中山敦支『うらたろう』完結

 

 

うらたろう

 

作者:中山敦支

掲載誌:『週刊ヤングジャンプ』(集英社)2016年-

単行本:ヤングジャンプコミックス

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あっけなく完結である。

中山敦支はSNSでピーチクパーチクおしゃべりするタイプではないが、

それでも本作について沈黙しているのは異様だ。

 

 

 

 

尻切れトンボ的な連載終了で、本作の缺点が浮き彫りに。

ひとことで言うと「自己模倣」。

たとえば、あまりに唐突で理不尽な暴力。

 

 

 

 

そしてカウンターとして炸裂する、主人公側のプランB。

これらを見開きで、象徴的に表現する。

本作においても、絵そのものはみごとだ。

だれも中山にかなわない。

 

でも、既視感がある。

 

なお本項の以下の段落は、軽いネタバレとグロテスクな描写をふくむので注意。

 

 

 

 

黄泉の国から帰還したちよは、まるでイザナミの様な変わり果てた姿に。

ここでも中山は、ヴィジュアル面でアクセルペダルを床まで踏みこむ。

 

 

 

 

じわじわひたひた、なおかつ性急に、せまりくる圧倒的な「死」。

それをやさしく受け止める主人公。

『ねじまきカギュー』とくらべ外面的に上達しているが、精神的な成長は感じない。

 

長い時間をかけ弓をひきしぼったが、肝心の矢が折れていたとゆう印象。

中山敦支は、自身の代表作との戦いに敗れた。





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タグ: 中山敦支 

藤田かくじ『放課後少女バウト』2巻

 

 

放課後少女バウト

 

作者:藤田かくじ

掲載誌:『月刊キスカ』(竹書房)2016年-

単行本:バンブーコミックス

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女子高生の総合格闘技もの、第2巻が登場。

可憐な少女らのガチバトルがさらに白熱する。

 

 

 

 

試合コスチュームの華やかさが、本作のウリだ。

それどころか「文野みゃこ」の本職はアイドル。

顔を殴らせないよう、お尻をつきだす大胆なポジションをとる。

 

 

 

 

2巻のハイライトは「墨田文花」戦だろう。

コスチュームの長い裾をディフェンスや絞め技にもちいる、独特のスタイルだ。

 

 

 

 

ヒロイン「辰乃」は裾で拘束され、間合いをコントロールできない。

くりかえし痛烈な打撃をあびる。

目をそむけたくなる光景。

 

 

 

 

しかし辰乃はもう片方の裾をつかい、ベースボールチョークをきめて逆転。

恍惚の表情をうかべながら、文花は眠りの世界へ落ちてゆく。

 

 

 

 

実は辰乃の大ファンだった文花は、激戦のあとに記念撮影。

本作はちょっとストーリー面が弱いけれど、

血まみれ痣だらけの百合として稀少価値がある。





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『群狼のプリンセス』 第1章「BMX」


登場人物・あらすじ(準備中)


全篇を読む(準備中)






 駒沢オリンピック公園のスケートパークは、水曜の午後三時だがスケーターがあつまっている。立地のよさと、設備が充実するわりに無料であるおかげだろう。初心者はミニランプで、プロをふくむ上級者は大きなセクションで技をみがく。

 近所に住む十八歳の暁ジュンが、練習の合間に一休みしている。彼女の専門はスケートボードでなくBMX。後ろ向きに小さな自転車に乗り、足は前輪のペグにおき、サドルをつかんで一輪車の様にバランスをとる。休憩中なのにトリックを決めてるわけだが、さらにサドルをつかむ右手でアイフォンを操作している。BMX歴十年のなせる業だ。

 髪をツーブロックにしたスケーターが、ジュンに話しかける。VネックのTシャツから見える、ジュンの胸の谷間を気にしている。

「器用だね」

 ジュンは振り向きもしない。こう見え彼女は会社員であり、いまは勤務中で、社用でこれから人と会う予定だった。その相手は父親だが。

 車道にメルセデスが駐まり、運転手をのこしてグレースーツの男が降りる。

 暁大五郎。三十九歳。ジュンの父親で、警備会社「アカツキセキュリティ」のCEOをつとめる。顎鬚を薄くたくわえた精悍な顔立ちで、いかにも男盛りとゆう印象をあたえる。五年前に妻と死別し、世田谷のマンションで娘と二人暮らしをしている。

