兄弟で『聖剣伝説2』
ファミコン至上主義のボクが、めづらしくスーファミをしらべてたら、
いい感じの『聖剣伝説2』(スクウェア/1993年)のアマゾンレヴューをみつけた。
当時小学生の「NaOkI」氏は、兄が主人公ランディを操作するかたわら、
魔法をつかえるプリムやポポイで支援した。
ここで魔法使えとか、装備あれにしろとか、
アイテム取れやとか、死ぬなとか。
色々うるさい兄貴との2Pプレイだったが、本当に兄貴と二人で
冒険に出てるような錯覚に陥っていたせいか耳には痛くなかった。
アニキの文句も、ゲームならうるさくない。
むしろ本当に冒険するみたいでリアル。
あ、天使の聖杯無いから生き返せへんわ、ごめんな。とか
おう、よう倒したやんけとか、え今の技どうやってだしたん!?とか、
普段兄貴が言わないような優しい(?)言葉がゲーム中に出てきたりして。
関西辯の記憶に実感こもる。
ゲームしてる方が普段より、アニキのやさしさが表に。
ストーリーは当時あまり理解できなかったのだが、その物語の壮大さ、
小さなものが大きなものに立ち向かえるというすばらしさなど、
(今でもだが)馬鹿な自分でもなんとなくは分かっていたようで、
今思い出すと本当に懐かしく、胸が熱くなる。
ファンタジー世界の物語は小学生にむつかしいが、
現実を投影するドタバタの活躍で、自分なりに作品の本質をつかんだ。
いまのゲームがわすれた宝物がここに。
任天堂はまだマリオなどで同時プレイにこだわるが、目指すところはややちがう。
神話的な感動を、お茶の間で共有することに価値があつた。
聖剣2をWii Uにダウンロードし、20年まえの攻略本まで注文したけど、
さすがにもう兄弟であそぶ年でないのが、なんとなくさびしい。
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ナムコ史観
『ツインビー』(コナミ/1986年)
多根清史・阿部広樹・箭本進一によるレトロゲー本『超ファミコン』(太田出版)は、
当ブログに記事もかいたくらいでたのしく読んだが、勘所をはづしてた様だ。
アマゾンに投稿された「野比のび犬」のレヴューにおしえられた。
そう、ナムコがおおすぎる。
本書で取り上げられているナムコものはなんと11本と、
任天堂の12本に次ぐ多さだ。
ハドソン6本、コナミは5本、カプコン4本といった具合で、
当時のファミコンゲームメーカーの勢力図を思い返してみると、
ナムコの11本は、妙に突出していると言わざるを得ない。
たしかにナムコは偉大だが、ファミコンの雄ではない。
地味な『ゼビウス』より、ふたり同時プレイ可能な『ツインビー』の方が、
ファミコン少年の心をつかんでいた。
コナミがどれほど果敢に、ハードウェアの限界に挑戦したことか!
