佐々木ミノル『中卒労働者から始める高校生活』7巻

 

 

中卒労働者から始める高校生活

 

作者:佐々木ミノル

掲載誌:『コミックヘヴン』(日本文芸社)2012年-

単行本:ニチブンコミックス

ためし読み/当ブログの関連記事

 

 

 

本巻は5年前、普通高校にかよってたころの若葉をえがく。

彼女は主人公でもヒロインでもなく、現在はシングルマザーである脇役だが、

この作品らしく重厚なエピソードにしあがった。

 

 

 

 

一児の母となってからは子供を最優先にして生きる若葉だが、

かつては自分の気持ちに正直で、脇目もふらず突っ走るところがあった。

 

 

 

 

若葉の恋人は二股をかけていた。

好きでもない相手と別れようとしない男の優柔不断さを、

作者は断罪せず、それなりの理解をしめしつつ描写する。

二股と知りながら、恋心をとめられない若葉の未熟さも指摘するなど、

複雑な心理の綾がつづられる。

 

 

 

 

女のエゴにクロースアップでせまるのが、本作の特徴のひとつ。

サブプロットだが、感情のたかまりは最高潮かもしれない。

 

 

 

 

若葉が妊娠を自覚する。

読者はかわいく元気なひなぎくを知ってるから、おどろかないが。

 

 

 

 

だれにも言えない。

しかし、好きな人の子供を殺すわけにもゆかない。

崩壊する世界のなかで若葉は苦悩する。

のちの微笑ましい親子関係との落差がすさまじく、

ドラマティックアイロニーのきいた名場面だ。





関連記事

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

ビーノ『女子高生の無駄づかい』2巻

 

 

女子高生の無駄づかい

 

作者:ビーノ

掲載サイト:『コミックNewtype』(KADOKAWA)2015年-

単行本:角川コミックス・エース

[当ブログの関連記事はこちら

 

 

 

即売会で、「ヲタ」(キャラ名)が同人作家の新刊を購入する。

しかし何かに幻滅している。

 

 

 

 

ヲタはすぐ何かにハマってしまう体質だった。

あるBL作家が18歳の男で、しかも自撮り詐欺名人なので、勝手に恋していた。

 

ビーノは2巻でも上手に、オタクJKあるあるを料理している。

 

 

 

 

百合の花を背負って登場したのは、転校生の「リリィ」。

モデルみたいな美貌だが、男が大嫌い。

 

 

 

 

「男の人に触られると蕁麻疹が出ちゃう」などと、

言動は処女営業カマトトぶってたころの佐倉綾音みたいだが、

生物学的には女であるはずの「バカ」の手を握ると、急にブツブツが。

 

予測不可能なオチで笑わせる。

 

 

 

 

中二病キャラ「ヤマイ」も、出番少なめながら活躍。

高いところから飛び降りるシーンを演じたくて木に登ったのに、

怖くて降りれなくなるまではネタとして予想の範囲内だが、

パーカーのフードに鳥が巣をつくるのには面食らう。

 

 

 

 

あらたな中二病キャラである、オカルトマニアの「マジョ」。

これまた可愛くて、キャラ造形の巧みさに舌を巻く。

 

 

 

 

シュールなギャグ、時代を反映したあるあるネタ、日常系のキャッキャウフフ、

テンプレキャラに陥らずに「典型」を提示するデザインセンス……。

 

作者は3巻刊行に悲観的で、カバー下で擬似的最終回を描いているが、

みなぎるエネルギーは2巻購入者を幻滅させてないはず。





関連記事

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合 

仲谷鳰『やがて君になる』3巻

 

 

やがて君になる

 

作者:仲谷鳰

掲載誌:『月刊コミック電撃大王』(KADOKAWA)2015年-

単行本:電撃コミックスNEXT

ためし読み/当ブログの関連記事

 

 

 

『やがて君になる』には、百合漫画の長短がわかりやすく表れている。

短所から言うと、叙情的な雰囲気に流され、内容が乏しいこと。

電撃は今月に百合アンソロジーを刊行するなど、

最近掘り当てた百合とゆう乳白色の鉱脈に力をそそいでおり、

その看板コンテンツである『やが君』が長期連載となったのが、

ストーリーの希薄化に影響しているとおもわれる。

 

百合漫画は俳句や短歌やパンクロックみたいなもので、

短ければ短いほどよいのだけど。

 

 

 

 

梅雨といえば相合傘。

13話はただそれだけの回だ。

どっちが傘をもつかで言い争いとなり、バカらしくなってふきだす。

いかにも打ち解けた表情のすばらしさ。

 

 

 

 

軒先で雨宿り。

仲よくベンチにすわって燈子の体温を感じた侑は、手を重ねようとする。

恋愛に興味はないが、肉体的接触によわい。

でも自分から相手にさわることの「意味」をかんがえ、ひっこめる。

 