「パパ!」

 ジュンは愛車を乗り捨て、パークへはいってきた大五郎に飛びつく。

「あの男の子はいいのか」大五郎が言う。「友達なんだろう」

「ただのナンパ野郎だって。そんなことより来るの遅い! 一週間ぶりだから早く会いたかった」

「すまん。でも四日ぶりだぞ」

「そうだっけ。とにかく寂しかった」

「現場はどうなってる」

 ジュンは大五郎から体を離し、腕を組む。ビジネスの顔だ。アカツキセキュリティ最年少の社員だが、一番隊の隊長を任されている。

「立体駐車場はヲタが監視してる。まだ敵に動きはない。あとチャンコが隊員を乗せて本部を出たって。二十分くらいで着くとおもう」

「わかった。俺は情報提供者に会いに行く。しばらくお前の判断で行動しろ」

「え、嘘でしょ。一緒にいてよ」

「お前を信頼している。どんな結果になろうと俺が全責任を負うから心配するな」

「やだ」

 ジュンは目を吊り上げて大五郎をにらむ。

 実行部隊の指揮を一任され、不安に苛まれてるのではない。むしろいますぐ突入したくてウズウズしてるくらいだ。実際は、自身の活躍を父にじかに見てもらいたいので駄々をこねている。

 ジュンは続ける。「人に会うのは後回しにして」

「わがままを言うな」

「誰とどこで会うの。いつもの竹橋?」

「親子のあいだでも機密保持の原則は守らなきゃいけない。わかってるだろう」

「相手は女?」

「しつこい」

「はいはい。いい年してファザコンの娘より、仕事の方が大事だよね。じゃ、『彼女』によろしく」

 ジュンは身を翻し、スタンドがないので転がしてあるBMXを取りにもどる。さすがに指揮官のメンタリティが幼稚園児なみでは心許ない。大五郎は、背後から肩をつかんで引き留めようとする。

 ジュンが右肩を前にずらしたため、大五郎はよろける。立って歩ける様になったころから、ジュンは父に格闘術を仕込まれている。動きを予測していたのか、それとも背中に目がついてるのか。

 膝を折り曲げた大五郎を見下ろし、ジュンが言う。

「悪い奴らを片っ端から叩きのめして、ウチらの価値を国に認めさせる。そうして正式に警察機関の一部になる。これがパパの夢だよね」

「そうだ」

「パパの夢は、あたしの夢でもある。パパがどこにいようが全力を尽くす」

「ありがとう。キツいことを言って悪かった」

「ううん、パパはいつでも優しいよ。あたしがわがままなだけ。でも作戦がうまくいったら、いっぱい褒めてね」




 父はメルセデスに乗り、公園から去った。ジュンは現場で仲間と合流するため、傷だらけのBMXを拾う。

 ツーブロックのスケーターがまた声をかける。

「彼氏、行っちゃったね」

 ジュンは目を輝かせ、軽く飛び跳ねる。

「パパがあたしの彼氏に見えた?」

 ツーブロックがニヤリと笑う。適当に口走った話題だが、食いついてきた。

「へえ、若いお父さんだ」

「年の差は二十一歳だから若い方かな。友達のお父さん見るとオッサンだなあって思う」

「ウチの親父なんてすっかりハゲてるよ」

「あはは」

 ジュンはあらためてツーブロックを観察する。痩せていて顔が小さい。ロックバンドかなにかのTシャツもセンスがいい。たしかにナンパ野郎は女性への敬意が足りず、全然好きじゃない。

 ただし、イケメンはのぞく。

 ジュンは自動販売機にちらりと視線を投げ、つぶやく。

「喉かわいたなあ」

「俺も」

「あたしいま財布持ってないから、お茶でも買ってくれたら嬉しいな。ベンチで十分くらい話そ」

「オッケー」

 ツーブロックはジュンの脚を盗み見ていた。黒のミニスカートの下にレギンスを穿いている。顔もスタイルも悪くない。百五十円で連絡先を聞き出せるなら儲けものだ。いそいそと自販機へむかう。

