板倉梓『間くんは選べない』

 

 

間くんは選べない

 

作者:板倉梓

掲載誌:『月刊アクション』(双葉社)2016年-

単行本:アクションコミックス

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主人公の「間くん」は、印刷会社につとめる26歳のサラリーマン。

これまで恋人はいたことがない。

要するに童貞。

そんな感じのラブコメだ。

 

 

 

 

仕事でつきあいのある「里見さん」にダメもとで告白したらOKされる。

ついに「彼女いない歴=年齢」卒業。

初デートは代官山。

そんなに気合いのはいった服装じゃないけれど、

おろしたてのワンピースを着て来てくれたのがうれしい。

 

 

 

 

出版関係者らしく本屋に立ち寄ったふたりは、

北欧ミステリーの話題などで打ち解けてゆく。

 

全体的に趣味がよく、細部の描写にこだわりがあり、

なにげないシーンでも読者に奥行きを感じさせる。

こんなカップルいるかもと思わせる。

あいかわらず超安定の板倉印だ。

 

 

 

 

実は間くんは二股をかけていた。

LINEで里見さんに告白したあと、その返事を待っている時期に、

電車で酔っぱらいに絡まれるところを助けたのがきっかけで、

女子高生の「鏡香」と仲良くなっていた。

 

作者の必殺技、吊り目ショートカット女子。

こんなJKそうそういねえよと思うが、わかってても抵抗不能。

 

 

 

 

鏡花は無表情だが、まじめで一途。

かすかな顔つきの変化に気持ちがあらわれるタイプ。

つまりかわいくて、いいコ。

里見さんにフラれると思いこんでいた間くんは、慕ってくる鏡香を遠ざけられない。

 

鏡香はボーイッシュなコーデ。

背伸びしてないのが高校生らしく好印象だが、

人生初のデートのため慎重に服を選んだらしいのもつたわる。

 

 

 

 

間くんは、誠実か優柔不断か残酷かよくわからない性格で、

品定めするかの様に、鏡香を里見さんのときとおなじ書店へつれてゆく。

美大をめざしている鏡香は、高価なテキスタイルの本を手にとる。

 

女子の描き分けの巧さは、この作者ならでは。

読者は若くピュアな鏡香に感情移入しながらストーリーを追う。

 

 

 

 

端正かつ可憐な絵柄が最大の強みである一方で、

人間の営みについて回る「セックスや暴力」から目をそむけないのが、作者の特色。

お茶を濁さない。

いくらでもごまかしが利きそうな画力の持ち主なのに。

 

男の仕打ちがひどすぎたり、ゆるふわラブコメに見せかけてエロかったり、

居心地わるさを感じるときもあるけれど、そもそもそれが作風でもあって、

板倉梓の集大成になりそうな予感がしなくもない第1巻だ。





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タグ: 板倉梓 

板倉梓『きらきらビームプロダクション』

 

 

きらきらビームプロダクション

 

作者:板倉梓

掲載誌:『月刊まんがライフオリジナル』(竹書房)2015年-

単行本:バンブーコミックス

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「きらきらビームプロダクション」は芸能事務所の名前で、

3人組のアイドルグループ「からぁ~ず☆」が所属する。

美人で長身で巨乳の「星ひかり」が社長をつとめる。

 

さまざまなジャンルを手がけてきた板倉梓の新作は、

コロコロ可憐な絵柄をいかしたアイドルもの。

 

 

 

 

リーダーの「大月あかね」が一番かわいいかな。

黒髪ショートの元気者だが、体型までボーイッシュなのが悩み。

 

 

 

 

ファンにチェキ帳を見せてもらったら、自分の顔がコピペしたみたいに同じとか、

地下アイドルあるあるネタで笑わせたり。

 

殺し屋のアクションものから、5歳の双子のファミリーものまで。

良く言えば万能選手、悪く言えば器用貧乏なあずにゃん先生らしく、

未経験のジャンルをさらっとソツなくこなしている。

 

 

 

 

マネージャーは26歳の「宝田麻人」。

地味だが誠実な人柄で、褒めるときは全力で褒め、

可愛いと言われ慣れてるアイドルさえ赤面させる。

 

 

 

 

海辺での泊まりの仕事。

3人組が眠ったころ、社長と部下がサシで飲みはじめる。

なんだかいい雰囲気に。

 

ピチピチした16歳が飛んだり跳ねたりするのと並行して、

しっとりしたオトナの恋をえがくのが板倉流。

 

 

 

 

