中山敦支『うらたろう』4巻

 

 

うらたろう

 

作者:中山敦支

掲載誌:『週刊ヤングジャンプ』(集英社)2016年-

単行本:ヤングジャンプコミックス

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フィンセント・ファン・ゴッホ『星月夜』へのオマージュである。

『ねじまきカギュー』第16巻でパブロ・ピカソのキュビズム手法を借りるなど、

もともと中山敦支はモダニズム絵画への執着を隠してない。

 

石にまじって人骨がころがってたり、ちよの側に立つ樹木が枯れてたり、

古典への言及をストーリーや世界観と融合させたのは、作家としての成長だ。

 

 

 

 

僕の知るかぎり、中山がはじめて描いた男女のキスシーン。

カギュー16巻のそれは、施療の意図があったのでノーカウントとする。

 

 

 

 

その後の急転直下は、またしても『トラウマイスタ』4巻的。

「人間はどこまで非情になりうるか」とゆうテーマは、

『カギュー』の理事長父娘の関係性をなぞっている。

 

ただ前作とくらべると、主人公側の動機がやや弱いので、

「熱情vs.非情」の構図が不鮮明に感じられる。

 

 

 

 

黄泉比良坂の霊力の影響で、主人公は不死の能力をうしなう。

そしてヒロインを復活させることを誓い、第1幕がおわる。

 

 

 

 

『うらたろう』は作者のファンでさえ、よくわからない漫画だ。

「生死の不可逆性」とゆう、デビュー以来のテーマを捨てたと解釈できる。

おいおい、ナカヤマ先生どうしちゃったのって感じ。

スジャータは決してもどらないから、衿沙の心の傷は決して癒えないから、

主人公たちは重苦しい現実と格闘せざるをえなかったのでは。

そこをあっさり否定しちゃうわけ?

 

とはいえ、メビウスの輪みたいな死生観をあらわすイメージは、

カギューの「ねじまき」との共通因数を確認できるし、

とりあえず第2幕の進行を見守るしかないだろう。





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中山敦支『うらたろう』3巻

 

 

うらたろう

 

作者:中山敦支

掲載誌:『週刊ヤングジャンプ』(集英社)2016年-

単行本:ヤングジャンプコミックス

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『うらたろう』第15話は温泉回。

現代サブカルチャーのハイライトである。

でも中山敦支の場合、エロくならない。

異端だが、健全な作家だ。

 

 

 

 

主人公一行は、目的地である黄泉比良坂へひとっ飛び。

離陸の仕方が少年漫画的でおもしろい。

 

 

 

 

たのしい空の旅は、鬼である「金熊童子」に妨碍される。

『トラウマイスタ』4巻を髣髴させる急展開。

 

 

 

 

ちよの家族がいる六波羅京は、妖怪によって滅ぼされていた。

廃墟と化した世界と言えばトラウマイスタ5巻だが、こちらの方がすさまじいイメージ。

 

 

 

 

苛酷な環境で男女がまっすぐな感情をぶつけあうのは、『ねじまきカギュー』の反響。

独自解釈をとりいれた和風の世界観は、『こまみたま』

 

 

 

 

死と隣り合わせの旅のなかで、ちよは成長してゆく。

『アストラルエンジン』のロランドみたく崇高なうつくしさ。

 

 

 

 

僕は『うらたろう』2巻に脱帽し、1巻へくだした低評価を猛省したが、

3巻はまたとっちらかった内容になっている。

それでもファンなので、ナカヤマらしさの欠片をいくらでも見つけられる。





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中山敦支『うらたろう』2巻

 

 

うらたろう

 

作者:中山敦支

掲載誌:『週刊ヤングジャンプ』(集英社)2016年-

単行本:ヤングジャンプコミックス

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新キャラの「伏丸(ふせまる)」は犬に化ける能力の持ち主で、脱走したちよを追う。

 

2巻時点で性別は不明。

中山敦支の作品は、ある意味で性を超越しているため、

こうゆうユニセックスなキャラ造形が映える。

 

 

 

 

冷静沈着なイメージの伏丸だが、イヌの本能にはあらがえず、

主君の藤原秀衡にナデナデされるとアヘアヘ状態となる。

ギャップ萌えの威力はさすが。

 

 

 

 

森の奥から琵琶法師があらわれた。

身なりはみすぼらしく、言動は飄々としている。

 

 

 

 

その正体は「源九郎義経」。

歴史を改変した作品世界では、壇ノ浦の戦いで討ち取られたはずの男。

琵琶にしこんだ刀を手に、八艘飛びさながらの立ち回りをみせる。

 

『うらたろう』1巻のアクションは、中山作品にしては平凡だった。

作者は攻撃衝動が涸れたので、文化人っぽい歴史モノへ逃げたのかと疑った。

杞憂だった。

ナカヤマが源平合戦を題材とした理由のひとつは、

日本史上最大のアクションヒーロー「牛若丸」に挑戦するため。

 

 

 

 

大爆発とともに、白河関が崩壊する。

こわしたのは小柄な少女と、黒づくめの不気味な従者。

ふたりを目にした秀衡が狼狽する。

 

 

 

 

少女は安徳天皇、男は義経のライバルだった平教経。

日本の存亡の鍵となるちよを抹殺しに来た。

 

1巻の感想で「中山と歴史モノの相性は最悪」などと書いた僕は、

ナカヤマ信者を自称するくせに、とんだ過小評価をしたものだ!