 ジュンはコインロッカーを開き、レザージャケットを取り出して袖を通す。肩にエンブレムがあしらわれている。Sを横にした様なルーン文字で、「ヴェアヴォルフ」つまり「人狼」を意味する。特殊警棒が挿してあるベルトを腰に巻く。

 両手にペットボトルをもったツーブロックが、青褪めた表情で言う。

「そのジャケット……」

「実はアカツキセキュリティの社員なんだ」

「ひょっとして『狼士』?」

「うん」

「女なのに?」

「泣く子も黙る一番隊隊長、暁ジュンとはあたしのことさ」

 会社の評判は良くない。最悪かもしれない。

 民間の警備会社でありながら、犯罪捜査・逮捕・尋問などの警察活動をおこない、その超法規的な暴力性が恐れられている。しかも豊富な資金力と人脈で政財界をうごかし、三年前に「特殊警備業法」を成立させ、警視庁と連携して活動するまでに成長。いまや自らが先頭に立ち、テロリズムとの戦いを展開している。

 だれがつけたか、アカツキの実行部隊のニックネームは「狼士」。オオカミみたく凶暴な連中で、何をされるかわからないから、見かけたら逃げろとゆう意味だ。

 上ずった声でツーブロックが言う。

「そうだ。帰らないと。テロ予告もあったし」

「ちょ、お茶」

 二本のペットボトルとスケートボードを抱え、ツーブロックは尻尾を巻いて逃げ出した。




 しかめ面のジュンはピルケースを開け、「マーナガルム」と呼ばれる灰色の錠剤を三つ頬張る。古ノルド語で「月の狼」を意味するらしい。一種のデザイナードラッグで、気分を昂揚させ、疲れや痛みをおさえる効果がある。しかたなく唾液で飲みこむ。

 ジュンはボディバッグを背負い、黒いBMXを駆る。サドルが極端に低いので立ち漕ぎだ。しかし大通りに出たところで、制服警官に呼び止められる。クラウンパトカーが路肩に駐まっている。

 警官が尋ねる。「キミ、どこへ行くんだ」

「仕事です」

「アルバイトか? テロ警戒の通告があったのを知ってるだろう。今日は家にいなさい」

 自分は立派な社会人のつもりでいるジュンだが、童顔のせいか子供あつかいされがち。身分をあかして交渉する時間が惜しいし、違法ドラッグを服用したばかりなのも都合が悪い。あたりを見回し、逃走経路をかんがえる。

 警官が続ける。「この自転車、反射板がないな」

 一グラムでも軽くしたいので、リフレクタもベルもつけてない。さすがは優秀な日本の警察、こうゆうことだけは鋭い。防犯登録もしてないし、いろいろ面倒なことになる。

 ジュンはBMXを肩に担ぎ、ひらりとガードパイプを飛び越える。ペダルを懸命に漕ぎ、首都高の下の玉川通りに入る。変速機のないBMXはスピードが出ない。右折して用賀へむかう。

 背後でパトカーのサイレンが鳴る。振り返ると二台の警光灯が光っている。一台がジュンを追い越し、通せんぼする様に停止する。

 ジュンはハンドルを切り、歩道へ乗り上げる。ベルがないので「すいません!」と叫び、震動を抑えて歩道橋の階段を走る。ジグザグに人をかわしながら階段を登りきると、反対車線にあらたなパトカーが来たのに気づく。

 なんなんだ。あたしは正義の味方だっつの。

 ハンドルに体重を乗せてから、一気に引き上げる。重心を後ろにかたむけウィリー走行し、さらに加速して鉄柵を乗り越える。運よく貨物トラックのコンテナに着地する。目的地の用賀に着くまで待機したあと、道路へ降りる。

