井上智徳『CANDY & CIGARETTES』
CANDY & CIGARETTES
作者:井上智徳
掲載誌:『ヤングマガジンサード』(講談社)2017年-
単行本:ヤンマガKC
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ヒロインは11歳の「涼風美晴」。
職業は小学生、そしてデトニクスをあやつる殺し屋。
65歳の「平賀雷蔵」は、月給100万円の怪しい職に就いた初日、
「掃除」をしにむかったホテルの部屋で、幼女が相棒だと知る。
言うなれば本作は和製『レオン』。
ただしヒロインの方が、殺しの経験が豊富。
雷蔵は元警官で、かつて要人警護任務に従事していた。
孫が難病を患っているため、どうしても大金が必要。
3年前に両親が殺害され、美晴は精神を病む。
組織は彼女の復讐心を利用し、殺人機械に仕立てあげた。
本作は、アニメ化もされたディストピアSF『COPPELION』につづく作品。
僕はコッペリオンをちゃんと読んでないが、
デビュー作が26巻も長続きするくらいだから、才能ゆたかな作家なのだろう。
本作もグッとくるセリフやカットがいくつもある。
ものすごく斬新な漫画でないとしても、たとえばキューブリック版『ロリータ』から、
ハート型サングラスなどの服装を引用したり、安っぽく見えない工夫をしている。
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火事屋『わたしと先生の幻獣診療録』
わたしと先生の幻獣診療録
作者:火事屋
掲載誌:『月刊コミックガーデン』(マッグガーデン)2016年-
単行本:ブレイドコミックス
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主人公である小柄な少女「ツィスカ」は、獣医師の見習い。
ただ世界観はファンタジーなので、
ドラゴンやサラマンダーなど幻獣を治療の対象とする。
ツィスカも微弱ながら魔法をつかえる。
獣医ものとして結構本格的で、手術シーンも緊迫感あり。
ツィスカは光の魔法でサポート。
前髪をピンで留めてるのが可愛い。
丁寧な作画のおかげで、読者は雰囲気にひたれる。
なにげない市場での売り込みがストーリーの伏線になってたり。
ツィスカが師事する「ニコ」とのやりとりがたのしい。
麻酔のため取り出した麻薬をみて、妙な心配をするツィスカ。
最高なのは4話。
謎の新薬を自分の体でためしたツィスカにあらわれる効果とは?
おかしくて、いじらしくて、たまらない。
愛くるしいヒロイン、ファンタジックな設定、命をすくう努力をえがくストーリー。
それらが結びついた各エピソードは鮮烈な感動をあたえる。
傷ついた幻獣を癒やすため、日夜がんばる少女。
応援せずにいられない。
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むく『ひなたすたでい。』
ひなたすたでい。
作者:むく
掲載誌:『コミック電撃だいおうじ』(KADOKAWA)2015年-
単行本:電撃コミックスNEXT
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「国枝ひなた」は28歳の家庭教師で、小学4年生の「みらい」に教えている。
生徒より背が低いため、指導するときは台に乗る。
理科の授業のあと、ホットココアかなにかを飲みつつ休憩。
カップから立ちのぼる湯気をみて、ならった内容を復習する。
教師と生徒の相性は抜群だ。
ふたりで文房具屋さんでお買い物。
女子なら筆記用具にこだわりたい。
作者は勉強とゆう堅苦しいテーマを、ほのぼの4コマにうまく落としこむ。
みらいのボーイッシュな服装もみどころ。
学校の友人である「なつめ」が遊びに来た。
勉強中だからと追い返すと、雨樋をつたって2階のベランダから侵入。
おなじく『だいおうじ』連載、ガヴドロのサターニャを髣髴させる。
プールへゆく11・12話では、小学生らしい水着姿を披露。
