今井神『マガイモノ』

 

 

マガイモノ

 

作者:今井神

掲載誌:『ヤングマガジンサード』(講談社)2019年-

単行本:ヤンマガKC

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物陰から探偵の真似事をするポニーテールの娘が、主人公の「磯木雪」。

オカルト趣味に没頭している大学生で、

UMAとかUFOとかパワースポットといったたぐいを日々調査する。

 

いまは、最近学内に現れたミステリアスな生徒「フォーネ」を、

宇宙人ではないかと疑い、ひそかに監視している。

 

 

 

 

雪の直感は正しかった。

フォーネを尾行するうち、世界の見えないところで、

陰謀が進行していたのを目撃することになる。

 

「マガイモノ」と呼ばれる、奇怪な存在を利用しようとする勢力と、

それを阻止しようとする勢力が争っていた。

 

 

 

 

フォーネは、マガイモノを退治する側に属していた。

そして、人間ではなかった。

 

今井神は、ド派手なアクション描写で知られる作家で、

2009年には代表作『NEEDLES』がアニメ化されている。

本作も、これまでの作風の延長線上に位置すると思われるが、

アクションの合間の静的なカットがむしろ印象深い。

 

 

 

 

雪がオカルトにのめり込んだのは、幼い頃に霊能者に救われたから。

いまも体内にマガイモノが侵入しており、それゆえ魔力を備えていた。

 

そういった特性を活かしたエロス表現がてんこ盛りである。

 

 

 

 

オカルト、アクション、エロス。

繊細さや緻密さより、勢いとサービス精神。

 

この作風を好むかどうかは人によりけりだろうが、

ポニーテールのヒロインには普遍的な魅力を感じる。





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沢音千尋/山本悦子『夜間中学へようこそ』

 

 

夜間中学へようこそ

 

作画:沢音千尋

原作:山本悦子

発行:双葉社 2020年

レーベル:アクションコミックス

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中学校入学を間近にひかえた主人公「優菜」は、

76歳の祖母も中学に通い始めると聞いてビックリする。

 

小学校レベルの学力を身に着けられなかった人々に教育を提供する、

山田洋次の映画『学校』シリーズで知られる「夜間中学」という制度だ。

 

 

 

 

実は祖母は読み書きができず、息子にさえそれを隠していた。

戦中戦後の混乱期に学校に通えなかった子供は少なくなく、

その救済措置として夜間中学はつくられ、

現在は不登校だった生徒や外国人も受け入れている。

 

優菜は、足を怪我した祖母に付き添って毎日顔を出し、

さまざまな背景をもった人々と交流してゆく。

 

 

 

 

優菜が通う昼間の中学との違いは、生徒が主体的に学習するところ。

その意味では、学校の本来あるべき姿とも言える。

 

しかし例外もいて、3つ年上の「和真」は言動がやたら攻撃的で、

我慢できなくなった優菜は授業中に怒りをぶつける。

おもわず口走った一言は、触れてはいけないトラウマを抉ってしまった。

 

「なぜそうなのか」を深く考えず、安易に「異物」を排除しがちな、

日本社会の風潮に批判的な光をあてる、本作の山場だ。

 

 

 

 

イケメンのフィリピン人「カルロス」との関係など、

ほのかな恋の芽生えみたいなエピソードもある。

 

『しんぶん赤旗』日曜版で連載された本作は、最先端の娯楽ではないが、

僕たちの知らない、でも知っておくべき世界を教えてくれる、

まじめで心温まる作品となっている。





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仲谷鳰『優しくなりたい』

 

 

優しくなりたい

(短篇集『さよならオルタ』所収)

 

作者:仲谷鳰

発行:KADOKAWA 2020年

レーベル:電撃コミックスNEXT

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短篇集巻末の『優しくなりたい』は、唯一の描き下ろし作品で、

なおかつ作者への認識を改めさせられた出来なので紹介したい。

 

学ランの少年が、別棟の屋上から窓を通って校舎に戻った、

セーラー服の少女と鉢合わせするところから物語は始まる。

 

 

 

 

メガネの少女は封鎖された屋上に用事があった。

立入禁止なのは、ある女子生徒が飛び降り自殺したから。

なぜ少女が校則を破るのか知りたい少年も、足を踏み入れる。

 

学校の屋上が舞台、登場人物はふたり、短篇らしいミニマルな構成だが、

ツカミからメインへの空間と時間の遷移がみごとだ。

屋上の解放感を印象づける一方で、金網をシンボリックに描写し、

ストレスフルな思春期の男女の心象風景を紙面に焼きつける。

 

 

 

 

