長代ルージュ『イヴとイヴ』

 

 

イヴとイヴ

 

作者:長代ルージュ

発行:一迅社 2018年

レーベル:百合姫コミックス

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「百合×SF」の相性をうらなう試金石となりうる短篇集だ。

たとえば、冒頭の『奇跡の好きを遺したい』で少女たちは、

自分たち以外の人類が絶滅した世界をさまよう。

 

つくみず『少女終末旅行』など、同工異曲の作品はあるが、

はげしい性愛をえがく点で、本作は一歩ふみこんでいる。

 

 

 

 

少女たちは堂々と、少女たちを生み、そだててゆく。

ディストピアという名のユートピア。

 

百合には、頭でっかちな側面がある。

荒唐無稽なテーマをもっともらしく表現する努力は、見方によっては滑稽だ。

タイムマシンや透明人間の話みたいに。

後世の文学史家は、百合をSFの一ジャンルとみなすかもしれない。

 

 

 

 

『永遠一号二号はイヴとイヴ』。

それぞれウェディングドレスを着たふたりは、これから手術をうける。

自分たちの脳をとりだし、人工衛星に搭載する。

ふたりの愛を永遠のものとするため。

 

 

 

 

百合の定義についてここでは触れないが、

ジャンル全体の傾向として、「男性性に対する低い評価」をあげられる。

男の肉欲は利己的で醜く、女の愛は純粋に精神的でうつくしい。

 

それを極限まで追究すると、この「精神的な愛」へゆきつく。

百合の歴史において語り継がれるだろう描写だ。

 

 

 

 

本短篇集は、「地に足のついた百合」も用意されている。

心と心がぶつかり、きしみ、すれちがうドラマを、全身全霊であじわおう。





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鍵空とみやき『ハッピーシュガーライフ』8巻

 

 

ハッピーシュガーライフ

 

作者:鍵空とみやき

掲載誌:『月刊ガンガンJOKER』(スクウェア・エニックス)2015年-

単行本:ガンガンコミックスJOKER

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さとうとしおが二人で築いた楽園が崩壊。

じわじわ追い詰められ、殺人の罪まで犯し、もはや逃亡せざるをえない。

 

 

 

 

さとうは心ならずも、敵か味方かわからない「おばさん」への依存をふかめる。

案山子みたく非人間的に見えるときがあるおばさんは、

『ダークナイト』三部作のスケアクロウさながらの怖さ。

 

 

 

 

さとうは持ち前の知能を発揮し、行方をくらます計画をたてる。

ダークファンタジー風のヤンデレ百合だった本作は、犯罪小説風のあじわいに。

変装のためかぶったハンチング帽が似合っている。

 

 

 

 

本人たちなりに「現実世界」とむきあうなか、

さとうとしおの関係はさらに親密になってゆく。

風呂場でむつみあうシーンは、本作屈指のうつくしさだ。

 

 

 

 

一途に自分を慕うすみれを呼び出し、偽装用のパスポート二冊を借りる。

さとうは愛のため愛を利用する、百合のマキャベリストになる。

 

 

 

 

世界一可憐なフィルムノワール。

さとうのハードボイルドなたたずまいが鮮烈だ。





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渡邉嘘海『エデンの処女』2巻

 

 

エデンの処女

 

作者:渡邉嘘海

掲載サイト:『COMICリュエル』(実業之日本社)

単行本:リュエルコミックス

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生物兵器によって男が死滅したディストピア(あるいはユートピア)の、

鬱蒼と草花しげる庭園を舞台とするゴシック百合は、第2巻が刊行された。

作者が「本当に出るとは驚き」と語るくらいで、よろこばしい。

 

 

 

 

かませ役である葵の、空回りするはげしい恋愛感情が、2巻でも印象ぶかい。

百合が特別でない世界でも、その恋は容易に叶わない。

 

 

 

 

葵の幼少期のエピソード。

彼女が完璧主義者となった経緯があかされる。

 

 

 

 

葵の失恋をえがくのに力をいれすぎるあまり、

主人公側のプロットがおろそかになったのは否めない。

しかし小羽と葵が感情をぶつけあう、うつくしいシーンもある。

 

 

 

 

ラファエル前派やアール・ヌーヴォーみたく、シンボリックで耽美的な世界。

そこにこれほど浸らせてくれる作品はそうないだろう。





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江島絵理『柚子森さん』完結

 

 

柚子森さん

 

作者:江島絵理

掲載サイト:『やわらかスピリッツ』(小学館)2016年-

単行本:ビッグスピリッツコミックス

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女子高生が、女子小学生に恋する百合漫画が、5巻で完結。

拍手をおくりたくなる大団円だ。

 

 

 

 

お邪魔役として登場したりりはのエピソードも決着がつく。

超大盛り上がりとは言えないが、見せ場はある。

 

 

 

 

あとがきで作者は、主人公への愛をかたる。

タイトルロールの柚子森より、みみかの方に思い入れがあるらしい。

 

「柚子森のかわいさ」が本作の肝だが、実は造形的にそれほどかわいくない。

作者は描き分けが上手とは言えない(つまり全員かわいい)

みみかの必死さに共感したゆえ、読者は柚子森を色眼鏡でみるわけだ。

 

 

 

 

ブランコに二人乗りしながら花火を見上げるシーンのうつくしさは、

きっと漫画の歴史にのこるだろう。

ギミック満載の絵面のなかで、みみかのオフショルダーブラウスの胸元が印象的。

 

 

 

 

演出のうまさと、白熱しっぱなしのテンション。

たまにウダウダトーク。

『オルギア』に『柚子森さん』と、江島絵理はいまのところハズレなし。

まだWikipediaにページがないレベルの知名度にとどまってるが、

いづれさらなる傑作をとどけてくれるだろう。





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イコール『しっくすぱっく!』

 

 

しっくすぱっく!

 

作者:イコール

掲載誌:『ヤングコミック』(少年画報社)2017年‐

単行本:YKコミックス

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当ブログで紹介するのは、女子高生を主人公とする漫画が多いが、

女子大生は服装が華やかだし、日常生活も自由だし、いいものだ。

 

 

 

 

大学1年生の「たまみ」は、廃部寸前の女子ラグビー部へ強引に加入させられる。

これまでまったく運動に縁がなかったのに。

 

 

 

 

本作は「女の子の筋肉が見たい」とゆうフェティシズムに応える。

言うなれば肉弾戦の百合だ。

 

 

 

 

1巻時点でラグビーの試合はおこなわれない。

ボールをつかった練習も描かれない。

スポ根と言うより、筋トレとローカーボダイエットとJD百合がテーマだ。

 

 

 

 

僕の苦手分野なので取り上げなかったが、食へのこだわりは読み応えあり。

でもやっぱり、かわいいシーンに注目してしまう。





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