中山敦支『うらたろう』2巻

 

 

うらたろう

 

作者:中山敦支

掲載誌:『週刊ヤングジャンプ』(集英社)2016年-

単行本:ヤングジャンプコミックス

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新キャラの「伏丸(ふせまる)」は犬に化ける能力の持ち主で、脱走したちよを追う。

 

2巻時点で性別は不明。

中山敦支の作品は、ある意味で性を超越しているため、

こうゆうユニセックスなキャラ造形が映える。

 

 

 

 

冷静沈着なイメージの伏丸だが、イヌの本能にはあらがえず、

主君の藤原秀衡にナデナデされるとアヘアヘ状態となる。

ギャップ萌えの威力はさすが。

 

 

 

 

森の奥から琵琶法師があらわれた。

身なりはみすぼらしく、言動は飄々としている。

 

 

 

 

その正体は「源九郎義経」。

歴史を改変した作品世界では、壇ノ浦の戦いで討ち取られたはずの男。

琵琶にしこんだ刀を手に、八艘飛びさながらの立ち回りをみせる。

 

『うらたろう』1巻のアクションは、中山作品にしては平凡だった。

作者は攻撃衝動が涸れたので、文化人っぽい歴史モノへ逃げたのかと疑った。

杞憂だった。

ナカヤマが源平合戦を題材とした理由のひとつは、

日本史上最大のアクションヒーロー「牛若丸」に挑戦するため。

 

 

 

 

大爆発とともに、白河関が崩壊する。

こわしたのは小柄な少女と、黒づくめの不気味な従者。

ふたりを目にした秀衡が狼狽する。

 

 

 

 

少女は安徳天皇、男は義経のライバルだった平教経。

日本の存亡の鍵となるちよを抹殺しに来た。

 

1巻の感想で「中山と歴史モノの相性は最悪」などと書いた僕は、

ナカヤマ信者を自称するくせに、とんだ過小評価をしたものだ!

中山が過去を指向した最大の目的は、「天皇」と斬り結ぶため。

鹿児島出身なのにオープニングの舞台が奥州なのも、僕は不自然さを感じたが、

それはちよを東から西へ旅させ、まるごと「日本」を表現するため。

 

 

 

 

安徳天皇はロリ暴君系のキャラ。

身分が今上天皇ゆえ、個性の説得力がすさまじい。

 

 

 

 

不死である温羅太郎が、頭部だけの状態で安徳天皇の首筋に食らいつく。

そして一息に食いちぎる。

こんな漫画、あっていいのか。

 

ビン・ラディンが聖人君子におもえるほどの過激性。

中山敦支は、やっぱり中山敦支だった。

創作意欲を疑った僕は万死に値する。

先生、死ぬまで必死に死力をつくして決死の覚悟でついてきます。





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中山敦支『うらたろう』1巻

 

 

うらたろう

 

作者:中山敦支

掲載誌:『週刊ヤングジャンプ』(集英社)2016年-

単行本:ヤングジャンプコミックス

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中山敦支の2年ぶりの連載である『うらたろう』は、失敗作かもしれない。

やけに重苦しく、ファンにとって歯痒い作品だ。

 

原因は、主人公の「温羅太郎」が無気力すぎること。

不死身であるがゆえ死をのぞみ、目的らしい目的をもたない。

『ねじまきカギュー』のあと表現衝動が枯渇した作者の自画像なのは明白。

だから読んでてつらい。

 

 

 

 

ヒロインの「ちよ」は対照的な性格。

斃したばかりの妖怪の肉に舌鼓をうつなど、おのれの欲望に忠実。

 

 

 

 

おおらかで、天真爛漫で、かわいらしい。

人生のすべてを味わい尽くそうと、貪欲に生きている。

 

 

 

 

ちよは呪いのせいで余命一年しかない。

いつものナカヤマ節である。

生を肯定しようが否定しようが、いづれにせよ平等に死はおとづれる。

死こそがすべてだ。

 

 

 

 

