くみちょう『鉄拳少女うらみちゃん』

 

 

鉄拳少女うらみちゃん

 

作者:くみちょう

掲載誌:『ヤングエース』(KADOKAWA)2015年-

単行本:角川コミックス・エース

ためし読み/『B.B.GIRLS』1巻/2巻/『愛羅武勇より愛してる』

 

 

 

舞台は瀬戸内海のちいさな島。

主人公「三浦みみ」が見下ろす海岸には、巨大怪獣の死骸が。

この島では、3年にわたりエイリアンとの戦いが続いていた。

 

のどかなのに奇怪な風景描写が冴えている。

あとがきによると「第二の故郷」淡路島をモデルにしたとか。

 

 

 

 

エイリアンを迎え撃つのは、コスモナイトの「コズミッキュ」。

世界中の注目をあつめる美少女ヒーローだが、

みみが直接話してみたら、その性格の悪さに幻滅する。

ただの目立ちたがり屋で、島民のことなどまったく考えてない。

 

 

 

 

みみの片思いの相手は、コズミッキュに憧れている。

そんな嫉妬心も引き金になって、ついにみみはキレた。

地元企業が開発したマシンで空を飛び、

油断していたコズミッキュを一撃でノックアウト。

 

 

 

 

本作は魔法少女ブームを逆手に取った、コメディ調のバトルもの。

大活躍の翌朝の新聞一面に、みみのパンチラ写真が。

よりによって一番ダサいパンツを穿いてるときに撮られた。

 

なにかにつけてギャグをはさみこみ、

押したり引いたりしながら、話を転がすのがくみちょう節。

 

 

 

 

小須美島の住民は国から手当を支給されてるため、島から避難しない。

ぬるま湯に浸かりながら、戦争を許容する。

ガルパン的でもあるし、ポスト3.11的でもある。

 

一方で、コズミッキュを支援する大企業に対抗し、

独自の技術でエイリアンとコズミッキュに挑戦する者もいる。

つまりグローバル経済についての風刺でもある。

 

正直、テーマがちょっと複雑すぎる印象がなくもない。

 

 

 

 

しかし、くみちょう先生は読者を裏切らない。

「うらみちゃん」を名乗り島の救世主として奮闘するかたわら、

片思いの相手の前でみせる純情っぷりとか、いじらしい。

 

 

 

 

ルックスがよくて金があるからって調子に乗ってるKY女に、

しょぼいマシンで、だれも望んでない無謀なケンカをしかける。

 

かわいくて、笑えて、しみじみさせて、でもやっぱり燃える。

いま熱血漫画を描かせたら、くみちょう先生に優る作家はいないはず。






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くみちょう『愛羅武勇より愛してる』

 

 

愛羅武勇より愛してる

 

作者:くみちょう

発行:一迅社 2015年

レーベル:百合姫コミックス

[Kindle版はこちら

 

 

 

関西辯ヤンキーが、しとやかな百合姫コミックスに殴りこみ!

 

10年代最高のスポ根漫画といまだ僕はおもう、『B.B.GIRLS』1巻/2巻の作者が、

「あまり恋愛を描かないから恥づかしい」と言いつつ仕上げた一冊。

 

新書館のライバル誌『ひらり、』休刊を捨て置けず、

秀作をサルベージする一迅社の、老舗らしからぬ節操なさもステキ。

 

 

 

 

くみちょう先生は少年漫画っぽい絵柄。

女の子が花を背負って登場することもない。

どちらかとゆうと汗がにあう。

 

ギクシャクした不器用な百合もまたよし。

 

 

 

 

ヤンキー「かずみ」が、優等生「理沙」の自宅訪問。

犬に相好を崩す姿にときめく。

 

 

 

 

かずみの追試のため図書館で勉強会。

寝顔があどけなくキレイで、おもわず写メを撮る。

 

 

 

 

山場はドキドキの二人旅行。

宿で男女のカップルとすれちがい、変に意識し、なんか気まづい。

 

 

 

 

本作には、百合姫的なナルシシズムや倒錯性がない。

まっすぐで熱い。

 

百合の宇宙は、どんな作風もやさしくつつむ。

こぼれる涙、あからむ頬、からみあう心があれば、それでいい。

 

 

 

 

とはいえ夏用のセーラー服に着替えたときのさわやかさは、

くみちょう先生ならではで、突出した個性がキラキラかがやいている。




愛羅武勇より愛してる (IDコミックス 百合姫コミックス)愛羅武勇より愛してる (IDコミックス 百合姫コミックス)
(2015/04/18)
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くみちょう『B.B.GIRLS』2巻 総体予選・夙山戦

 

 

B.B.GIRLS

 

作者:くみちょう

発行:マッグガーデン 2012-13年

レーベル:ブレイドコミックス

[1巻の記事はこちら

 

 

 

両チームの面構えからして期待させる、女子バスケ漫画の第2巻。

顔見せはおわり、真剣勝負がはじまつた。

われらが「清南高」の対するは、県四強にかぞえられる「夙山女学院」。

 

 

 

 

頭数をそろえるのがやつとの清南は圧倒的不利だが、

試合前に「お遊びバスケ」と侮辱され、士気はたかい。

 

 

 

 

夙山の「まこち」は天才シューター。

試合開始直後から、マークあるなしにかかわらず、3ポイントをスパスパきめる。

 

 

 

 

リバウンドは175cmのセンター「太田さん」にひろわれる。

積極的に3Pをねらえるのは、制空権をにぎるから。

気合いでは埋められぬ戦力差だ。

 

 

 

 

40点ちかくリードされるが、控えの「三島勇美」は闘志みなぎり、

監督に鼻息あらく、無言で起用をうながす。

でもバスケ歴(ていうか運動歴)一か月半では、強豪との公式戦にだせない。

 

 

 

 

単純な「あかね先輩」はすつかり諦めムード。

1年のエリと藤上さんは、「個人では負けてない」と言い張る。

個性ゆたかな清南女バス部、応援せずにいられない。

 

 

 

 

打つ手のなくなつた第3クォーター、ついに勇美が公式戦デビュー。

143cmのもやしつ子、どちらに攻めるかもわからない初心者だが、

すつぽんディフェンスでみぐるしく喰らいつく。

 

 

 

 

女一匹、三島勇美吠える!