中山が過去を指向した最大の目的は、「天皇」と斬り結ぶため。

鹿児島出身なのにオープニングの舞台が奥州なのも、僕は不自然さを感じたが、

それはちよを東から西へ旅させ、まるごと「日本」を表現するため。

 

 

 

 

安徳天皇はロリ暴君系のキャラ。

身分が今上天皇ゆえ、個性の説得力がすさまじい。

 

 

 

 

不死である温羅太郎が、頭部だけの状態で安徳天皇の首筋に食らいつく。

そして一息に食いちぎる。

こんな漫画、あっていいのか。

 

ビン・ラディンが聖人君子におもえるほどの過激性。

中山敦支は、やっぱり中山敦支だった。

創作意欲を疑った僕は万死に値する。

先生、死ぬまで必死に死力をつくして決死の覚悟でついてきます。





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中山敦支『うらたろう』1巻

 

 

うらたろう

 

作者:中山敦支

掲載誌:『週刊ヤングジャンプ』(集英社)2016年-

単行本:ヤングジャンプコミックス

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中山敦支の2年ぶりの連載である『うらたろう』は、失敗作かもしれない。

やけに重苦しく、ファンにとって歯痒い作品だ。

 

原因は、主人公の「温羅太郎」が無気力すぎること。

不死身であるがゆえ死をのぞみ、目的らしい目的をもたない。

『ねじまきカギュー』のあと表現衝動が枯渇した作者の自画像なのは明白。

だから読んでてつらい。

 

 

 

 

ヒロインの「ちよ」は対照的な性格。

斃したばかりの妖怪の肉に舌鼓をうつなど、おのれの欲望に忠実。

 

 

 

 

おおらかで、天真爛漫で、かわいらしい。

人生のすべてを味わい尽くそうと、貪欲に生きている。

 

 

 

 

ちよは呪いのせいで余命一年しかない。

いつものナカヤマ節である。

生を肯定しようが否定しようが、いづれにせよ平等に死はおとづれる。

死こそがすべてだ。

 

 

 

 

中山の作風は異常なほど健全。

セックスを描くことに関心がない。

僕が読んだ範囲内では、男女のキスシーンすらない薬の口移しならある)

 

けれども本作は、独自の死生観をふまえたうえで女性の肉体美をえがくなど、

プレーエリアを広げようとしているのがつたわる。

 

 

 

 

『うらたろう』がおもしろいかどうかと言えば、おもしろい。

中山がつまらない漫画を描くわけがない。

才能のカタマリみたいな男で、ごく初期からすぐれた作品しか発表してない。

 

しかしファンは複雑な気分になる。

この人はなぜこんなに正直なんだろうと。

代表作を描き終え、刀折れ矢尽き、ひきかえに多少の蓄えを得て、

そして寿命へむかって徐々に朽ち果ててゆく自分自身を、

なにもここまで戯画的にかつリアルに表現しなくてもいいじゃないかと。





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中山敦支『うらたろう』

 

 

うらたろう

 

作者:中山敦支

掲載誌:『週刊ヤングジャンプ』(集英社)2016年-

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0話でその旅立ちの場景が描かれた、15歳の姫君「平千代(たいらのちよ)」。

大自然とふれあいながら、生命を讃美する。

 

雑誌のアオリに「麻呂眉ヒロイン」とあるが、マブルゥを連想させる造形だ。

 

 

 

 

不老不死と噂される、800歳の仙人である「鬼人(きじん)」に会い、

その能力にあやかるのが、ちよの旅の目的。

 

鬼人初登場シーンの面妖さは、見開きの名人・中山敦支としても特筆に値する。

ナカヤマは2年間無駄飯を食ってたのではなく、研鑽をつんでいた。

 

 

 

 

あいもかわらず「死」を主題にえらぶ。

ナカヤマは、世界でもっとも藝のない作家のひとりだ。

ひょっとしたら断トツ1位かも。

 

 

 

 

ちよに付き従う「ジイ」が、一本ダタラとゆう化け物に無慙に食われる。

『ベルセルク』の「触」におけるピピンの最期を髣髴させる。

 

中山敦支は妙にストイックな作家だ。

好んで性愛を描くがセクシャルでなく、暴力を描くがグロテスクでない。

セックス&バイオレンスで読者を釣ろうとした試みは、キャリアのなかで皆無。

しかしこの新連載は、作風が幾分ひろがっている。

 

 

 

 

『ねじまきカギュー』がなぜ傑作なのか簡潔に説明するとしたら、

「ヒロインの内面とアクションを一致させたから」と言いたい。

本来ファイターにむかない内向的な少女の恋心とプライドが、

見開きで炸裂する瞬間の痛快さは、漫画史のランキングに残りつづけるだろう。

 

この新連載が前作を超えられるかどうか、僕にはわからない。

だってたとえば、作者が交通事故で死ぬかもしれないでしょう。

わかるのは、超えようとしている事実だけ。

 

 

 

 

ボーイ・ミーツ・ガールとほぼ同時の殺害予告。

口下手なカギューが本当は、カモに言いたかったセリフだったりして。

 

21世紀の日本の漫画家である中山敦支は、

『ねじまきカギュー』で『ロミオとジュリエット』の高みに達した。

褒めすぎに聞こえるだろうが、でも400年前の戯曲に負けるって情けなくない?

そして本作は、カギューのカーテンコールにつづけて掻き鳴らす、

最高に刺激的なアンコール曲だ。





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