中山の作風は異常なほど健全。

セックスを描くことに関心がない。

僕が読んだ範囲内では、男女のキスシーンすらない薬の口移しならある)

 

けれども本作は、独自の死生観をふまえたうえで女性の肉体美をえがくなど、

プレーエリアを広げようとしているのがつたわる。

 

 

 

 

『うらたろう』がおもしろいかどうかと言えば、おもしろい。

中山がつまらない漫画を描くわけがない。

才能のカタマリみたいな男で、ごく初期からすぐれた作品しか発表してない。

 

しかしファンは複雑な気分になる。

この人はなぜこんなに正直なんだろうと。

代表作を描き終え、刀折れ矢尽き、ひきかえに多少の蓄えを得て、

そして寿命へむかって徐々に朽ち果ててゆく自分自身を、

なにもここまで戯画的にかつリアルに表現しなくてもいいじゃないかと。





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中山敦支『うらたろう』

 

 

うらたろう

 

作者:中山敦支

掲載誌:『週刊ヤングジャンプ』(集英社)2016年-

ためし読み/同作者の過去記事

 

 

 

0話でその旅立ちの場景が描かれた、15歳の姫君「平千代(たいらのちよ)」。

大自然とふれあいながら、生命を讃美する。

 

雑誌のアオリに「麻呂眉ヒロイン」とあるが、マブルゥを連想させる造形だ。

 

 

 

 

不老不死と噂される、800歳の仙人である「鬼人(きじん)」に会い、

その能力にあやかるのが、ちよの旅の目的。

 

鬼人初登場シーンの面妖さは、見開きの名人・中山敦支としても特筆に値する。

ナカヤマは2年間無駄飯を食ってたのではなく、研鑽をつんでいた。

 

 

 

 

あいもかわらず「死」を主題にえらぶ。

ナカヤマは、世界でもっとも藝のない作家のひとりだ。

ひょっとしたら断トツ1位かも。

 

 

 

 

ちよに付き従う「ジイ」が、一本ダタラとゆう化け物に無慙に食われる。

『ベルセルク』の「触」におけるピピンの最期を髣髴させる。

 

中山敦支は妙にストイックな作家だ。

好んで性愛を描くがセクシャルでなく、暴力を描くがグロテスクでない。

セックス&バイオレンスで読者を釣ろうとした試みは、キャリアのなかで皆無。

しかしこの新連載は、作風が幾分ひろがっている。

 

 

 

 

『ねじまきカギュー』がなぜ傑作なのか簡潔に説明するとしたら、

「ヒロインの内面とアクションを一致させたから」と言いたい。

本来ファイターにむかない内向的な少女の恋心とプライドが、

見開きで炸裂する瞬間の痛快さは、漫画史のランキングに残りつづけるだろう。

 

この新連載が前作を超えられるかどうか、僕にはわからない。

だってたとえば、作者が交通事故で死ぬかもしれないでしょう。

わかるのは、超えようとしている事実だけ。

 

 

 

 

ボーイ・ミーツ・ガールとほぼ同時の殺害予告。

口下手なカギューが本当は、カモに言いたかったセリフだったりして。

 

21世紀の日本の漫画家である中山敦支は、

『ねじまきカギュー』で『ロミオとジュリエット』の高みに達した。

褒めすぎに聞こえるだろうが、でも400年前の戯曲に負けるって情けなくない?

そして本作は、カギューのカーテンコールにつづけて掻き鳴らす、

最高に刺激的なアンコール曲だ。





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中山敦支『ゾンビマリア』

 

 

ゾンビマリア

 

作者:中山敦支

掲載誌:『週刊ヤングジャンプ』(集英社)No.26(通巻No.1778)

[中山敦支に関する記事はこちら

 

 

 

『ねじまきカギュー』終了後、連載をもってない中山敦支が、

昨年の西尾維新原作『オフサイドを教えて』につづき、読み切りを発表。

 

樹海行ったらこのマンガのことが頭に浮かんだので帰ってきて描きました。

 