宝田は、ネットでたまたま10年前のアイドルグループをしらべてたとき、

そのなかのひとりが今の社長であると気づく。

当時の純情さは欠片もないが、顔立ちとホクロの位置が一致。

 

サブプロットを絡めつつ、じわじわ盛り上げる語り口はあいかわらず。

 

 

 

 

どうも板倉梓は「かわいい絵の漫画家」と認識されてる気がする。

事実なのだが、ちょっとあなどられてる。

シンプルで洗練されてるのに親しみやすい、稀有な絵柄がかえって災いしてか、

構図やストーリーテリングの才能が注目されない傾向がある。

もっとスポットライトがあたるべき作家だ。





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板倉梓『すいもあまいも』

 

 

すいもあまいも

 

作者:板倉梓

発行:マッグガーデン 2016年

レーベル:マッグガーデンコミックス EDENシリーズ

ためし読み/同作者についての過去記事

 

 

 

絵柄こそシンプルで愛らしいが、板倉梓は設定や演出に凝るタイプだから、

良くいえば王道、悪くいえば月並みなラブコメの本作は、キャリアのなかで異色。

出産経験が影響し、すこし丸くなったのかも。

 

 

 

 

ヒロインは高校3年の「天現寺じゅん」。

両親がアメリカにいる間、1年の主人公「米倉蓮司」の家に居候することに。

脱衣所での遭遇イベントなど、ベタな路線をたどる。

 

 

 

 

いかにも当て馬っぽい女の子が、オクテな主人公にからむ。

駄菓子屋で売ってるラムネの様な、昭和の味。

 

 

 

 

お得意のカッチリ決まった構図や、流麗なカメラワークはひかえめ。

言いかえると、カッコつけてない。

でも独特のリズムやモンタージュで見せる演出は、やはり映画的。

 

 

 

 

ギャル系の同級生に強引にさそわれ、服屋へ行く。

そこでのやりとりがたのしい。

ギャルズの言動は傍迷惑なのに、板倉絵で描かれると可愛くおもえる。

 

 

 

 

そして最終話の昂まり。

「板倉梓にハズレなし」の法則はいまだに有効。

 

 

 

 

1巻完結で小品だが、その分混じりけのない古典的ラブコメ。

職人藝をたのしみたい。






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板倉梓『なぎとのどかの萌える不動産』完結 『ガール メイ キル』2巻

 

 

幼なじみ女子ふたりでがんばる、『なぎとのどかの萌える不動産』(KCDX Kiss)も2巻で完結。

 

二十歳くらいのカップルが店にきた。

山梨からでて同棲はじめるとゆうのに、なにやら不機嫌。

 

 

 

 

実は女の子が同棲をいやがっていた。

彼のことは好きだけど、トリマーとして東京で自立しようとするときに、

イチャイチャ甘い生活なんて、覚悟がにぶりそうだから。

経験つんだ「のどか」は、近すぎず遠すぎないライフスタイルを提案。

 

単行本あとがきによると、作者にとって初の女性誌連載で、

イケメンを出さなきゃいけないのに苦労したとか。

たしかに板倉梓の十八番、ツリ目黒髪ショート女子にくらべたら、

レディコミ仕様の男性陣はちょっと分がわるい。

 

 

 

 

はじめて上がった「梛」の部屋は、監獄をおもわせる殺風景ぶり。

子供のころは、にぎやかでたのしい空間だったのに。

のどかは相棒の心の闇をしり呆然。

 

 

 

 

不動産業をいとなみながら、自分の「本当の家」をみつけられないのは、

ある悲劇をわすれられないから。

家屋はときに、つらい記憶をやどすこともある。

 

掲載誌『Kiss PLUS』の休刊により長期連載とならなかった本作だが、

住まいをめぐる劇的で繊細な物語を、存分にえがききった。

 


なぎとのどかの萌える不動産(2)<完> (KCデラックス Kiss)なぎとのどかの萌える不動産(2)<完> (KCデラックス Kiss)
(2014/04/11)
板倉梓

 

 

 

 

ぬいぐるみを抱いてねむる、あどけない15歳の「芽衣」。

職業は殺し屋。

つづけて『ガール メイ キル』(アクションコミックス)2巻をとりあげる。

 

 

 

 

清潔感ただよう純情可憐な乙女が得意のあずにゃん先生は、

香港ノワール調の本作では、指をきりおとす拷問も平然とえがく。

 

 

 

 

ロリコンマフィアにつかまり、殴られ、未発達の体をもてあそばれる。

 