これが百合漫画の長所だ。

宙をさまよう指先が、人生の真理をあきらかにする。

 

 

 

 

メインのふたりが煮え切らない関係をつづける一方で、

作者はサブプロットで百合色を濃厚にするとゆう手法をとる。

箱崎先生が女の恋人と同棲しているとか。

 

 

 

 

一種の恋敵である沙弥香は、中学時代に女の恋人がいたとか。

レズカップルマシマシの、狂い咲きの百合空間だ。

 

 

 

 

15話、体育倉庫で燈子がひさしぶりに侑の唇をもとめる。

最初は侑もうれしそう。

普段はつれない態度だが、キスそれ自体はすきだから。

つづけて2回め。

侑の表情がこわばる。

ガツガツと貪られるといやになる。

まるで恋人同士みたいだから。

唇をぎゅっとむすび、燈子をつきはなす。

 

 

 

 

唇をかさねるときの横顔だけで、響きわたるシンフォニー。

仲谷鳰が偉大なコンポーザーなのは、どうにも否定できない。





関連記事

テーマ : 百合漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合 

鍵空とみやき『ハッピーシュガーライフ』4巻

 

 

ハッピーシュガーライフ

 

作者:鍵空とみやき

掲載誌:『月刊ガンガンJOKER』(スクウェア・エニックス)2015年-

単行本:ガンガンコミックスJOKER

ためし読み/当ブログの関連記事

 

 

 

さとうの自宅に司直の手がはいる。

異臭がするとの通報があったので調べさせてくれと。

おばを殺害してその死体を隠匿している、と匂わせる描写があった。

 

 

 

 

めづらしく動揺するさとう。

いつもは口が達者で、たやすく大人を翻弄できるのだが、

本丸が急襲されると予想してなかったらしい。

 

 

 

 

通報したのは、さとうをストーキングしている変態教師。

さとうの怯える表情を見ただけで恍惚となる。

 

 

 

 

4巻は友人のしょうことの関係が中心。

さとうがトラブルに巻き込まれたと察し、手を差しのべる。

 

 

 

 

親友なら悩みを共有するのが当然と思っていたしょうこは、

その闇の深さを知り、虚無的なさとうの視線からつい目を逸らす。

傷つけたくないが、本能的に反応した。

 

 

 

 

おばについての謎は明かされたが、ストーリーが前進した感じはない。

しょうこは可愛いくていい子だけど、本筋ではない。

4巻終了時点でもまだ、作者は「風呂敷を畳みはじめてない」様にみえる。

悪く言えば、引き伸ばしている。

 

 

 

 

それでもなお、キラキラした女の子にちらつく「影」をえがくカットの数々が、

この百合サスペンスを特別なものにしている。





関連記事

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合 

ちさこ『北陸とらいあんぐる』

 

 

北陸とらいあんぐる

 

作者:ちさこ

掲載誌:『月刊コミックフラッパー』(KADOKAWA)2016年-

単行本:MFコミックス フラッパーシリーズ

[ためし読みはこちら

 

 

 

石川・富山・福井……北陸3県出身の少女たちが、

お国自慢したり、どっちが上か議論したりする漫画。

 

手前のおしゃれな女の子が、石川県生まれの「加賀ひまり」。

たとえば金沢駅がえらく現代的なデザインで、

新幹線の発車メロディを地元出身の中田ヤスタカが作曲したとか、知ってた?

 

 

 

 

富山出身の「黒部りつ」は、石川県を異様にライバル視する。

加賀百万石だかなんだか知らないけど、あんたら偉そうなのよ!

目くそ鼻くそ(失礼)の争いがおかしい。

 

 

 

 

福井出身の「越前和花」はマイペース少女。

犯人の自白シーンで有名な東尋坊の断崖絶壁で、

火曜サスペンスごっこをするのが好き。

ちなみに1巻に原発ネタは出てこない。

 

 

 

 

北陸の名所・名物・名産やあるあるネタを、

全篇にわたり可憐な絵柄で丁寧にえがく。

しゃなりしゃなりと古都を和装であるく姿など、北陸は女子が似合う。

 

 

 

 

どちらかと言えば文化系の漫画だが、体育ネタも披露。

地域ごとに授業内容やイベントはさまざま。

福井県は運動能力が全国1位で、富山県の中高にプールはないんだとか。

 

 

 

 

基本的に、東京の高校で故郷を思い出しながらおしゃべりするスタイルで、

物語としてドラマ性が不足ぎみなのが難点だけど、

富山県のアニメ制作会社P.A.WORKSがアニメ化してもおかしくないくらい、

ピュアな地元愛とかわいさが炸裂している。





関連記事

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合 
最近の記事
記事の分類
検索とタグ

著者

苑田 健

苑田 健

掲示板『岩渕真奈 閃光の天使』
も運営しています。

Twitter
メール送信

名前
アドレス
件名
本文

カレンダー
11 | 2016/12 | 01
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
月別アーカイヴ
12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03