我孫子祐『恋する水族マン』

 

 

恋する水族マン

 

作者:我孫子祐

発行:講談社 2017年

レーベル:講談社コミックス マガジン

ためし読み/当ブログの関連記事

 

 

 

「千代森碧(ちよもり あおい)」は飼育員として水族館ではたらいている。

担当はアザラシ。

 

いつも女子のファッションセンスがいい作家なだけあり、

防水服でさえかわいくコーデしている。

 

 

 

 

きっちり水族館を取材したらしく、「お仕事もの」として充実の内容。

ペンギン班とアザラシ班の対立とか、おもしろい。

 

 

 

 

花形はもちろん、イルカ班。

イルカショーで華麗に宙を舞う「千鳥さん」は、まるで海の女神みたい。

 

 

 

 

碧が片思いしているアザラシ班の先輩は、千鳥が好き。

つまり碧にとって千鳥は恋敵。

ランニングする千鳥を帰宅中に見かけ、いろいろかなわないと痛感したり。

 

それはともかくドット柄のパーカーが目をひく。

色気のない職場でも、おしゃれ心はとめられない。

 

 

 

 

ストーリーは、ほのぼのラブコメ。

基本的に我孫子作品は、主人公をあからさまな逆境に置かない。

「水族館閉館を食い止めるため飼育員がアイドルユニット結成!」とかではなく、

ちょっとヘンテコリンだけど、どこにでもありそうな日常を提示。

 

 

 

 

経理の「尾根川さん」は、絶大な権限をにぎってるらしい。

女性キャラの描き分けの巧さはあいかわらず。

登場人物が多いと普通は散漫な印象になるが、

我孫子作品は不思議にも、女子がふえるほど密度が濃くなる。

 

 

 

 

僕のお気にいりは、クールな獣医の「三波足子(みなみ たりこ)」。

颯爽とした美人だが、本作でいちばんの変人かも。

 

絵柄がかわって線がシュッと細くなりつつも、

かわいさにさらに磨きがかかっており、今後も注目したい作家だ。





関連記事

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 我孫子祐 

我孫子祐『東のくるめと隣のめぐる』2巻 虚々実々

 

 

東のくるめと隣のめぐる

 

作者:我孫子祐

掲載サイト:『ComicWalker』(KADOKAWA)2014年-

単行本:角川コミックス・エース

1巻/同作者の『スライムさんと勇者研究部』1巻/2巻/3巻/4巻/『アンズー』

 

 

 

TSUTAYA東久留米駅北口店だろうか。

御当地もの要素と、女子のかざらないファッションとゆう、

本作の特色をワンペアそろえた魅力的な扉絵。

 

塚原さんのロールトップのブーツがかわいい。

妹のくるりちゃんはガチャをあけるのに苦戦中。

何がはいってるか気になる。

 

 

 

 

かつてオトコオンナだったのに、お嬢さまに変貌した「翼」が2巻の中心。

塚原さんの愛猫アフロに海苔をあたえる。

 

ペットの好物まで知ってることで、親密さがつたわるいいシーンだが、

黒いものが黒いものを食べる絵のつたわりづらさに困惑。

 

 

 

 

我孫子祐の作品は分類がむつかしい。

いや、ことさらに新奇だったりシュールだったり淡白だったりしないし、

本作も三角関係ラブコメとか、むしろ古典的ジャンルへ寄せてるけど。

 

 

逆だし

 

 

しかしババア軍団から「ドリカム状態」とからかわれ、腰砕けに。

たとえるなら亜脱臼的な外しかた。

 

 

 

 

女子3人のゆるゆるトークのたのしさは、『スライムさん』以来のお家藝。

ただ12話は、ハロウィーン衣装でババ抜きしながらなのがミソ。

「ゲーム」が進行してゆくのが感じられスリリングだ。

 

 

 

 

15.5話は4コマに挑戦。

冒頭の扉絵みたいな、大ゴマの説得力が作者の強みと思ってたので意外だ。

笑顔にグッと迫るカメラワークはさすがだけど。

 

 

 

 

本巻唯一の見開きページは、最後の17話に。

このもどかしさ。

着ぐるみにはいったヒロインをどう攻略しろと。

 

あいかわらずゆるゆるだけど、よりしたたかに手強くなった本作。

ガチャでSSRを引くのなんて目じゃない。






関連記事

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 我孫子祐   

我孫子祐『東のくるめと隣のめぐる』

 

 

東のくるめと隣のめぐる

 

