タツノコッソ『社畜さんと家出少女』

 

 

社畜さんと家出少女

 

作者:タツノコッソ

掲載誌:『まんがタイムきららMAX』(芳文社)2018年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

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「人の世の住みにくさ」がテーマの4コマである。

辛い残業を終えた主人公「ナル」は家路を急ぐが、

満員電車の周囲からはカシュッカシュッと、

ストロング系チューハイの缶を開ける音が聞こえる。

 

みんな疲れているのだ。

 

 

 

 

ナルが早く帰りたかったのは、自宅マンションで美少女が待ってるから。

学校制服にエプロン姿の「ユキ」は、

家出してナルのところに身を寄せて2週間になる。

 

まるで初々しい新婚家庭みたいだ。

 

 

 

 

ふたりは、今日あった出来事についてとりとめもなく話したり、

一緒にキッチンでおつまみを作ったり、楽しい夜をすごすが、

それでもナルはストロングなチューハイを我慢できなかった。

社畜としての生活は、飲まなきゃやってられない。

 

以上が第1話の流れで、状況説明の巧みさが伝わったとおもう。

 

 

 

 

居候の身なので甲斐甲斐しく家事をこなすユキは、しっかり者。

オフではだらしないナルに小言をいうこともしばしば。

でも親とうまくいってない孤独感から、ときどき甘えてくる。

 

そんな家出少女のツンデレっぷりを愛でる作品でもある。

 

 

 

 

第4話はデート回。

「好きな相手の見慣れない服装にドキドキ」というお約束の展開は、

同居してる関係では難しいが、ひねりを利かせて印象的なシーンに。

 

 

 

 

ふたりの出会いや、ユキが抱える悩みについては、具体的に描かれない。

おそらくナルは、大学時代に家庭教師をやっており、

精神的に追い詰められた教え子のユキに同情し、

就職したら彼女のための居場所をつくると約束したらしい。

 

作風は『ゆゆ式』の影響が強いが、ざくりと心を抉る情緒性は、

それとは別のストロングなエモーションを提供している。





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マウンテンプクイチ『球詠』6巻

 

 

球詠

 

作者:マウンテンプクイチ

掲載誌:『まんがタイムきららフォワード』(芳文社)2016年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

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本巻で読者は「覚醒」を目撃する。

主人公ヨミのピッチングだけでなく、作者の表現力においても。

 

たとえば、高速で曲がって落ちる変化球の軌道が、

「くっ」という擬態語と重ね合わせられる。

 

 

 

 

このページでは、軌道が枠線の役割を果たしている。

右下のコマで描かれる軌道は、補助的に読者の視線を誘導する。

導くというより、首根っこをつかんで揺さぶるみたいに。

 

 

 

 

しかし、ヨミのピッチングがすごいってだけで話は終わらない。

捕球に絶対の自信をもつ珠姫が、一度後逸して振り逃げを許す。

それでも続く打席では、体で止めて1回4連続三振を成立させる。

 

「振り逃げ阻止」なんて地味なテーマが、本作ではクライマックスとなる。

 

 

 

 

最終回、先発の吉川に代わりエース中田が登板。

威力のある速球に新越ナインはビビる。

ただひとり希だけは、退屈そうに投球練習を眺めていたが。

 

中田の球筋はビデオで見て覚えてるし、前の打席で凡退したとき、

グラウンダー狙いの打撃哲学を捨てると決意した。

それが奏功するかは時の運なわけで、いまさら悩んでも仕方ない。

 

そんな希の超然たる天才ぶりをみごと表現している。

 

 

 

 

名勝負と呼ぶにふさわしい梁幽館戦は、完全燃焼感がある。

長期連載となり、来年春にはアニメも始まる本作だが、

これほど成功すると作者は想定してなかったろう。

完結時に振り返り、4-6巻がピークだったとしても僕は驚かない。

 

作者も梁幽館ナインに思い入れがあるらしく、単行本おまけイラストの、

白井と高代の二遊間コンビの仲睦まじい様子から、余熱が伝わってくる。





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なじみ『しょうこセンセイ!』

 

 

しょうこセンセイ!

