奥瀬サキ『流香魔魅の杞憂』

 

 

流香魔魅の杞憂

 

作者:奥瀬サキ

掲載サイト:『コミックガム』(ワニブックス)2016年-

単行本:ガムコミックスプラス

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主人公は「流香魔魅(りゅうか まみ)」。

うつくしい髪と、長身痩躯と、黒づくめの服が印象的だ。

特異な能力を活かし、保険調査の仕事をしている。

ある日、ガード下で雨宿りしていたショートカットの少女と出会い、

相通ずるところがあったか、仔犬でも拾う様に自宅へ連れて帰る。

 

魔魅は『低俗霊狩り』の主人公でもある。

 

 

 

 

少女の名は「來夕(きゆう)」。

「俺ビアンなんだ」と1話で打ち明ける。

魔魅に惹かれたらしく、そのまま居ついてしまう。

 

1巻で性交渉の場面はない。

たが魔魅の方も、まんざらでもなさそう。

 

 

 

 

魔魅がもつ異能は、霊視力。

幽霊たちの悲しい訴えに耳をかたむけ、

警察が解決できなかった保険金がらみの事件の真相をあばく。

 

 

 

 

奥瀬は性と暴力にこだわる作家だ。

本作は若干マイルドになったが、目をそむけたくなる残酷な描写も。

 

 

 

 

ストーリーは、1話完結スタイルの探偵もの。

よく言えば、本格ミステリ小説みたいな読みごたえがある。

悪く言えば、文字情報が氾濫しており重い。

 

代表作のひとつ『コックリさんが通る』の様な、

アクションでグイグイ押してゆく作風ではない。

 

 

 

 

本作の強みはファッションだ。

黒を基調とするが、各話ダブルヒロインの服装が凝っている。

僕が好きなのは、來夕のセーラーワンピース。

 

 

 

 

背景に写真をつかう手法も、もともと奥瀬の十八番だが、

本作は卓越した整合性を感じさせる。

作家としての円熟期なのだろう。

 

僕は熱心なファンではないので、レビューを参考にすると、

長い低迷期を脱した作者による会心作である様だ。





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鍵空とみやき『ハッピーシュガーライフ』6巻

 

 

ハッピーシュガーライフ

 

作者:鍵空とみやき

掲載誌:『月刊ガンガンJOKER』(スクウェア・エニックス)2015年-

単行本:ガンガンコミックスJOKER

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前巻で許されざる罪を犯したさとうは倒れ、放心状態となる。

見よう見まねで、幼いしおが台所にたつ。

グツグツと煮えるカレーの鍋をながめていると、

心の奥底に沈殿していた記憶がうかびあがってくる。

 

 

 

 

しおの父はヒモで、母に暴力をふるっていた。

ツナ缶をいじりながら、しおは耐え忍ぶ。

 

直接的表現を迂回する技巧はあいかわらずだ。

 

 

 

 

母が娘のほかに大切にしていたのは、一枚の着物。

着付けできないので自分は着たことないが、

いつかしおが成長したとき着てもらうのが夢だった。

 

 

 

 

夫に命じられて着物まで売るはめになり、母の精神は崩壊する。

 

壊れるきっかけが物理的暴力でないのが、うまい。

と言うより、こわい。

独特な浮遊感のある世界観に、日本の伝統文化を挿入したのも効果的。

 

 

 

 

カーテンレールで縊死した母の姿を、子供の落書きの様にえがく。

しおの目には、そう見えたのかもしれない。

 

 

 

 

無理して保護者ぶるさとうを、つめたく突き放す。

しおが求めているのは母性愛ではない。

そんなものは当てにならないと知っていた。

愛が本当の愛であるためには、愛し愛されないといけない。

対等に向き合わねばならない。

 

しおの幼い顔立ちのなかで、現実を直視する瞳がかがやく瞬間は、

本作の白眉と言えるほどうつくしい。





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『きみの声をとどけたい』

 

 

きみの声をとどけたい

 

出演:片平美那 田中有紀 岩淵桃音 飯野美紗子 神戸光歩 鈴木陽斗実 三森すずこ

監督:伊藤尚往

脚本:石川学

キャラクターデザイン:青木俊直

アニメーションキャラクターデザイン:高野綾

音楽:松田彬人

アニメーション制作:マッドハウス

製作国:日本

公開:2017年8月25日

 

 

湘南を舞台に、女子高生がミニFMでラジオ番組をはじめる、

さわやかな長篇アニメーション映画である。

 

 

 

 

スタジオは、かつて喫茶店だった廃屋にある。

主人公の「なぎさ」が雨宿りしたとき偶然、機材をみつけた。

 

 

 

 

12年前の交通事故により、店主は帰らぬ人となった。

ラジオのDJをつとめていた娘も、いまだ昏睡状態のまま。

 

 

 

 

そのまた娘である「紫音」は、眠りつづける母を見舞いに湘南へ来ていた。

鍵が開いてたとは言え、無断で喫茶店に侵入し、

なんとなしにDJごっこをしたなぎさに最初は怒るが、

お母さんに思いをつたえるためラジオを再開しようと持ちかけられ、承諾する。

 

 

 

 

主人公が「言霊」を目視できるのが、本作のギミックとなっている。

予告篇はやや地味だが、ファンタジー色が結構つよい。

 

