亀井薄雪『桃栗三年』

 

 

桃栗三年

 

作者:亀井薄雪

発行:徳間書店 2012年

[リュウコミックス]

 

 

 

 

徳島市の大学にかよう「桃瀬みすず」は、ちいさなアパートでひとり暮し。

趣味はプラモデル。

目下の悩みは、お隣さんのタバコ。

 

 

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隣室の主は、小説家だつた。

大量に資料を買いこんで感心される。

でもやはり煙はきらわれる。

 

 

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悪臭はおたがいさま。

塗料のシンナー臭はかなり迷惑。

つまり『桃栗三年』は、空気を主題とする小品だ。

 

 

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「小栗先生」の愛車の塗装が剥げたので、モデラーの技術でおてつだい。

のんきな女子大生と、遅筆な小説家。

まるで接点のないふたりだが、通ずる面もある。

 

 

 

 

 

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お団子ヘアは、悪友の「かっきー」。

オクテなプラモマニアを、ちよつと後押し。

からかつてるだけかもしれない。

 

 

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原稿完成記念に鍋パーティ。

ハタチ前後は、中年に惹かれがちなお年頃。

でもまあ、無邪気に日常をたのしんでる感じ。

 

 

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大学で、買つたばかりのプラモをながめすごす。

箱をみるだけで極楽気分。

 

 

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塗料と接着剤まみれの手では、米もとげない。

コンビニは、コンビニエンスといえない距離にある。

地方の大学生の、退屈な様な、充実してる様な、微妙な雰囲気。

 

 

 

 

 

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カバー下に「ロケーションマップ」が!

「しょうがない」とつぶやくみすずの背景は、眉山とわかる。

海辺の街ならではの空気。

 

 

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大鳴門橋がみえる。

本作は典型的な「ゆるい日常漫画」だが、

たとえば『よつばと!』みたいに閉塞せず、屈折せず、ひろがりがある。

 

 

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つながりそうで、つながらない。

べたつかない空間と、ひとびとの距離感。

おだやかな潮風が吹きぬける、愛すべき一冊だ。






桃栗三年 (リュウコミックス)桃栗三年 (リュウコミックス)
(2012/05/12)
亀井 薄雪

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星川敬の野心

 

 

13日、なでしこリーグ第5節。

INAC神戸の京川舞が、くノ一戦の36分に負傷交代した。

敵のパス回しをおう途中、左膝が上半身をささえることを拒絶した。

翌日、診断結果が発表される。

「左内側側副靱帯および内側半月板損傷、前十字靱帯断裂」

まるで交通事故だ。

 

 

あらかじめ書いておくが、オレは医学の智識はないし、

チーム運営と負傷に因果関係があると主張するつもりはない。

なにが悪かつたかなんて、京川自身すらわかるまい。

検證可能な事実と、そこから論理的にみちびかれる事柄を書くだけ。

 

 

INACの監督・星川敬は、この十八歳をロンドン五輪につれてけと強辯していた。

「一番結果を出した人間が選ばれるべき」

「得点王に一番近い」

これらの発言は、日本代表・佐々木則夫監督による以下の評価への反論だ。

 

まだまだ。

守りの部分と、基本的なスキルがおぼつかない部分がある。

あんまり京川、京川と騒がないでね。

 

『デイリースポーツオンライン』

 

真つ向からケンカをうつていることを御理解いただけたろうか。

「まだまだ」でなく、「実力は十分」。

「さわぐな」でなく、「なでしこジャパンに選ばれて当然」。

 

 

星川の思惑はたやすく想像がつく。

INACは昨季リーグ優勝をはたした。

なのに、監督の手腕に対する評判につながらない。

「あれだけ代表選手がいればアタリマエ」といわれるし、

それは事実と本人が一番わかつている。

だから、みづからの手で代表選手を創りあげようとした。

二か月で。

 

 

京川は、全五試合にセンターフォワードとして先発出場、期待にこたえた。

だが左膝が、それを裏切つた。

 

 

サポーターや狂信者に絡まれるのも億劫なので強調するが、

オレは星川が無能だなんておもつてない。

たしかに2010年、かれがベレーザをクビになつた瞬間、

岩渕真奈は光彩をはなち、チームは三冠にかがやいた。

だからどうともおもわない。

興味がない。

 

 

この球蹴り競技は、人間の卑しさを露出させる。

そこがおもしろいのだが、時折ひどくやりきれなくなる。



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リスク

ボードゲームの『リスク』(Screen Crave)