 

そうやってうつむいたままコートに立っている事が一番格好悪い

それだけは私にも分かります!

みっともない上等! みっともない試合全力でやりましょうよ!!

 

太眉をつりあげ叫ぶ言葉は、本当に熱い。

 

 

 

 

しつこいマークはまこちのミスをさそい、エリがカウンターをきめる。

流れをかえるなら、いましかない。

 

 

 

 

即座にスイッチはいり、オールコートディフェンスをしかける清南。

集団競技の戦術と心理のおもしろさを本格的にえがく。

カワイイだけの漫画ぢやない。

 

 

 

 

勇美のうつくしい3Pシュートを最後に、物語は幕をとじる。

名残惜しい。

 

 

 

 

単行本帯の折り返しで、続篇の可能性をにおわせるが。

やさしい「かすみ先輩」が負傷中で出番なかつたり、作者も描きたりないだろう。

 

スポ根漫画は、講談社など大手出版社の独占商品とみなされがち。

熱血で、心ゆすぶり、わらえて、しかも萌える傑作が、

『コミックブレイド』というマイナー誌(失礼)で連載されてると知るものはすくなかつた。

無力感をおぼえる。

 

それでもくみちょう先生と、清南高のみんなを、ボクは応援しつづける!




B.B.GIRLS(2) (ブレイドコミックス)B.B.GIRLS(2) (ブレイドコミックス)
(2013/07/10)
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くみちょう『B.B.GIRLS』

 

 

B.B.GIRLS

 

作者:くみちょう

掲載誌:『月刊コミックブレイド』(マッグガーデン)2012年~

単行本:ブレイドコミックス

 

 

 

 

県立清宮寺南高校の女子バスケ部に、入部希望者があらわれる。

 

「三島勇美(いさみ)」、身長143センチ。

バスケどころか、運動経験なし。

趣味は、切手収集とスポ根漫画。

 

 

 

 

病弱だつた幼いころ、入院先でよんだバスケ漫画に感化された。

 

いうまでもなくこの競技は、高校からはじめるにはきびしい。

総合的な体力が必要だし、女子バスケ部の登録数は全国で約四千、

いきなり苛酷な競争にさらされる。

 

 

 

 

勇美はスポ根漫画史上、最弱の主人公かも。

ヘロヘロのもやしつ子で、シュートはリングにとどかない。

 

作者はバスケ経験があり、描写は容赦ない。

 

 

 

 

スポーツをやりたいというと、「あんたには無理」と止められてきた人生。

それをかえたくて高校デビュー。

こんなに応援したくなる主人公は記憶にない。

 

女子の部活をえがく漫画といえば、軽音楽部とか帰宅部(笑)とか、

マイナー種目が主流なのに、あえて風潮にさからう意気を買いたい。

 

 

 

 

 

 

 

登場人物はみなステキだが、おなじく一年の「藤上姫子」さんをとりあげる。

おしとやかな、委員長タイプの美少女。

 

 

 

 

実は藤上さんは経験者だつた。

バスケを捨てたのは、中学時代におきた悲劇がきつかけ。

 

「安西先生、バスケがしたいです」的な王道展開!?

 

 

 

 

……とおもいきや悲劇とは、初恋相手に告つたら、「女子として見れない」とフラれたこと。

いまだに思いだすたび泣けるトラウマに。

当時は男みたいな容姿で、猪突猛進のプレースタイルからついた異名は「ワイルドボア(笑)」。

 

がんばればがんばるほど、反比例して女子力低下する毎日に嫌気がさし、

必死でオシャレとダイエットにはげみ、勇美とは逆方向の高校デビューをはたした。

乙女の王道は、ある意味こつちか。

 

オナチューの「谷本先輩」との、仲が良いのか悪いのか微妙なやりとりがわらえる。

 

 

 

 

初デートをドタキャンし、ひらひらのワンピを着たまま練習試合の体育館へ直行。

窮地にある清南バスケ部をすくう。

 

 

 

 

ポニーテールの凛々しさ!

 

他競技の女子スポーツをおつてるボクは、ある事実をしつている。

「女子力」とか関係なく、たたかう女はこの上なくうつくしいと。

 

 

 

 

ワイルドボア(笑)とジャイアン谷本、ひさびさの揃い踏み。

華麗にノールックパスをきめる。

普段はいがみあうくせ、コートにたてば息ぴつたりなふたりに胸ときめく。

 

 

 

 

 

カヴァー下のおまけ

 

 

男子より面倒くさい、女子の部活動の上下関係も、おもしろおかしく描かれる。

 

イマドキなJKの日常と、本気のバスケと、女子のホンネをつめこんだ、スポ根漫画の最新ヴァージョンだ!






B.B.GIRLS 1 (BLADE COMICS)B.B.GIRLS 1 (BLADE COMICS)
(2012/12/10)
くみちょう

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苑田 謙

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