板倉梓と、彼女のえがくオンナノコの距離感は独特だ。

性慾の対象じゃない一方で、自己を投影するでもなく、母性愛の匂いもない。

 

 

 

 

オトナにしては無邪気すぎ、コドモにしては大胆すぎるが、思春期でもない。

「ペット的」とでもいおうか。

イヌほど馴れ馴れしくないから、ネコかな。

不意にポケモンみたく進化し、はげしく牙をむく。



ガール メイ キル(2) (アクションコミックス(月刊アクション))ガール メイ キル(2) (アクションコミックス(月刊アクション))
(2014/06/10)
板倉梓

 

 

 

 

『萌える不動産』2巻でも、『少女カフェ』の双子姉妹がゲスト出演。

5歳のくせに、いっぱしに恋愛をかたるのがカワイイ。

 

酸鼻な暴力も、倦怠期のカップルも、愛くるしい幼女も、

雨雲からおちる水滴を手のひらでうける様に、すべて作品へとりこむ。

板倉ワールドはさらに深化している。



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板倉梓『ガール メイ キル』

 

 

ガール メイ キル

 

作者:板倉梓

掲載誌:『月刊アクション』(双葉社)2013年-

単行本:アクションコミックス

[同作者の記事→『少女カフェ』/『タオの城』/『野村24時』1巻/同2巻/『なぎとのどかの萌える不動産』

 

 

 

舞台は横浜らしきチャイナタウン。

『タオの城』につづく、作者おとくいの中華モノだ。

 

 

 

 

主人公の「五本木アキ」は、住み込みではたらくビデオ屋店員。

会社をクビになり、自分のうまれた街へもどってきた。

半分ちかくAVの店だが、窮屈なサラリーマン生活より充実している。

 

 

 

 

場末の名画座で『恐怖のキョンシー屋敷』をみる。

ほかに仲のよい姉妹風のふたりと、オカマ風の男がひとり。

中華街の人間模様はさまざま。

 

 

 

 

15歳の少女「芽衣」とオカマの「三里桂(さんり かつら)」も、ビデオ屋のうえに居をかまえることに。

突然だけど、人形ずきの芽衣はあどけなく、わるい気しない。

 

 

 

 

ある晩、道で銃撃戦にまきこまれる。

猛然と応射する桂。

カレはマフィアの一員だった。

 

 

 

 

実の姉妹でないが、やさしい姉の様にふるまう「留華」さんもそう。

組織に仇なすスパイをあらいだすため、ビデオ屋のオヤジへちかづいた。

アキもうたがわれる。

 

なんでもかける器用さがウリの板倉梓だが、

香港ノワール調でせめてくるとはさすがに意外。

 

 

 

 

芽衣は腕ききの殺し屋。

子猫みたくじゃれついた相手の留華が「犬」とみぬく。

ためらわず殺す。

 

「ほのぼの萌え四コマ」がオハコのあずにゃん先生えがく修羅場。

『少女カフェ』とくらべ、作風のふれ幅がすさまじい!

 

 

 

 

どちらかとゆうと「問題作」で、アマゾンに批判的レヴューも投稿されている。

 

作者の漫画を読むのは二度目ですが、

アクション向きの絵柄ではないように思います。

 

自分より年下の女の子が殺し屋だという事実を受け入れられない五本木と

殺し屋芽衣の同居生活が話の舞台ですが、ギャップが弱いと感じました。

 

芽衣はニコニコしていて、仕事も淡々とこなします。

実際にそんな子供がいれば確かに価値観が壊れるかもしれませんが

あいにく、漫画の世界では良く見る光景ですので、

読者である私と主人公の五本木に落差を感じます。

 

本作の弱点をついてるとおもう。

現在あずにゃん先生は連載4本かかえる。

あふれんばかりの創作意欲はみあげたものだが、さすがに多すぎやしないか。

「なんでもかける自分」に酔ってる気配がなきにしもあらずだし。

要するに問題は、それは板倉梓がかくべき物語なのかどうか。

 

 

 

 

かわいらしい絵柄のせいで見過ごされがちだが、

板倉梓ほど「映画のにおい」をただよわす漫画家はそういない。

前川たけしくらいか。

ダイナミックな構図、安定したリアリズム。

その中心に美少女がいる。

 

結論。

『ガール メイ キル』はあずにゃん先生にしかかけない漫画だ。

たとえ手が血まみれでも、そこに板倉ガールいるかぎりボクは無条件降伏。




ガールメイキル(1) (アクションコミックス(月刊アクション))ガールメイキル(1) (アクションコミックス(月刊アクション))
(2014/01/10)
板倉梓

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