少女は屋上で、折り紙が得意だった女子生徒を偲んで、

折り鶴をマッチで燃やし、自己流の供養をおこなっていた。

その女子生徒とはほとんど会話したことがなく、親しくなかったが、

だからこそ他人には理解しがたい動揺を、ひとりで静める必要があった。

 

目を瞠るほどうつくしいシーンだ。

どこにでもありそうなエピソードに織り込まれたエモーションが、

読者の心に痛切に響いてくる。

また、出世作『やがて君になる』の男キャラが全員デクノボウだったので、

仲谷は男を描けない作家かと思ってたが、本作の少年はリアルだ。

 

 

 

 

作者によるコメントに、「私も薄情な人間なので」とある。

情感に乏しい仲谷の作風について、当ブログはくどくど言及してきた。

それは弱みでも強みでもある。

ハダカの自分をどう装飾してセルフプロデュースするかがカギだが、

天才的な表現力を持つわりに、見せ方が中途半端なのが謎だった。

冷たい雰囲気が好きなら徹底的にやればいいのにと。

 

疑問は氷解した。

仲谷は薄情な自分を変えたかったのだ。

『やが君』の中庸性は、作者の葛藤の表れだった。

 

 

 

 

こちらの表題作『さよならオルタ』は、7年前に同人誌で発表された。

短篇集収録作品のテーマは「勇者もの」とか「VTuber」とか、

けっこう流行に影響されやすい作家なんだなと思った。

仲谷にとっては「百合」も、とりえあず乗ってみた船なのだろう。

 

そこから降りた今、お定まりの航路から外れた作者は、

本来持っていた無垢で強靭な生命力を発見しつつある様だ。





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はまじあき『ぼっち・ざ・ろっく!』2巻

 

 

ぼっち・ざ・ろっく!

 

作者:はまじあき

掲載誌:『まんがタイムきららMAX』(芳文社)2018年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

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われらが結束バンドが、2巻では文化祭に挑む。

メンバーは別の学校に通ってるので、個人枠で参加。

出演が決定し、ぼっちちゃんはプレッシャーで死にかける。

 

 

 

 

ライブハウスで演奏した経験もあるバンドだが、

なんだかんだで文化祭は人が集まるし、練習に熱も入る。

辛辣なバンドあるあるネタも冴え渡る。

 

 

 

 

クラスの出し物は、定番のメイド喫茶。

ぼっちちゃんも強制的にメイド服を着せられる。

 

『けいおん!』というレジェンドに真摯なオマージュを捧げる本作は、

それと同時に、ヴィジュアルの強度において限界突破してゆく。

 

 

 

 

ライブ本番にアクシデント発生。

1弦が切れて2弦のペグも故障する、二重のトラブルで窮地に陥るが、

飲んだくれのお姉さんの酒瓶を使ったボトルネック奏法で乗り切る。

きらら系の、極端にキャラの魅力に依存しがちなフォーマットから、

最大限のドラマ性を引き出すステージングに、思わず歓声をあげた。





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杉浦次郎『僕の妻には感情がない』

 

 

僕の妻には感情がない

 

作者:杉浦次郎

掲載誌:『コミックフラッパー』(KADOKAWA)2019年-

単行本:MFコミックス フラッパーシリーズ

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サラリーマンの青年と、家事ロボットの生活を描く物語である。

割烹着の「ミーナ」は、ちょっとした会話を交わせる知能をもつが、

中古で購入した安物だと作中で設定されている。

作品世界のテクノロジー水準でみても、かなり無表情なロボットらしい。

 

 

 

 

相手はかわいいけど、実質はローテクな機械なのが、本作の焦点だ。

ドキドキせずにいられない日常を送る一方で、

まるで炊飯器に恋する様なやましさを、主人公「タクマ」は感じている。

 

 

 

 

基本的に話は、タクマの住むオンボロアパートで繰り広げられる。

妹が下宿先に突撃してきたり、騒動がおきることも。

嫉妬したと思ったら、兄とミーナの関係性に萌えたり、

だれより変態性を露わにするこの妹のキャラもいい。

 

 

 

 

2話では、近所の自然公園へピクニックに出かける。

野外で調理するエネルギーを得るため、

ミーナは髪をおろして太陽光発電をおこなう。

 

作者のキャリアをながめると、特にSFに注力してない様だが、

女の子の描写とギミックをうまく絡めてるのが印象的だ。

 

 

 

 

あえてポリコレ的な観点から付け加えるなら、

本作は「女をモノ扱いしている」という解釈もできるだろう。

その認識を前提に言うと、作者は1LDK的なミニマリズムの中で、

単純ではないエロティシズムを最大限炸裂させるのに成功している。





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苑田 謙

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