 

作者:なじみ

掲載誌:『まんがタイムきらら』(芳文社)2018年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

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目覚ましと同時にガバッと起床したのは「吉田翔子」。

身長120センチで、年齢は8歳だが、やる気が半端ない。

 

 

 

 

実は、翔子の職業は高校教師だった。

天才なので特例として認められたらしい。

真摯に生徒とむきあう姿勢は、同僚からも評価されている。

 

 

 

 

翔子は子供なのでよく転ぶ。

オリエンテーションの時間に膝を擦りむいたときは、

保健室で生徒に手当てしてもらった。

ジタバタする姿がかわいい。

 

 

 

 

普段から小さい翔子だが、ときおりデフォルメキャラに変貌する。

これが反則的なかわいさ。

得意の工作をするときとか。

 

 

 

 

頑張り屋さんでも、甘えたいときはある。

母の海外赴任がきまったときは、感情を抑えきれなかった。

 

 

 

 

本作が初連載で初単行本となる作者なじみは、

主人公にかわいさを詰め込んだと、あとがきで語っている。

たしかに詰め込みすぎてパンク寸前な気もしなくはない。

 

その一方で、脇役はみな普通にかわいい。

翔子の歓迎会をひらいた、居酒屋での大人女子トークは、

きらら作品でいうと『スロウスタート』に匹敵するたのしさ。





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マウンテンプクイチ『球詠』5巻

 

 

球詠

 

作者:マウンテンプクイチ

掲載誌:『まんがタイムきららフォワード』(芳文社)2016年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

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モノローグの形で珠姫が野球観をかたる第25話は、非常に重要な回。

かつてバッテリーをくんだ和美が堅実なチーム戦術にとりこまれ、

打たせて取るオトナな投手に変貌したことを残念がる。

そして、現在のパートナーであるヨミへの愛着を再確認する。

 

あまり感情をあらわにしないシャイな性格の珠姫だが、

いやだからこそか、気迫で敵をねじふせるタイプを好むのだった。

 

 

 

 

良くも悪くも、アマチュアリズムが新越谷のフィロソフィだ。

データにもとづく戦術を採用するのは当然として、

いざというときは感情を爆発させ、おのれの力を最大限にひきだす。

 

団体競技ゆえキャラクター数が多すぎるのが欠点かもしれないが、

しかしだれがなんと言おうと、『球詠』はタマとヨミの物語だ。

 

 

 

 

大ピンチの場面でヨミは、未完成の秘密兵器を初披露した。

その名は「強直球」。

実態はなんの変哲もない単なるストレート。

新魔球がストレートって、ほかの野球漫画にあるだろうか?

 

女子が男子水準のプレーをしているというウソ以外、

技術的に戦術的にリアリズムを徹底するのが本作の特徴。

その制約のなかで、作者は知恵をしぼって話をもりあげる。

 

 

 

 

梁幽館戦でもっとも苦悩するのが、名参謀である芳乃。

こちらは部員9名、そのうち7名が1年生、しかも2名が初心者だ。

対する梁幽館は全国レベルの強豪。

采配はこの試合でも冴えてるが、地力の差でどうしても劣勢に。

そのたび自分の采配ミスだと気に病み、押し潰されそうになる。

藤井先生にまで客席から罵詈雑言が飛ぶから、つらい。

 

この重圧に耐えつづけるのが、芳乃のミッションなのだろう。

新越谷は彼女の頭脳がつくりあげたチームだ。

もし逃げ出したら、空中分解してしまう。

 

 

 

 

地力で劣るなら、地力を嵩上げすればいい。

新越谷ナインは試合のなかで成長してゆく。

このタッチアップは、息吹がはじめて見せた自主的判断。

芳乃と一緒にたくさん観戦してるから、戦術眼がないわけない。

 

それにしても走攻守、さらにはピッチングまでソツなくこなす、

マルチロールの息吹はすでになくてはならない存在だ。

 

 

 

 

白菊は、冷静に相手の守備位置をみてセーフティバント。

巨大な扇風機みたくブンブン振り回す印象のスラッガーだが、

もとは剣道日本一、むしろ駆け引きは得意中の得意。

 

 

 

 

新越谷が誇る天才バッター、中村希。

彼女はこの試合でくるしむ。

きびしく自問自答し、幼少期に植えこまれた深層心理までさかのぼり、

絶対の自信をもつ己の打撃哲学を捨てる決心をする。

 

そしてそれは、第10話で仕込んだ伏線の回収でもある。

なんてすごい漫画なんだ、『球詠』は!