作者:我孫子祐

掲載サイト:『ComicWalker』(KADOKAWA)2014年-

単行本:角川コミックス・エース

[同作者の記事→『スライムさんと勇者研究部』1巻/2巻/3巻/4巻/『アンズー』

 

 

 

校内一のクールビューティ、「塚原めぐる」をめぐる物語。

乙女の命である前髪を、ヘアピンで鉄壁ガード。

おさなさと警戒心の両面があらわれる。

 

 

 

 

主人公の「永耕助(えい こうすけ)」は、新宿から東久留米へ越してきた。

北に黒目川、中央に落合川がながれる。

後者は都内で唯一「平成の名水百選」にえらばれた清流で、さまざまな鳥や魚が棲息。

 

 

 

 

あらたな出会いを期待する耕助だが、お隣さんはアフロで残念。

ただ様子がおかしい。

 

 

 

 

なんとモジャモジャ頭は、塚原さんの飼い猫「アフロ」だった。

あこがれの美少女の隣人になれたことより、

高校でのよそよそしさと真逆の無邪気さにビックリ。

 

 

白鷺もめづらしくないとか

 

 

そんな感じの、せせらぎが聞こえるご近所ラブコメだ。

ゴツい一眼レフをさげるのは、塚原さんの妹「くるり」。

お下げ髪は地味だが、かるい外ハネに元気な性格をみてとれる。

シンプルだけど、我孫子祐の女の趣味はいつもすばらしい。

 

 

 

 

憂鬱なスクールカーストから距離をおき、家族ぐるみの交流がはじまる。

きらめく川面、土のにおい、風にそよぐ髪。

うつくしいカットがいくつもある。

 

 

 

 

ヒロインの塚原さんは、前作の「スライムさん」とちがい特殊能力をつかえない。

でもどこか変。

引越し祝いのパーティで、耕助に頭をサラダまみれにされても、

服にかかってないからセーフとよろこぶ。

 

 

 

 

シャワーをあびる塚原さんがタオルをもってこいと言うので、

ドキドキしながらドアをあけると、服を着たまま髪をあらってた。

水も滴るとぼけたヒロインのたたずまいに、スライムさんの残像がかさなる。

 

 

 

 

プールでひと泳ぎしたあと、高台から町をみおろし、

東久留米とそこにすむ人々への愛をかたる塚原さん。

くるりちゃんは三つ編みを解いている。

乾ききってない髪のにおいがする。

 

本作は単なる「ご当地もの」じゃない。

つややかで呪術的な女の黒髪が、あたりの精霊をよびこみ、

ありふれた日常の特異点で、山河と町並をつなぐ。

塚原さんは巫女の様だ。

 

 

 

 

冬は森ガール風のコーディネイトで。

あたたかそうなヘッドバンドもかわいい。

前髪が季節ごとにことなるアクセントになるなど、

作者は女子のファッションの魔力をたくみにひきだす。




東のくるめと隣のめぐる (1) (カドカワコミックス・エース)東のくるめと隣のめぐる (1) (カドカワコミックス・エース)
(2015/02/07)
我孫子祐

関連記事

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 我孫子祐   

我孫子祐『アンズー』

 

 

アンズー

 

作者:我孫子祐

掲載誌:『週刊少年マガジン』10月29日号(講談社)

[『スライムさんと勇者研究部』の記事→1巻/2巻/3巻/4巻

 

 

 

信号をまちつつ、合コンの戦果をかたる女子高生三人。

リュックはモノクロだけどカラフル。

この作者はファッションの描き分けがうまい。

 

 

 

 

突如発生したクマの大群が、彼女らを食い殺す。

 

『週刊少年マガジン』に掲載された50ページの読み切りである『アンズー』は、

我孫子祐にとって8か月ぶりの講談社刊行物への帰還となるが、

前作『スライムさんと勇者研究部』のゆるふわガールズライフと訣別している。

 

 

 

 

本作は二匹のネコの物語。

ヒトがクマに駆逐された東京でサバイバル。

 

我孫子祐は「世界観」の漫画家だ。

日常芝居のリアリズムと、ファンタジックな想像力を兼備した作風で、

さりげなく読者を別のどこかへエスコート。

 

 

 

 

「トラゾウ」は右目に傷もつ、アメリカンショートヘア。

喧嘩がつよく、ネコ仲間のボス的存在。

 

 

 

 

「アンズー」はハチワレの雑種で、まだ1歳。

飼い主の「ネネちゃん」にあうため、新宿の避難所をめざす。

ディストピアと化した吉祥寺のありさまは、前作の延長線上にある。

 

