あおのなち『きみが死ぬまで恋をしたい』

 

 

きみが死ぬまで恋をしたい

 

作者:あおのなち

掲載誌:『コミック百合姫』(一迅社)2018年-

単行本:百合姫コミックス

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ルームメイトの死からはじまる百合漫画だ。

それを聞かされても主人公「シーナ」は淡々としている。

 

 

 

 

シーナは、孤児をあつめた魔法学校で寮生活をおくる。

学校は彼女らを訓練し、戦場へ派遣する。

 

つまり本作は「ファンタジー」や「戦争」が題材であり、

百合姫作品としてはギミックが大掛かりだ。

 

 

 

 

シーナは、天才的な能力をもつ「ミミ」と出会う。

めざましい戦果をあげたばかりで、全身血まみれだった。

 

 

 

 

小柄で無邪気で幼く見えるミミだが、実はシーナと同い年。

あたらしいルームメイトとして共同で生活することに。

 

制服はセーラーワンピース風。

ただしリボンなどはなく、ラインも1本だけとシンプルで、

セーラー要素の主張がひかえめな、ぎりぎりのバランスだ。

 

 

 

 

少女たちは何者と戦っているのか、その戦争目的はなにか。

主人公は内面にどんな闇をかかえていて、それをどう解決するのか。

あえて言うとジブリやまどマギみたく、大作っぽいムードの本作は、

当然生じるこういった読者の疑問に答えなくてはならない。

しかし僕がおもうに、百合姫連載作にストーリー性を要求するのは野暮だろう。

 

たとえば本作では、唇をかさねることで治癒魔法が発動される。

ふわっとやわらかい絵柄でえがかれる少女たちと、

シリアスなテーマが緊張をはらみながら共存する、

独特の空気感がなによりも貴重に感じられる。





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灯『Still Sick』

 

 

Still Sick

 

作者:灯

配信サイト:『pixivコミック』2018年-

単行本:ブレイドコミックス(マッグガーデン)

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社会人百合である。

左側の黒髪で長身なのが、29歳の主人公「清水」。

ソフトウェアを開発する部署のリーダーをつとめる。

右側の小柄で制服を着てるのが、25歳の「前川」。

総務部所属の、いかにもOLらしいOLだ。

 

 

 

 

主人公の清水には秘密がある。

それは百合専門の同人作家であること。

即売会で前川と出くわし、バレてしまう。

 

 

 

 

ネタバレを避けるためくわしく書かないが、前川にも隠しごとがある。

ふたりが親しくなるにつれ明らかとなる。

 

 

 

 

タイトルにある「病気」は、恋愛感情にくわえ、創作意欲も暗示する。

ふだんは愛想がよく、だれからも好かれる前川が、

内面に深刻なトラウマをかかえている意外性に、読者はゆすぶられる。

 

 

 

 

正直、前川さんが魅力的すぎるという、バランスの悪さは否めない。

清水に対し徐々に本性をあらわし、つっけんどんな態度をとりだす。

コロコロかわる表情がかわいい。

 

作者も相手役の方に、より強く感情移入してるはず。

主人公がちょっと受け身なのだ。

 

 

 

 

本作はメタフィクション的構造をもっている。

感情がたかぶり、百合の行為が演じられるシーンもあるが、

それは百合漫画の模倣だと、あとでエクスキューズがなされる。

 

 

 

 

女心はむつかしい。

女同士でさえ、しばしばこんがらがる。

ときには怖いとおもうことも。

だから私たちは、百合のファンタジーに逃げてしまう。

 

プロット面での弱さはあるが、それは百合漫画ではいつものことで、

キャラやテーマの卓越性において、真剣に推薦したい作品だ。





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秋アニメOPを語る 『となりの吸血鬼さん』と『アニマエール!』

 

 

『となりの吸血鬼さん』は、400歳の美少女吸血鬼と、

おせっかいな女子高生の同居生活をえがくコメディだ。

 

「ソフィー」は吸血鬼だが温厚な性格で、けっして人間を襲わない。

血液はアマゾンで購入している。

 

 

 

 

本作はゴシック要素が薄い。

かわいい女の子がいっぱいで、絵面もぱっと華やか。

 

 

 

 

僕は基本的に吸血鬼ものが苦手だ。

血を吸うという行為が、どうも不衛生に感じられる。

そして露骨に性的すぎるとおもう。

 

しかし本作は、「少女同士のちょっと過剰なスキンシップ」がモチーフで、

吸血行為がむしろそこに埋没するのがおもしろい。

 

 

 

 

OPアニメーションは、コンセプトデザインの杉村苑美が担当。

本作のビジュアル面をリードしている様だ。

ちらちらと健康的なエロスをアピールする。

 

 

 

 

園田健太郎による楽曲はにぎやかで、いわゆる電波ソングに分類できそう。

感心するのは、ソフィー役をつとめる富田美憂の歌唱力。

電波ソングはある意味、声優が強引な譜割りをたどたどしく追う、

「歌わされてる感」が魅力だが、この人はさらっと歌いこなす。

役柄もぴったり。

堕天使や吸血鬼をやらせたら、右に出るものはない。

 