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『球詠』をディープに語ろう

 

 

球詠

 

作者:マウンテンプクイチ

掲載誌:『まんがタイムきららフォワード』(芳文社)2016年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

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『球詠』ファンの方とのツイッターでのやりとりでスイッチが入り、

来月の5巻刊行を前に個人的見どころをあつめた。

 

第1話を読み直して印象ぶかいのは、「制服で学校を選んだ」というヨミの発言。

いさぎよいくらい野球への情熱をうしなっていた。

珠姫などヨミ以上に淡白で、中学時代に全国出場したガールズのチームも、

近所だからたまたま加入しただけと白状している。

ふたりの再会がすべてのはじまりで、つまり奇跡だった。

かわいい制服のおかげだ。

 

 

 

 

天才打者・中村希が、本作のもう一枚の看板なのはまちがいない。

初心者である白菊の潜在能力を、ひと目で見抜いたのがすごい。

 

 

 

 

ウィキペディアに「長打力にコンプレックスのある希」と書いてあるが、

10話での芳乃との会話をふまえて修正してない、不適切な記述だ。

希はホームランを打てないのではなく、フォーム維持のため狙わないだけ。

 

 

 

 

1回表、1死1・3塁。

4番をまかされる希だが、相手は強豪の梁幽館。

むしろスクイズは合理的といえるが、気配すらない。

チームの信頼をあつめる強打者である証拠だ。

作者はそれをたたずまいで表現する。

看破したキャッチャー小林もさすが。

 

 

 

 

見逃せないのが、監督の藤井先生。

練習メニューや試合での采配は芳乃におまかせでラクしてるが、

ときおり意味深なことをつぶやき、部員たちをハッとさせる。

影森の攻略にも貢献している。

 

 

 

 

どうも藤井先生はパワプロの大ファンらしい。

敵味方の能力値を入力してシミュレーションをおこなったり。

ヒマなのかもしれないが、情報が頭に入ってるからこそできる芸当だ。

 

そんな苦心作を「ゲームはどうでもいい」とあっさり流す芳乃がすてき。

 

 

 

 

あふれる野球愛ゆえ、芳乃はたまに采配が暴走する。

それが双子の姉・息吹が死球をうけた一因となり、罪悪感で意気消沈してしまう。

藤井先生は代わってサインをおくる。

 

的確に状況を把握してないと、このさりげない動きはできない。

4強時代の新越谷OGだから、言いたいことはいくらでもあるはずだが、

優秀な参謀である芳乃に自由にやらせるため、あえて黙ってるのだろう。

ベンチにおける名コンビである。

 

 

 

 

さて、そろそろ僕の個人的思い入れを書いていこう。

一番好きなキャラは理沙先輩だ。

初戦のマウンドにのぼるときの後ろ姿は、本作最高のカットのひとつ。

 

 

 

 

3巻のおまけ漫画から。

 

理沙先輩の魅力は、そのやさしさ。

急造ピッチャーとして登板するにあたり、緊張しないわけないのに、

出番を奪われたヨミがふてくされてないかと、自分のことより心配する。

ヨミの不満は、実は打順に対してだったが。

 

それにしても、初心者なのにヨミより打順が上になった白菊と息吹は大したもの。

 

 

 

 

マウンテンプクイチは、百合姫コミックスから2冊単行本をだしている。

百合作家としても、150キロくらいの速球を投げられる本格派だ。

しかし、『球詠』に恋愛要素はない。

部内での恋愛は、トラブルの種でしかないからだろう。

匂わせもしない。

 

ただひとり、理沙先輩をのぞいては。

つねにチームのことをかんがえ、親友である怜を献身的に支える人格者が、

片思いの悩みをかかえるガチ百合として、作家性を担っている。

 

 

 

 

かわいい女の子たちのわちゃわちゃ。

一球一打にかける熱い思い。

戦略性のおもしろみ。

そしてときおり炸裂する、思春期らしい切ない胸中。

 

『球詠』には、僕らが漫画に求めるほぼすべてがあるし、

逆に『球詠』にないものは、世界に存在する価値がないとさえおもえる。





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