フクハラマサヤ『ウィーンで歌ってみて』

 

 

ウィーンで歌ってみて

 

作者:フクハラマサヤ

掲載サイト:『ニコニコ静画 きららベース』(ドワンゴ)2016年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

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金髪の少女の名は、16歳の「リーナ・アイヒホルン」。

声楽家の卵で、ウィーン国立歌劇場に立つ日を夢見て練習にはげんでいる。

 

 

 

 

王宮庭園のベンチで休んでたら、モーツアルト像の足許で、

パソコンでの作曲に没頭する黒髪の少女をみつけた。

日本からの留学生らしい。

 

 

 

 

彼女の名は「奏手歌音(かなで かのん)」。

おもにボカロPとして活躍している。

ドイツ滞在経験があり、ドイツ語も堪能だ。

リーナは伝統派、歌音は現代派。

ふたつの対照的な個性が、音楽の都で交錯する。

 

セーラー服っぽい服装のかわいさは、

水兵さんの漫画『水瀬まりんの航海日誌』の作者ならでは。

 

 

 

 

あいかわらず作画は充実しており、狭い4コマのフォーマットから解放され、

特に風景描写で彩管をふるっている。

ウィーンのうつくしい町並みは、そよ風さえメロディを奏でそう。

 

 

 

 

ウィーンの魅力は音楽だけじゃない。

名店のザッハートルテを前にしたら、女の子はテンションあがる。

舞台はヨーロッパでも、いつものきらら的日常。

 

 

 

 

眼鏡でショートカットの「ソフィー」は、SNSで知り合った歌音の友人。

日本のオタク文化に精通しており、リーナをコスプレでステージへあがらせる。

 

ウィーンやクラシック音楽など題材は高尚だが、

それらを消化した上で、独自の世界観を提示している。

 

 

 

 

フクハラマサヤの作品に悪人は出てこない。

主人公があからさまな逆境に置かれることもない。

大仕掛けの題材を好むわりに、ちょっと淡白な作風で、

それが美点ではあるが、インパクト不足の原因でもある。

 

でもコマとコマのあいだに耳をすませば、百合とゆうオペラを聞き取れるだろう。





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マウンテンプクイチ『球詠』

 

 

球詠

 

作者:マウンテンプクイチ

掲載誌:『まんがタイムきららフォワード』(芳文社)2016年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

ためし読み/同作者の『ぷくゆり』の記事

 

 

 

女子高生ふたりが、夜の川岸でキャッチボール。

硬球を素手で。

幼なじみが高校で偶然再会し、また野球をはじめた。

 

ちなみに水辺の風景のうつくしさは、作者の特長

 

 

 

 

髪があかるくて長い方が、ピッチャーの「詠深(よみ)」。

大きく曲がって落ちる、特異な変化球を投げる。

 

 

 

 

ヨミが中学で無名だったのは、捕球できるキャッチャーがいなかったから。

それどころか「魔球」へのこだわりを嫌われ、部内で孤立していた。

 

思春期女子らしい内面の陰影の描写は、

百合姫コミックスから単行本2冊出している作者ならでは。

 

 

 

 

中学時代に全国経験もある「珠姫」は、最適の女房役となる。

おさないころの様に、ヨミの自由奔放な投球をうけとめる。

キャプテンの「怜」をキリキリ舞いさせた。

 

 

 

 

仲間をあつめて野球部を再建し、部内の対決で実力をみとめさせ、

9人そろってすぐ強豪校との練習試合にいどむ、スポ根定番の流れ。

ヨミと珠姫のバッテリーが中心の物語だが、

野手の守備での貢献など「チームプレー」を重視してえがく。

 

 

 

 

作中に「4000校あまりの頂点をめざす」とあるが、

実際の全国高等学校女子硬式野球連盟の加盟校は23しかない。

つまり本作は、「女子野球」を題材とする漫画ではなく、

男子の高校野球を性別だけ改変した「ファンタジー」だ。

 

本格的な野球の描写と、可憐な少女の取り合わせはやたら新鮮。

たとえばお尻へのデッドボールのエロス。

 

 

 

 

言うまでもなく野球漫画は一大ジャンルを形成している。

「キメのポーズ」などのストックが豊富で、

登場人物をカッコよくみせる手法にこまらない。

マウンテンプクイチはその伝統を、百合と融合させるのに成功した。

 

 

 

 

手塚治虫が『マァチャンの日記帳』でデビューしてから70年。

『球詠』は、漫画とゆう表現形式のひとつの完成形と断言できる。





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らぐほのえりか『すくりぞ!』

 

 

すくりぞ!

