仲谷鳰『やがて君になる』7巻

 

 

やがて君になる

 

作者:仲谷鳰

掲載誌:『月刊コミック電撃大王』(KADOKAWA)2015年-

単行本:電撃コミックスNEXT

ためし読み/当ブログの関連記事

 

 

 

燈子に「フラれ」てしまった侑が、窓際の席で自問自答する。

そもそも好きになるってなんなのだろうと。

合わせ鏡みたく窓にうつる横顔は、堂々巡りする心のメタファー。

 

 

 

 

修学旅行先で、沙弥香までが燈子に告白した。

そしてまだ返事を決めかねている状況で、嵐山かどこかで、

ふたりでボートに乗ることになり、気まづい空気がただよう。

沙弥香が細い指先を、水面にすべらせる。

燈子の気持ちにそれとなく干渉するかの様に。

 

あまりに迂遠な本作を、百合漫画の代表作とみなすのを僕は躊躇するが、

それでもこのページには百合漫画のすべてがあるかもしれない。

 

 

 

 

ほかの生徒会メンバーが不在でヒマをもてあました侑は、

槙を誘ってバッティングセンターへゆく。

中学時代はソフトボールに打ちこんでたのでフォームがうつくしい。

 

ちなみに僕は、女子高生の野球漫画『球詠』の愛読者だが、

マウンテンプクイチ先生にこの回は読ませられないと思った。

野球すらサラッと描きこなす仲谷鳰の天才ぶりに絶望されたら困るから。

 

 

 

 

そしてこのカット。

侑がネットに蜘蛛の巣みたく搦め取られている。

 

映画『暗殺の森』での「洞窟の比喩」の場面を連想した。

ありふれた場末の娯楽施設を、オペラハウスに変える魔法。

 

 

 

 

6巻の記事にも書いたが、仲谷鳰の画風は誇張がすくない。

ある意味中性的で、透明感がある。

そして、読者の心に引っ掻き傷を残してやろうというエゴがない。

なさすぎるので、本当に人間が描いてるのかたまに不安になるほど。





関連記事

テーマ : 百合漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合 

川田暁生『ロボット依存系女子のメーワクな日常』

 

 

ロボット依存系女子のメーワクな日常

 

作者:川田暁生

掲載誌:『少年マガジンエッジ』(講談社)2018年-

単行本:マガジンエッジコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

実験都市で運用されるロボットであるアクティブ・アーマー。

通称「A.A」。

トレーラーで輸送されている途中、街中で起動する。

 

 

 

 

そのパイロットは女子高生だった。

黒髪の少女の名は「高科はがね」。

人見知りな性格で、いつもコックピットに引きこもって生活している。

 

 

 

 

操縦技術はともかく精神的に幼いはがねを支えるのが、親友の「琴葉」。

「ロボット×百合」が本作のウリで、

たとえば狭いコックピットでのいちゃいちゃは見ごたえあり。

 

 

 

 

はがねは民間の警備会社と契約し、ゴミ処理などの雑用をまかされる。

一方でテロリストの陰謀も進行しており、事件に巻き込まれることも。

大型ジェット機の暴走をとめる第2話のアクションは、手に汗握る迫力。

 

 

 

 

美少女たちのロボットアクション、なおかつ講談社の月刊誌ということで、

僕は名作『サクラブリゲイド』を連想した。

ストーリー的なフックはやや弱いが、百合に特化している点、

そして気合いのはいったメカ描写は、本作の優位性とおもう。





関連記事

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合 

タチ『真面目ガールと青春ランジェリー』

 

 

真面目ガールと青春ランジェリー

 

作者:タチ

掲載誌:『コミック電撃だいおうじ』(KADOKAWA)2018年-

単行本:電撃コミックスNEXT

[ためし読みはこちら

 

 

 

高校1年の「蘭」が、下着というファッションを通じて、

未知の世界へ飛びこんでゆく物語である。

マジメさを匂わすヘアピンが、キャラデザのいいアクセントだ。

 

 

 

 

蘭はこれまで、母が買ってきたジュニア用ブラしか着けたことがない。

しかし高校入学を期に、意を決してランジェリーショップへ突撃。

応対してくれた店員の「そららさん」は、商売熱心をとおりこし、

まるで宣教師の様な口ぶりで下着の魅力を語るのだった。

 

口癖の「甘い考えです!」は、そららさんの蘊蓄がはじまる合図。

 

 

 

 

採寸してもらったところ、蘭のサイズは「A65」。

俗にいう貧乳だ。

しかし、そららさんが見つくろったバルコネットブラは、

自分のカラダをすてきに演出してくれる。

 

蘭が典型的な「貧乳キャラ」でないのが、本作のキモ。

下着は着用者の内面ちかくに寄り添い、彼女を自己肯定感でみたす。

 

 

 

 

勿論、作者お得意の百合要素もてんこ盛り。

蘭のいる試着室に闖入してきたのは、金髪ツインテのハーフ少女、

「小阪ジェラルディーン」、愛称「ジェリー」。

蘭とあわせてランジェリーコンビの誕生だ。

 

