文尾文『私は君を泣かせたい』

 

 

私は君を泣かせたい

 

作者:文尾文

掲載誌:『ヤングアニマル』(白泉社)2016年-

単行本:ヤングアニマルコミックス

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主人公の「相沢羊(よう)」は高校2年生。

学業や人間関係において優等生とみなされてるが、

実は猫をかぶっていて、たとえば放課後に遊びに誘われても、

家の用事があると嘘をつき、ひとりで映画館へ行ったりする。

 

ただし、断るのは2回まで。

疑われない様に3回めは誘いにのる。

 

 

 

 

観客は自分だけで貸し切りだとよろこんでたら、

おなじクラスの「虎島ハナ」が入ってきて動揺する。

セーラー服にスカジャンを羽織り、ロングスカートのヤンキーで、

映画なんてまるで興味なさそうに見えるのに。

 

 

 

 

羊はハナと会話したことがない。

そもそもハナはほとんど学校に来ない。

なので気づかなかったフリをして映画を鑑賞する。

駄作だったが、ハナはなぜか号泣。

 

そしてハナは、羊が部長をつとめる映画研究部に入る。

本作は、正反対なふたりの不器用な関係をえがく百合漫画だ。

 

 

 

 

ヤンキー系の女子が出てくる百合漫画としては、

サブロウタ『citrus』やくみちょう『愛羅武勇より愛してる』などがある。

それらとくらべても、龍のあしらわれたスカジャンなど、

本作のキャラ造形は秀逸。

 

 

 

 

人当たりのよい美少女だが、内面に壁をつくってる主人公とゆう点では、

仲谷鳰『やがて君になる』を髣髴させる。

タイトルも似てるし、影響をうけてないとおもえない。

 

 

 

 

本作ならではのギミックは「映画」だが、

具体的な作品名などは言及されず、最大限に活かされてはいない。

それでも、ふたりがケンカする12・13話のオチなど気が利いてるし、

全体的にセーラー服がキレイにえがかれ、充実した百合漫画だ。





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テーマ : 百合漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合 

中山敦支『うらたろう』4巻

 

 

うらたろう

 

作者:中山敦支

掲載誌:『週刊ヤングジャンプ』(集英社)2016年-

単行本:ヤングジャンプコミックス

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フィンセント・ファン・ゴッホ『星月夜』へのオマージュである。

『ねじまきカギュー』第16巻でパブロ・ピカソのキュビズム手法を借りるなど、

もともと中山敦支はモダニズム絵画への執着を隠してない。

 

石にまじって人骨がころがってたり、ちよの側に立つ樹木が枯れてたり、

古典への言及をストーリーや世界観と融合させたのは、作家としての成長だ。

 

 

 

 

僕の知るかぎり、中山がはじめて描いた男女のキスシーン。

カギュー16巻のそれは、施療の意図があったのでノーカウントとする。

 

 

 

 

その後の急転直下は、またしても『トラウマイスタ』4巻的。

「人間はどこまで非情になりうるか」とゆうテーマは、

『カギュー』の理事長父娘の関係性をなぞっている。

 

ただ前作とくらべると、主人公側の動機がやや弱いので、

「熱情vs.非情」の構図が不鮮明に感じられる。

 

 

 

 

黄泉比良坂の霊力の影響で、主人公は不死の能力をうしなう。

そしてヒロインを復活させることを誓い、第1幕がおわる。

 

 

 

 

『うらたろう』は作者のファンでさえ、よくわからない漫画だ。

「生死の不可逆性」とゆう、デビュー以来のテーマを捨てたと解釈できる。

おいおい、ナカヤマ先生どうしちゃったのって感じ。

スジャータは決してもどらないから、衿沙の心の傷は決して癒えないから、

主人公たちは重苦しい現実と格闘せざるをえなかったのでは。

そこをあっさり否定しちゃうわけ?

 

とはいえ、メビウスの輪みたいな死生観をあらわすイメージは、

カギューの「ねじまき」との共通因数を確認できるし、

とりあえず第2幕の進行を見守るしかないだろう。





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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 中山敦支 

井上智徳『CANDY & CIGARETTES』

 

 

CANDY & CIGARETTES

 

作者:井上智徳

掲載誌:『ヤングマガジンサード』(講談社)2017年-

単行本:ヤンマガKC

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ヒロインは11歳の「涼風美晴」。

職業は小学生、そしてデトニクスをあやつる殺し屋。

 

 

 

 

65歳の「平賀雷蔵」は、月給100万円の怪しい職に就いた初日、

「掃除」をしにむかったホテルの部屋で、幼女が相棒だと知る。

 