相方をつとめる篠原侑は、アイムエンタープライズ所属の若手声優。

本渡楓や千本木彩花のひとつ下で、嶺内ともみの同期。

若いふたりの掛け合いが中心なのに、安定した芝居に感じられるのは、

音響監督・明田川仁の力量が大きいとおもわれる。

 

Studio五組制作ということで、『きんいろモザイク』をなぞる雰囲気を出しつつ、

「日常/非日常」「明/暗」「友情エピソード/ギャグ」「若手声優/中堅声優」などの、

絶妙なバランスをたのしめる秀作となりそう。



 

 

 

 

『アニマエール!』はチアリーディングを題材とするアニメ。

制作はきらら系を得意とする動画工房で、ハズレはないだろうと期待させる。

 

OP曲はチアを模しており、掛け声が飛び交って元気いっぱい。

おもわず体がうごくアクティヴな曲だ。

 

 

 

 

主人公ではないが、チア経験者の「有馬ひづめ」が鍵となるキャラ。

優等生で、ふだんは無表情。

 

 

 

 

しかし演技がはじまった途端、人がかわった様なキラキラの笑顔をみせる。

チアにかける情熱がつたわり、グッとくる。

 

 

 

 

僕が好きなのはサビのはじめの部分。

カメラが奥に、つづいて横にうごくなかでとらえた、勢いよく跳ねるポニーテール。

熱い青春の一コマを象徴している。



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飴野『高嶺の花はウソツキです。』

 

 

高嶺の花はウソツキです。

 

作者:飴野

発行:一迅社 2018年

レーベル:百合姫コミックス

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「ギャルJK×清楚OL」の百合漫画だ。

左が17歳の「巡(めぐる)」、右が24歳の「雪帆」。

本来なら接点をもたないふたりだが、

電車で痴漢にあう雪帆を助けたのがきっかけで、親しくなる。

 

 

 

 

巡は外見こそギャルだが、性格は素直。

やさしく包容力のある雪帆に惚れこみ、仔犬みたいになつく。

雪帆にしても妹ができた様なもので、あれこれ相談にのる。

 

 

 

 

しかしある日、巡はラブホテルから出てきた雪帆をみかける。

相手はいかにもチャラそう。

ヒマだったので、たまたまナンパしてきた男に体をゆるした。

 

 

 

 

いても立ってもいられず、巡は疑問を直接ぶつける。

雪帆さんはそんな人じゃないのにおかしいと。

それに対し雪帆は、不機嫌な暗い表情をみせる。

自分の清楚な外見や、やさしい言動は、すべて作り物だったとあかす。

あなたと遊んでやったのも、ただの暇つぶしだと。

 

 

 

 

だまされたと知った巡は怒り、動揺する。

でも幻滅すればするほど、自分がいかに雪帆に執着してるかに気づく。

もう引き返せない深みにまで。

本気で好きだから、こんなにつらいんだ。

 

 

 

 

作者は別名義でBL系の単行本をだしてるが、雑誌連載は本作がはじめて。

キラキラまぶしい正統的少女漫画風の絵柄は、百合姫ではやや異色かも。

自分の気持ちに正直な、巡のまっすぐなふるまいが印象的で、

どきどきしながらストーリー展開をたのしめる、1巻完結の名作となっている。





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仲谷鳰『やがて君になる』6巻

 

 

やがて君になる

 

作者:仲谷鳰

掲載誌:『月刊コミック電撃大王』(KADOKAWA)2015年-

単行本:電撃コミックスNEXT

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ながく引っぱってきた生徒会劇がはじまる。

主演は燈子である。

死別した姉への思いが、彼女を舞台へ駆りたてた。

 

 

 

 

2話にわたり、劇の一部始終を再現する。

はっきりいって冗長だ。

ただでさえ淡白な作風なのに、この空虚さは耐えがたい。

 

とはいえ侑がチョップをくりだすところとか、きらりと光る瞬間はある。

 

 

 

 

にも言ったが、本作はすでに「セリフつきのイラスト集」となっている。

むしろセリフのないページがいい。

扉絵とか。

象徴主義的な手法が、めざましい効果をあげる。

 

 

 

 

僕が気にいったのは、カバー下の4コマ。

作者は主要キャラ全員の誕生日をあかし、

燈子と侑は先輩後輩なのに、2か月も離れてないのをネタにする。

 

おまけにするには勿体ない会話だ。

逆にいうと、本篇の価値がいまいちわからない。

 

 

 

 

34話は、本作ではおなじみの飛石のある川で、

「攻守逆転」となる重要なシーンが演じられる。

 

光と風の繊細な描写。

瞳にうつる川面。

表情の対比。

しんとした時間と、だしぬけな運動。

たかぶる感情。

 

仲谷鳰の画風は誇張がすくない。

少女漫画みたく背景で花が咲き乱れないし、男性むけのサービスもない。

でもこれは、漫画における少女のうつくしさの表現の、まさに極致だろう。





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