 

 

 

ジェリーには下着をコレクションする趣味がある。

意気投合したふたりは放課後、下着ファッションショーをしたり、

ランジェリーパーティをしたりしてすごす。

 

たがいの下着姿を真剣に見つめ合うシーンは、危険なほどエロティック。

 

 

 

 

JK同士のおしゃべりのたのしさも、作者ならでは。

そららさんの妹「うみみ」は、下着に独自のこだわりがある。

「見えないおしゃれ」と言えば聞こえはいいが、

本来下着は補正のため着用するものであり、見せびらかすなど本末転倒。

大人ぶって舞い上がっていた蘭は、正論をぶつけられ動揺する。

 

「キス」をテーマに、個性的な世界観を提示した『桜Trick』同様、

本作も一点突破の迫力がみなぎっており、非常におもしろい。





関連記事

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合 

綿桐さや『須波優子と百合な人びと』

 

 

須波優子と百合な人びと

 

作者:綿桐さや

発行:KADOKAWA 2019年

レーベル:MFC

[ためし読みはこちら

 

 

 

テーマは「軽率な百合」。

女子校にかよう9人(ひとりは教師)が、真剣な感情をともなわぬまま、

ひたすら無目的にいちゃいちゃする様子をえがく掌篇集。

初出はツイッターだったらしく、長さはいづれも4ページ。

 

 

 

 

主人公を明確に立て、その思考や感情や行動を読者に疑似体験させる、

リニアでクラシックな物語ではまったくない。

いちおう「須波優子」というタイトルロールは存在するが、

ぼんやりしたメガネ女子だし、あまり主人公っぽくない。

 

 

 

 

9×8で72通りの、いや3人以上で絡めば無数のカップリングの、

微妙なあじわいの差をくらべてたのしむ作品である。

 

 

 

 

「女の子9人とか覚えられないし、つまらなそう」とおもうのは早い。

本作の工夫は、各話ごとに人物相関図を掲載してること。

だれがだれだっけ状態になることは絶対ない。

 

 

 

 

たとえば25話で、楚々として上品な「帆夏」が気になったとする。

相関図を参考にし、帆夏の登場回を読み直すことになる。

そして5話でのサイコパスなふるまいを見て、あらためて戦慄するわけ。

 

 

 

 

僕のおきにいりは写真部の「怜奈」。

とぼけてる様で発言はけっこう辛辣。

 

 

 

 

百合大好きな「懸先生」に依頼された怜奈は、校内で撮影に励むが、

優子より地味な「萌歌」にカメラをむけたところ、意外な反応が。

じつは萌歌はコスプレイヤーで、反射的にポーズを決めてしまった。

 

ミルフィーユ的に折り重なるかわいさの層に、

ぐさりとフォークを突き刺してじっくり堪能したい一冊だ。





関連記事

テーマ : 百合漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合 

あおのなち『きみが死ぬまで恋をしたい』

 

 

きみが死ぬまで恋をしたい

 

作者:あおのなち

掲載誌:『コミック百合姫』(一迅社)2018年-

単行本:百合姫コミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

ルームメイトの死からはじまる百合漫画だ。

それを聞かされても主人公「シーナ」は淡々としている。

 

 

 

 

シーナは、孤児をあつめた魔法学校で寮生活をおくる。

学校は彼女らを訓練し、戦場へ派遣する。

 

つまり本作は「ファンタジー」や「戦争」が題材であり、

百合姫作品としてはギミックが大掛かりだ。

 

 

 

 

シーナは、天才的な能力をもつ「ミミ」と出会う。

めざましい戦果をあげたばかりで、全身血まみれだった。

 

 

 

 

小柄で無邪気で幼く見えるミミだが、実はシーナと同い年。

あたらしいルームメイトとして共同で生活することに。

 

制服はセーラーワンピース風。

ただしリボンなどはなく、ラインも1本だけとシンプルで、

セーラー要素の主張がひかえめな、ぎりぎりのバランスだ。

 

 

 

 

少女たちは何者と戦っているのか、その戦争目的はなにか。

主人公は内面にどんな闇をかかえていて、それをどう解決するのか。

あえて言うとジブリやまどマギみたく、大作っぽいムードの本作は、

当然生じるこういった読者の疑問に答えなくてはならない。

しかし僕がおもうに、百合姫連載作にストーリー性を要求するのは野暮だろう。

 

たとえば本作では、唇をかさねることで治癒魔法が発動される。

ふわっとやわらかい絵柄でえがかれる少女たちと、

シリアスなテーマが緊張をはらみながら共存する、

独特の空気感がなによりも貴重に感じられる。





関連記事

テーマ : 百合漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合  百合姫コミックス 
最近の記事
記事の分類
検索とタグ

著者

苑田 謙

苑田 謙
漫画の記事が多め。
たまにオリジナル小説。

Twitter
メール送信

名前
アドレス
件名
本文

カレンダー
05 | 2019/06 | 07
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
月別アーカイヴ
06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03