 

作者:らぐほのえりか

掲載誌:『まんがタイムきららMAX』(芳文社)2015年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

[ためし読みはこちら

 

 

 

とある女子高の宿直室をのぞいたら、パンツ丸出しの女の子がいた。

随分とくつろいでいる。

 

 

 

 

寝るのが大好きな「寝子」、その親友で意識高い系の「蒼」、

宿直室を不法占拠していた「にゅう」、理事長の孫である「リン」の4人は、

その場の勢いで「スクールリゾート部」を結成。

学校を快適なホテルにかえるため、活動をはじめる。

 

「部活モノにすれば大体いける」(はまじあき『きらりブックス迷走中!』)とゆう、

きららメソッドを確信犯的に踏襲している作品だ。

 

 

 

 

4人は、それなりに真剣にホテルのいろはを学ぶ。

たとえばバスローブの下は何もつけないとか。

身も心も裸になり、オトナへの階段をのぼる。

 

 

 

 

ためしにホテルらしいサービスを提供してみる。

予算の都合で、ディナーは購買のパン(半額)だけど。

 

 

 

 

パンばかりでは起業できそうにないので、カレーを自作。

試食したら、集団食中毒みたいな大惨事に。

コロコロした絵柄だが、ギャグは破壊力がある。

 

 

 

 

らぐほのえりかは、『けいおん!』の二次創作などで有名らしい。

ひとりだけ日焼けしすぎた蒼などに、あずにゃんテイストが滲み出る。

 

 

 

 

「『すくりぞ!』の特色を1パラグラフでまとめろ」と求められると難しいが、

この平和なマンネリズムもふくめ、きららの優等生であるのは確か。





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ひみつ『担当編集ボツ子さん』

 

 

担当編集ボツ子さん

 

作者:ひみつ

掲載誌:『まんがタイムきらら』(芳文社)2015年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

ためし読み/同作者の『ぺたがーる』の記事

 

 

 

うだつの上がらない漫画家「田中一人」に、あらたな担当編集がついた。

新人の女性編集者である「刺子愛(さしこ あい)」。

SMの女王様みたいな恰好で度肝を抜く。

 

 

 

 

打ち合わせのときの言動も女王様風で、容赦なく責める。

作品や技術だけでなく、人間性まで否定。

仕事とゆうより趣味でやってそうでこわい。

 

 

 

 

一方で、いきなり嫉妬心を露わにしたり。

なにを考えてるのか、ますますわからない。

 

 

 

 

プライベートの服装はフツウで、物腰もおしとやか。

作家に「ムチを入れる」ため、仕事ではキャラをつくってるらしい。

 

刺子さんが編集業に入れこむ様になった、幼少時のきっかけも語られる。

おっかなくて憎たらしいけど、かわいくってしかたない。

 

 

 

 

こちらはライバル出版社の編集者「犬井夢子」。

なぜか田中の読み切りを気に入り、コンタクトしてきた。

 

中学生にしか見えない外見、だぶだぶのスーツ。

髪型を工夫してシルエットで識別しやすくするなど、キャラデザがたくみ。

 

 

 

 

田中の妹・刺子・犬井の3人での女子トークは、萌え4コマの楽しさがつまってる。

『ぺたがーる』で、「おっぱいの大きさ」とゆうあまり上品でないテーマを、

「百合」の世界観に落とし込んだ作者の技が冴えている。

 

 

 

 

4話からは縦位置の扉絵を多用するなど、演出面でアイデア豊富。

ギャグもヴィジュアルもセンス抜群だ。

 

版元を変えても安定のパフォーマンス。

本作でひみつは、自身が萌え4コマのマエストロであると證明した。





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タグ: 萌え4コマ  きらら系コミック 

篤見唯子『スロウスタート』3巻

 

 

スロウスタート

 

作者:篤見唯子

掲載誌:『まんがタイムきらら』(芳文社)2013年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

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『スロウスタート』は扉絵でひっぱる漫画だ。

その牽引力は、パグ犬なみでさほど強くないが。

 

 

 

 

繊細で洗練された描線。

ソリッドな構図のなかで息づく女子同士の関係性。

ハッとさせられる。

 

 

 

 

本篇は扉絵以上にスタティック。

事件はおきない。

われわれが経験する日常より平穏なほど。

「日常系」のコンセプトをおしすすめた結果、むしろ特異な世界観となっている。

 

 

 

 

28話は4人で水着を買いに行く。

栄依子はちょっと大胆なビキニ。

事前に「水着を試着するときはパンツは脱がない」と話しており、

きらら定番のネタに重層的な味わいが加わる。

 

 

 

 

花名はかわいい系、たまては何とも言えない系。

ファッションの語彙の豊富さが、本作の中心的なメリットだ。

 

 

 

 

『スロウスタート』が、超自然的な時間感覚を呼びさますのは、

主人公の花名が極度に引っこみ思案で、ストーリーが進展しないから。

でもごくまれに、おっかなびっくり足を踏み出し、読者の心をつかむ。

月並な会話のなかの「え」の一言が、あざやかな情景となってせまる。

 

 

 

 

3巻の白眉は32-33話。

自分がつくったネックレスを先生がつけてくれて嬉しいとゆう、

ただそれだけの話を、わざわざ2話にわたって引っぱる。

 

一コマごとに背景を変えるのは本作の特徴だが、

このページは処理が精緻の極みに達していて、ため息がでる。

イレギュラーな「9コマめ」の余韻は、ちょっとした奇跡だ。





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