言うなれば本作は和製『レオン』。

ただしヒロインの方が、殺しの経験が豊富。

 

 

 

 

雷蔵は元警官で、かつて要人警護任務に従事していた。

孫が難病を患っているため、どうしても大金が必要。

 

 

 

 

3年前に両親が殺害され、美晴は精神を病む。

組織は彼女の復讐心を利用し、殺人機械に仕立てあげた。

 

 

 

 

本作は、アニメ化もされたディストピアSF『COPPELION』につづく作品。

僕はコッペリオンをちゃんと読んでないが、

デビュー作が26巻も長続きするくらいだから、才能ゆたかな作家なのだろう。

本作もグッとくるセリフやカットがいくつもある。

 

 

 

 

ものすごく斬新な漫画でないとしても、たとえばキューブリック版『ロリータ』から、

ハート型サングラスなどの服装を引用したり、安っぽく見えない工夫をしている。





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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: ロリ 

山内溥の娘、荒川陽子

任天堂の創業一族である山内家の男にとって、女遊びは当然の趣味だった。

婿養子だった山内溥の父など、女と駆け落ちして消えたくらいだ。

 

1970年に山内は、長女である陽子の二十歳の誕生日を祝うため、

ドレスアップした彼女を祇園へつれてゆく。

父の馴染みらしい白塗りの芸者が座敷に五人もあらわれ、陽子は仰天する。

 

夜が更け、陽子だけタクシーで家まで送られる。

父はその日帰宅しなかった。

めづらしく親らしいことをしたつもりかもしれないが、

結果として山内は、若い娘に一生忘れられない屈辱をあたえた。

 

陽子は、丸紅の社員だった荒川實と結婚する。

MIT卒で洗練され、ユーモアの感覚もあり、父と正反対なところが気に入った。

ふたりはカナダのバンクーバーで充実した生活をおくる。

 

問題が発生した。

人材好きの山内が、實をスカウトしたのだ。

任天堂のアメリカ法人をつくるから、その社長にならへんかと。

ビジネスパーソンにとって拒否できないオファーだ。

 

陽子は恐怖する。

彼女がこの世でもっとも距離をおきたいもの、それが任天堂だった。

経営のストレスで父の精神を痛めつけ、家族を不幸にした元兇とおもっていた。

しかし山内は、實をあっさり口説き落とす。

 

陽子の不安は的中する。

1980年にニューヨークに設立したNintendo of Americaは、いきなり倒産しかける。

「お前の亭主は無能や」と山内が電話でわめく。

實は義父の理不尽さや傲慢さを、妻にむかいなじる。

だから言わんこっちゃないとゆう話だが、陽子はひたすら耐える。

板挟みの状況で、ほかになにができよう。

京都にいる母に相談するが、「辛抱しなさい」としか言われない。

高額な通話料をムダにした。

 

1981年、まったく無名の開発者・宮本茂による『ドンキーコング』が大ヒット。

その後の任天堂のグローバルな成功において、

荒川陽子の「内助の功」は無視できないだろう。





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タグ: 任天堂 

鳴海アミヤ『ムスコンっ!』

 

 

ムスコンっ!

 

作者:鳴海アミヤ

掲載誌:『月刊コミックガーデン』(マッグガーデン)2016年-

単行本:マッグガーデンコミックス Beat'sシリーズ

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幼女にしか見えない主婦「桃井サクラ」と、16歳の息子「タカシ」の、

必要以上に密着した日常生活をえがくコメディである。

 

 

 

 

タカシは長身のイケメンで、街を歩けば女子の注目の的に。

しかし本人は3次元の女に無関心で、ラノベに没頭している。

 

 

 

 

恋バナが大好きな母は心配する。

息子にもいい人ができて、恋愛の相談に乗ったりしたい。

むかしの制服をひっぱり出し、JKに扮してロールプレイをおこなう。

 

 

 

 

母の愛情は、過保護をとおりこして盲目的となっており、

スーパーで息子とはぐれたら、大泣きして店員にすがる。

どちらが迷子かわからない。

 

 

 

 

スーパーでタカシと一緒にいたのは「鬼束雅」。

タカシに片想いしているヤンキー娘だ。

自宅に招かれたときのやりとりがほほえましい。

 

 

 

 

アニオタのタカシは、PCの前でしょっちゅう寝落ちする。

体が大きくなったとは言え、寝顔はあどけない。

それを見た母は、読み聞かせして寝かしつけていたころをおもいだす。

 

僕は、主人公の母親が魅力的にえがかれている作品が好きだが、

その意味で本作も佳作に数えられるだろう。




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