久遠まこと『不登校の日常』

 

 

不登校の日常

 

作者:久遠まこと

掲載サイト:『ComicWalker』(KADOKAWA)2016年-

単行本:MFC

 

 

 

不登校、それは禁断の快楽。

一度はじめたら、もうやめられない。

高校2年の「早乙女雨音」は、学校へ行かなくなって2週間め。

 

 

 

 

父は仕事で不在がち、母は離婚して家を出たので、

実質的に双子の姉である「音晴(おとは)」が母親がわり。

しかし同い年の妹を面倒みなきゃならない理不尽さに、音晴はブチ切れる。

 

 

 

 

生きる価値すら否定された雨音も、負けじとキレる。

でも殴り合うのは怖いので、物に当たる。

 

不登校経験があると言う作者による「不登校あるある」がおかしい。

 

 

 

 

本作はわたモテなどと共通の、かわいくない主人公がかわいく感じられる、

ある種の「アンチヒロインもの」だが、双子の姉の存在がきいてるのが特色。

ダメ人間が主人公でも、辛辣すぎる正論で叱られるため、読者は共感できる。

たしかにそれはそうだけど、なにもそこまで言わんでもと。

 

 

 

 

一方、音晴がイラつく事情もわかる。

自宅にいれば家事に追われ、学校では妹の不登校をごまかし、

若い身空で子持ちの女みたいな苦労を強いられる毎日。

男子から告白されても、恋愛どころじゃないので断ったり。

 

 

 

 

音晴は青春をとりもどすため家族会議をひらき、父に説得させようとするが、

「娘の涙によわい」とゆう男親特有の弱点をつかれ、あっさり陥落。

さらに「雨音の気持ちもかんがえろ」「音晴はお姉さんなんだから」と、

まったく現実を見れてない父の言葉に絶望する。

 

 

 

 

血をわけた肉親さえ、いやおなじ遺伝子を共有する相手さえ、わかりあえない。

われわれはただ、精神の沙漠を孤独にさすらう。

 

本作はギャグ漫画だが、ときおり痛切に心をゆすぶる傑作でもある。





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ねこ末端『陽下3姉妹はかまってほしい』

 

 

陽下3姉妹はかまってほしい

 

作者:ねこ末端

掲載誌:『コミック電撃だいおうじ』(KADOKAWA)2016年-

単行本:電撃コミックスNEXT

[ためし読みはこちら

 

 

 

きょうだいモノの注目作である。

中学3年生「貞利」の母親の再婚相手に娘が三人いて、

しかも美人ばかりなため自宅はいきなり花園と化した。

 

 

 

 

高校1年の次女「美乃里」はかまってちゃん。

ぱっつん前髪に三つ編みがかわいい。

もともと弟がほしかったそうで、やたらちょっかいを出してくる。

薄着でうろつく義姉に90cmのバストを見せつけられ、貞利は目のやり場にこまる。

しまいにはやりすぎて、新米姉弟は気まづい雰囲気に。

 

 

 

 

長女の「珠璃(じゅり)」は家では裸でいる主義だったが、

思春期男子にはあんまりだから、水着で手をうつ。

胸の大きさはともかく、スタイルのよさは美乃里に負けてない。

水着も日替わりで、裸よりかえってエロいかも。

 

 

 

 

三女の「杏梨」は爬虫類がすきな小学生。

ちょっと反応うすい子だが、お兄ちゃんができて嬉しいらしく、徐々に心をひらく。

 

 

 

 

やはり胸囲が物を言うのか、次女の美乃里がヒロイン格だ。

描写がこまやかで、ブレザーの皺や影にみとれる。

あと右の黒髪ショートの子は僕好みで、モブキャラなのに印象的。

 

ねこ末端はあとがきで、本作は作画に特に力をいれたと述べており、

ヴィジュアルは実際、前作とくらべ格段に充実している。

腕が上がったのだろうし、リソース配分見直しのおかげもあるだろう。

プロット構築やネーム作成や取材や資料集めより、

女の子をえがく作業にひたすら時間をついやすべし。

それが自分の強みだから。

 

 

 

 

とはいえ空疎な作品ではない。

映画館デート中にガラの悪い連中にからまれたとき、

俺は「弟」なんかじゃないと、貞利は男らしさをアピール。

 

親の事情で共同生活をおくることになった思春期の男女が、

おたがいを知りながら関係をふかめてゆく一方で、

義理とはいえ姉弟であるため葛藤も表面化する。

 

 

 

 

2017年1月現在、きょうだいモノに目新しさは感じられないが、

かわいさの一点突破によって群を抜いた輝きをはなつ本作は、

極上の癒やしを読者に注入してくれる。





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はまじあき『きらりブックス迷走中!』

 

 

きらりブックス迷走中!

