内海瀬戸『君に贈るロードショー』

 

 

君に贈るロードショー

 

作者:内海瀬戸

発行:集英社 2017年

レーベル:ヤングジャンプコミックス

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大学生の「涼太」が、古い一眼レフのデジカメをひさしぶりに触ると、

モニターに幼なじみの「ひまり」が、小学生のころの外見で映った。

 

 

 

 

表示されてるのは自分の部屋だが、実際はだれもいない。

ひまりとモニターごしに会話もできる。

 

 

 

 

それはありえないことだった。

なぜならひまりは、小学校卒業の翌日に交通事故で世を去ったから。

女優を夢見ていた彼女の魂がカメラにのりうつったのだろうか。

 

 

 

 

そして涼太は、ひまりと生き写しの少女に出会う。

彼女は二歳年下の妹「すみれ」で、姉の遺志を継いで役者をめざしている。

涼太とすみれは、ひまりの夢をかなえるため映画をつくりはじめる。

 

 

 

 

体が弱かったすみれは、明るく元気な姉に劣等感をいだいていた。

嫉妬心からケンカになり、仲直りしないまま生き別れとなった。

このエピソードはせつない。

 

 

 

 

「三人」で完成させた作品は、学生映画祭で上映される。

夢をもつことの大切さをえがく、やさしいストーリーだ。

 

 

 

 

明治大学のサイトに作者へのインタビューが掲載されている。

この春に明大を卒業したらしい。

作風は、たとえば新海誠みたいに青臭いところがあるけれど、

40すぎて純情ぶるのではなく、本当に若いのでいいと思う。





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カズミヤアキラ『闇女-ヤミ・カノ-』

 

 

闇女-ヤミ・カノ-

 

作者:カズミヤアキラ

掲載誌:『月刊キスカ』(竹書房)2016年-

単行本:バンブーコミックス

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主人公は大学生の「佐々木潤」。

アパートで一人暮らしをしており、隣には超美人な「美咲さん」が住んでるが、

引っ込み思案な性格なので自分からアプローチできない。

 

 

 

 

本作のギミックは「憑依能力」。

原因はわらかないが、潤はいろいろな男にのりうつり、

普段は小奇麗にしている女たちの本性を目の当たりにする。

美咲さんはアラサーの焦りもあって、浮気した同棲相手をめった刺しに。

 

 

 

 

大学とゆう舞台もよく描けている。

日本のサブカル作品は中学や高校が多いので新鮮だ。

清楚で知的な黒髪美女は、准教授の「速水さん」。

 

 

 

 

教授と不倫していると噂される速水さんだが、実際はもっとひどかった。

弱みを握り、SMプレイで奴隷にして弄ぶ。

 

 

 

 

カズミヤアキラは画力が高く、エロティックな描写に見応えがある。

たとえば、潤の古くからの女友達である「由妃」が乱交に耽るシーンも、

汚くなりすぎないギリギリのバランスに仕上げている。

 

 

 

 

サバサバした性格で話しやすい由妃には自傷癖があった。

誰でもいいから男を必要としていて、見つからないときは手首を切る。

列伝形式で女のカルマを丸裸に。

 

 

 

 

ここまでは他に似た作品があるかもしれない。

僕が本作に興味をもった理由は、ヒロイン格である主人公の妹「雛」の存在。

くせっ毛、吊り目、泣きぼくろ……造形がすばらしい。

 

女はみな欲深くて、自堕落な生き物なのは、残念だが事実なのだろう。

でも妹だけは例外であってほしい。

藁にもすがる様な主人公の願望がストーリーをつらぬいていて、

ただペシミスティックなのではない、複雑な読後感をもたらす。





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青木U平『妹はメシマズ』

 

 

妹はメシマズ

 

作者:青木U平

掲載誌:『まんがライフSTORIA』(竹書房)2016年-

単行本:バンブーコミックス

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黒縁メガネをかけて頭がよさそうな「チヨリ」が、兄のアパートにやってきた。

開口一番、料理をおしえるよう要求。

 

 

 

 

優等生であるチヨリの唯一の弱点はメシマズ、つまり料理がヘタなこと。

その腕前は、包丁をもたせると死者が出かねないほど。

居酒屋のバイトで料理をおぼえた兄は、先生にうってつけ。

 

 

 

 

萌え系作品においてメシマズ属性は大人気。

「女は料理ができて当然」とゆう、いまだ根強い社会通念が、

皮肉な味のスパイスとなって素材を引き立てる。

米研ぎだけで大騒ぎになったり、わざわざ水平器をつかって水量を計ったり。

あまりに几帳面な性格のせいで、手順を教わってもおにぎりすら作れない。

 

 

 

 