『ファミコンジャンプ 英雄列伝』(バンダイ/1989年)
だが、ツインビーもゴエモンもドラキュラも本書には出てこないし、
チャレンジャーもボンバーマンも迷宮組曲も、
ドラゴンボール神龍の謎もファミコンジャンプも出てこない。
すでにハドソンはわすれられた。
バンダイは「クソゲーメーカー」の烙印おされ、ネタあつかい。
あきらかに偏見。
文句いいつつ、みなバンダイのゲームが大好きだつた。
でなければ『ファミコンジャンプ』がミリオンヒットになるものか。
『ディーヴァ』(東芝EMI/1987年)
野比のび犬は、執筆者の世代に先入観の要因をみる。
本書を執筆している3人のライターの生まれは
1967年(多根)、1970年(阿部・箭本)と、
ファミコンブーム当時すでに「ファミコン少年」から
「ファミコン青年」に差し掛かっている年齢である。
勿論、多根らは真剣にファミコンであそんだろう。
だが革命に直接まきこまれてない。
ゆえにプレミアソフト『サマーカーニバル'92 烈火』をとりあげるし、
オリジナル作より、アーケードやPCからの移植作を優先する。
なによりナムコ贔屓をおさえられない。
ファミリーコンピュータの歴史がかたられるのは、これからだ。
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多根清史・阿部広樹・箭本進一『超ファミコン』
『メタルスレイダーグローリー』(HAL研究所/1991年)
超ファミコン
著者:多根清史 阿部広樹 箭本進一
発行:太田出版 2013年
日本発売のファミコンソフト1053タイトルから100作えらび、それぞれの本質をじつくりかたる書物。
類書あまただが、本書は執筆者が三名と少数精鋭で、
作品ごとの文量が2-5ページと多めなのが、決定版の趣きをかもす。
『19 ヌイーゼン』(ソフトプロ)や『ダークロード』(データイースト)などシブい選考の一方、
個人的に『不如帰』(アイレム)や『ラディア戦記 黎明篇』(テクモ)がもれてくやしいが、
それは本書の瑕疵でない。
ファミコンにはすべてがあり、ファミコンをかたるのはつねに主観的な営為だから。
『アーバンチャンピオン』(任天堂/1984年)
ゲーム史をかんがえるときは、格闘ゲームをみるとよい。
「なぐりあい」という単純さに、先鋭的な構想がひそむ。
たとえば『アーバンチャンピオン』の「画面外へふきとばしたら勝ち」のシステムは、
15年後に桜井政博が『大乱闘スマッシュブラザーズ』で踏襲した。
逆転につながる不確定要素をこのむ、任天堂のゲームデザインの粋といえる。
『飛龍の拳スペシャル ファイティングウォーズ』(カルチャーブレーン/1991年)
『飛龍の拳』の「心眼システム」は、本シリーズをファミコンの格ゲーの最高峰にした。
自分または敵の体にしめされる、隙をあらわすマーカーをめぐり、くりひろげられる攻防。
ガードなくして本格的な格闘はなりたたないが、
防御がつよすぎると消極的な方が有利となる難題を、ランダム性により解決。
1991年、アーケードの『ストリートファイターII』(カプコン)は、
「打撃と投げとガードの三すくみ」という別解答をみちびく。
ガードは投げによわいから、守備一辺倒では勝てない。
これが最適解だつた。
ストIIの巨大キャラのダイナミックな挙動は、ファミコンの描画性能ではきびしい。
冒頭で「ファミコンにはすべてがある」とのべたが、
演算能力やインターフェイスにしばられる側面があるのも事実。
『ジョイメカファイト』(任天堂/1993年)
……と、おもいきや。
任天堂はファミコンで、「三すくみ」の格ゲーをつくつた。
六つのパーツがフワフワただようロボットを戦わせて。
うごくと人型にみえるし、むしろ当り判定がアツい。
ファミコンにはすべてがある。
『バブルボブル』(タイトー/1987年)
ゲーム界はファミコン時代から、マニアックにおちいりがちな傾向をもてあました。
「MTJ」こと三辻富貴朗は風潮にあらがい、カップルがゲーセンであそべる『バブルボブル』をつくる。
泡に敵をとじこめるのがカワイイし、アイテムもフルーツやお菓子やカクテルや宝石で、
中身はやりこみ系のアクションなのに、女子からも愛された。
『ディーヴァ』(東芝EMI/1987年)
PC六機種とファミコンで、世界観を共有するゲームをだす野心的な構想、それが『ディーヴァ』だ。
自分の機種でそだてた艦隊をパスワード化し、
友だちの家のハードに入力すれば、機種をこえた共闘が可能。
だがこの壮大な作戦は成功しなかつた。
ゲーム機はいまだに、「つながる」より「囲いこむ」ことに重きをおき、
くだらないハード間競争で体力ゲージを浪費している。
その最初の蹉跌もファミコンにあつた。
![]() | 超ファミコン (2013/06/20) 多根清史 阿部広樹 箭本進一 |
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奇想天外な日常
戦乙女と屋根の下
作者:玉岡かがり
発行:一迅社 2012-13年
単行本:4コマKINGSぱれっとコミックス
[1巻の記事はこちら]
居候中のヴァルキリーさんが猫をひろつてきた。
ツノはえてるけど。
北欧神話の住人が大挙おしよせ、家計はヴァルハラ、もとい火の車。
でもこのコはティッシュたべるから大丈夫……ホントに猫?