 

 

オックスフォード大学の認知・進化人類学研究所所長、進化人類学教授、

ロビン・ダンバーの著書『友達の数は何人?』(インターシフト)に、女にもてる秘訣が書いてあつた。

 

アメリカに「カーネギー・メダル」という賞がある。

緊急事態に際して勇敢にふるまつた民間人に贈られるもの。

過去の受賞記録を分析すると、ある傾向がうかんだ。

男性受賞者が救出したのは、わかい女性がおほい。

一方女性受賞者は、血縁関係にある子どもを救つている。

 

ときに人は身を危険にさらす。

女は、わが子を生かすため。

男は、子づくりの機会をふやすため。

 

イギリスの新聞記事で報じられた救出劇をしらべたところ、

救出者はほとんど男性だが、社会的地位に偏りがみられた。

ヒーローになる人間は、社会経済的に下層に属す。

勇敢さは、男の市場価値をたかめる。

 

 

 

 

交叉点での横断行動についての観察によると、

男はまわりに女がいると、赤信号で車が近づいていても渡りたがる。

異性の好みをよく認識している。

 

さまざまな実験で、女はリスクを恐れないチャレンジャーを評価する、と結果がでた。

しかもヒーロータイプが圧倒的に人気。

 

罪ぶかきもの、汝の名は女。

いたづらに射幸心を煽り、男の人生をコンプガチャとする。

 

 

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シャイアン族の酋長、リトルコヨーテとモーニングスター

 

 

北米のネイティヴアメリカン、シャイアン族の歴史でも、以上の事実を確認できる。

「平和の酋長」より、「戦いの酋長」の方が子どもがおほい。

 

イギリスで職業とアンケート結果から、リスク意識と子どもの数の関係を比較した。

たとえば消防士と事務職のちがいを。

リスクをとる意識がたかい男は、そうでない男より、あきらかに子どもの数がおほい。

 

さあ男どもよ、けふも臆せず信号を無視しよう!




友達の数は何人?―ダンバー数とつながりの進化心理学友達の数は何人?―ダンバー数とつながりの進化心理学
(2011/07)
ロビン ダンバー

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テーマ : 科学・医療・心理
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新宿 五月の光

 

 

 

 

 

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ジャンル : 写真

五十嵐藍『ローファイ・アフタースクール』

 

 

ローファイ・アフタースクール 五十嵐藍短編集

 

作者:五十嵐藍

発行:マッグガーデン 2012年

[ブレイドコミックス]

 

 

 

 

五十嵐藍の短篇集を買つた。

四コマ漫画『鬼灯さん家のアネキ』(角川書店)の印象とことなり、

アート志向がつよく、繊細かつ飾らない描線で、澄んだ空気をかもす。

上の表紙イラストに惹かれたら、お薦めしたい。

「ジャケ買い」の風習は、CD屋で絶滅したが、コミック売り場にかろうじて残る。

財布にやさしくないが。

 

 

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個人的ベストトラックは『はるまげ。』かな。

ビデオ屋での珍騒動をえがく十六ページ。

ゴスロリ店員の名は「マンソンさん」。

口癖は「服がほしいっす…」。

90年代のレコード屋には、こういう娘がいた。

店員同士でキャッキャさわぐレジにCDをもつてゆくと、

親の仇でも見るかのような顔で睨まれたりした。

オレは社交性のなさで他者を批難できないが、それでも人としてどうかとおもつた。

塵ほどの根拠もないけど、自分最強。

お気にいりのアーティストと、おのれのセンスしか信じない、ロック少女。

iTunesその他にレコ屋が滅ぼされたいま、彼女らの居場所つてどこだろう?

 

 

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なんでもこの短篇、単行本を編むにあたり、

担当編集者が出したネタで、ためしに描いた一本とか。

ゴスロリも担当の希望。

たしかに装飾過多な服は、五十嵐の好みでなさそう。

「テンションがあがらず難航した」と附言にある。

 

 

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アンドレ・バーナード『まことに残念ですが…』(徳間書店)という本に、

綺羅星のごとき文豪や名作やベストセラーも、

原稿を編集者に突き返されていた事実がまとめてある。

編集者は、いわば必要悪。

鳥山明は鬼の担当・鳥嶋和彦を、「Dr.マシリト」として慰みものにし溜飲をさげた。

よほどムカついてたのだろうし、逆に信頼関係も感じる。

なんにせよ作家は今日も、居場所をもとめ戦う。






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(2012/05/10)
五十嵐 藍

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