尾崎かおり『金のひつじ』

 

 

金のひつじ

 

作者:尾崎かおり

掲載誌:『月刊アフタヌーン』(講談社)2017年-

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河川敷に捨てられた車のなかで練炭自殺しようとした少年を、

ボンネットに乗った明るい髪の少女が、ギターでフロントガラスを割って助ける。

 

 

 

 

少女は涙ぐんでおり、はげしく複雑な感情が内面で渦巻いてるのが解る。

 

寡作で知られる尾崎かおりの新連載が、『アフタヌーン』11月号からはじまった。

繊細かつ洗練された、あいかわらず魅力的な絵だ。

 

 

 

 

自殺未遂とゆう、のっぴきならない状況を説明したあとで、

すこし時間を遡ったところから物語がはじまる。

 

高校生の「三井倉継(みいくら つぐ)」は、小学校まで住んでいた街へもどってきた。

家族は母と姉に、妹がふたり。

父の死が、引っ越しのきっかけらしい。

 

 

 

 

本作は、男ふたり女ふたりの幼なじみの関係を中心にえがく青春もの。

仲良しだった4人は、多感な時期である6年間を経て変わってしまった。

キリキリと胸を締めつける、センシティヴな作風は尾崎かおりならでは。

 

 

 

 

第1話の38ページに、練りこんで磨きあげた物語の実質がつまっている。

上から目線で恐縮だが、本作を読まずに漫画は語れないとさえ言いたい。





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尾崎かおり『人魚王子』

 

 

人魚王子

 

作者:尾崎かおり

発行:新書館 2015年

レーベル:ウィングス・コミックス

ためし読み/『神様がうそをつく。』の記事]

 

 

 

10月にも書いたが、「痴漢」は恰好のインサイティング・インシデントだ。

『氷の微笑』でアイスピックを振るうシャロン・ストーンほど異常じゃないにせよ、

思春期の娘が巻きこまれる事件として最悪なもののひとつで、読者を刺激する。

 

本短篇集の「アメツキガハラ」では、尻を触られた「海野あかり」と、

彼氏ができたばかりの親友との対位法が、功を奏している。

 

 

 

 

72ページの短篇がうごきだす。

親友に八つ当たりしたあと、今度はトイレで自分のパンツに敵意をむける。

 

 

 

 

高らかな笑い声をあげ、多摩川ぞいの町を疾走。

ノーパンの天使は22ページで最高速に達し、

散文的な現実から韻文的なファンタジーへ飛翔した。

 

 

 

 

後篇。

処女喪失のあとの入水。

海とゆう大きなものが、破瓜の痛みを通じて、

自分のカラダとゆう小さなもののカタチを明確化する。

 

 

 

 

「人魚王子」の舞台は沖縄。

たかみち『りとうのうみ』に続けて読んでも違和感ないだろう。

アラフォーで「中二病な自分をも抱擁出来る」ようになった作者が、

その内向性を保持しつつ、開放的な風や光を物語へよびこんだ。

 

 

 

 

沖縄の海に、死のイメージをかさねて表現する手法は、

北野武の映画でも顕著だが、尾崎かおりの解釈は独特で深遠だ。

 

 

 

 

限りなく青にちかいモノクローム。

キタノブルーやたかみちブルーに匹敵するうつくしさを湛えつつ、

そっけなく共感を拒絶したり、気まぐれに愛を謳い上げる世界観。






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尾崎かおり『神様がうそをつく。』

 

 

神様がうそをつく。

 

作者:尾崎かおり

発行:講談社 2013年

レーベル:アフタヌーンKC

 

 

 

背のたかい少女と、サッカー少年。

小学6年生のひと夏の経験をえがく、一巻完結の単行本。

犬犬『深海魚のアンコさん』を「9月度ベスト」にえらんだが、あちらは「前半ベスト」にまわし、

こちらを……でもまた月末にたくさん新刊でるんだよな。

うれしい悲鳴とともに紹介しよう。

 

 

 

 

すくすく身長のびた「鈴村理生(りお)」はランドセルがにあわない。

なんとなく、気になる存在。

 

 

 

 

「七尾なつる」は、ひろつた猫を世話してもらうため理生の家をたづねる。

たおれそうなボロ屋。

父は漁師だとかで数か月不在、母はでてゆき、弟とふたりぐらし。

 

 

 

 

けなげに家事をこなす。

買いものは特売日にすませ、ハンバーグくらいなら自炊できる。

親がいないとしられたら施設へつれてかれ、家族はバラバラになるかもしれない。

だからがんばる。

 

オンナノコは心身ともに成長はやい。

尊敬の念とともに、はじめて異性を意識する少年。

 

 

 

 

なつるの父は病死しており、母はラノベ作家。

「オタクの本」だからと息子の理解はえられない。

 

 

 

 

さびしくなるとあまえて、おつぱいを揉むくせがある。

ややバランスわるい母子家庭。

 

 

 

 

外見や中身がおさない相手でも、恋はうまれる。

レアル・マドリーにはいるのが夢のサッカー小僧に、しつかり娘はほのかな憧憬をいだいていた。

「なつる君が走ると、風の音がして、校庭がゆれてるように思えるの」

 

 

 

 

合宿をサボつてはじめた、小学生男女の共同生活。

ひとつの布団をわけあつて。

 

荒唐無稽なジュヴナイル・ファンタジーだが、育児放棄とかラノベとか今日的な話題をとりまぜ、

説得力あるボーイ・ミーツ・ガールの物語としてよませる。

 

 

 

 

サスペンスでもある。

庭には、そうふるくない死体がうまつていた。

 

どうしたらよいか、わからないから。

わかつていても、ほかにどうしようもないから。

 

 

 

 

胸はちきれるほどの自由を手にしたふたりを、現実とゆう鎖がしめあげる。

約束の日に父はかえらず、生活費は底をつき、よごれた服で登校。

 

 

 

 

アラスカで漁をするといつた父は、町内のホステスの家へころがりこんでいた。

親になる資格のないオトナが、親になることもある。

客観的にみて、こんな軟弱な漁師などいるはずないけれど、

コドモにとり、親の愛をうたがうのはつらすぎる。

 

 

 

 

一巻完結の漫画は名作おおいが、本作はその白眉。

残酷な世界のなかで、たしかに感じられるやさしさは、到底わすれがたい。




神様がうそをつく。 (アフタヌーンKC)神様がうそをつく。 (アフタヌーンKC)
(2013/09/20)
尾崎かおり

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