正体は魔法ヤギの「タングリスニ」。
こうみえ戦車をひいてとぶ力もち。
お約束の水着回ではクラーケン襲来。
ヴァルキリーにたおされ、ゆるキャラとして町おこしに利用される。
巨人族の刺客にねらわれたり。
ぺたん娘なシンモラたんとか、チョイ役なのに凝つた造形。
神話をたくみに萌え四コマへとけこます。
道化神ロキはバニーコスで降臨!
ヴァルキリーに変装して巨人族を挑発、開戦の口火をきる。
「最終戦争ラグナロクのはじまりだよ~」
ロキがラグナロクを使嗾するのは、30年まえ人間界でファミコンであそんでたら、
よいところでリセットボタンをおされたことへの復讐。
神々はゲーム脳。
百合の絆で、世界は破滅をまぬがれた。
日常と神話が地続きのおもしろさは、
アニメ化された同作者の『まんがーる』より格段に上とおもうが、2巻で完結。
終末の日まで、わすれがたい名作だ。
![]() | 戦乙女と屋根の下 (2) (4コマKINGSぱれっとコミックス) (2013/06/22) 玉岡かがり |
スライムさんと勇者研究部
作者:我孫子祐
掲載誌:『別冊少年マガジン』(講談社)2012年-
単行本:講談社コミックス
[1巻の記事はこちら]
ゴーレムさんにキメラさんにスライムさん!
こちらはモンスター少女の、ゆるゆる中学生活をえがく漫画。
転校生は、モンスター界のアイドル「木龍栞」。
この名づけ……どうも作者はベレーザに関心あるらしい?
ドラゴンさんの勇姿!
いきおいある見開き構図が持ち味の作家だ。
萌えるべきかわからないスケルトンさんなど、ギャグの切れ味もあなどれないが、
発売日に購入して一か月半、当ブログでとりあげずにいたのは、失速を感じたから。
作者の力量でなく、題材に問題ある。
「日常」はまつたりした停滞を、「ファンタジー」はヒロイックな進展をもとめる。
神族と巨人族みたくおりあわない。
高等部にまぎれこんだスライムさんに声をかけた、生徒会副会長さん。
「賢者」の末裔で、ひそかにモンスター殲滅をくわだてる。
中庭にひろがるマリーゴールドを世話するのも彼女。
花言葉は「絶望」。
みなれた景色に、ぱくりと奈落の淵がひらいたときの戦慄。
だれもが身におぼえある非日常。
要注目の作品にちがいない。
![]() | スライムさんと勇者研究部(2) (2013/05/09) 我孫子祐 |
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マッハライダー 音速の孤独
画像クリックで、ユーチューブへ飛びます
深田洋介・編『ファミコンの思い出』(ナナロク社)より、今度は『マッハライダー』(任天堂)の話をひろう。
投稿者は、音楽をききながら長距離をはしる、タイムアタックモードがすきだつた。
けどこのBGM、長く走ってるとCパート?になるんですよね。
テンポは維持しつつも微妙に旋律が不安定になって、急に淋しさに襲われる感じ。
たしか暴徒の車も出てこなくなって、テンションが一気に醒める感じです。
(略)
あの爽快感の中の一瞬の孤独は、
ライダーが感じているものと同じだったのかもしれません。
詩的な文章だ。
ファミコンをかたると、その言葉は一篇の文学作品と化す。
![]() | ファミコンの思い出 (2012/05/29) 深田 洋介 商品詳細を見る |
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