「ももか」のセーラーワンピース系の水着がかわいい。
ひなた先生は教え上手。
ここぞとゆうタイミングで頭をナデナデし、やる気を引き出す。
でも誰にでもやさしいので、みらいは嫉妬する。
大人ぶるロリと、ロリっぽい大人が、二人三脚でがんばる百合。
かわいいもの好きにとって至福の4コマだ。
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江島絵理『柚子森さん』2巻
柚子森さん
作者:江島絵理
掲載サイト:『やわらかスピリッツ』(小学館)2016年-
単行本:ビッグスピリッツコミックス
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小4の少女に本気で恋した女子高生をえがく百合漫画の第2巻は、
主人公の親友「栞」をからませて緊張感のあるはじまり。
みみかは敬語をつかうなど、7つ年下の柚子森さんに卑屈な態度をとる。
その美貌と、子供らしいプライドに対し、崇拝的な感情をいだく。
しかし栞の登場により、無愛想だった柚子森さんの言動が変化。
柚子森さんが露骨に嫉妬しはじめる。
みみかが他の女と仲よくする様子をみて気分を害し、
感情表現がとぼしいなりに、前から好意をもっていたのが判明。
1巻についての当ブログの記事から引用。
パンキッシュな疾走感と、
クールな構成力が共存する傑作『オルギア』とくらべたら、
ゆるゆるふわふわな『柚子森さん』は、江島にしては小品と言える。
さらっと一筆書きで描いた様な。
勿論、読者にそうおもわせる伎倆がすさまじいのだが。
我ながらイイ線いってるとおもった。
江島絵理は「闘争」をえがく作家だ。
その作品世界で少女らはクールに駆け引きしつつ、衝動的にヒートアップする。
間合いを測り、防禦し、回避し、相手の隙をみつけ、致命的な一撃をくわえる。
愛のために、身の破滅をおそれず闘う。
暗闇と血飛沫で黒々と塗りたくられた『少女決戦オルギア』とうってかわり、
『柚子森さん』の絵面はキラキラと華やか。
一方、たとえば下から4枚めの告白シーンにおいて顕著だが、
背景での写真の使い方や、ほかには各話のつなぎ方など、
あちこちで視覚的な工夫が凝らされてて感心しきり。
江島はもはや、現在の代表的作家に数えられるべきだろう。
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松本ひで吉『境界のミクリナ』2巻
境界のミクリナ
作者:松本ひで吉
掲載誌:『少年マガジンエッジ』(講談社)2015年-
単行本:マガジンエッジコミックス
人間界を支配しにきたロリ魔女っ娘のミクリナが、
いつの間にやら人間界に順応した日常をえがくコメディ。
きょうも火責め(サウナ)やら水責め(水風呂)やらで大騒ぎ。
夏祭り回では、物体移動の魔法を披露。
ラムネの瓶からビー玉を抜き出し、幼女を笑顔にする。
このネタは、カバー下の謎ポエムの伏線なのでお見逃しなく。
腐れ縁の魔女仲間「インゲル」が登場。
ミクリナとちがい魔力がたかく、大人の姿に華麗に変身したり。
ちなみに「フドーさん」と言うのは、「不動産」が人名だと勘違いし、
あらゆる土地を所有する権力者と思いこんでいる。
インゲルはミクリナが大好き。
特にぷにぷにのほっぺが。
1巻にくらべて百合成分を増量!
16話に出てくる「椎名リサ」。
偏差値80超えの天才で、メカを自在にあやつる。
つねにお菓子を食べてるなど、キャラ造形がキマっている。
こちらは日曜朝のアニメ『プリティ☆モモカ』のヒロイン。
デザインは普通だが、『さばげぶっ!』ファンにとってうれしいネーミングだ。
松本ひで吉は、短距離のスプリントをくりかえして主導権をにぎる、
サッカー選手にたとえるならギャレス・ベイルの様な作家だろう。
だいぶとっ散らかっている本作だが、1話ごとの中身は濃く、
笑いのあとで不意に泣かせるカウンターアタックが炸裂する。
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