兄は芸人を目指して家を出たが、12年たってもさっぱり売れず、

惰性でつづけているバイトで料理の腕だけ上達した。

そんなの自慢できるスキルじゃないと、メシマズ妹は鼻で笑う。

決して馴れ合わない、兄妹の距離感が独特だ。

 

 

 

 

文化祭の屋台では、「名状しがたいたこ焼きの様なもの」を生成。

それでも悪戦苦闘するチヨリは愛くるしい。

何度失敗してもめげない、一生懸命さが胸を打つ。

 

 

 

 

「妹」と「メシマズ」……どちらも定番メニューと言える属性だが、

この組み合わせは妙にクセになる。

セブンイレブンが1983年に、ツナマヨおにぎりを発売したのに匹敵する発明かも。





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葉賀ユイ『サクラ*ナデシコ』2巻/高橋哲哉『ドキドキしすたー♡葵ちゃん』3巻完結

 

 

「百合とふたなりとアイドル」がテーマの葉賀ユイ『サクラ*ナデシコ』は、

ちょっとばかり詰め込みすぎの漫画だが、2巻でさらに輝きをました。

不自然なくらい。

 

 

 

 

表紙と単行本扉絵では、脇の下を大々的にフィーチャー。

さわやかなフェロモンで読者を殺しにかかる。

 

 

 

 

百合方面も進展をみせる。

過剰なスキンシップで、浴場が欲情の空間に。

 

 

 

 

葉賀ユイのえがく女の子はコロコロとお人形の様に可憐だが、

どことなくデッサン人形風に無機質でもある。

ベッドで淫らに交わる姿と、道場で寝技を仕掛ける姿に大差がない。

かわいさの表現は洗練と抽象性をきわめ、記号論の域に達している。






 

 

高橋哲哉『ドキドキしすたー♡葵ちゃん』は、3巻で堂々完結。

横たわって満ち足りた笑顔で兄と「恋人つなぎ」する、カバー下の葵ちゃん。

記号的な妹像の最高到達点か。

 

 

 

 

最終巻でも作者はサーヴィス精神をゆるめない。

学園祭でメイドカフェをひらくのはまあ定番だとして、

われらが葵ちゃんはなぜかなんとなくなりゆきでノーパンでお給仕。

コーヒーポットをもちいた熱い視線誘導のトリックに幻惑される。

 

 

 

 

がむしゃらにひたすらにまっしぐらに、お兄ちゃんがだいすき。

不純物ゼロの兄妹愛をえがいた傑作として歴史にのこるだろう。




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小川麻衣子『魚の見る夢』

 

 

魚の見る夢

 

作者:小川麻衣子

発行:芳文社 2012-14年

レーベル:まんがタイムKRコミックス tsubomi series

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二歳ちがいの姉妹百合をテーマとする漫画。

黒髪ショートが姉の「巴」で、あかるい色の方が妹の「御影」。

別の高校へかよってるため制服がことなる。

スカートのトーンなどのバランスがハーモニアスだ。

 

 

 

 

登場人物の外見はともかく、内面はみなバランスを缺く。

姉にちかづく女に対し、御影が嫉妬と敵意と狂気をほとばしらせたり。

 

 

 

 

御影は画家である父から、かつて性的虐待をうけたと語り手は匂わせる。

いま姉妹は父と別居しているが、御影は姉に内緒で会っている。

父は人間として嫌いだが、絵は好きで、ヌードモデルをつとめることも。

 

 

 

 

中心人物は7人で、百合漫画としてはやや多いかも。

徐々に関係がふかまり、複雑化し、変容するなかで、

少女たちは残酷にふるまい、他者と自己を傷つける。

ナイフよりずっと鋭利に胸をえぐる。

この絆が永遠じゃないなら、みづからの手で壊すべきだから。

 

 

 

 

「魚の見る夢」とゆう詩的なタイトルの意味は明瞭でないが、

水族館の水槽を回遊する魚みたいで、決して居心地わるくない日常において、

みじかいモラトリアムの期限日を漠然と不安におもう少女の心情をさすらしい。

 

 

 

 

1巻の描き下ろしは、無邪気なころの姉妹をえがく。

昼寝する姉をみて、御影は毛づくろいする猫の様に口づけする。

セクシャルであるよりソーシャルなものとして百合を定義。

 

 

 

 

御影を慕う同級生の「高柳」が、学校の裏庭で急接近してくるシーン。

拒否するでもなく、御影は親友の瞳をじっとのぞきこむ。

見つめ合ってるのに、その視線があまりにつよすぎ、高柳は一線をこえられない。

 

永遠と背中あわせの一瞬を、少女らが睦みあう様子に閉じこめた、名作中の名場面だ。





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