巻末コメント

 

作者による森林の描写が個性的なのは、当ブログで再三指摘したので、

本作の舞台が樹海であることに我が意を得た。

 

 

 

 

ゾンビのマリアは骨が露出した手で、主人公の首吊り自殺を阻止。

死・暴力・森・あっけらかんとした女の子……。

ナカヤマ作品のシンボルがそろっている。

 

中山敦支は本来、変貌する作家だ。

作品ごとに、いや一作品の執筆中にさえ脱皮をくりかえす。

そのわりに本作のヴィジュアルは「後期カギュー」と大差ない。

成長が止まったのかもしれないし、描き続けないと変われないのかもしれない。

 

 

 

 

内面的にも、逆説を弄するナカヤマ節を踏襲。

NHK教育テレビ的な朗らかさで死を抱擁し、

自己と世界が存在することそのものへの理解を、広場的に共有する。

 

 

 

 

世界観は深みを増した。

中山が肯定する生と死は、人間の本質にそなわる暴力性と不可分。

その死は、殺し殺される存在として直面する死だ。

スタティックな諦念でなく、ダイナミックな焦燥が充溢している。

大地の裂け目を、冥々たる闇のなかで飛び越す感覚を、読者に味わわせる。

 

 

 

 

ラストシーンの主人公は、干からびて樹木の様になっている。

カギュー以降の作者の自画像と解釈できる。

 

『ねじまきカギュー』の成功は、表現者としての理想だった。

あえて俗な言い方をすれば中山は、ある種の文学/藝術性と、

サブカル的センスをたもちつつ、ポピュラリティを獲得した。

才能と努力の賜物だが、羨むべき幸運児だったのは否定できない。

 

カギューのあとに何を描いても、そううまくいかないだろう。

重いテーマを打ち出せば頭でっかちと言われ、

流行を取り入れればセンスが古いと言われ、

読者に媚びればカギューの方がよかったと言われるだろう。

あれほどの働き者が2年間沈黙している理由だ。

しかし中山敦支はすくなくとも、そんな自己を冷徹にみつめている。

 

編集部コメントによると、新作準備中とのこと。






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丈山雄為『ヤミアバキクラウミコ』

 

 

ヤミアバキクラウミコ

 

作者:丈山雄為

掲載誌:『ジャンプSQ.』(集英社)2015年-

単行本:ジャンプコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

あまり明るくない名をもつ「宵野闇子」は、一週間前に転校してきたばかり。

髪型はボブと言うよりおかっぱ、ひとりだけ黒のセーラー服を着用。

「嫌いなものは人間」と公言するクールさも異彩をはなつ。

 

 

 

 

当然いじめられる。

主人公の「須川 シュン」はつまらない男で、目撃したのに見ないふり。

助けようとして、自分がイジメの標的となった経験があるから。

 

 

 

 

他者の心へ侵入する、闇子のスキルが発動。

シュンは自身の心のなかで、小学校時代の同級生に虐げられていた。

天使の顔をした悪魔たちに。

 

 

 

 

あらたに傷つくのを恐れていては、過去のトラウマは克服できない。

シュンは行動でもって、自分が自分の人生の主人公であると證明。

 

 

 

 

本作は高校を舞台にした、ダークでサイコな物語。

モンスターペアレントに迎合する教頭からの悪影響で、

「飯田先生」は教育者としてのアイデンティティを見失う。

 

 

 

 

モンスターに合わせていたら、自分までモンスターになる。

でもそれが現実世界のルールだとしたら。

飯田先生のさわやかな笑顔のしたで邪悪な何かが膨らんでゆく。

 

 

 

 

平沢進や筋肉少女帯などを好む作者は、サブカル指向がつよそう。

また、中山敦支のアシスタントをつとめた時期があり、

尊敬する漫画家に中山をあげている。

人間の「業」を抉り取る様な表現は、師匠譲りだろう。

 

目を背けたくなる暗黒面を、ポップかつエレガントに提示。

漫画はこうであってほしい。






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