 

作者:はまじあき

掲載誌:『まんがタイムきららMAX』(芳文社)2015年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

「鳴草書房」とゆう店名のとおり、ここは本屋なのに、

歌って踊れる店員さんのアイドルライブがはじまる。

サービスの一環らしい。

 

 

 

 

店が迷走する原因は、小学生の「えりぃ」が店長になったから。

11歳でアメリカの大学を卒業した天才だが、

出版不況のせいか経営はおもわしくない。

 

 

 

 

主人公は、大財閥の娘である「桐生院きらり」。

天然ボケがひどすぎるため、母親の指図で、

いとこのえりぃが経営する店へ、アルバイトとして修行に出された。

 

エロ同人誌の表紙を見て、相撲漫画と勘違いするなど、世事に疎い。

 

 

 

 

いとこ同士の関係がかわいい。

コミケ会場で年下のえりぃが、刺激が強すぎると、きらりに目隠し。

 

 

 

 

作者は『ドージンワーク』以来のきららファン。

芳文社への持ち込みをへて、連載を獲得した。

虫眼鏡をつかって粗探しする主人公から、4コマ愛があふれ出る。

 

 

 

 

「部活物にすれば大体いける」なんてメタ発言に、

きららファンはニヤリとせずにいられない。

 

本作はコテコテのきらら風味の4コマである一方で、

すでに完成し模倣されまくるきららメソッドに対し、批評的に接する。

 

 

 

 

メニューは豊富だけど、なにをオーダーしても安定のきららアイデンティティ。

可憐な絵柄でマイルドに中和される、スパイシーなあじわい。

このレーベル、しばらく繁盛はつづきそう。





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せきはん『のーどうでいず』

 

 

のーどうでいず

 

作者:せきはん

掲載サイト:『コミックアース☆スター』(アース・スターエンターテイメント)2016年-

単行本:アース・スターコミックス

 

 

 

埼玉の田園を背景に、少女たちの夏休みを描くフルカラーコミック。

いたってのんびり、でもたまに冒険もあり。

 

 

 

 

東京育ちの美人姉妹が引っ越してきて、地元っ子は浮き立つ。

特に長女の「さとみ」は、垢抜けており大人っぽい。

 

 

 

 

ところがさとみは大の生物オタク。

タナゴを捕まえようと用水路を漁るのが趣味だった。

 

 

 

 

「女子の田舎暮らし」は『のんのんびより』などで人気のテーマだが、

本作の強みはやわらかい色彩にある。

7月の雨がしとしと降るなか、ネコとパンダの傘をさして歩く女子中学生。

なんて絵になる情景だろう。

 

 

 

 

車で荒川へ出かけ、水遊び。

都会育ちの姉妹は、水着に着替えるときちょっとドギマギ。

 

 

 

 

地元の「純」と「はなこ」は、それこそ水を得た魚のよう。

自然とふれあうよろこびを、全身で表現する。

 

 

 

 

さとみの妹の「ともえ」。

小学5年生だが、オタクをこじらせる姉よりしっかり者。

 

 

 

 

みんなで買い物に行ったイオンで、アイドルのステージに心奪われる。

やっぱり華やかなものに憧れるのが、女の子。

 

 

 

 

ひたすら丁寧に、色彩ゆたかに、それでいてさりげなく、

どこにでもありそうで、どこにもない、郊外のたのしい日常をえがく。

読み返すたび発見と感動がありそうな作品だ。





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めの『あとで姉妹ます。』

 

 

あとで姉妹ます。

 

作者:めの

掲載誌:コミック百合姫(一迅社)2016年-

単行本:百合姫コミックス

ためし読み/『かわいさ余って好きさ100倍!!』の記事

 

 

 

高校生と小学生の姉妹百合である。

「ちかみ」は大人っぽくて容姿端麗、妹の「るみか」にとって自慢の姉。

 

 

 

 

あくまで外ヅラ的に。

家の中では、ゴロゴロぐーたらルーズでゆるゆる。

るみかが世話しないと何もできない、ダメお姉ちゃん。

 

 

 

 

ただ、好きな魔法少女系アニメのコスプレをするときだけ、

自力でメイクも衣装もばっちりキメる。

普段からおしゃれも頑張ればいいのにと、妹は嘆く。

 

 

 

 

3話扉絵。

さらっとしたシンプルな描線だが、めのは腕の達者な作家だ。

構図がキマっている。

6本の足とか、カバンの持ち方の差異とか。

手前の「さわ」だけショルダーバッグをかけ、ポケットに手を入れてたり。

 

 

 

 

クラスの男子へのさわの態度が、やけに高圧的でおもしろい。

「おしゃれ系女子とオタク系男子」とゆうスクールカーストの反映だけでなく、

あとがきによると、中学が同じだから打ち解けた会話ができてるらしい。

 

 

 

 

めづらしくおめかしして外出。

ツイッターで知り合ったコスプレ仲間とのオフ会へ。

ある意味デートより、緊張と期待で胸がときめく。

ここでの噛み合わない会話も、読んでてたのしい。

 

 

 

 

百合業界は過渡期にある。

 

つまり「別に百合姫じゃなくても良い百合あるし」だとか

「ソフト百合&日常系? 別にきららでよくね」とか言われると

否定する材料が全く無いということが問題なんです。

 

『コミック百合姫』7月号のレビュー

 

「重い百合」と「軽い百合」。

どちらを看板に据えるべきか、百合の老舗は迷っている。

 

ただ、過度に百合を期待される方は

他の方もレビューされている通り若干肩透かしを食うと思います

きらら系の漫画に近いですね。

百合の定義とか言い出したらキリがありませんが

明確な恋愛描写はありません

 

『あとで姉妹ます。』のレビュー

 

そして百合姫的な繊細さと、きらら的なポップさを兼備するめのは、

折衷的な作家とみなされている様だ。

けれども僕は、いい意味で百合姫寄りの作風だとおもう。

 

女子の外面と内面と周囲との関係の描写によって、

そのかわいさを表現するのが百合だ。

(これがユニバーサルな定義だと主張する気はない)

めのの伸びやかな描線からは、匂う様な百合のフィロソフィーがたちのぼる。





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