 ふたたびサイレンが響く。公園で誰何してきた警官が、執念で追いかけてきた様だ。漕ぎ疲れたジュンはBMXをガードパイプに立てかけ、路肩の段差に腰を下ろす。

 ジュンは腹を抱えて笑う。

「あっははは」

 パトカーを降りた警官が叫ぶ。

「なんてやつだ! 署まで来てもらうぞ」

「いや、それどころじゃないんで。あたしはこうゆうモンです」

 ジュンは定期入れの中の社員證を見せる。警官は帽子を脱ぎ、頭を掻く。

「狼士か。クソッ」

「クソとはなんだよ」

「今日のところは見逃してやる。さっさと仕事とやらに行け」

「いまからウチら、般若党の潜伏先へ突入するんだけどさ。人手が足りないんで、あんたも来ない?」

 高圧的だった警官が、急にアイコンタクトを避ける。かぶり直した帽子の鍔をいじりだす。

「俺は交通執行係だから……」

「おたがい治安を守る仲間でしょ」

 警官は咳払いし、わざとらしく無線機を耳にあてる。

「緊急連絡が入った。失礼する」

「はあ、御苦労さまです」

 走り去るクラウンパトカーを、ジュンは冷笑をうかべながら眺めた。




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コナリミサト『凪のお暇』2巻

 

 

凪のお暇

 

作者:コナリミサト

掲載誌:『エレガンスイブ』(秋田書店)2016年-

単行本:A.L.C.DX

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空気を読みすぎてメンタル崩壊し、ドロップアウトしたが、

そこからの再生をめざす28歳の元OL「凪」の物語。

2巻では、凪を都合よく利用して追いつめた主犯である、

元カレ「慎二」の価値観がくわしく説明される。

 

 

 

 

営業マンとしての非凡さや、凪が必死に隠していた弱点「くせ毛」を知っていて、

それでも付き合っていた事実などが明かされる。

ただその優しさを恋人につたえられず、ふたりの心はすれちがっていた。

 

 

 

 

新居であるボロアパートで、突然はじまったトランプ大会。

凪は本当の自分をとりもどすため、慎二に勝負をいどむ。

 

しかし慎二にも共感している読者は歯がゆく、複雑な気持ちになる。

 

 

 

 

隣に住む母子家庭の、女子小学生「うらら」にもスポットライトがあたる。

一ひねりも二ひねりも利いた、印象的なエピソードだ。

 

 

 

 

地球に74億の人口がいるなら、価値観も74億通り存在する。

それらは重層的な構成になったり、反発しあったり、溶けあったりする。

人はその総体を「世界」と称しているわけだが、

本作ではそうゆう濃密な世界の一端を触感できる。

 

2巻で確信した。

これは傑作だ。





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餡蜜『高嶺の蘭さん』

 

 

高嶺の蘭さん

 

作者:餡蜜

掲載誌:『別冊フレンド』(講談社)2017年-

単行本:講談社コミックス別冊フレンド

[ためし読みはこちら

 

 

 

主人公の「高嶺 蘭」は高校1年生。

才色兼備なハイスペック女子だが、やや表情がとぼしく、

特に男子からは、文字どおり「高嶺の花」とおもわれがち。

 

 

 

 

母にたのまれ、塾帰りに花屋へ立ち寄る。

小さいが、おしゃれな店構えだ。

 

花だけでなく、ワンピースやハンドバッグなどの描写も手が込んでいる。

 

 

 

 

そこで同級生の「佐伯 晃」に出くわす。

親の仕事を手伝ってるらしい。

男が花をいじるのは恥づかしくて、学校では秘密にしていた。

 

 

 

 

秘密を共有したふたりは、徐々に親しくなってゆく。

梅雨空の下、相合傘であじさいを見に行ったり。

 

花とゆう本作の題材は、季節感を出すのにぴったりだ。

 

 

 

 

少女漫画にしては恋愛要素が控えめで、さっぱりとした読後感。

初デートを前に大混乱におちいる家族など、ほのぼのムードをたのしみたい。

 

 

 

 

黒髪ロングの無表情なヒロインとゆう点で、

眉月じゅん『恋は雨上がりのように』を連想させもする。

ただ花の描写などヴィジュアルの魅力においては、こちらの方が上だ。





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苑田 謙

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