 

 

 

本作の魅力はキャラクターだ。

幼なじみグループに、ラジオオタクで仕切りたがりの「あやめ」や、

音楽学校へかよう不思議ちゃんの「乙葉」などがくわわり、

高2女子だらけになるが、みな個性的でみな愛おしい。

 

キャラクターデザインは、手びろく活動する青木俊直。

ぜひ、物語のなかで動く彼女たちを見てほしい。

シンプルな造形と、繊細な感情表現の両立に感嘆するはず。

 

 

 

 

ラクロス部のエースとしてたがいをライバル視する、

「かえで」と「夕」のアンビバレントな関係が、大きな見どころ。

ドラマチックな感情の波がおしよせる、思春期女子の友情物語だ。

勿論、百合に分類してもいい。

 

 

 

 

主要キャストが現役高校生の新人である本作は、

絢爛豪華なところがなく、多くの注目をあびてると言えないが、

2017年夏の忘れがたい記憶として、静かに語り継がれるであろう傑作だ。




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夕仁/里好『聖へき†桜ヶ丘』

 

 

聖へき†桜ヶ丘

 

作画:夕仁

原作:里好

掲載誌:『電撃PlayStaton』(KADOKAWA)2017年-

単行本:電撃コミックスNEXT

[ためし読みはこちら

 

 

 

国内有数のお嬢さま学校「桜ヶ丘学苑」の入学式。

桜色の制服がステキだ。

はたして、どんなトラブルが待ちうけるのか。

 

 

 

 

主人公の「佐藤菜乃」は、幼いころから特殊能力をもつ。

それは、他人の性癖を読みとる力。

顔にデカデカと「制服フェチ」などと表れるので、だれが変態なのか丸わかり。

教師や警備員さえ信用できないから、つらい。

 

 

 

 

入学初日から能力が発揮される。

学苑のアイドルである生徒会長「上月契(かみつき ちぎり)」の性癖は「人喰い」。

ほんらい趣味に良い悪いもないが、カニバリズムはヤバそうだ。

 

 

 

 

菜乃は神父から、その能力で学苑の風紀を守るよう命じられる。

監視してたら案の定、欲望にかられた契が親友の首筋に喰らいつく。

ところが襲われた副会長は「超ドM」で、おとなしく快感に身をゆだねる。

なんだかんだで、いいコンビだった。

 

名門の子女ほど、きびしく躾けられたせいで性的嗜好は歪みがち。

つまり桜ヶ丘学苑は、狂い咲きする変態たちの花園だった。

 

 

 

 

おなじく生徒会の「植原さん」は、まじめで仕事ができて隙がない。

ただひとつ、背中に靴底の跡がある以外は。

彼女が隠しもつ性癖とは?

 

そんなこんなで、スリリングな女子校ライフがたのしめる作品だ。

 

 

 

 

原作つきである本作は、作画担当者が絵に集中できるとゆう美点がある。

植原さんは主要キャラではないが、吊り目ショートボブでキャラデザがきまってて、

しかも変態さんだなんてたまらない。

 

ちょっとエッチな百合コメディを読みたいなら、本作はベストチョイスだろう。





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もちオーレ『出会い系サイトで妹と出会う話』

 

 

出会い系サイトで妹と出会う話

 

作者:もちオーレ

発行:KADOKAWA 2017年

単行本:電撃コミックスNEXT

[ためし読みはこちら

 

 

 

いわゆるウェブ漫画に疎い僕はよく知らなかったが、

ツイッターで人気のある百合系作家らしい。

 

表題作は、同性の恋人をもとめて出会い系サイトを利用したら、

実の姉妹がひさしぶりに再会したとゆう、意外性にとむ連作。

気の毒なほど狼狽する、妹の「小夜」がかわいい。

 

 

 

 

親が知ったら卒倒確実な「出会い」だが、姉は平然としている。

でも内心はドキドキしてるらしい。

相手は家族なのに、エンカウントのシステムがちがうだけで色めきたつ。

 

作者は、セリフ回しでキャラの個性を増幅させ、

ありえない関係性にイキイキしたリアリティを付与する。

 

 

 

 

ふたりは8年前から百合だった。

当時中1の小夜は、彼氏とのファーストキスを失敗したくないから、

キスの予行演習につきあってと、5歳年上の姉にもちかける。

 

彼氏がいるなんて嘘だけど。

 

 

 

 

長女らしくしっかり者の姉は、あんがい感情に流されやすい。

あっさりキスの快楽に溺れ、「練習」を名目にし、

親の目を盗みつつ、みづから妹の唇をもとめた。

 

 

 

 

思春期女子が複数いる家庭は、ハリネズミの巣だ。

些細なきっかけで、楽園が戦場と化す。

姉の受験勉強ですれちがいが生じ、妹は恨みをいだく。

 

この苦味は7年後、誤解がとけた姉妹の甘味をきわだたすスパイスになるが。

 

 

 

 

こちらはバスケ部を舞台とする別シリーズの『ダメな先輩×デキる後輩』。

ミニマルな作風だが、動きの描写も的確だ。

 

どれほどの隔たりも一息で踏破する、百合とゆう特別な心のありかた、

そのうつくしい奇跡をつめこんだ短篇集である。





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苑田 健

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