 

 

 

おさないせいかアンズーは無邪気で、強面のトラゾウにもなつく。

スライムさんとゴーレムさんをおもわせる。

作者にとり描きやすい関係らしい。

 

 

 

 

『週マガ』掲載ってことで、いつになく熱い感情がほとばしる。

かよわいイエネコが、野生へ放りだされることの絶望

 

『スライムさん』は、「日常系」と「セカイ系」の両面をあわせもつが、

前者が『東のくるめと隣のめぐる』へ、後者が本作に分流した。

一方それらは、ふかいところで通じあう。

 

 

 

 

つぶらな瞳のアンズーが、狩人の本能を発揮。

その戦いぶりは、たとえば冨樫義博がヌルくみえるエグさ。

 

50ページにそそがれた、長篇一本分のエネルギーにうたれる。

もし『週マガ』がアップデートしたいなら、本作を連載化するのが賢明だろう。



関連記事

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 我孫子祐 

我孫子祐『スライムさんと勇者研究部』完結 ポスト日常系の冒険

 

 

スライムさんと勇者研究部

 

作者:我孫子祐

掲載誌:『別冊少年マガジン』(講談社)2012年-

単行本:講談社コミックス

[過去の記事→1巻/2巻/3巻

 

 

 

スライムさんにゴーレムさんにキメラさん。

ドラクエ・インスパイア系のモンスター娘がすごす、ファンタジーライフ。

完結となる4巻のみどころを紹介。

 

 

 

 

最強キャラはドラゴンの「木龍栞」さん。

モンスターが勝利した世界で、政府に協力する。

さけられぬであろう、勇者らの叛乱にそなえて。

 

 

 

 

自衛隊などと合同訓練をおこなう。

国防や治安維持にたづさわるものはみな、木龍さんを尊敬。

人類の希望はモン娘に託された。

 

 

 

 

平和ボケの庶民のあいだで、多摩川の「タマちゃん」みたいなアザラシがブームに。

あれは2002年か、なつかしい。

 

 

 

 

スライムの姿で世話やくうち、母性本能にめざめたスライムさんだが、

恩を仇でかえすアザラシの、肉食動物としての野生の本能を目の当たりに。

さすが最弱モンスター、食物連鎖の底辺にいる。

ゆるゆるな様で、殺伐としてるのが本作。

 

 

 

 

無愛想なキメラさんが、部室にゲームをもってきた。

ひとりっ子なのにコントローラが四つも……そんなにみなと遊びたかったのか。

そっけないデレ方がカワイイ。

 

 

 

 

『勇者ハンター』で一狩りいこうぜ!

いかついモンスターでかこみ、レベル1の勇者をタコ殴り。

モンハンとゆうゲームの残酷な本質を炙りだす。

 

 

 

 

『スライムさん』の底流には暴力がある。

「日常」と「ファンタジー」の奇怪なキメラとゆうか。

 

さて、ここで逆説を弄してみる。

いわゆる「日常系」の源流は、『エヴァンゲリオン』ではないか。

エヴァ以降の物語は、総じて「キャラの掘り下げ」をおもんずる。

内面描写とは、すなわち両親との関係で、だから作家は「日常」にこだわる。

碇シンジの敵が、使徒よりも父である様に。

 

我孫子祐はその潮流に沿いつつ、たくみに脱臼させる。

ゴーレムさんの一家団欒の場面で、お母さんがぎっくり腰になったり。

なんとなく、クライシス。

エディプス・コンプレックスでなく、実存的不安が本作の主題。

 

 

 

 

最終話のゴーレムさんの文化祭での大演説は、素直に感動した。

愛くるしく、人をやさしい気持ちにさせるスライムには、

「勇者vsモンスター」の果てしない戦いをのりこえる力があると。

最弱ゆえの可能性。

 

 

 

 

「セカイ系」ぽい大風呂敷をひろげずに世界をかたり、

いまの空気を吸いこみつつ、肯定的な光を未来へ投射。

漫画史にのこるはずの作品だ。




スライムさんと勇者研究部(4)<完> (少年マガジンコミックス)スライムさんと勇者研究部(4)<完> (少年マガジンコミックス)
(2014/03/07)
我孫子祐

関連記事

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 我孫子祐 
最近の記事
記事の分類
検索とタグ

著者

苑田 健

苑田 健

掲示板『岩渕真奈 閃光の天使』
も運営しています。

Twitter
メール送信

名前
アドレス
件名
本文

カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
月別アーカイヴ
05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03