしく嫉妬していると。

 

 

 

 

ウタはマンションで、新婚夫婦と三人暮らしをする。

日に日にふくらむ恋心を、義姉に悟られない様にしながら。

 

 

 

 

薫瑠は、家族関係に問題をかかえるウタのため、

母親代わりになろうと、かいがいしく世話を焼く。

 

ウタは葛藤する。

もとめているのは、そうゆう愛情じゃない。

けれども本当の気持ちを口にすれば、自分の世界は一瞬で崩壊する。

 

 

 

 

ツインテールの「クロちゃん」はウタの友人。

恋の迷宮をさまよう親友の愚痴を聞くのが日課となっており、

「感情サンドバッグ屋」を自称する。

 

 

 

 

ある日ウタは、友人を自宅に呼んだ薫瑠の会話を耳にする。

「いずれ自分の子供はほしい」と。

 

悪意のまったくない、死刑宣告。

ウタの胸のなかの時限爆弾がカウントダウンをはじめる。

もし出産が現実となれば、すべて手遅れだ。

 

 

 

 

自分の初恋が、だれより不幸せな終わりをむかえるのは仕方ない。

最初から覚悟している。

でもこんなに近くにいるのに、なにごともなく恋が消滅するなんて、かなしすぎる。

 

本作はtMnRの商業デビューであり、初単行本。

絵になる構図と、複雑かつ細やかな心理描写で、

百合の宇宙の深淵にせまっている。





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めの『あとで姉妹ます。』

 

 

あとで姉妹ます。

 

作者:めの

掲載誌:コミック百合姫(一迅社)2016年-

単行本:百合姫コミックス

ためし読み/『かわいさ余って好きさ100倍!!』の記事

 

 

 

高校生と小学生の姉妹百合である。

「ちかみ」は大人っぽくて容姿端麗、妹の「るみか」にとって自慢の姉。

 

 

 

 

あくまで外ヅラ的に。

家の中では、ゴロゴロぐーたらルーズでゆるゆる。

るみかが世話しないと何もできない、ダメお姉ちゃん。

 

 

 

 

ただ、好きな魔法少女系アニメのコスプレをするときだけ、

自力でメイクも衣装もばっちりキメる。

普段からおしゃれも頑張ればいいのにと、妹は嘆く。

 

 

 

 

3話扉絵。

さらっとしたシンプルな描線だが、めのは腕の達者な作家だ。

構図がキマっている。

6本の足とか、カバンの持ち方の差異とか。

手前の「さわ」だけショルダーバッグをかけ、ポケットに手を入れてたり。

 

 

 

 

クラスの男子へのさわの態度が、やけに高圧的でおもしろい。

「おしゃれ系女子とオタク系男子」とゆうスクールカーストの反映だけでなく、

あとがきによると、中学が同じだから打ち解けた会話ができてるらしい。

 

 

 

 

めづらしくおめかしして外出。

ツイッターで知り合ったコスプレ仲間とのオフ会へ。

ある意味デートより、緊張と期待で胸がときめく。

ここでの噛み合わない会話も、読んでてたのしい。

 

 

 

 

百合業界は過渡期にある。

 

つまり「別に百合姫じゃなくても良い百合あるし」だとか

「ソフト百合&日常系? 別にきららでよくね」とか言われると

否定する材料が全く無いということが問題なんです。

 

『コミック百合姫』7月号のレビュー

 

「重い百合」と「軽い百合」。

どちらを看板に据えるべきか、百合の老舗は迷っている。

 

ただ、過度に百合を期待される方は

他の方もレビューされている通り若干肩透かしを食うと思います

きらら系の漫画に近いですね。

百合の定義とか言い出したらキリがありませんが

明確な恋愛描写はありません

 

『あとで姉妹ます。』のレビュー

 

そして百合姫的な繊細さと、きらら的なポップさを兼備するめのは、

折衷的な作家とみなされている様だ。

けれども僕は、いい意味で百合姫寄りの作風だとおもう。

 

女子の外面と内面と周囲との関係の描写によって、

そのかわいさを表現するのが百合だ。

(これがユニバーサルな定義だと主張する気はない)

めのの伸びやかな描線からは、匂う様な百合のフィロソフィーがたちのぼる。





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マウンテンプクイチ『ぷくゆり』

 

 

ぷくゆり

 

作者:マウンテンプクイチ

発行:一迅社 2016年

レーベル:百合姫コミックス

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学校をサボり、海岸にたたずむ女子高生の「美優」。

作者は福岡県在住らしいから博多湾だろうか。

逆説的だが海の描写をみると、どこの土地かつたわる場合が多い。

 

 

 

 

偶然、サボりの常習犯である同級生の「絵理」と出会う。

 

「なぜ百合を描くのか」とゆう問いに対する、缶乃と仲谷鳰の回答

 

缶乃:私は表情を描くのが好きで、

感極まった表情を描くなら女の子の方が楽しいからです。

しかも女の子が二人いたら、二倍でラッキーみたいな(笑)。

 

仲谷:可愛い子と可愛い子が、可愛い事をしてたほうが可愛いじゃんって。

 

『アキバBlog』

 

女の子はかわいい。

女の子同士なら二倍かわいい。

それが百合の存在理由だ。

かわいさを増幅するため、作家は女の子を描き分ける。

「体育座りと股開き」とか。

ガラケーも、個性を強調する小道具として利いている。

 

 

 

 

胸のリボンの有無、ソックスの色、ポケットにいれた左手……。

こまかな差異が百合の宇宙を構成する。

たとえば絵理のぞんざいなカバンの持ち方。

勉強嫌いだから中身はスカスカだろうと想像がふくらむ。

 

美優は禁止されているピアスに気づく。

 

 

 

 

学校のトイレで、ピアッサーで耳たぶに穴をあけるエロティックな場面。

やわらかな肉が貫かれた瞬間、ふたつの世界観が溶け合う。

 

 

 

 

ふたりが仲良くなったせいでクラスに波風が立つ。

「うっとおしい」と思われる。

絵理を排除しようとする同級生の外見は、主人公側と入れ替わっても違和感ない。

少女たちは、似ているからこそ反撥しあう。

 

 

 

 

絵理だけが生徒指導室へ呼び出される。

担任の教師は、美優がピアスをあけたことまで把握していた。

言及はないが告げ口があったのだろう。

政治力をつかい周到に「敵」を追いこんでゆく、「女同士」のいやらしさ。

 

 

 

 

こちらは別の短篇。

イタズラを避けるため、下駄箱はつかわずシューズケースを持ち歩く。

ここでも小道具が、それぞれの個性と、思春期女子らしさを際立たす。






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